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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
もっと知ろうよスラム街
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17 調査報告



 一日除菌・除去ギフトを意識して使い続けた結果分かったこと。まず、前からある程度菌や汚れがどの辺りにどれくらいあるかは分かってたのよね。んで、さらに意識してイメージしながら使ってみたら、なんとなく臓器の位置とか形まで分かってきたの。だからもうちょい頑張って練習すればこれは確かにギフトで中絶できるかもしれない。


 とりあえずその為のイメージを強めようと寮の部屋で早めにベッドに入ってずっと自分の体で練習をしていた。おかげでなんとなく自信もついたからこの分なら大丈夫だろう。


 あとはドンの調査報告を聞くだけ。診療所での仕事を終えてから、ダッシュでドンのアジトに向かう。今回はちゃんとアポを取ってあるから、中に通されていつもの部屋でお茶とお菓子を楽しみながらドンを待つ。


 間もなくしてやって来たドンは手にごちゃごちゃと色々な物を持っていて、それをドサッと机の上に広げてから対面のソファに座った。


「良い知らせだ。二つ方法が見つかったぞ。まず器具で掻き出すやり方と、次に薬で堕ろすやり方だ……って、あんま驚いてないな?」


「うん。実はちょいと悪い事やってその方法はもう知ってるの。でもありがと。こんなに色々資料集めてくれて。これはもしかしてその薬?」


 ドンが集めてくれた情報の紙の山に紛れていた二つの薬の入った瓶を取って聞く。もしそうだとしたらユリアに与えられる選択肢の幅が広がる。期待の眼差しを向けるとドンはニヤリと笑って大きく頷いてくれた。


「ああ。この二つを合わせて一緒に飲むと良いらしい。詳しい事は全部この紙に書いてあるから読んでおけ。これでなんとかなりそうか?」


「うん!ありがとうドン!本当に助かったよ。私に出来る事ならなんでもするからね」


「調査日数は三日だったからな。六日間はたっぷり働いて貰うぞ。そうだな。まず夏休み辺りに纏めてだな。確か一週間か二週間はあったろ」


「夏休み?初耳なんだけど、そんなのあるんだ」


 じゃあその間にお母様に会いにいけないかな?あーでもさすがに一日や二日で行って帰って来れる距離じゃないしな〜。お給料が厳しい!ただでさえ必要経費お給料から天引きだし、お礼にドンのお手伝いしてる間はタダ働きだし。


「なんだ、まだ説明されてないのか。その頃には貴族達の社交シーズンが終わって、大抵の貴族達は一度領地に帰るからな。学園もそれにあわせて長期休暇を設けてるんだ。その時期なら寮も外泊が簡単に許されるから、なんならこっちに里帰りしてこいよ」


「里帰りかぁ。子どもの家はそろそろ定員と体重オーバーだと思うのよね。いくらクォーターエルフだからって、成長期だし。最近凄く食べてるし」


 まだ太ってるまではいかないし、栄養がほとんど身長の方に行ってるからダイエットとかはするつもりないけどね。それでもスラムにいた頃よりはふっくらしたよ。ボロい床ぶち抜く可能性があるからやめたほうが良いね。


「ならここに泊まればいい。部屋は余ってるし、ついでに働けば一石二鳥だろ。期間限定の住み込みだ」


「なんじゃそりゃ。泊まらせてくれるのはありがたいけど、良いの?ギャングの構成員でも無いのに」


「構わん。ほぼ構成員のようなもんだ。他のギャングと掛け持ちだがな。そうだ、良い事を思いついたぞ!ついでに他のギャングのとこにも泊って来い!」


「なんで?さすがにダメでしょ。いくら仲裁役でも他のギャングの縄張りどころか本拠地に行くのはさ。スパイでもしろっての?」


 さすがに抗争に使われるのはヤダよ。いくらなんでもスパイなんかやってるのバレたら他のギャングの頭達も容赦しないし。悲惨な末路を遂げるだろうね。


「馬鹿、誰がこんなガキにそんな事させるんだよ。ただあいつらが俺ばかりクオルフのような面白い奴を手元に置いてズルいとうるさいからな。しばらく貸したら静かになるだろ」


「あのね〜、猫の子じゃないんだからそんな簡単に貸し借りしないで下さいよ。しょうがないなぁ。まあ髭じいはおじいちゃんで、セオさんは上のお兄ちゃんヘッドさんは下のお兄ちゃんって考えたらなんか家族みたいで良いなぁって思うけど」


「ぶぁっふぁっふぁ!そりゃあ面白い。ところで俺はどうなんだ?」


「んー?ドンはなんていうか、お兄ちゃんって感じじゃ無いし、お父さんもちょっと違うし。親戚のおじさん?なんかこーう……肝っ玉母ちゃん、みたいな?ちょっと違うか?」


「ちょっとどころか、俺は男だぞ?母ちゃんじゃなくて父ちゃんだろ、せめて」


 そうは言ってもね。一番それがしっくり来たんだもん。心配の仕方とか、ガサツな感じはするけどやっぱり頼れるお母さんみたいな。男バージョンだけど。


「まあまあ、なんていうかとにかく一番近い存在だよ。真っ先に頼りにするし、それなりにかわいがってもらってる自覚もあるし」


「なんだよ、照れるだろ。そういうとこなんだよな、俺らが嬢ちゃんに目を掛けるのはよ」


「え?ホントの事言っただけなんだけど?なんか変わった事言った?」


 さすがに私が皆に大事にされてる事くらい分かるよ。ギャングの長が甘い顔見せて、色々相談乗ってくれて気遣ってくれてなんて、早々無いよ?心強い味方だし、だからこそ敵に回さずに済むように立ち回ろうって思ってる。ドンや髭じいやセオさんやヘッドの事は大好きだし、この関係性を壊したくないもん。


「……俺もそろそろガキでも作るか。退屈しなさそうだ。嬢ちゃんみたいな娘が欲しいな」


「誰か相手でもいるの?赤ちゃん生まれたら大変なんだからちゃんと父親として面倒見るんだよ。子どもに恨まれるから」


「嬢ちゃんは父親を嫌ってはいなかったよな?年頃の娘はそういうものらしいが」


「昔はお父様の事、大嫌いだったし憎んでたんだよ。ろくに会おうとしなかったし、すぐ怒るし殴るし。でもお父様がちゃんと謝ってくれて、色々事情があった事も分かったから許したの。今ではお父様を愛してるけど、多分普通の子だったら許してないよ。ドンも気をつけてね」


 ドンの場合、本当は可愛がりたいけど接し方が分からなくて放置とかありそうだもんね。女の子を殴ったりは多分しないと思うけど。男の子だったら多分自分がされて来たように扱うんだろうな。ギャングは血の気が多いし。鉄拳制裁くらいはされてそう。


「娘に嫌われるのを想像したら堪えるな……忙しくて放ったらかしになりそうだし、やっぱりガキはまた今度にしよう」


「その方が良いかもね〜。あ、でもさ、ドンっていくつだっけ?もうとっくに子どもがいてもおかしくない年齢だよね?跡継ぎとか良いの?」


「跡継ぎな。どうするかなあ。俺も世襲やめようかとも思うんだが、それはそれで色々弊害があるしな。じぃさんほどの手腕が無きゃあ早々変えられねえな……ガキは手が掛かるからな、ある程度育ってから生まれてくれると助かるんだが」


「なにそれー、ちょっと怖くない?多分お母さんのお腹破裂するよ。それなら養子とか迎えればいいじゃん」


 スラムは孤児や捨て子なら大量に溢れてるし。なんなら別に大人を養子にしても良いんだし。ギャングの幹部とかさ。


「その手があったか。生まれた子がギャングに向いてるとも限らんし、最初から見込みの有りそうなのを連れてきた方が早いな」


「そう思うよ〜。じゃあ私、完全に門限破ってるから帰るね。今日はありがとう」


「ああ、気をつけて帰れよ。おやすみ」


「おやすみなさい、ドン」


 それにしても門限破ってばっかりだし、これ反省文で済むんだろうか。



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