13 条約と血判
東と西取り違えてたよ!
東がセオで、西がヘッドね。
ややしこしくてごめんなさい
契約期間とか、お給料とか?
なんじゃらほい
「嬢ちゃんは危機感が薄いが、殺る気になったギャングってのは何しでかすか分からんぞ。例え俺達は手を下さなくとも、下っ端連中が勝手にしでかす事もある。万が一の備えは必要だろ。」
「…あ!」
そっか!そらそっか!ギャングの闘争に関わるんだもん。危険が及ぶかもしれないんだよね。私は安請け合いした自業自得だとして、兄弟達にまで被害が及んだら最悪じゃん。何の為の仲裁か分かんなくなっちゃうじゃん!兄弟で生きていく為の仕事なのに!
「分かったみたいだな。っとに、妙な所で鈍いんだから気をつけろよな!いつまで経っても言い出さないからヒヤヒヤしたぜ。」
「ごめんなさい!というかありがとうございますっ!危なかったわ!」
いや、ほんと。親切に教えてくれるとかほんとにギャング?
…保護者かよ
「いい、いい!今度から気をつけろよホントに。で、契約期間中クオルフとその兄弟には手を出さないって事で良いか?」
「……うん。殺しや暴力、暴行はもちろん、誘拐や脅迫なんかもダメよ。」
「あぁ。条約を破った場合、それが平の構成員ならギャングの規定で処罰。幹部ならギャング会議を開いて決定。俺達なら…」
「……それが兄弟達に向けられた物だったら、同じ事をやり返してやるわ。私一人で難しかったら他のギャングさんが手伝ってね。」
ふふ。手伝いなんか必要無いかもだけどね。そんな事になったらキ○タマ蹴り潰して悶絶してる間に場合によっちゃあ殺すわ。
…おっと、暗黒面が出てしまった、反省、反省。
「お前さんの場合は?」
お、珍しく東のギャングさんが発言した!
いつもは皆の言い分を黙って聞いてるイメージ強いのに。
「私がやられた場合はある程度自業自得っすよ。自分から首突っ込んでて仲裁しきれずにやられたんなら、しょーがない。危険な分報酬もいっぱい貰うつもりですしね。死んじゃったら兄弟にお金多めに渡したげてください。」
「……分かった。そのくらい覚悟があるのは良い事だ。」
「じゃ、決まりだな。それも条約に書くぜ。」
若干重くなっちゃった空気を振り払うようにドンが軽く進める。
「………よし、と。」
「じゃ、それぞれのサインと血判だな。」
ドンが書き終わって、西のギャングさんがペンを持つ。
他のギャング達もそれぞれにペンを持ち、書き始める。
「うっし!じゃあ次は血判だな〜……って、嬢ちゃん。何やってんだ?お前も書くんだぞ?」
って、え!?
「ちょ、待って。私も!?」
「当たり前だろ、条約で名指しされてんだからよ。」
「ええ〜〜っ!?嫌ですよー!血判もでしょ!?痛いの嫌いですもん!」
何となく察してはいたけどさぁっ!
「ワガママ言うな、ガキでもあるまいし。…って、ガキか。とにかく書け!先に進まねえ。」
「分かりましたよぉ。書けばいいんでしょ!」
クオルフ
「これでいいですか!」
「良いぞ。じゃ手ぇ出せ。さっさと済ませてやる。」
「う〜!」
ドンの目がこあい…
しゃーないから出すか。
スッ あいたっ! ペタン
あ、でも、目ぇ閉じてる間に終わったわ。
すっげー。ドンむっちゃ手際良いんですけど。
「では儂らも。」
スッ ペタン
スッ ペタン
スッ ペタン
最後にドンが
スッ ペタン
「はい。終わりと。次は診療所に張り出す用の血判状か。」
西のギャングさんが言ったので思い出した。まだあるんだった…誰だこんな提案したの。……私か。
「うっ!…そっちはやんなくてもいい?」
必殺!うるうるの上目遣い
「あー、まあいいだろ。ギャング以外も見る訳だし出来るだけ個人情報は伏せとけ。髭じいも他の奴らもいいだろ?」
「おまっ…!髭じいって!さっきから水の娘も行ってたが、お前が言うとかなり笑えるな!」
「…っ!あークソッ!嬢ちゃんのが移ったろ!」
西にからかわれたドンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうだ。
「ふふっ…私に言われても!」
「ま、いーんじゃねえの。」
「俺も構わん。」
「儂もその方が良いと思うぞ。」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
ちゃんと止血しとかなきゃね。患者さん用のガーゼ当てて紐で軽く縛る。糊とかテープとかの類が無いからこれくらいしかできないのよね。
さっさと血判状のハンコも打ち終わったギャング達の手当もしてあげる。ここは診療所だからね。特に髭じいなんか出血してると見てるこっちが怖いし。
「…上手いのぅ。そんな小さな手で器用に巻きよる。聞くところによると、中々下っ端共には好評のようじゃぞ。」
「あー!俺んとこでも評判いいぞ」
「俺の所もだな…」
「おぅ!嬢ちゃんはスゲーだろ。俺の秘蔵っ子だ!…やらねぇぞ。」
「取りゃしねえよ!…もうすっかり保護者だな。」
「うっせぇ!んなこたねえよ!」
へー
そんな風に思ってくれてたんだ。…何か意外。
褒められてちょっぴり嬉しいな。
「ふひひ!そうなんですか?おとーさん。」
「…ばっか!おま、やめろ!くすぐったいだろ!」
ちょっと頬の赤いドンをからかってみると、ドンが照れておる
しめしめ。
「やめて欲しかったら今日もお菓子くーださい!」
「わーかったよ!……元々そのつもりで持って来てんだ。」
そう言って懐から取り出したクッキーを届かない位置でほれほれと振る意地悪ドン。急いで立ち上がって側でピョンピョン飛んで取ろうとする姿が壷に入ったのか。東のギャングさんが机をバンバン叩きながら笑ってらっしゃる。
「ぶっ…!ドンお前、餌付けしてんのかよ!…くくくくっ!」
「おめぇには言われたかねーよ!いっつもアジトに猫出入りさせて食わせるどころか風呂まで入れてやってるそうじゃねぇか!」
ネコって!あーでも想像できるわー
すんごい可愛がってそう。
「んなっ!それどこで聞きやがった!」
「有名な話じゃねぇか、なあ?ヘッド。」
「ふ、くくくくっ!…あ?ああ。スラムのもんは大体知ってるんじゃねぇか?」
西のギャングさん、ヘッドって名前だったんだ
…ていうか、まだ笑ってるし
ドンが髭じいって言ったときからずっとだよね?
「ちょっとお!そんな事よりお菓子!クッキー食べたい!食べたい食べたい食べたい!…えーーーん」
バレッバレの嘘泣きしてみた。
…チラッ
「あははははっ!今チラ見したよ!こいつ面白いな!セオが馬鹿ウケする理由分かるぜ!」
って、あんたもしてたやないかーい!
ていうか、東のギャングさんはセオって言うんだね。
「だろ?こいつは笑いを取るのが上手ぇんだ」
「まぁた自慢かよ!」
「ちげぇよ!…ほらよ。ちゃんと手ぇ洗ってから食えよ。
…って、心配いらねぇか。お前潔癖性だもんな。」
受け取ったクッキーの袋を紐を解いて片手に持って、もう片手に言うまでもなく除菌ギフトをかけていた。そうそう心配なんていらないのよ?むしろやらない事が出来ないからね。もきゅもきゅ。
「ケッペキショー?…あぁ、そうなのか。ギフトってのはそいつに必要な物か、もしくはまーったく、必要無い物を持って生まれるらしいぜ?」
「そうなの?それは興味深い話ね。世の中って面白いね。」
ふーん。どういうこったろう。ギフトって転生者以外も授かるらしいし。でも全員て訳でもないし。そこらへんのシステムってよく分かんないな。
もぐもぐ、パクパク…ごくん。
「ん…あれ?」
髭じいの様子が変?ちょっと苦しそう。胸のとこ抑えて眉間にしわ寄せてる。
し ん ぱ い す る な
シーッて、口に人差し指当てて口パクで。
……皆に心配かけたくないのかな。
「固まってどうした?」
「ん?何でもないよ〜。ちょっとクッキーの美味しさに感動してただけ。ありがと、ドン。」
ちょっと心配そうな顔でドンが覗き込む。心配するのはそこじゃないよ!…って言ってあげたいけど、本人が言うなって言うんだからなー
さっきから髭じいだけ静かだったのはこれか。
騒がしい皆の言葉に相槌打って、適当に返事して、でも心はそこには無い。…クッキーの味ももうしないから「後でゆっくり味わって食べるね。」って言ってしまいこんだ。
髭じい大丈夫かな…
ギルドじゃなくて、ギャングでした。この物語に冒険者ギルドは出て来ぬよ…
誤字修正しました。




