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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
もっと知ろうよスラム街
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7 兄をたずねて三千里

久しぶりなのにちょっと短めです。



翌々日、午後。


「じゃあ行こうか。兄をたずねて三千里!」


 この世界の人には絶対通じない冗談を言って首を傾げられつつ、迎えに来た二人の用心棒と共にカトレアを連れてスラムへと歩き出す。


 スラムに入ると少しだけカトレアは顔を顰めたけど、文句も言わずにちゃんとついて来てくれた。私が初めてここに来た時はもっと拒絶反応が強かった気がするな。


 スラムでも名の知れた腕利きの用心棒と、四つのギャングの威光のおかげで何事も無く無事に診療所に辿り着いた。


「…お兄ちゃん!会いたかったわ!」


 診療所に入って待っていたエインさんを見るなり、カトレアは飛び付いてぎゅうっと抱き着いた。エインさんもそれを受け止めてカトレアの頭を撫でている。


「カトレア、長い間便りも寄越さず悪かったな。元気そうで良かった。」


「お兄ちゃんも元気そうで良かったわ。ねえ、結婚したって本当?」


「ああ。紹介していいか?」


「もちろん!クオルフのお姉さんみたいな人でもあるって聞いたわ。ご挨拶しなきゃ。」


「ハンナ、来てくれ。」


「はい。」


 エインさんに呼ばれて、今まで兄弟の感動の再会を邪魔しないようにと奥で待っていたハンナ姉が、緊張した面持ちで出て来てエインさんの横に並んでカトレアに頭を下げた。


「私はハンナといいます。エインさんとは二年ほど前に結婚しました。今までご挨拶もせず申し訳ありませんでした。」


「頭を上げてください。私は末の妹のカトレアです。クオルフとも仲良くさせて貰っています。お兄ちゃんの事、よろしくお願いします。」


「こちらこそ、どうかよろしくお願いします。」


 いやー、ヒヤヒヤしたね。ハンナ姉とカトレアの、嫁小姑の争いとか見たくないよホントに。十代前半同士のケンカと考えると可愛らしく思えるかもだけど、この年代の女子の仲は割とこじれやすいから。


「お兄ちゃんとハンナさんはクオルフを通して知り合ったの?」


「ああ。そうなるな。クオルフがこの診療所の前で同年代の子を集めて学校を開いてるんだが、ハンナとはそこに顔を出した時に初めて会ったんだ。」


「エインさんがスラムへ来て間もない頃でしたね。待望のお医者様だったんですよ。」


 カトレアの質問に、夫婦二人で仲良く答えておる。良きかな良きかな〜(千と○尋の神隠し風)


「エインさんが来てくれて本当に助かったよ。それまでは素人の私が患者さんを診てたからね、救えない人もたくさんいたし、私に出来る事なんか少なかったんだよ。それがエインさんが来てからガラッと変わって、私も治癒魔法とか教わったんだ。」


「そうだったの?お兄ちゃん、良かったね。お医者さんが続けられて、たくさんの人を助ける事が出来て。」


「ああ。医学界から追放されて、どうなる事かと半ば絶望していたんだがな。だから俺はこれからもここで生きていくつもりだ。ハンナと二人で。」


 なんか感動的な話になってるんだけど。カトレアちょっと涙目になってるじゃん。


「お兄ちゃん……家の事、お父さんとお母さんの事は私に任せて。お兄ちゃんの事だから私に悪いとか思ってるんじゃない?気にしなくても良いのに。」


「……カトレア。すまんな……よろしく頼む。母さんには俺の事こっそり伝えておいてくれ。父さんに知られないようにな。」


「ええ。分かったわ。伝えておく。母さんも心配しているから、きっと安心するわ。」


「ああ。心配かけてすまない。」


 エインさんとカトレアの一連のやり取りを見て、良いなーと思った。……弟妹達に、会ってみようかな。よし!カトレアを寮まで送り届けた後、手紙を出しに行って来よう!




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