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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
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53 結婚式



家に帰って受け取った手紙を開いて見ると、そこにはハンナ姉の可愛らしい字でこう書いてあった。


「クオルフへ

  突然の事で驚いたでしょう?実は私も驚きました。まさか自分が結婚できるとは思っていなかったのです。それも、エインさんのような素敵な人となんて…戸惑う私にお兄ちゃんが背中を押してくれて、妾になるお誘いをお断りして結婚する事になりました。それも、私とお兄ちゃんがちゃんと話し合えるように取り持ってくれたクオルフのおかげです。本当にありがとう。結婚式にも来てくれると嬉しいです。精一杯おもてなしします。

         あなたのお姉ちゃんより。」


ハンナ姉……私の唯一のお姉ちゃん。お兄ちゃんはたくさんいてもお姉ちゃんはハンナ姉一人だけだよ!


ハンナ姉の心のこもった手紙に思わずほろっときてしまった。



三ヶ月後、結婚式が診療所を取り囲む形で盛大に開かれた。主に招待客はハンナ姉の知り合いの南の住人が多く、他のギャングのアジトからは、エインさんの上司という事でそれぞれのギャングのボスと幹部や、一部患者さんも来てくれたようだ。ちなみにあんちゃんも出席している。


準備を整えて診療所の南側の扉から出て来た二人は拍手と指笛で出迎えられた。ハンナ姉のお手製ドレスは春の新緑をイメージさせる鮮やかな緑色で、ふんわりと広がるスカートには桃色系の糸で小さな花の刺繍が施されている。


むっちゃ可愛いし似合ってるよ!


エインさんの方の衣装は白シャツに白の上着、ベスト、ズボン、ネクタイの結婚式定番のフロックコートで、上着は普段着る白衣を使ってるというこだわりっぷり。


診療所で開くお医者さんの結婚式にはとっても映える。っていうかギャングの皆さんの心象の良い衣装で、エインさんのこれも似合ってる。


「皆さん、今日は出席してくれてありがとうございます。三年前のこの日、皆さんに温かく受け入れて貰って俺はここの住人になりました。妻となるハンナともここで出会い、結婚へと至りました。」


「私は五歳で親に捨てられここに来ました。その当時夢だったお嫁さんになるという夢を諦めていた時に、エインさんが現れ、私の夢を叶えてくれたのです。今日は診療所の正式開業三周年と共に、お祝いして頂けると嬉しいです。」


まず初めに口を開いたのはエインさんで、次にハンナ姉が締める。挨拶が終わると招待客が拍手で応えた。


拍手が鳴りやむとエインさんが懐から指輪の入った箱を取り出して、パカッと開けた。


俗に言う箱パカだ。そういえは箱パカは普通プロポーズの時か。向こうの世界とこの世界はちょこちょこ違うからな。


そして中から華奢な銀の指輪を出して、ハンナ姉の薬指にはめた。太陽の光でキラリと光ったそこには小さなダイヤモンドがいくつか美しく配置されて散りばめらていた。


ハンナ姉はお礼にエインさんの頬にキスをして、これで庶民の結婚の儀式は終わりらしい。


いよいよ友人代表のスピーチになってしまった。実はエインさんとハンナ姉の両方から頼まれているのだ。


「えー、エインさんとハンナ姉の友人のクオルフです。エインさんとは診療所の上司部下の関係で、助手を務めています。

 上司としてのエインさんは真面目で、病気や怪我と真摯に向き合い、患者を救いたいという気持ちの強い、私の尊敬するお医者様です。動物などにも愛情深い所があり、私の大好きなハンナ姉の結婚相手として申し分ない方です。

 ハンナ姉とは南の子どもの家で兄弟として一緒に生活し、ハンナ姉が家を出た今も時折診療所で開いている学校で親睦を深めています。

 ハンナ姉はいつも控えめで弱音を吐かない人で、私達兄弟を影から支えてくれていました。そんな彼女の夢を叶えてあげたい、と思っていても何も出来なかった私に喜びをもたらしてくれたエインさんには感謝しています。ハンナ姉はとても可愛く、優しく。また、器用な人です。

 今日この日のためにハンナ姉が作ったドレスも、厳しい冬を乗り越え若葉が茂って花が咲く様を思わせ、若い二人を見事に表した物だと思います。

 長くなりましたが、エインさん。ハンナ姉。…どうか末永くお幸せに。」


なんとか言いたい事を詰めに詰め込んだスピーチを終え、噛まなかった事にホッと一息吐いて、ハンナ姉の明るめの茶色の髪に手に持った色とりどりの花の冠をそっと載せた。


「今度はちゃんとピッタリの花冠になったね。」


小声で囁いたらハンナ姉がクスクス笑って頷いてくれた。前回ハンナ姉の進路希望を聞いた時に作った花冠はその辺の野花で作り、私とハンナ姉の花冠を交換して頭に載せたもんだから、滑稽な事になったのよね。…思い出したら笑えてきた。今回はお店で買った大きめの花を使って、ハンナ姉のサイズに合わせて作ったから完璧よ!


「ありがと、クオルフ。」


ハンナ姉も喜んでくれてるよ。ベールを被らないと聞いてのサプライズだったから感動もひとしおらしい。目尻に涙を浮かべちゃってる。それをエインさんが優しく指で拭っていて、なんというかこっちまで感動で泣けてきそうだ。


次のスピーチは親族代表でハンス兄だ。ハンス兄も今日は正装で臨んでいる。


「ハンナ。結婚おめでとう。ここに来てから俺がずっと気がかりだったのは、お前の夢が断たれてしまう事だった。それを叶えてくれたエインさん、それに二人の出会いの場でこんなに盛大に結婚式を挙げられた事、皆さんに感謝いたします。他に言いたい事はだいたいクオルフに言われてしまったので、俺の挨拶はこのくらいにさせて頂きます。エインさん。くれぐれもハンナをよろしくお願いします。」


「ふひひ。ごめんなさーい。」


「あぁ、ハンナを幸せにしてみせる。俺に任せてくれ。」


私の邪魔が入りつつも、真剣な顔でエインさんが宣言して、それにハンス兄もコクリと頷いて、無事バトンタッチが成された。


「ま、良かったじゃねぇか!これで医者が完全に根付いてくれる事になったしな。」


「…動物好きに悪い奴はいない。幸せになれる。」


「そうじゃの。めでたい事じゃ。これを機に診療所に近寄り難い雰囲気も一掃されるのではないか?もっと言えば子どもでもいるとより明るくなるのじゃがのぅ…」


「じーさんよぉ、診療所にはクオルフがいんだろ?ガキはこいつで充分だ。しょっちゅう何かしらやらかすんだから。」


「なにをぅ!何にもやらかしてないもん!」


最後に上司であるギャングの皆さんから思い思いに一言ずつ貰って、盛り上がりながら二人でケーキ入刀もした。ハンナ姉は始終笑顔でとても楽しそうで、本当に良かった。


「じゃあ、まあこの後はケーキとか料理とかいっぱい食べて皆さんでお話に花を咲かせてください!…せーの、カンパーイ!」


イエーイ!私の合図で、あちこちで音を立ててグラスが打ち合わされ、グラスの中のお酒が舞い踊る。ちなみに私ゃ、りんごジュースだよ。


別に未成年がお酒飲んじゃダメって法律は無いけど、さらに言うならここは無法地帯のスラムだけど、脳の発達に影響が出るっていうなら飲まないよ。


立食形式のテーブルをあちこち回って美味しい料理(特に肉や魚)を貪ってたら、あんちゃんが嫁云々言ってたのはそれでか…と、呆れた様な顔で言って来ました。その通りだけどあんちゃんにしなくてよかったわー。と棒読みで言ってやったらゲンコツを貰いましたとさ。



最近結婚式書くのハマってるんですけど、スピーチが……苦手なのです。

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