表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
51/142

39 エルーの決断



朝起きて、ご飯を食べたら診療所に向かう。昨日がお休みの日だったから今日は普通にお仕事です。とりあえず赤ちゃんを連れてエルーにも一緒に来て貰って、二階の医者の居住スペースで大人しく待っているように言って、赤ちゃんの沐浴のために湯船を除菌・除去してから魔法でお湯を張っておいた。あとはエルーが何とかするだろう。


いつも通り午前の仕事を終えてエルーにパンを渡して一緒に食べた。ココのヤギのミルクは今あげたので無くなったので、買い足しに行かなきゃならない。


「…とりあえず次飲ませる分だけでも買って来なきゃね。さすがにスラムを一人で歩かせるわけにはいかないし、私が行ってくるから患者さんや水のお客様が来たら待って貰うように言ってくれる?」


「俺、行くけど?ダメなのか?」


「うん。スラムには独自の掟とか色々あってね。それにスラムに来たばかりの子は見たらすぐに分かるから、絶好のカモなのよ。お金とか服とかを取られるだけで済めば良いけど、最悪奴隷にされたり、怒りを買って殺されたりするからね。そういうのは下町よりもスラムの方が当然多いよ。」


「そうなのか…分かった。待ってる。ミルク、よろしく頼む。」


「うん!じゃ、行ってくるね。」


出来るだけ早く歩いて昨日のヤギ飼いに250エルで一回分のミルクを買った。おまけで小さなかけらのチーズをくれたので、ありがたく貰ってポケットにしまった。


「ただいま。患者さんとか来た?」


「大丈夫。来てないよ。まだ昼休憩も終わって無い時間だろ?」


「そうね。診療所の昼休憩の時間を知ってる人はこの時間帯には来ないんだけど、たまにそれを知らない人や急患が来たりするから。お留守番ありがとね。これ、貰ったからあげる。」


「いや、俺は座ってただけだし…これって食いもんか?」


「そうよ。チーズって言うの。栄養あるから人によって好き嫌いはあるけど食べた方がいいわ。」


「いいのか?俺にくれて。お前が貰ったんだから食えばいいじゃん。」


「良いのよ。私はスラムに来る前から栄養状態は良いから。でもエルーは食べた方が良さそうだもん。…まあ、私はあんま好きじゃないってのもあるけどね。」


舌を出したら、そっちが本命か。と苦笑された。


「じゃあ貰うけどさ、お前は何でスラムなんかに来たんだ?服も新品だし、良いとこのお嬢さんって感じするけど。」


「あぁ、これね。この服はスラムの知り合いに誕生日に買って貰ったの。私ね、この服買って貰うまではもっと驚くような格好してたんだよ?元々貴族の娘だったからね。」


「貴族の娘って…ほんとか?じゃあ何でスラムなんかに?」


「……私のお母様はね、離縁されて実家に戻ったし、お父様はその後に事故で亡くなってしまったの。だから祖父に引き取られたんだけど、すぐにいらなくなって捨てられちゃった。」


「貴族でも捨て子とかするのか…!?かーちゃんのとこには行けないのかよ?」


「うーん…私もお母様には会いたいし、心配してるだろうから無事を知らせたいんだけど、お母様の実家がどこにあるか知らないのよね。それに、行っても迷惑をかけるだけだろうから…」


ただでさえ離縁されて形見が狭いだろうに、この上発狂したって噂が流れているだろう私までが行ったらお母様がどういう扱いを受けるか分からない。良い人に巡り会って再婚でもしてくれたら良いな。


「そうか…かーちゃんに会えなくなるのはさみしいよな?」


「ココを連れて家に帰る?そしたらエルーも受け入れて貰えるね。」


「そんなことっ…!できないよ…俺がかーちゃんのとこに帰れてもココは売られちまう…」


エルーは迷ってるんだね。年相応に母親の事が恋しいのに、母のもとに帰れない。自分のためにココを売り渡す事ができないんだ…


「そうだね…エルーが大きくなって、親の言う事を聞かなくてもよくなったら、会いに行くっていうのはどうかな?もし仮に、無理矢理ココの居場所を言わされそうになっても、子どもじゃ抵抗出来ないでしょ?ココを守りつつ、自分の望みも叶える方法を考えたらいいんだよ。」


「うん……そうしようかな。ココは…孤児院に入れる。俺が大きくなって、とーちゃんとかーちゃんに交渉して、俺とココの住民票を貰って、俺がココを引き取って一緒に暮らせないかな?」


孤児院に入れる。と、エルーの口からするりと出て来た事に驚いて一瞬固まった。凄く、良く考えられた策だと思う。住民票を貰えるかは親次第だし、エルーはココを引き取って生活するためのお金を稼がなきゃいけない。でも、夢を追いつつ、現実離れをしているわけでは無い策に関心してしまった。


「そうだね。良いんじゃないかな?それなら凄くたくさん努力しないといけないよ。とってもたくさんの苦労をして全ての条件を揃えても、成長したココが望まなければそれも叶わない。親だけじゃなくてココも説得しなきゃいけない気苦労もあると思うけど…やってみる価値は充分にあると思う。私は応援するよ。」


「…あぁ。がんばるさ。やってみせる!」


「うん!……それなら、今日の夕方に孤児院に預けに行こうか。もう少し別れの時間が欲しいと思うけど…こういうのは早い方が良いから。」


「…うん。分かった。そうしよう。」


決心がついた様子のエルーはココを連れてまた二階へと戻って行った。そこで二人きりで別れの挨拶をするのだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ