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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
もっと知ろうよスラム街
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10 お出掛け



 というわけで翌日の放課後。私とカトレアはちょっとオシャレをして二人で街まで出掛けた。スラムでも無く、貧民街でも無く、一般の庶民が暮らす庶民街に来たのはだいぶ前のサイズが合わなくなった服を売りに来たあの時以来だ。しかもあの時はゆっくり見て回る余裕なんて無かったしなぁ。


「……ね、これ可愛くない?」



 活気のある街の様子にすっかり目を奪われて物思いに耽っていたら、カトレアの楽しそうな声にハッと意識を引き戻される。


「ホントだ~!可愛い。」


 それは、ピンクゴールドの輪っかに小さなハートの天然石がいくつかバランス良くついているブレスレットだった。この年代の女の子が付けたらちょっぴり大人っぽくなったような気分になれるんじゃないだろうか。今までこういう装飾品は手の届かない贅沢だと思ってたけど、子どもの家を出て自分一人の収入になったわけだし、ちょっとくらいなら良いよね?


「……良かったらお揃いで買わない?」


「わぁ!それ素敵ね!そうしましょう!」


 こういうの初めてだから躊躇いつつも口にすると、カトレアは即座に嬉しそうに顔を綻ばせて力強く頷いてくれた。私も嬉しくてニコニコ笑いながらそれぞれお会計を済ませて、さっそくお互い腕に付けたブレスレットを眺めてさらに笑い合った。


「えへへ。なんか良いなぁこういうの。」


「また一緒にお出掛けする時は付けていきましょうね!」


 本当に嬉しい事を言ってくれる。大きく頷いて他の出店も覗きつつ、三時のおやつの時間になった頃。私達は歩き回りながら目を付けていたお店に入った。カフェ寄りの喫茶店といった風情のその店は若い女の子達やカップルで賑わっていて、私達はメニュー表を覗いてどれにしようかと少し悩んで。


「実は私もこういう所に来るのは初めてなの。実家は田舎の方だし、お父さんがそういうのは厳しいから。色々あって迷っちゃうね。」


「ほんとに!ケーキも良いけど、パンケーキとかプリンとかゼリーも良いな~。うーん……」


「ご注文はお決まりでしょうか?」


 悩んでいる内に店員さんが来たので慌てて勢いで指差したのはメニューの下の方にあった全部乗せという物だった。思わず目を見開いてすぐに訂正しようと思ったけど、何となく言い出せないまま無情にもカトレアの注文も聞いて店員さんは去って行ってしまった。おぅふ……


 内心ドギマギして注文した『全部乗せ』なる物を待っていると、カトレアの頼んだ紅茶とりんごケーキ、私のオレンジジュースから遅れてかなり大きな皿でその商品がやって来た。


「クオルフの、すごいわね……!?」


「う、うん……」


 ちょっとこれは凄い。もうまんま名前通りなんだけど、この店のデザートが『全部乗せ』でやって来てしまった。数種類のケーキとパンケーキとプリン、ゼリー、マカロン果物の盛り合わせ……と、食べ切れるのかコレ胸焼け起こしそうっていう量の甘い物が大量に……


 食べ始めると美味しいしいくらでも行けそうとは思うもののさすがに量が多いのでカトレアにもおすそ分けしつつ、甘い物は別腹思考で滅多に食べられない甘い物を堪能して、完食しました。お会計もちょっと想定してたより凄い事になったのはもう仕方ないから諦めよう。


 でも、楽しかったなぁ。ハプニングも含めてのお出掛けだもんね!



 ……そういえばすっかり忘れてたけど、今日はお仕事は休んだよ。給料入らないからこれも痛いけど、エインさんが楽しんで来いって快く送り出してくれた。



こうやって、穏やかなだけの日常が続けば良かったんだけどなぁ……


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