11 髭じいと話し合い
と、いうわけで会議室。
まーたもや、当然のようにお誕生日席に座らされて、もう諦めの境地だ。
「…それで、血判状だったか。お主らはどう思う。」
会議が始まって一番最初に発言したのは意外にも髭じいこと北のギャングさん。他のギャングさんも少し驚いている。
「じじい…!…俺は悪かねえと思う。それくらいしか解決策も無いしな。」
と神妙な面持ちで賛成したのは東のギャングさん。
「……こんな事しなくても住人どもを締め上げて強制的に連れてくりゃ良いんじゃねえか。」
おっと、西のギャングさんはあんまり乗り気じゃない様子。血判状はやっぱ重いよねえ〜
「それじゃ解決しねぇだろ。縮み上がって余計に来なくなるぞ。俺は提案した側だからな。もちろん嬢ちゃんの意見に賛成だが。」
うんうん。その通り!ドンの言う通りだけどこれ、またケンカにならない?
「あぁんっ!?……チッ!今日はジジイに釘刺されてっからな。勘弁してやらぁ。」
あ、ちゃんと髭じいが手回してくれてたのね。
ま、いいや。
…で、その髭じいの意見は?
「……お主らはそう考えておるのか。もちろんリスクも考えた上での判断じゃろうな?」
髭じいは皆にそう問いかけて、意見の集約を図ろうって考えかな。年長者で皆に慕われてる髭じいが意見を出させた方が角が立たないしね。
「もちろんだ。そりゃ、じじいや俺らの誰かが死んだりした時のリスクはあると思う。少なくとも今まで通りには行かなくなるからな。」
最初に答えたのは若いギャング達の中で一番穏便な東のギャングさん。
んー、あれかな。血判状はほぼ破られる事の無い重要な物で、でもこの中の誰かが死ねば、特に皆のまとめ役の髭じいが亡くなったら仲違いするんじゃないか。そういう心配をしてるのね多分。それで血判状の内容が破られでもしたら、血判状自体の価値が下がるし、そうなると他の重要な約束事までご破産になったりすると。
そんな事になったら、まーかなりまずいよね。スラムが大混乱になっちゃう。
「ああ。だが、それでもやる価値はあると思う。診療所はスラムにとって必要な物だし、抗争不可侵地帯を作るっての自体も重要な事じゃねぇかと思う。未来への備えだ。」
うん。抗争不可侵地帯は確かに必要かな。ドンの言った通り未来への備えとして。
スラムは法的には認められてない場所で。法的に許されない行為や人物の住処だ。そんな所を当然国が放って置くわけが無く、スラムを纏める四つのギャングがその財力や貴族へのコネ、圧力に、武力で押さえつけ撥ね付けている状況だ。だからこそスラムの住人はギャングに従い、畏怖の念を抱く。
だけどそのギャングは四つあって、普段はそれぞれ別にスラムの自分達のエリアを守ってる。そして有事には掴んだ情報を共有し合い、結集してスラム全体を守る。
でもそれがギャング間の仲が悪い状態だと、上手く図られない。安心してギャング会合を持つ事も出来なければ対応は遅れ、あるいは内輪揉めの間にスラムは潰されてしまう。
不可侵地帯があれば少なくとも話し合いはでき、ギャングの頭同士の意思疎通は出来るのだ。後はそれぞれの頭がギャングを引っ張って行けばいい。
「………お前らの言い分も分かる。まだ躊躇はするが…俺はジジイさえ良いなら賛成しよう。」
お、西が折れたよ!リスクがあっても、メリットも大きいって分かっちゃいても二の足踏んでたんだろうね。でも他の人の口から聞くと自分の頭の中だけでぐちゃぐちゃ考えてるよりは心にスッと入ってくるからね。
さて、肝心の髭じいはどうなんだろ。なーんか慎重な感じするんだよな。元々どっしり構えてるイメージあるからな〜。言い換えれば腰が重いとも言うし。
「…儂は心配だ。そなたらはまだ若く血の気が多い。ふとしたきっかけで深い溝が出来てしまうのでは無いかと気が気でならん。逆に言えばそなたらで前例を作ってしまえば後の世代も慣例として条約を守ってくれるじゃろうて。」
「じじい…」
「ジジイ…」
「じーさん…」
あー、やっぱその点では髭じいに信用されてないよ。いっつも諍いばっかしてるもん。こうやって側で見てると兄弟喧嘩の延長線上だと思うんだけど、それをギャングの頭がやると話がややこしいって言うか大事になるって言うかさー
案の定三人とも何にも言えないじゃん。
あ〜もうっ!




