42 別れと新しい管理人
あれから一週間。
毎回子どもの家の全員が不安定になる時期を乗り越えて、ついに他の皆にもハンス兄とハンナ姉が家を出る事が知らされた。
もともと皆もハンス兄がそろそろ家を出るのは分かっているし、ハンナ姉が出る事も雰囲気で伝わっていると思う。でも、ちゃんと説明されるのはこれが初めてだ。私も、結局ハンス兄とハンナ姉の話し合いがどうなったのか気になっている。
「みんな、俺は春からギャングで見習いをする事になった。新しい家の準備とか色々あるから、そろそろ家を出る。」
「私はお兄ちゃんについて行って、一緒に暮らす事になったの。妾になる予定だった商人に三年待って貰える事になったから、それまでに色々と今後の事を考えていこうと思う。」
「そういう事になったんだ…!良かったね。二人とも納得いく形が見つかって。」
「ああ。お前のおかげだよ、クオルフ。お前のおかげでハンナとちゃんと気の済むまで話し合えた。」
「そんな事ないよ。私は最初しかおせっかいしてないし。兄弟だもん。ねえ、それより、ハンス兄のお給料だけで二人でやっていけるの?」
「もちろん私も働くよ。貧民街の服屋のお手伝いをさせて貰える事になったの。やっぱりここにいる間に伝手や信用ができてると本当に良いわ。まあ、そんなにお給料は良くないんだけどね。」
「それでも、ギャングはスラムの中じゃ高給取りだから二人でやっていけると思う。」
「そうなんだ…本当に良かったね!」
「ハンス兄、ハンナ姉。後の事は任せてくれ。」
「体に気をつけろよ!」
「がんばってね、ハンス兄ハンナ姉。」
「二人とも行っちゃうの〜?」
ありがとう。と、ジン、ナサラ、タユタの頭を撫でて、ハンス兄はゼムに向き直る。
「ゼム、この家の事よろしく頼む。クオルフと二人で支え合って管理人を務めていって欲しい。
クオルフ、お前はこの中で一番の稼ぎ頭だ。本来は年長者が稼ぎ頭である事が多いから、管理人は年長者がすると言ったが、今の稼ぎ頭はお前だ。だが、クオルフはスラムに来てから日が浅い。それに、ギャングに関わって仕事をしているからいつ何があるか分からない。
だから、年長者であるゼムと一緒に管理人をして欲しい。良いか?」
突然の衝撃の展開だ。順当にゼムが継ぐと思っていたので戸惑ってすぐには返事が出来ない。
「えっ?……っと、全然予想してなかったから考えが纏まらないんだけど、ゼムはそれで良いの?」
とりあえずゼムの意向を確認しておかないと、プライドとかもあるだろうし、ぎくしゃくした関係になるのも困る。
「ああ。俺には少し前に話があったんだ。そりゃ、年上の、男のプライドが傷つかないかって言うと嘘になるけどさ、でも実際俺にみんなを養うだけの金が稼げるかっていうと無理だし。クオルフは頭が良くて何でも知ってるから家を守っていけるだろうし。その割にはちょっと頼りない所もあるから、俺が支えてやるよ!」
「ゼム……ありがとう。よろしくね。」
「あぁ、よろしく。」
改めて握手をして、ここに二人の新管理人が誕生した。私より年上がほとんどの他のメンバーにも温かく受け入れられ、諸々の引き継ぎをした後にハンス兄とハンナ姉は去って行った。
私達も引っ越しのお手伝いに行き、新しい住居はギャングの寮のような所だった。一部屋しか無い狭い所だが、二人なら十分に住む事ができる。
私達は安心して兄弟との別れを惜しむ事ができた。




