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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
新章 夏休み明け(仮)
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4 ケヴィン




 魔塔の先生とも仲良く?なった所で、ひとまずは現状維持で怪しまれるような行動を取らずに大人しくするって方針で動いている。いとこの間抜けは……おっと、マーヌッケは今のところ時々絡んでくるだけで、直接的に何かしてくる事は無かった。お祖父様に放っておくように言われたと取り巻きに当たり散らしていたらしいと、ケヴィンがこっそり教えてくれた。


「ねえケヴィン。今度またお家に遊びに行っても良いかな?ナニーに聞きたい事があってさ」


「はい、もちろん。ではせっかくですからカトレアさんとキース君も誘いましょうか。母も僕とクオルフさんの友人に会いたがっていましたので」


「あ、それ良いね!そうしよう!おーい!カトレア、キース!」


「ん?何だ?」


「どうしたの?二人そろって」


 カトレアもカトレアでキースくんと仲良いじゃん。私がいない時も二人で話してるの見かけるよ〜ひゅーひゅー。ま、医者の跡継ぎと商人の次男じゃ微妙だけどねー。良いんだよ。子ども時代の甘酸っぱい恋最高じゃん!私には得られないものだからね〜


「あのね、今度ケヴィンの家に一緒に遊びに行かない?広くて綺麗で楽しいよ〜」


「お前なー。クオルフが言う事じゃないだろ、それ。まあいいや。行かせてくれ、ケヴィン」


「ケヴィン、私も行っても良いの?」


「ええ、皆さん是非お越しください。クオルフさんの言うように、さほど広くはありませんが綺麗にはしていますから」


 そう言ってにっこりと微笑むケヴィンは余裕があって大人みたいだ。本当に同い年?十歳?やっぱ貴族ってすごいなー。それにケヴィンは長男だから、跡取りだっていうのもあるのかな?


 マーヌッケにはケヴィンの爪の垢でも煎じて飲んで欲しい。同じ跡取りなのにこうも違うとはね。跡取りって言えばうちの弟もそうか。ケヴィンとシミオンの垢、どっちが良いか選ばせてやろう。




 そうして皆の予定を合わせた結果、数日後の放課後に遊びに行く事になった。といってもほとんど領主夫人としてそれなりに忙しいナニーと診療所で働く私の予定に皆が合わせてくれたんだけど。


「おじゃましまーす!」


「おじゃまします……」


「お邪魔します!それにしてもやっぱすっげーな。普段はケヴィンが気にするなって言うから、貴族だって忘れかけてたぜ」


 私は二度目、カトレアとキースは初めてのケヴィンのお宅訪問だ。カトレアは緊張してるし、ケヴィンは呑気に見えて、いつか商人として関わるかもしれない貴族の屋敷をまじまじと観察している。


「本当に気にしないでください。クオルフさんに接するようにして頂ければ助かります。貴族だから平民だからと壁を作らず学生の内に視野を広げたいんです」


「ま、身分を越えて付き合えるのは学園にいる間だけだもんな。貴族に商人に医者じゃ、会う機会すら減るだろうな〜」


「そうだろうねー。だからまあ、今の内にいっぱい遊ぼうね」


「そうね。でもクオルフは例外よね?二人は乳母兄弟なんでしょ?」


 カトレア?確かにナニーは私の乳母だけど、でも例外って?私も貴族として生きるわけじゃないから、学園卒業したらどうしてもケヴィンとは疎遠になると思うよ?


「はい、クオルフさんは別かと。貴族で医者で商人もされてますよね?」


「売ってるのは水だっけ?家の商品と絶対被らないから安心しろ!」


「え、え!え?ちょっとなんでみんなそこで結託するの〜?私だけ仲間外れは嫌だよ。この場合は良いのかもだけど!」


 なに、みんな。私だけ卒業しても全員と友達付き合い続けられるって思ってる?うーん、まあ?カトレアは同じ医者目指してるし。キースは商人ならそんなに会うのも難しくないけど、やっばりケヴィンは無理じゃない?


「クオルフ……もしかして知らないの?乳母の子と、乳母に育てられた子って特別なのよ?」


「そうだぞ?場合によっては血を分けた兄弟よりも優先されるし、絆が深いのが乳母兄弟だ。貴族独特の習慣だけどな」


「えっ、聞いたことないよそんなの。ていうかケヴィンに会ったのも入学してからだよ?」


「クオルフさんが幼い頃に母は解雇されましたからね。本来なら五歳頃に引き合わされて、交友を深めて行く物です。貴族や学園に入るような上流階級の人間なら誰でも知っています」


 まじですかー!ほら、私って貴族だったの四歳までじゃん。そっからはスラムで生きてきたから知るわけないよね?貴族関係の知識とかほとんど学園に入ってから知ったし。だからみんなそんな残念な子を見る目で見ないで!ケヴィンもキースもカトレアも何気に上流階級の子なんだもん。


「……うー!じゃあ卒業してからみんなで遊ぶ時は私が呼べばいいって事?ケヴィンの乳母兄弟の私が連れてきた友人って事で。ダメかな?」


「はい!それで名目は立つかと。楽しみですね」


「そうね、良い考えだと思うわ」


「ああ!俺達もそれなら会えるな!」


 そんな話をしながら広い屋敷を歩いてると、すぐに応接室に着いた。中にはナニーがお茶やお菓子の用意をして待っていて、挨拶が終わるとすぐに椅子を勧めてくれた。私は久しぶりのナニーと、とりあえずハグをして甘えた。その間みんなに見られてて恥ずかしかったけど、もうこうなったら開き直りだ!乳母は特別だもんね!


「……まあ、それならお二人ともとても優秀な方なのね。学年二位と三位だなんて、素晴らしいわ。ケヴィンも一緒に学んだらきっともっと賢くなれるわね」


「はい、母上。三人とも自慢の友人です。三人はよく一緒にいるので学園で三傑なんて呼ばれ方をする事もあります」


「そんな事言われてたの!?今日はなんか知らない事がいっぱい出てくるな〜」


「私も知らなかったわ。でも変な感じね」


「俺も。何かと話題の女子二人といるから羨ましがられる事はあるけどな」


「そうなのね。お嬢様もカトレアさんもとても可愛らしいものね」


 ナニーは私の乳母じゃなくなってからもずーっとお嬢様呼びだ。再会してから何度か手紙のやり取りの時とかに、もうお嬢様じゃないんだからって言ったけど。今さらクオルフさんも変だし、いつまでもお嬢様のナニーですからって……だから気にしない事にした。


「まあクオルフは外見だけだけどな。よく色々おかしな事するし、考え方もちょっと変だしな。スラム言葉で貴族的な発言してたりするぞ」


「仕方がありません。貴族の生まれでスラムで育ったのがクオルフさんです。それも含めてクオルフさんですよ」


「そうよ!キースったらすぐにクオルフの事からかうんだから。クオルフは不思議なところが魅力なのよ!」


「お嬢様、ナニーもそう思いますよ。でも、お嬢様は私がお世話していた頃から普通のご令嬢とは少し違いましたけどね」


「ちょっとナニーまで!褒めてるか貶してるのかどっちなの!?もーっ!」


 私、ホントはみんなより年上なのによくからかわれるんだよな〜。もうあんまり転生前の記憶も残ってないし、外見に引っ張られて考え方も幼くなってるから仕方ないんだけどね。今だってふくれっ面だし。






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