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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
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47 ピンチをチャンスに



「そういやぁ、お前のギフトは水だけじゃ無いと聞いたが、それで治癒士として見込まれたんだろう?どんなギフトか教えてくれないか。」


「良いですよ。」


本来他人に手の内を晒すなんて褒められた行為じゃないけど、どうせこれに関しては知れ渡ってるしね。


「私は除菌・除去というギフトを持ってます。これは菌と汚物とヌメヌメとかの汚れと、虫の死骸とかを消し去るギフトで、これによって患者さんの体の中の菌も消し去って感染症を治したりしてました。」


「なるほど…それは実に医療職向けのギフトだな。では今後も診療所をギフトで衛生的に保ってくれ。特に手術の時なんかはな。」


「分かりました。そうだ!昨日あの後、助手の事で何か話したりしましたか?」


「あぁ、そういえばそうだった。助手の契約は契約期間を決めない以外は治癒士の契約と同じ条件で契約書を作ったから署名しとけとの事だ。待てよ…ほら、契約書。」


「ありがとうございます。ふむふむ。契約書に特におかしな所は無いですね。仲裁以外の契約書は血判押して無いハズだからやんなくて良いよね。…オッケー!完成。」


ペンにインクをつけてサラサラとサインした。もうなんか手慣れて来てるな。


「じゃあ仕舞っとけよ。金庫かどっかあるんだろ?」


「そーです。契約書は金庫に仕舞っとく事になってます。ちなみに4ギャングの血判状も入ってるので、普段は絶対に開けちゃいけません。診療所のお金入れる用の金庫は別にあるのでそっちを使って下さいね。」


血判状もどこかのギャングのアジトに置いておいて盗難騒ぎとかあると大変なので一番中立な場所、つまり診療所に置いてあるんだ。すっっっごく重要な物だから厳重なロックが掛けられてる。


ちなみに私は血判状を発行する事になった張本人だし、仲裁役でもあるので金庫の管理を任されております。…怖ぇよ、ほんまに。失いでもしたら文字通り首が飛ぶからね。


「…俺、やっぱ早まったかな……物騒すぎんだろ。俺の部屋の前、ギャングの会合場所だし、斜め前は用心棒の待機部屋だし。」


「それに患者さんも半分はギャングの構成員ですよ。抗争で負った怪我を手当して貰いに来るんです。昨日の患者さんみたいにね。」


「おぉ、怖!…まあ、怪我や病気の患者である以上診るしか無いか。それが俺の性分だしな。」


「はい!がんばってください!そのうち慣れますから!…あ、ついでだし、エインさんの契約書も作ったんなら一緒に入れてきますよ!」


まあ、二度手間は面倒くさいからね。あの重厚な扉を開けるだけでも六歳児には重たくて大変なのに、その上何重にも鍵がかかってるからさ。


「おう、じゃあ頼んだ。」


エインさんにピラッと渡された契約書を持って金庫のある会議室に向かう。普段私が座るラスボス席とは反対側の壁をドーーンと大きく占めるこの金庫がそうだ。ちなみにお金の入った金庫は受付台の下の方に置かれている。その扱いの差は歴然だ。


とりあえず二枚とも大きな一枚板の机の上に置いて、魔法で土壁を作り出し、金庫と私の周りを囲む。上も忍び返しの様にして日の光を確保しつつ誰かに覗き見られたり侵入されて中の物を奪われたりしないようにする。


そしてまるで開かずの金庫を開けるかのような複雑かつ面倒な手段を繰り返してやっと鍵を全て開け終えた。


「ふぐぐぐぐっ!」


気合を入れてなんとか力を込めて金庫の戸を引き開いて、中の血判状がちゃんとあるかを確認する。月に一度はやってるもはや恒例行事だ。そしてホッと肩を撫で下ろして、ふと我に帰ると契約書を壁の外に置いて来た事を思い出した。


「しまったぁ〜〜!!!」


壁壊したら金庫の中身が危ないし、かといってもう一回閉めて土壁を消して、契約書を取って来て、また開けて仕舞って、また閉めてってしてたら手間がかかり過ぎる!全くもってやる気が起こらんぞ!


「しゃあない、ピンチは逆にチャンスだ!やってみよう!」


エインさんの治癒魔法講習で思い出したんだけど、魔法ってイメージが八割くらいなんだ。あとの要素は魔力値とかだけど、これはクオルフチート(クォーターエルフとして生まれたチート)のおかげでかなり恵まれてる。


だから、一か八かやってみよう。


「空を飛ぶのは原理が理解出来ないからイメージしきれないと思う。重力操作とかはもっとダメ。ってなると空中に階段でも作るか……いや、途中でイメージが崩れて空高くから落ちそうだな。ってなると、生身の人体でも可能な範囲の延長線で……よし!走り高跳びだ!」


普通の飛び込みみたいな飛び方しか教わらないような小さい頃から、わたしゃ何故か背面跳びしか出来なかったんだよ。中学一年生の時で1メートル10センチは余裕で跳べた。


それが唯一得意な体育種目といっても過言では無かったから、部活は普通に文化部だったけどね。


というわけで、得意種目で危機を脱しましょう。


 まずは十分に助走を取って思い切ってピョーンと跳ぶ、んで知らない間に背面跳びの格好になってるから、そのまま勢いをつけるために風の魔法を使って…ちょっと高さも足りないから下からも風圧をかけてみる。

 空を跳ぶこの一瞬は時間がとてもゆっくり流れて、上手く跳べた感覚があると凄く気持ち良い爽快感が訪れる。そして着地体制になって床に大きいクッションを置くイメージで空気の層を作り、無事に着地した。


「っしゃあ!新しい魔法の使い方覚えたぜっ!いえーーい!」


「…何やってんだお前。」


あらま、遅かったから様子を見に来てくれたのかな。エインさんに呆れた眼差しで見られてます。


「ちょっと見ててよ。今度は忘れないようにっと…えいっ!」


今度はちゃんと契約書を引っ掴んで、またもやピョーンと跳んで向こう側へ渡った。


「どう?凄いでしょ。新しい魔法覚えたんだよ!」


「こりゃ驚いた。お前よくそんな空中で僅かな時間で複数の風魔法を発動できるな。」


「えへへ。そんな褒めてもなんにも出てきませんよ〜!」


「知ってる。じゃあさっさと仕舞って戻って来いよ。そろそろ午後の診察の時間だ。」


ちぇ、ノリが悪いな!ボケたらちゃんとツッコミやがれ!


しょうがないから開けっ放しの金庫の中に仕舞おうとして、はたと気づいた。


―――これ、このエインさんの契約書。給料多くね!?


だって一日五マンエルだよ!?治癒士の十倍!


いやまあエインさんは、れっきとした医者で医療学校。つまり医大を出てるみたいな感じで、こっちは便利ギフトと多少の知識があるだけのただの一般市民。というかそれ以下のチビガキだからね。


納得の差だけど、医者良いなぁ。とは思いました、まる



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