52 衝撃の打診 壱
無事九歳の誕生日を迎えて、今年の誕生日プレゼントが物じゃなくて妹に変わった事にちょっとがっかりしながらも、女の子が増えて女子トークも出来るようになって、兄弟みんなで仲良く過ごしていた。
「おい、クオルフ。ちょっと良いか。」
今日も診療所でせっせと働いていて、そんな時に声をかけて来たのはエインさんだった。
「はい。大丈夫ですよ。何かご用ですか?」
私が振り向いて頷くと、エインさんはなにやら真面目な顔で、でもどう言えばいいか迷っているようなそんな表情で切り出した。
「実はな…お前の姉貴分のハンナとな。俺がだな…結婚する事になったんだよ。それでお前にも報告と、ここで式を挙げる事にしたから来てくれないかと…」
「………はい?」
え、ちょい待ちぃ!いつの間にそんな話になっとったんじゃ!
「…かなりいきなり過ぎません!?いつそんな仲良くなったんですか!?」
「あぁ、最初にハンナと出会ったのはお前の学校で、その時にちょっと話したんだよ。お前他の子どもの勉強教えるので忙しそうだったしな。そんでから学校にハンナが来る度にお互いの事を知って行って、気づいたら学校以外でも会うようになって、そのまま一緒になるかって話になったんだ。」
「え、まさかの私が発端でしたか!?そっかぁ……でも、良かったよ。エインさんは良い人だし、まともな仕事についていてお金もあるし。ハンナ姉も良い女だよ。可愛いし、家事も出来るし、服屋で働いてるから裁縫とかも出来るしね。二人ならきっと幸せになれるよ!ホント凄い!」
ていうか、エインさんが学校で医学を教えてくれるようになったのって、教えるのが楽しくなったんだとばかり思ってたら、お目当てはハンナ姉だったのね!
「ああ。ハンナが夢を叶える手助けと後押しをしてくれたのはクオルフだから、良かったら来て欲しい、と。」
「そうね…懐かしいな。私はハンナ姉とハンス兄の橋渡しをしただけで、夢を叶えるためのお手伝いは何も出来なかったけど、結婚式に呼んで貰えるなんて嬉しいよ。おめでとうございます、エインさん!」
「ありがとう。クオルフのおかげだな。」
「そんな事ないよ!でも楽しみだな…ウェディングドレスは着るの?ケーキは?…それともここら辺にはそういう風習は無いのかな。」
「ドレスは服屋の店主に教わって、ハンナが自分で作るらしい。ケーキは考えてなかったが、それも良いな。ハンナに提案してみよう。」
「わあ!じゃあケーキ入刀もして欲しいです!二人でナイフを持ってケーキを切り分けるんです!新郎新婦の初の共同作業っていう意味もありますし、新しい人生を二人で切り開いて行くっていう意味もあるんです。切り分けたケーキはお祝いに来てくれたお客さんに配るとさらに盛り上がりますよ!…あ、でも、砂糖は高いのか。」
贅沢品という事で塩より高い砂糖をふんだんに使ったケーキってなると厳しいかな。
「いや、金はあるからな。ここに来る前に働いてた時の貯金もあるから、結婚式でケチるつもりはねぇよ。なにしろハンナがずっと嬉しそうにしてるからな。」
「いや〜!ほんと良い旦那さん捕まえたね、ハンナ姉は。羨ましいくらいだよ。」
「褒めたって何も出ないぞ!いや、結婚式の時に料理くらいは出すが。…そうだ!これ招待状。恥ずかしいから俺から渡せって頼まれてたんだ。あと手紙も。」
「わあ!ありがとう!結婚式はいつするの?」
「今年の早春。三ヶ月後だ。丁度三年前、俺が来て診療所が正式開業した日にした。この場所は俺とハンナが出会うきっかけになった所だからな。」
「うんうん!いいね!今からすっごく楽しみ!」
ほんと良かったよ!
ちなみにハンナ姉は今12歳で犯罪臭く見えるかもだけど、この時代の普通の平民だと寿命は五十歳くらいまで。だから必然的に結婚年齢も早くなって、一般的に女性は二十歳までに結婚するのだ。だからちょっとだけ早めだけど、政略結婚でも親同士の決めた結婚でも無い自由恋愛の果の結婚ならこういうのも全然アリだと思うな。




