17 下っ端
一般の患者さんが来るようになってから一ヶ月弱。
まあまあ毎日患者さんで賑わうようになった。平均して一時間に一人か二人は来る。ギャング関係者を入れるとその倍は行くけど、ギャングはほぼ抗争による怪我で、一般の患者は病気が多いっていうふうに別れてるのが面白いわね。
で、今は患者さんが多い時間帯。仕事が終わった夕方や夜の仕事を始める前に立ち寄るこの時間帯はギャングも一般の患者も入り乱れて、五、六人はいる。
基本は早く来た者順で、急患の場合だけ先に診る。ギャングか一般の患者では優先順位をつけたりしない。その事で少しは揉めたりもしたけど、ギャングには上からの指示だって説明して、一般の患者さんには一応ギャング経営のとこなんで、どちらも優先しないっていうのが限界なんです。って説明して納得してもらう。納得しなかった場合はギャングのお偉いさんさんが出てくる…その場合は怖いよ、うん。
「眼が痒くて、そしたら腫れて来たんです。」
「そうですか。ちょっと、見せてくださいね…」
今は一般の患者の診察中。他に二、三人待たせてるから早めにやんないと。
「…うん。多分結膜炎ですね。さっき除菌・除菌ギフトかけといたんで、清潔に保ってればそのうち治りますよ。一週間くらいで腫れが引かなかったらまた来てください。」
一応除菌ギフトで効いたって分かっても、こないだのお姉様の様によくよく聞いてみると違うって事があるから診察室で診るようにしてる。
…相変わらずテキトー診療だからね。いいのかそれで!
「分かりました。」
「じゃあ、受付で会計しちゃいましょう。」
立ち上がって話しながら受付へ向かう事にする。忙しい時は効率重視です。
「一応薬出しときますか?それか、2日に一度くらいのペースで除菌ギフト受けに来てもらえると安心てすけど。…無くても多分大丈夫です。」
「…うーん、どっちの方が安いですか?」
「ギフトなら薬の半額です。さらに治療途中のギフトはその半額の250エルになります。今回の場合はギフトでも問題無いと思います。」
「じゃあ、それでお願いします。」
「はい!では…」
ドッカーン!
な、何事!?
診療所中に響く大きな音。驚いてその音のした方向を振り返るとギャングが二人向かい合って険悪な雰囲気だ。ソファが大きくずれ、ソファの近くに立っている一人の男の顔には殴られた痕がついている。
こりゃあタダ事じゃあ無いわね。
「ちょっとどうしたってのよ!だめよ!ここは抗争不可侵地帯なんだから!条約を破った下っ端はギャングによる制裁よ!」
「うるっせえ!ガキは黙ってろ!俺はこいつに怪我させられてここに来たんだよ!」
「ああん?てめぇだってやったろうが!どの口が言ってんだ!」
あちゃあ、抗争かなんかでお互い傷つけあって、んで怪我治してもらおうとここに来たら鉢合わせちゃった訳ね。…でもさ、
「やめなさいよ!みっともない!みんな竦んじゃってるじゃない!こういう騒動起こされるとこっちは商売上がったりだってのよ!」
「何だとぉっ!こんの糞ガキがぁ!」
おいおい、殴りかかってくんじゃねぇよ。んなことしたら…
「死なねぇ程度の雷!」
バリッパリバリリッ!
雷が二人のギャングに落ちる。便利ね、雷魔法。進化したクオルフはあれから雷魔法を取得したのだー!パフパフ
いや、生活魔法の派生系の小さい雷魔法は使えたんだよ。けどなんていうか、ちょっとしびれさせる程度の…お笑い芸人の電気うなぎ程度だったのよ。けどまあ、もうちょっと護身用に威力強いの欲しいかなーと思って合間に練習してた訳。この一ヶ月。
「うぎゃあああ!………っく…」
「あああぁぁぁ!………うっ…」
漫画みたいに黒焦げにはならないけど、二人ともダメージはまあまあありそうね。
「どう?痛いでしょ。分かったらさっさと喧嘩なんかやめな!ちゃんと順番が来たら治療してあげるから。」
「くっそ……」
「まだなんかやるつもり?いい加減椅子に縛り付けるわよ!」
「「ひいっ!分かりましたごめんなさいぃ!」」
お、綺麗に揃ったね。よし、仕事に戻るか。
「本日の診療費は250エルになります。…患者様?どうかされましたか?」
固まっちゃって呆然としてる。突然のヤクザの喧嘩にビックリしちゃったか?
「…い、いえ、小さいのに強いんですね。あ、いえ何でもないです、ハイ。250エルですね。」
ん?なに、こっちにビビってる感じ?やーだもう。仲裁しただけだってのに。100エル、200エル、10エル硬貨が五枚っと。
「…はい、確かに250エル丁度お預かりします。お大事に〜」
さてと、見送ったらお金しまって次の患者さんね。あの二人はもちろん一番最後よ。放置放置。
ニ、三十分ほど経って患者を全員返して、ギャングの下っ端共を見ると大人しく二人並んで待っていた。偉い偉いと思いつつ話しかける。
「そんで〜?どこのギャングなの?お二人さん。今北は抗争してないはすだから西か東か南よね?正直に言わないと罰を重くしてもらうわよ!」
「俺は西のギャングだ。…です。」
「俺は南です…」
やけにしおらしいな、お二人さん。
「西と南ね。それぞれのギャングの頭には報告するから。…ドンにもお灸を据えなくちゃね。ふふふふふ。」
「そんなぁ…!」
ぽっくり
うなだれ、揃って意気消沈する二人。意外と相性良いんじゃない?




