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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
もっと知ろうよスラム街
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40 髭じい




 しばらくセオさんと猫と一緒に遊んでから、最後は髭じいのところだ。お迎えに来てくれたのは、4ギャングの集会の時よく髭じいを迎えに来るおじさん。容姿じゃなくて雰囲気が髭じいにどこか似ていて、落ち着いた感じだ。髭じいはロマンスグレーで目は深い茶色。おじさんは明るくて少し長い茶髪を後ろで纏めていて、目の色は黒っぽい。


 通された私室でしばらくぶりに会った髭じいは、なんだかまた年を取ったような気がした。なんというか、少しずつ長年の疲れや無理が出てきてしまっているようなそんな気がして。ギュッと抱きついてしばらく離れられなかった。


「髭じい、元気だった?なんかしばらく何かと忙しくて会えてなかったよね」


「そうじゃな。お前さんは何かと大変だったようじゃからな。もう大丈夫なのか?」


「うん。うーん、色々解決したけどまた新しい問題が出てきたって感じ。いとこに私の正体がバレちゃって。退学しろって……ドンから聞いてるよね?」


「ああ、あらましは聞かせてもらった」


 髭じいはゆっくり頷いて座るように促す。私はなんとなく髭じいの隣に座ってちょっとだけ体を預けてみる。髭じいは驚いたようだったけど、何も言わずに受け入れてくれた。


「……なんか髭じいは本当のおじいちゃんみたい。ドンが義理のお父さんになって、セオさんはお兄ちゃんになってくれるって。ヘッドも親戚のお兄ちゃんみたいな感じだし。私にとって故郷や家はスラムなのに、今さらになって私を捨てた実家に関わりを持たれようとしてるのが、なんかすごく嫌で……」


「ふぉっふぉ。それは嬉しい事を言ってくれるのう。しかしそれならば実家の事はなおのこと心配せんでも良い。何かあっても儂らで守ってやる。なに、いくら侯爵でもスラムには早々手出しできまい。学園にいる間と、行き来の時はよく注意するんじゃぞ」


「……うん。ありがと、髭じい。気をつけるね。」


 髭じいに優しく頭を撫でてもらって、こうしてると本当におじいちゃんみたい。血の繋がったお祖父様は孫娘の私の事、死んでも構わないって思って捨てたのに、この違いはなんだろうね。


「あ、あとね。ちょっと聞きたい事があるんだけど……髭じいってエルフが奴隷だった頃の事知ってる?」


「ああ。儂が生まれる前から、25年ほど前までエルフは奴隷じゃったからの。この国周辺の里に住んでいたエルフを大勢の人間が襲って、男は殺して女を連れ去っていたのじゃよ。エルフは魔法や弓矢が得意だが、少数で暮らしておるからな。お前さんのばあさんもそうじゃろうな」


「そうだったんだ……25年前にハーフエルフは置いていかれちゃったんでしょ?」


「そうじゃの。ハーフエルフは魔力が高くて、容姿も美しいから貴族は駒として置いておきたかったんじゃ。それにエルフも人間の血が入った子を忌避しておったしの」


「なんか、エルフもハーフエルフもすごく酷い目にあってるよね。この間お母様に聞くまでなんにも知らなかったよ」


「そりゃあお前さんはエルフを奴隷にしていた貴族に育てられていたんじゃから知らなくて当然じゃろう。民間でもあえて記憶が引き継がれないようにされておるからの。今の王はエルフと友好的に取引した方が利益が大きいと考えておるのじゃ」


 印象操作か……友好的にしたいのに奴隷だった過去が民衆の間でいつまでも忘れられないと、自分達よりエルフを下に見る意識とかが働くから。


「そっか……お父様が生きていたらお祖母様と会いたいって思ってたかな。いまだにお父様が亡くなったのが信じられなくて。受け入れてはいるんだけど、事故なんかで死ぬほど弱い人じゃなかったと思っちゃって」


「確かにおかしいの。ハーフエルフだったのなら魔法でどうとでもできたじゃろうに。事故の状況はどうだったんじゃ?」


「馬に轢かれたって聞いたけど、詳しい事までは……土壁でもなんでも出して防いだり、風魔法で避けたりとかできなかったのかな……馬に気付かなかったから間に合わなかったのかも」


「そうかもしれんな。気付けなければ魔法も意味は無いしの。貴族だから治癒魔法は使えなかったじゃろうし、医師の到着まで持たなかったんじゃろうな」


 もしも、とかたらればには意味が無いけど。お父様の事を思い出すと今でも少し辛い。




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