34 教育事情
「やっほー!ドン今ひま?」
アポ無しでアジト訪ねて執事さんに中に入れて貰ったよ!
「ひまじゃねえよ!ギャングの頭が暇なわきゃねーだろ!」
「だよねー!でも、話聞く余裕はあるんでしょ?執事さんがすんなり通してくれたって事はさ!」
「ちっ…なんだよ、なんかあったのか?」
「それがね、やりたい事が出来たの!だから、手伝って欲しいなって思って。」
「まーた、面倒事持って来やがって!俺は報酬無しじゃ動かねぇぞ!」
「えー!いいじゃん、いいじゃん!ちょっと許可貰いたいだけなんだからさ!勝手にやろうとも思ったけどわざわざ話に来てあげたんだよ!」
「なんで上から目線なんだよ!…で、そのやりたい事って何だ?俺に何を認めて欲しいんだ?」
「それがね、学校作りたいなって思ってさ!手始めに診療所の外のここのギャングの縄張りでやろうと思うの!私もここの縄張りから出られないしね~」
「待てまてまて、学校って、スラムでか!?ありえんだろ!?」
「そう?スラムにも学校があったって良いじゃない。貧困は連鎖するんだよ?知識が無駄になる事は無いからね。…教師は私がするし、ドンに迷惑かけないようにするから!…だから場所だけ使わせて?」
ドンと睨み合いになったよ!負けないからね!
「お願い!」
「…………分かったよ!しゃあねーな!診療所の定休日と、嬢ちゃんの昼休憩の時だけなら構わねぇ。」
ふっ…私のおめめうるうる攻撃で勝ったぜ!
「ありがとっ!よーし、やるぞ~!」
「けどよ、そもそも生徒が集まんのか?金取るつもりならどうせ集まらんだろうが、みかじめ料寄越せよ。」
「けーち!いいじゃん子どものままごとなんだからさ!まぁ、どのみちお金なんて取らないよ。ドンの言う通りそんな事したら誰も来てくれないよ。」
「だろうな。…ていうか、嬢ちゃんよ。上級貴族ってのはそんなガキの頃から勉強したりすんのか?診療所の会計報告とか見てるとかけ算割り算はとうにマスターしてる気がするんだが…」
「あっはは。そうねー普通はこんな早く進めないと思うよ?ただ、私が興味があって教わっただけで。他にやる事も無かったしね。」
特にお母様が家を出たあたりから退屈になっちゃってね。お父様はいつでも家に居られるわけじゃ無いし。それでこの世界の記号の使い方とか覚えたら、後は元々計算とかは出来る訳だからね。
「そういう事か。…なあ、嬢ちゃんは貴族に戻りたいと思うか?」
「貴族か……そうね。あんまり戻りたく無いかな。お母様や乳母には会いたいけど、貴族って基本的に陰険で差別的な所が有るから。政略結婚もしたく無いしねー。」
孫娘を杖で殴り飛ばす祖父とか、葬式の時の貴族とか見たらね。そりゃあね。
「…そうか。大変だったんだな。」
「まあ私はほとんど貴族の世界とか知らないんだけどね。今の生活の方が楽しいよ!やりがいがあるしねー。色んな物に触れて経験する分、魔法の習得も早くなってる感じがするし。」
兄弟もできたしね!あとはお母様にひと目会えれば、もう死んでもいいくらいに満足している。
「そりゃ良かったな。」
「うん!…そういえばドンは子どもの頃どうだったの?街の学校に通ったり、家庭教師とか親とかに教えて貰ったりした?」
ドンはこの世界の人間としては勉強できる方だと思うのよね。ギャングも一応世襲制だった気がするから、後継者にはそれなりの教育をすると思うし。
「俺は、俺達ギャングの若い頭達はじーさんに教わったんだよ。勉強もギャングとしての教育も。じーさんに育てられたと言ってもいい。」
「え、意外。違うギャングの子どもに知識を与えるなんて、双方にとってあり得ない事じゃない?」
ひげ爺側にとっては知識の流出になるし、時間の無駄とも言える。ドンやセオやヘッド側からしたら、洗脳や取り込みの危険とかがある。当時の頭である親がいれば絶対に認めないだろう。
「まぁ、親は抗争で殺し合って派手に死んだからな。三人とも路頭に迷う所だったんだが、じーさんが基礎を教育するから、あとはそれぞれのギャングでそれぞれに教育をすれば良いって言ってくれてよ。厳しくも優しい指導ってのか?親の恨みなんかも初めはあったが、それで俺らも打ち解けたのよ。」
「なるほど、それでか。今みたいな関係が次代からも続けばいいのにね。」
「そうだな。まあ、だからこその診療所だよ。あそこは絶対に守らにゃならん。これからもよろしくな。」
ぶっきらぼうだけど気持ちは伝わった。ドンの耳真っ赤だよ。
それにしても、だから今日はなんか口が重かったのか。子どもの頃の事思い出してしんみりしてたんだね。
それにしてもちゃんと許可貰えて良かったな!




