3 生まれたよ
「ホぎゃあ、おぎゃあ」
あ、どうやら生まれたみたいです。
おっと、そういえば、言語チートを貰うのは忘れてました。一から覚え直しだろうか。…まあ、赤ん坊だからそれでもいいんだけど。
「よすでこのなんおなきんげ」
あらま、産婆さんらしき人が何か言ってるけど聞き取れないや。言語チートはなしって事で良いのかな?ていうか、目もほとんど見えないな。生粋のメガネっ娘だった前世より悪いくらいだ。これ、ちゃんと見えるようになるんだろか。赤ん坊だからだとは思うけどさ。
「ねわいいわか、もでこのなんお」
母親らしき、私を抱く女の人が話しかけてくる。性別は分かるよ。胸に抱かれてるからね。あれ、てことは、お父さんがハーフエルフって事かな?お母さんは、ハーフエルフにしては胸が大きすぎるもん。あ、でもエルフの胸の大きさまでは聞いてないな。この世界のエルフはちっぱいじゃないのかも。
「くおるふ。はえまなのたなあ、くおるふの。」
ん?今同じ言葉を二回言った?もしかしてこれが私の名前かな。
クオルフか、どんな意味なんだろ。
「あばたけたぶら」
あ、父親が来ました。なんで分かるかって?胸だよ。抱かれてるからね。父親以外の人間が母親の次に赤ん坊を抱く事ってあんまり無いっしょ。
「ぬんふっ!」
あ、母親の方に放り投げられました。
どうやら気に食わなかったようです。ケンカしてます。
「つあおろるが!」
あ、行っちゃいました。
なんで分かるかって?足音とぼんやり見える影ですよ。
お母さんが泣いてます。ごめんね、よー分からんけど。
なんで分かるかって?あ、しつこい?ごめんなさい。
涙がポタポタ顔に落ちてくるんよ。
慰めてあげたいけど、手が重くてあんまり動かないや。
ごめんよ。
とりあえず、私を抱いてる腕にふくふくとした赤ん坊の手をつけておく。
お母さんは驚いたように笑って、私の顔に落ちた雫を拭ってくれた。
なんで、分かるかって言うのは野暮だな。