27 初めての仲裁
一応連投です。お気をつけ下さい。
黒幕が確定し、会議のために集まって来たギャングさん達を見て、いつも通り蜘蛛の子を散らしたように見事に患者さんはいなくなった。
私は内密の話を万が一にもスラムの人に聞かれない為に玄関の札を下げ、内鍵を掛けて二階の会議室へと向かう。
会議室の扉はラスボスの部屋の扉みたいな気迫を漂わせる大きくて分厚い扉なので五歳のチビっ子には、そもそもドアノブにすら手が届かない。扉の前に立つ護衛のお兄さん達にお願いして開けてもらう。
そこにはやっぱり険悪なムードのギャングの頭達がいた。
私はもう迷う事も躊躇う事も無く、一つだけ空いたラスボス席にちょこんと座り、みんなを見渡して言い放つ。
「ドンも!髭じいも!ヘッドさんも!東のギャングさんも!落ち着きましょう!大丈夫ですから!」
…うん。何が大丈夫かなんざ知らん。雰囲気悪いからてきとーに宥めようとしてるだけだ!
「……俺はセオだ。それと、落ち着いている。」
まあ、確かに。東のギャングさんはいつも落ち着いてらっしゃる。セオさんね。覚えたよ。
「そうだけどそうじゃなくて、なんかピリピリしてるんですよ!みなさん。とりあえず怒りを静めて何があったか説明して貰えませんか?」
「けっ!これが落ち着いていられるかってんだ!セオんとこの奴らがやらかしやがったんだ!俺んとこの用心棒を殺ったのも、水っ娘を襲ったのもこいつんとこの奴らだったんだよ!」
あー、それで険悪な感じになってるのね。まだ対立とまでは行って無いんだろうけど、まあまあヤバそうね。
てか、いつの間にか微妙に呼び方変わってるし。親しみの現れか?
「ほうほう、それで?確か下っ端ならギャングの規定で処罰、幹部ならギャング会議を開いて決定、だったわね?」
「ああ。だがその肝心の処罰する黒幕がまだ捕まっちゃいねぇ。これから奴らがアジトにしてる所へ捕まえに行く予定だ。」
「なるほど。それでその黒幕さんが東のギャングの幹部だったから会議を開いてるってわけね。」
「そうじゃ。お前さんは何か意見はあるか?お前さんも被害にあったわけじゃしの。」
ドンと髭じいの第三者からの説明は要領を得ていて、話の要点を掴むことが出来た。さらに私に望まれているであろう事も。
「そうですねえ。私は怪我一つしていませんけど、それも自衛力があったからで、殺されていた可能性は多いにありましたし、普通に怖かったですから。それなりの処罰は受けさせたいと思いますけど、やり過ぎも良くないですしねぇ。ここは常識的な範囲で収めましょうよ。スラムにもそういうのあるでしょ?」
「……ちっ!仕方ねえな。」
西のギャングさんことヘッドは、暫しの間逡巡し、了承してくれた。
「…すまない。こちらもそれで構わない。」
続いて今回の発端の裏切り者幹部を抱える東のギャングさんことセオがヘッドと私に頭を下げる。
「……だあっ!もう!…いいってことよ!お前がやったわけじゃあるまいし、後は、殺された用心棒の家族に充分補償してくれればそれで構わねえ。」
いつまでも頭を下げ続けるセオに折れたヘッドが、謝罪を受け入れてくれた。
「よしよし、これにて一件落着ってことで!」
そう、私のお役目は仲裁だったのだ。給料も貰ってる事だし、今回は張り切って仲裁してみた。西のヘッドが身内を殺された怒りで無理難題を言ったり、方外な慰謝料を要求したりしないように。東のセオが素直に謝り、処罰や賠償を受け入れるように。お互いの妥協点を引き出せるように喋った。そしたら大成功だったね。えっへん。
「まぁだ、犯人捕まえてねぇがな!」
ドンと顔を見合わせてちょっとニィって笑ってやったら、ドンも愉快そうに笑い返してくれた。
「そりゃそうだけど、すぐに捕まえてくれるんでしょ?」
「まあな。そうと決まりゃあすぐに行こうぜ!」
「そうじゃの。儂は年寄りが行っても邪魔になるだけじゃから、儂の後継者候補の部下を行かせる事にしよう。」
「んなこたぁねえが、じーさんは休んでた方がいいかもな。」
「そうだな。体に障るといけねぇ。」
「俺、責任持って捕まえるから安心して。」
ドン、ヘッド、セオは髭じいの言葉にそう返して颯爽と会議室を出て行った。




