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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
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15 初・普通の患者

翌日、早朝に血判状を表に張り出しておいたら、そう経たずにザワザワと騒がしくなった。


「これ、ホントか?」


「はい!正真正銘の本物ですよ!」


「ほんとだってよ…」


「まじかよ…信じらんねぇな……」


「こりゃあ、すげー事が起きてるよ!」


とまぁ、始終こんな調子だ。

皆確かめに来て口々に嘘だ。とか信じれない。とか言うけど、その目は真実だと分かってると雄弁に語っている。


…そう。血判状は破られる事は無いのだ。


この調子だと今日は騒ぎになるだけで終わりそうだけど、明日あたりおっかなびっくり調子の悪い人が来るんじゃないかな。


ハンス達も仕事の時に宣伝してくれるらしい。

ちなみにお昼休憩は毎日広場に水置きに行くよ。そこで兄弟達が代わりに売ってくれるんだ。

小さくした水樽を運ぶから楽ちん。そこでお昼食べて戻る事もあるね。とはいえ、患者さん来るといけないから早めに戻るけど。


ハンス達にあらかじめ渡しといてもいいんだけど、仕事中に結構激しく動いたりもするから樽壊されると困るしね。…ハンス兄が。樽って結構高いらしいよ。


「よぉ!新入り!元気してたか?久しぶりだな、開業以来か!」


「そうよ!おおよそ三ヶ月!もうっ!今まで何してたの!あん時もなーんにもしないで帰っちゃうしさ!せめて水くらい買って行きなさいってのよ!」


わあぁいっ!麻薬ブローカーのあんちゃんだ!全然顔見せないから死んじゃったかと思ったじゃない!心配させないでよね!


「悪かったよ、急いでたんだ。ちょっと大口の取引があってな。」


「んもーう!麻薬売ったらちゃんとここの診療所も一緒に紹介しなさいよ!私が全部治してやるんだから!」


「おっと、そりゃ商売上がったりだな!……あ、でも死ぬ寸前のを連れてきて程々に回復したらまたヤク漬けにすれば延々と儲けられるか?」


「こらーっ!そんな事絶対させませんからね!…んで、今日は何?どっちなの?診察?水?今日はどっちも無しは無しだからね!」


もー!何てこというのよ!さすが子ども以外には超絶怖いブローカーさん。商売の邪魔すれば子どもでも容赦無いって聞くけどね。


「あーはいはい。じゃ、どっちもで。」


「まじで!?あなたは記念すべきギャング以外の一番目の患者様よ!」


「まあ、そうだろうな。」


「ええ!記念に私のおやつの豆あげる!ほれ。」


口に放りこんでやったらちょっとびっくり、目丸くして食べる。


「おっと!…うん。豆だな。豆の味しかしねぇ。」


「文句言わないの!豆は体に良いのよ!ま、とにかく診察するわ!こっちよ!」


「おぅ…随分たくましくなったな。もうどの辺が貴族の娘か分からねぇや。」


行きがけに話してたら思わぬ事を言われた。


「あんちゃんも知ってたの?何か色んなとこにバレてるな〜」


「そりゃ分かるだろ。最初の頃なんて貴族丸出しだったぞ。それに、服も服だしな。知識の無いもんでも良いとこのお嬢様だってのは分かっただろうな。」


「うぐ…!」


まじかーそんなに…

気をつけてはいたんだけど。


服は…そうね。しゃーない。

上流階級のこのくらいの歳の子が着るらしい、丈と締め付けの少ないワンピース状のドレスだ。今の背丈ならギリギリ着られる。


10センチ近く伸びたらそりゃあねぇ。


膝下だったのが今や膝上の長さになっちゃってる。

そろそろフリルを解いて長くしようか考えてるとこだ。

とはいえそれだと売る時に安くなっちゃうからなぁ…


「で、どこ診て欲しいの?」


診察室に到着して互いに椅子に座って切り出す。

あんちゃんもどっか悪いんだろうか。顔色は悪くなさそうだし、怪我もしてなさそうだけど…


「ん。ちょっと風邪気味でな。鼻と喉の調子が悪い。」


ほっ。なんだ風邪か。……いやいや、風邪で死ぬ事もあるんだし。早めに来てくれてよかった。うん。


「じゃあ、除菌ギフトかけとくね。風邪のほとんどの原因は菌とかウイルスらしいよ。あ、でも素人判断だから怖かったら普通の風邪薬とか処方するよ?」


「あぁ。…いや、いい。ギフト使ってみてくれ。俺もどんなのか知りたい。会うたびにゼムが凄いんだってうるさくてな。」


「あはは。何か想像できるな。興奮して目キラキラ輝かせてね。」


「そうなんだよ。一回やってみて感想でも言ったら収まるんじゃねぇかと、な。」


「分かりました。除菌・除去ギフト!」


「…おお!これか、あいつの言ってた菌の消える感覚ってのは。ほんとに凄いなこりゃあ。」


「ちゃんと消えたでしょ?こっちもこっちで、他人の菌が消えてくのが分かるって何か不思議で面白いんですよ!」


「そりゃあ、やっぱりギフトだからなぁ。普通の除菌や除去魔法とは違うだろうよ。第一、二つくっついてる時点でギフトとしても普通じゃねぇけどな。」


「そうなの?やっぱ魔法とギフトじゃ違うんだー」


うん。後半はスルーだ。だって神様から直接リクエストして貰ったから。なんて言えないじゃん。


「ギフト持ちなんてあんまり居ないんだから大事にしろよー。」


「もちろんっ!私このギフト大好きだもん!」


あんちゃんはそうか。と笑って頭を撫でて出て行った。

久しぶりに会えて良かったなぁ。





……


…………


…………………………え?


「ちょっとまってえええええ!」


ああああ、危ない!初めてのギャング外の患者さんに、久しぶりのあんちゃんに興奮して完っ全に忘れてた!


「診療費払いなさああああい!!!!」


「あ、バレた?いやぁいつ気づくかなーと思ったんだけどちゃんとすぐに気づけたねー。えらいえらい。」


「…って、頭撫でてそのまま立ち去ろうとすんじゃないわよ!きちっと払って貰うからね!貰い損ねたって知られたら私が給料引かれるじゃない!」


「あー、分かった分かった。いくらだ?」


「…500エルです。」


じーっと顔を覗き込んで、


「ホントは?」


あんちゃん鋭い!…や、ホントはホントにこの値段なんだよ?でも、ギフトはお金かかってないから薬処方するのと違って安くできるの。


「……………250エル。…でもでも!こないだは何も買ってくれなかったし!ふんだくってやろうって決めたのよぅ…」


「…ぷっ…く!…わぁかったよ。悪かったって。ほれ、1000エル。がんばってる新入りに先輩から小遣いだ。」


どんどん語尾が小さくなってくのに吹き出したあんちゃん。気前が良すぎます。


「えっ!?こんなにいいの?」


まじで?


「もちろん、そん中から診療費払ってのだぞ!」


「そりゃもちろん分かってますとも!…貰っていいのよね?」


「ああ。」


「やったあ!ありがとうございます!あんちゃん先輩!」


「んじゃ、大っきくなったら恩返しな。」


「もっちろん!それまでここに通って元気でいてね。」


にこっ

もちろん宣伝も忘れない。ついでにあんちゃんから取った診療費が一部私にも回ってくる!ふひひ私ってば悪い女だぜ。


「しょうがねぇな。そうしてやるか。」


「はい!またのお越しをお待ちしてます!ちなみにあと半年で誕生日ですっ!」


「自分からねだるな!…ったく。……考えとくよ。」


「えへへ。よろしくお願いします!」


ぺこり。

…かなりお行儀悪いけどスラムじゃちゃんと自分から主張しないとダメなのよ。…お母様やナニーが見たら泣くわね


「じゃあな。」


「またね!お大事に!ちゃんと睡眠と栄養とってストレス貯めないでね!」


「分かった。またな!」



よおし!

最初の()()()()患者さんの診察終わりぃっ!

幸先いいね!


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