28 紅茶と豆って合うの?
二人取り残された非戦闘員の老人と子どもは会議室でそのままゆったりのんびりと過ごしている。
「最近調子はどう?髭じい。」
「まあ、ぼちぼちじゃのぅ。」
「…そう。それならいいけど、一応診察させて貰ってもいい?」
「あぁ、構わんよ。」
「……うーん、やっばり脈は乱れてる気がしますけどよく分かりませんね。とりあえずギフトかけときます。」
今回もサクッと終わった診察と除菌・除去ギフト。
「心配かけてすまんの。いつもありがとう。」
「いえ!…そんな、私なんて治癒士なのに何にも出来なくて、いつもこんなんでいいのかって思っちゃう。」
「…なぁに、気にすることは無い。儂らよりは余程向いてると思うぞ。患者を診るのも思いやるのも、わしらには出来ん事じゃからな。ギャングの者や、多くのスラムの住人もそうじゃ。人を思いやるなど知らずに育ってきた教養の無い者たちばかりじゃ。基本的に食い物と着る物さえあればそれでいいと思ってるからな。他に欲しいものといえば、女と金と酒。もしくは麻薬。そんなところじゃからのう。」
「髭じい…」
髭じい達はそうじゃない!って否定したかったけど、ギャングの事やスラムの事をまだ全然知らない私が言った所で何の意味も持たない。髭じいやセオやヘッド……ドンにだってまだ出会ったばかり。まだ半年も経っていないのだ。
「だから儂はお前さんの様な純真でありながら教養も度胸も実力も有り、あやつらと対等に向かい合えるお前さんの様な稀有な存在を頼もしく思っておるよ。もしかしたらこのスラムを変えてくれるのでは無いかと、少しでもそう期待してしまうくらいにはな。」
「髭じい……私、髭じいの期待を裏切らないようにがんばるね。せめて、がっかりさせない程度にはないりたいの。……だから応援してくれる?私が一人前になるまでは、元気でいてね。」
「……ああ。では儂ももっとがんばらねばの。」
「うん!……そうだ!お茶淹れてくるね!皆に出すの忘れちゃった。」
ちょっと湿っぽくなっちゃった。切り替えて元気よく立ち上がる。
紅茶の茶葉は私が飲むからいつもあるけど、お茶菓子は茹でた豆しかないけどね。
「ああ、そういえばそうだったな。なあに、気にせんでもあやつらはどうせ紅茶の味なんざ分かりゃしない。」
「あら、そうなの?まあドンやヘッドさんが紅茶飲んでるイメージは無いけど、セオさんなんかは飲みそうじゃない?」
「あやつは寡黙で渋いように見えるが意外と舌は子供でな。ホットミルクやら果物ジュースなどしか飲まんのじゃ。」
「へ~!意外~。猫好きなとこといい、なんかかわいいね。」
「かわいいか…そうじゃな。ギャングの頭にそんなことを言えるのは嬢ちゃんくらいではあるがな。」
「ふひ、そう?むしろ私は大人の男の人にかわいいはどうだろ?って思ったくらいだけど。ま、とりあえずお茶淹れてくるね。」
会議室を出て台所で紅茶を入れ、蒸らす。その間椅子に座ってプラプラと地面に届かない短い足を揺らして待っていた。
ちょうど時間になった頃に階下がにわかに騒がしくなって、すぐに階段を上がってくる音が響く。
どうしたんだろうと思いながらお盆にティーポットとカップ、砂糖とミルク、それから豆を載せて再び会議室に向かう。
開けてもらったそこには、さっき出て行ったドンとヘッドさんとセオさん、それに手下によって引きずられ押さえつけられた今回の事件の首謀者がいた。
「あぁ。戻ってきたか。こやつが西の用心棒を殺め、お前さんを襲った襲撃者の親玉よ。すまんが紅茶はそこへ置いておいてくれんかの。」
「分かった。」
髭じいの言う通りに机に置いて、その人物へ向き直る。
「……ねぇ、みんな。わたしここ出たほうがいい?尋問とかするなら邪魔でしょ?」
「いや、お前さんが嫌でないなら居てもらった方がいいのぅ。そうじゃろ?」
髭じいがみんなに尋ねて、みんなもそれに同意する。
「そう?ならいるね。」
正直居心地は悪いけどね。ヘッドは殺気立ってるし、セオも怖い顔してる。ドンだって気は張ってるし、髭じいはいつも通り底の見えない顔をしてる。
こういう時どうすればいいのか分からない。
「……なあ、お前。何故診療所を襲った?」
裏切り者を出したセオが最初に尋問を始めた。




