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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
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29 首謀者の処罰

一応連投です。お気をつけを。



――前言撤回。


全然かわいくなかった。セオさん、むっちゃ怖かったよ。

恐怖で小刻みに震えるよ?


「ナメた融和政策を取るのが気に食わねぇ。大事な条約をロクに相談もせずに発行しちまったのが許せねぇ。見せしめにガキと用心棒をブチ殺して、そんな所に来る患者共も片っ端から殺してやろうとした。」


そう言って殺すなら殺せよ。とセオさんにツバを吐いた裏切り者の元東の幹部さん。ツバをかけられた事にも特に反応せず、黙って聞いていたセオさんがポツリ、と呟いた。


「…テメェ、ふざけてるのか。」


あ?と怪訝そうに聞き返した自分の部下を、思いっきり蹴り飛ばしてその転がした部下を踏みつける。


「ぐ…なんだよ!」


「…舐めているのはテメェの方だろう。許せねぇのはヘッドや西の奴らで、殺してやりてぇのは俺ら全員よ。」


セオが物凄い怒気を放って先程の部下の発言をそっくりそのまま厳しい表情で言い返した。


「ひっ。」


と小さく悲鳴を上げたのはそれを向けられた張本人では無く、わたしだった。


全員がこちらを振り向いたので邪魔してごめんなさい。と呟いて何でもないと手を降った。


ドンがひょいと抱き上げてあやすように背中をポンポン叩いてくれたから、子ども扱いされてるなとは思いつつもありがたく受け入れる。


「……なぁ、お前。殺せって言ったが、そんな簡単に死なせてやると思ってんのか?」


ここでヘッドが参戦した。


「そうだな。頭に逆らい、条約を破ったのは明らかな反逆だ。その上命じられてもいねぇのに勝手に他所のギャングのタマ取りやがった。これでなぁ、『楽にしてくれ』だなんて虫が良すぎるって話だとは思わねぇか?」


セオもまた、頭として罪の重さを思い知らせる。

二人の言う、死よりも恐ろしい罰とは何だろう。


「…まあ、条約破りは死では償えんわな。」


「拷問死…が、妥当なところでは無いかのぅ。 」


ここで的確にわたしの疑問に答えてくれた髭じい。ドンはわたしに甘いから気ぃ使ってくれたかな。


それにしても拷問ってどんな事するんだろ。


「ま、親族や友人まで巻き込んで処罰するまででは無いよな。」


何気にドンが恐ろしい事を言っている。…そうなる場合もあるって事だよね。


「ねぇ、拷問ってどんな事するの?」


怖いもの見たさなのかな、つい興味本位で聞いてしまった。


「そりゃあまあ、こっちが手を煩わす意味もねぇし、痛めつけるってよりは餓死とかそういう方面になるな。…って、嬢ちゃんがンなこと言うの珍しいな。」


「んーまあね。…わたしだけが狙われたなら軽い処分でも構わない。だけど苦しんで傷ついてやって来る患者さんを殺そうだなんて許せない…かな、って。」


ちょっと深刻になり過ぎたなと思って語尾を和らげる。せっかくセオとヘッドを仲裁したのに、蒸し返してご破産になるのもしゃくだしね。


「……すぐにでも殺して欲しいか。」


と、ドンが珍しく真剣な表情と声音で抱きかかえたわたしを見据えて来た。


「そんなことわたしは望まないよ。自分の手を汚す訳でも無いのにそんなこと思ってもダメだと思う。」


私もドンと目を合わせ、なるべく落ち着いた冷静な態度で返す。


「…そうか。」


フッと空気が和らいだドンにくしゃくしゃと頭を撫でられる。


…わたし、試されてたのかなぁ。


「じゃあ、こいつ連れてくから今日はここで解散でいいか?」


「ああ、俺も付き合おう。」


西と東の当事者二人で無言でうなだれている首謀者を連行するらしい。


「では儂は帰るとするかの。」


「俺も嬢ちゃんを送って帰る。今日はどうせ患者は来んだろ。」


そうね。ドンの言う通りまだ昼下がりだけど一旦逃げた患者はギャングがいなくなってもその日はもう寄り付かない。


すぐに情報が回るのかその後に来る患者もほぼ居ない。誰だって命は惜しいからね。命を助けるための診療所なのに何やってんだかって感じだけど。


「帰るなら降ろして。抱っこされてたら後片付けとか戸締まりとか出来ないよ?」


そう言うとドンはそうだな。と言ってすぐに降ろしてくれた。


みんなを見送って、急いで帰り支度をする。


帰りは互いに無言で、酷く静かだった。





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