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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
新章 夏休み明け(仮)
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6 生徒会長




 お父様の死について知った翌日、学園に行くと卒業パーティーの詳細が掲示されていた。そこには聞いた通り、推薦入学生は社交活動の勉強と交友関係を深めるために参加するようにと書いてあった。一般入学生はドレスコードを守り、各自の判断でパートナーと共に参加するように、と。


 うん。やっぱり基本は貴族だけみたいだね。この書き方だと。平民がパーティーのなんたるかも知らずに参加したら困るから丁寧に説明されてる。これ見て参加しようと思うのは、そしてドレス類を持っていて参加できるのは家が貴族と繋がりがあり、日頃からパーティーの類に出ている者だけだろう。私には関係無いな。今は貴族じゃなくてほんとに良かった。


 そういえば生徒会長も五年生だからもう卒業か。マクミラン子爵は色々言ってたけど、何もなく終わりそうだな。王立図書館の医学会専有書庫への侵入も、結局咎められたりしなかったし。


「ケヴィンは誰と参加するかもう決まった?確か婚約者はまだいないよね?」


「はい。僕はまだ婚約者がいないのでそろそろ誰かをお誘いしないといけません。ですが卒業パーティーのパートナーは婚約者候補とみなされるので、簡単に決めるわけにもいかなくて」


「そうだよね〜、大変そうだなー」


 この年で結婚を見据えたパートナーを決めなきゃいけないなんて、やっぱこの世界はシビアだよね。まあまだ自分で選べるだけましか。既に家同士が決めた婚約者がいる子もいるんだし。


「クオルフさんは……本当に貴族に戻るつもりは無いんですよね?でしたら参加しない方が良いでしょうね。母はまだ候補が決められないのであれば、クオルフさんをお誘いしてはどうかと言っていたのです。乳兄弟ならば候補ではなくても踊れますから」


「なるほどね。協力してあげたいところだけど、やっぱり平民として生きるつもりだし、今いとこの件で色々面倒でしょ?だからごめんねー。誰かを誘うならやりやすいように手伝うよ。代わりにっていうか、パーティーが終わったら感想聞かせて。来年入ってくる弟にどんな感じか教えてあげたいから」


「それはもちろん。良いお姉さんですね。友好的な関係が築けているようで良かったです」


「うん!入学して来たら仲良くしてあげてね。ちょっとツンデレな所があるけど根は真面目で良い子だから」


 ケヴィンがもちろんです。って頷いてくれて、その後しばらくシミオンやスペンサー、セシリアの事を色々と話して。まあいわゆる弟妹自慢を嫌な顔一つせず聞いてくれるケヴィンってばやっぱり紳士だよね。



 放課後に食堂でカトレアとお昼ご飯を食べていると、なんだか騒がしくなって来て、二人で顔を見合わせる。すぐに騒ぎの元凶が目の前にやって来て、顔を引きつらせる。このタイミングで向こうからやって来るの嫌な予感しかしないんですけど?


「生徒会長、どうかされましたか?」


「ここで一緒に頂いても良いかな?」


「殿下が?私達は大丈夫ですけど、何かあっても責任は取りませんよ?」


 生徒会長は王子だから、さすがにバイキング形式で毒の混入を防ぎにくい食堂では普段食事を取らない。必ず王宮に戻って食事を取るし、飲み物だって持参して来ていると聞いた事がある。それなのにその手に持っているトレーは食堂の料理だから驚いた。もし万が一生徒会長が毒とかで倒れたら、同席した私達だって疑われるんだもん。


「大丈夫だ。これは別に用意させた物だし、毒味は済ませてある。解毒魔法もかけてあるからそう心配しないでくれ。それよりも、卒業パーティーがある事は知っているね?良かったら僕のパートナーになってもらえないかな?」


「……え?でもパートナーってその……誰でも良いってわけじゃないですよね?私は今は平民だし、貴族に戻るつもりは無いので。すみません」


 参ったな。マクミラン子爵が言ってたのもあながち間違いじゃないかも。ていうかこんな衆目に晒されながら誘うのはやめてくれ。断りにくいし、生徒会長の誘いを断るなんて!みたいな視線を向けられてるだろ!あえてなのか?あえて断りにくいように?


「残念だな。でもそういう事なら仕方ないか。茶髪がよく似合う将来有望な見習い医師がいると知人に話しておくとしよう」


 そう、生徒会長が悪い笑みを浮かべて小声でささやくように語りかけてくる。やっぱり医師会専有書庫への侵入がバレてたんだ!それをネタに脅してくるなんて……一気に青褪めて、他の人に話を聞かれないように風魔法で周囲を覆うように防音をかける。


「まっ!待ってください。何が目的ですか?」


「誘いを受けてくれる気になったかな?兄上がそろそろ結婚して王太子位を授けられるという話を聞いてしまってね。君には悪いが交換条件といかないか?何も本当に婚約する必要は無い。ただ侯爵令嬢との婚約を匂わせさえすれば、兄上と同じ土俵に立てるんだ」


「事情は分かりましたけど、クォーターエルフでスラムの住人な侯爵令嬢よりも、しっかりした後ろ盾を持つ由緒ある家柄の伯爵令嬢とかの方が良いと思いますよ?」


「その通りだが、そうなると派閥などと検討する事が多くてね。兄上の結婚までに間に合いそうも無いんだよ。これまでは同じ王族の公爵令嬢と踊って誤魔化して来たからね」


 ちょっともう頭が痛い。事情はわかるし、そういう考えに至ったのも理解できるけど。巻き込まないでくれ!そもそも迂闊に犯行現場を見られて弱みを握られてる私が悪いんだけどさー!


「あの、ちょっと考えさせてください……」


「練習もあるからなるべく早く答えを聞かせてくれ……食堂の料理も美味しいね」


 頭を抱える私を放って本当に美味しそうに上品に食べる生徒会長。もう好きにしてくれ。私の食欲は全部あなたに持っていかれちゃったよ……


 急に話が聞こえなくなって隣で心配そうにするカトレアに、経過を省いて生徒会長にダンスを申し込まれた事だけを報告して、もったいないからなんとかご飯を口に詰め込んで飲み込んで。味のしない食事を終えて一目散に逃げるように診療所へ出勤した。







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