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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
もっと知ろうよスラム街
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32 将来の義理の娘




 顔合わせの食事会をなんとか無事に終わらせた後、ハンス兄を呼び止めて話を聞くために部屋に来てもらった。ちなみに執事さんが間違いが起らないように部屋の扉は開けて置くように、近くにいるから何かあったら呼ぶようにと言っていた。過保護すぎないか?既成事実作られたら困るのは分かるけど、一応兄妹なのに。


「それでハンス兄、どういう事なの?何がどうなってこうなったの?ていうか候補にハンス兄がいるのはどういう事?」


「俺も知らされたときは驚いたよ。それなりにしっかり働いてはいるけど、まだ見習いになってから日が浅いし、跡継ぎ候補にされるほどじゃない。だからドンはお前のために俺を候補にしたんだと思う」


 一人くらい候補に知り合いがいた方が私の気が楽だろう。とかいう配慮なんだろうなきっと。南のギャングの中で知り合いっていったらハンス兄くらいだから。ハンス兄もそれに巻き込まれてかわいそうだ。


「ドンは変な方向に気を使ったりするからなぁ……でも、さすがに兄妹で結婚はちょっとね。ハンス兄もそうでしょ?」


「俺もお前を女としては見れない。けど、結婚するだけなら構わないと思ってる。跡継ぎが必要ないなら別に兄妹も夫婦も、家族って事に変わりないだろう?」


「そういう物かな?でも、うん。家族として考えるならハンス兄は安心だよ。一緒に暮らしてたんだもん」


「そういう事だ。まあ、多分ドンの甥っ子が順当に継ぐことになるんじゃないかとは思うけどな」


「やっぱりそうなるよね。それか他の幹部の息子辺りに決まると思う」


 いくらドンが選んだからって、ギャングと何の縁故も無い見習いが次期当主になるのは周囲からの反発が大きいだろう。一応公正な審査で決めたって事にするために、見習い達も候補に入ってるだけで。


「だからまあ、気にするな。誰に決まってもドンが生きてる限りはお前の事大切にするだろうし。ドンが亡くなった後も先代の意志を継ぐっていうのを示す為に、悪い扱いはされない筈だ」


「そうだね。私は私で今は医者になる為にがんばるよ」


「ああ、そうしろ」


 ハンス兄は久しぶりに私の頭を撫でてくれて、自分の家へと帰って行った。


 お風呂に入って早めに寝た翌朝、ドンと一緒に朝食を取った時に一応抗議しておいた。


「まさかホントに養子を迎えるなんて思わなかったよ。しかもこんなに早く。それに順番逆じゃない?養子を決めてから嫁じゃなくて、私を嫁にする前提で養子選びなんて」


「良い考えだろ?で、気に入った奴はいたか?」


「うーん。まだ会ったばかりだし、みんな緊張したり遠慮したりしてたから本当の性格とかは分からなかったな」


「まあそうだろうな。まだまだ時間はあるからゆっくり考えろ。今度は一人ずつ会わせてやる。間違いが起こらないようにあいつに見張らせるから安心しろ」


「ドンも執事さんも心配し過ぎだって。私に手を出すのはリスク高すぎだし」


 四つのギャングの長に可愛がられ、仲裁役を努め、跡継ぎ候補の選考にも関わるんだよ?むしろ機嫌を損ねないように必死になるくらいだ。なんじゃそりゃ!結婚後に対等な夫婦関係を築けるか心配だな!


「若い男が若い女と二人きりになって理性を保てると思うな!特にお前は可愛いんだから。自覚してもっと気をつけろ!心配でならん!」


「そういうものかな〜?分かったよ、気を付ける。それで、今日のお礼は何をしたらいいの?」


「そうだな……まずはお前の得意な掃除でもしてもらうか。アジトの中と外に、周辺の道路。構成員の寮に、幹部や関係機関と……そうするとギャングの施設が丸分かりで狙われるかもしれないな。よし、ついでだ!南の縄張りの全ての建物と道路を綺麗にしておけ。四日もあれば十分だろ」


「できるけど住民が驚かない?堆肥とかも除菌しちゃうからちゃんと周知してからの方が良いと思うよ。クレームとかめんどくさいじゃん」


「それなら明日からにしよう。今日はアジトだけを掃除してくれ。余った時間は何か新しい料理でも考えておけ。台所と料理人は自由に使えば良い。足りない食材は見習いにでも買いに行かせろ。今日から嬢ちゃんは俺の娘だからな」


「"将来の義理の娘"ね。まあいいや。分かったよ」


 さーて、何作ろうかな。ドンが喜びそうなものって言ったら甘い物か?この辺ですぐに材料揃いそうなのあるかな〜



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