28 勉強会
最初の方スペンサーが謎にステイシーになってたので修正しました。
翌朝になって、シミオンが何をたくらんでるのかちょっとドキドキしながらご飯を食べて、シミオンの部屋に向かうと既にスペンサーも部屋にいて二人で待っていた。
「お待たせー。二人とも準備が良いね〜」
「当たり前だろ。今はお前がいるから自由にしてるけど、普段は家庭教師が来るんだから。待たせないようにするのは基本だろ!」
「楽しみでいつもより早く起きたんです!早く始めましょう!」
シミオンは、そんな事もできないのか!って事だろうね。それに比べてスペンサーは素直でかわいいなー。ツンデレちゃんはちょっといじめてやろうか。
「私も楽しみだったから早く来たかったんだけど、身分の高い者は先に待っていなければならない者の為に少し遅れて行くくらいで丁度良いと教わっておりまして。これでも一応侯爵令嬢なものでオホホ……」
「お偉い侯爵令嬢様なら知ってるだろ?爵位を継がない限り貴族の一員として扱われても本当の貴族ってわけじゃないんだぞ!」
「あれぇ、じゃあ私達今の所同じ立場だよね?シミオンは子爵"令息"だもんねー」
「……兄上と姉上は仲が良んですか?悪いんですか?」
二人でバチバチやりあってたら、スペンサーが不思議そうに首を傾げて聞いてくる。その可愛らしい仕草にシミオンと顔を見合わせてぷふっ……と揃って吹き出す。
「いや、仲が悪いわけでは無い。心配するな」
「まだ仲良しじゃないだけで、これから仲良くなるもんね」
シミオンに呆れられて肩をすくめられつつ、早速持ってきた教材を広げる。ここに来るまでの道中の暇つぶし兼マクミラン子爵と二人きりでの気まずさ防止で色々教科書を持ってきたのだ。
「これが学園で使う教科書だよー。貴族と平民クラスじゃちょっと違うらしいけど、一年生の内はそこまで大きくは変わらないみたいだから見てみて!」
「わあ!兄上も来年こんな難しい勉強をするんですか?」
「ああ。スペンサーはもう少し先だな。僕が教えてやるから大丈夫だ」
「わー!お兄ちゃんやっさしー!ちゃんとお姉ちゃんも教えてあげるからね〜」
「はい!兄上も姉上も教えてください!」
シミオンは私の態度にイライラしてても純真な弟の前では何も言えないんだよね。その隙に、スペンサーの前に国語の教科書の巻頭を開いて、シミオンの前に歴史の教科書の真ん中ら辺を開いて置く。
「二人ともどこまで習ってるの?スペンサーは簡単な読み書きと計算が出来れば十分だと思うけど」
「ぼくは読むのはもうできます。書くのはまだちょっと間違えたりきれいに書けなかったりで、計算は足し算とひき算ならできます」
「じゃおさらいから始めようか。基本は普段見てる家庭教師に任せるべきだろうし、最後にちょっとだけ新しい事を教えてあげよう。それで、シミオンはどうなの?」
「僕はそうだな……この辺りまでは習ったぞ」
シミオンがペラペラとめくって止めた所のページを覗き込む。真ん中より前辺りだな。結構予習出来てるじゃん。
「じゃあ問題。初代国王陛下の名前は?」
「ラペチーノだろ?」
「正解!スペンサー、ラペチーノの綴り分かる?」
「うーん、ラ、ペチー……ノ?」
「惜しい。ここはこうね。次シミオン。241年に初めて行われた王室の外交政策とは?」
「この国の王太子に隣国の王女を、隣国の王太子にこの国の王女を嫁がせた二花政策」
「この二組の夫婦から生まれた子は、この国で三人隣国で五人でした。足すと何人になる?」
「3+5だから、8!」
「その八人の内六人は他の国へ嫁いで行きました。残ったのは何人?」
「えーと、8-6だから……2!」
足し算はともかく引き算はまだ指を使わないと分からないか。でも文章題分かるのは良いね。シミオンは澱み無く答えてるから歴史得意なのかな?
「隣国が滅んだ理由は?」
「二花政策が上手く行ったから我が国と同じ事を繰り返して、両国共血が濃くなり過ぎて病弱な子しか生まれなくなったせいだろ?この国も危うく滅ぶ所だったとか」
「と、いうわけなので、血が近い者は結婚できないようになりました。ではこの中で結婚できるのは誰でしょう」
そんなに上手くない似顔絵を描いて番号を振る。①お母様とスペンサー。②スペンサーとセシリア③シミオンと私。
「えっとね〜お母様とは結婚できないって言ってたから一番は違うでしょう?ぼくとセシリアも兄妹だからだめだし。兄上と姉上もそうかな?」
「残念。他は合ってるけど、私とシミオンは血が繋がってないから結婚できちゃうんだなー。ね、シミオン?」
「できるとするは別だからな!」
「うん!でも兄上と姉上が結婚できるって不思議だよね?僕にとっては二人とも兄姉なのに」
「不思議だねー」
スペンサーと二人でふわふわした空気が流れてる。そんな中、散々私にからかわれたシミオンの逆襲が静かに始まった。バサッと広げられた地図を見て固まる。
「僕達の勉強はそろそろ良いだろ?次はクオルフの番だ」
「ふひっ……私は良いんじゃなかな?年上だし、いつも学園で勉強してるし!」
「逃げないんじゃなかったのか?」
「そんな事言ったっけ〜?」
「言ったぞ!」
「ふひっ、ふひひひ」
地理が大の苦手なクオルフちゃん。シミオンにいじめられて笑うしかない。なんで私の苦手科目知ってるんだ?貴族の情報網侮れないな!
誤字報告ありがとうございます!助かります!