リサ、ゲームで決着をつける
「こんにちは、国王バルザー様」と、リサは虹色の転移魔法陣と一緒に姿を現す。
国王バルザーは、その一同を見る。
ドラ、カルン、アザラン、シャーレ、夜叉姫、桜王、紅露、イブ、コルシカ
最後にリサとレーベを見た。
同じ茶髪の女の子たちだ。
「よ、よく来て・・・いや、来られて、このバルザー・・・」
「わざとらしいわ。約束忘れてないでしょうね。一発殴らせろ」と、リサはつかつかと歩いて行く。
「わ、わかっておるとも。目をつぶっておるゆえ。優しくな」
「はん。そんなわけ無いでしょ。こっちは父様と母様を殺されているのよ。思いっきり殴る」と、リサは右コブシを握りしめて、右に腰をひねり、文字通り思いっきり、バルザーの左頬を殴った。
国王バルザーは派手に?いやいや、リサの魔力を込めた1撃はバルザーを吹っ飛ばした。
「ちょっとスッキリしたわ。回復させてあげるから立ちなさい、バルザー。コインゲームをしましょう。その前にわたしに渡すお金は用意できたの?」
と、リサはバルザーを回復させるために右手を軽く動かす。虹色の魔法陣が発動し、バルザーは左頬をさすりながらも痛みが引いて行くのを感じているようだ。
「も、もちろんじゃとも。9千9百9十万ジュールじゃ。(日本円にして九百九十九億円。)文句なかろうが」と、国王バルザーは怒鳴りちらす。
「そうそう。その調子でいいわ。こっちもその方が話しやすいから。聳え立つベルタ城なら表。初代国王の顔なら裏、それでいいわね。そして投げるのはわたしとレーベとあなたとバルコーの4人。表と裏・・・どちらが多いかを当てましょう。わたしは表。聳え立つベルタ城に賭けるわ」
「はっはっは。ならわしは裏じゃ。こちらにはバルコーがおる。良いのか?バルコーもわしもコイン投げは得意なのじゃ。もう2枚は裏になると決まったようなモノじゃ。」
「へえ、そうなの。じゃあ、もしも表が2枚。裏が2枚になるなら。わたしの負けでいいわ。そうねぇ。ハンデとして・・・わたしは4枚とも表の時だけ勝ちでもいいわ」
「な、なな。その言葉嘘では無かろうな」と、国王バルザーは睨んで来る。
「ええ、もちろん。聖女は嘘をつかないものよ」と、リサは笑う。
(リサ様、いくら何でもそれは。いえ、それなら私がお手伝いしましょうか)と、アイリスは思考を飛ばして来る。
(アイリス、いいわ。何もしなくて。そう、何もしなくてもいいわ)
「いいじゃろう。その条件で勝負しようではないか」
「コインを用意してくれるかしら?」と、リサは聞く。
「はい、今すぐ用意いたいします」と、バルコーはそそくさと部屋を出て行った。
「あの、お母様・・・これ、負け戦なんじゃ」と、レーベは聞いて来る。
「それはやってみてからのお楽しみよ」と、リサはほほ笑む。
誰の目にも負け戦に見えている。大金は諦めるのかと、仲間たちも諦めている感じだ。
近衛兵バルコーは赤い布の上にジュールコインを4枚載せてやって来た。
リサは1枚、取る。レーベも同じく。
続いて、バルザーとバルコーが手に取った。
「わしらからやってもよいかのぉ」と、国王バルザーは言う。
「いいわよ」と、リサは言う。
「それではわしから」と、バルザーはさっそく投げた。
広い王宮の間に高く、高く上がって行く。よく見ると回転していない。バルザーの選んだ絵柄が、「初代国王の顔」なら、そのまま上昇し、ゆっくりと落ちて行く。下は赤い絨毯だ。高い確率で「裏」になる。
コインは赤い絨毯の上で1回だけ跳ねて、バルザーの選んだ絵柄のまま止まった。
「次は私が行きます」と、バルコーは投げる。バルコーはどちらを選んだのか、投げられた今となっては分からないが、バルザーの時と同じように回転を与えず、上昇し、ゆっくりと落ちて行き、跳ねる事も無く、赤い絨毯の上で止まった。
「レーベ・・・回転を加えて投げなさい」と、リサは笑う。
「はい、母様」と、レーベはしぶしぶ頷く。
レーベは回転を加えた。
レーベの投げた1ジュールコインは回転しながら上昇していく。赤い絨毯の上では大きく跳ねて、ゆっくりと落ちて止まった。
リサは軽く投げた。2回、3回と回転してからすぐに落ちて止まった。
「国王バルザー、確認するといい。それとも怖いか?」
「・・・そうじゃな・・・大変不本意ながらじゃが、わしは聳え立つベルタ城を選んでしまった。」と、国王バルザーは悔しそうに下を向く。
「私も同じく、聳え立つベルタ城を選んでしまいました」と、バルコーはリサに敬礼する。
「そう。じゃあ、レーベ確認して」と、リサは言う。
「はい、母様」と、レーベは1枚、2枚と確認し、「母様、2枚は表です。あと2枚確認します」
レーベは右に2歩、左に3歩進む。
「・・・私が投げたのも表です。母様が投げたコインは・・・」と、レーベはつばを飲み込む。
「表、よね」と、リサは確認する。
「は、はい。表です」と、レーベは驚きの声をあげる。
「これはどういう事じゃ」と、国王バルザーはリサを見る。
「何かの間違いで反対のモノを選ぶ事だってあるでしょ」と、リサは微笑む。
「そ、それはそうかもしれんが」
「その何かの間違いを”今”起こさせただけよ」と、リサは言う。
「はっはっは。黒き龍を倒したのじゃ。何ができても驚きはないわい。そうか、そうか。もちろん、イカサマじゃなどとケチはつけん。くれてやるわい。元々お前さんの不思議な力で集めたお金じゃからな」と、国王バルザーは言う。
「ええ、それじゃあ遠慮なく。お金はわたしの家へちゃんと届けておいてね。それじゃあ、わたしたちは残りの黒き龍たちを封じてくるわ」と、リサは虹色の転移魔方陣を発動させて消えていく。
「・・・わしの完敗じゃな、バルコー。何かの間違いで選んだわけでは無い。聖女様の親を殺した罪悪感がそうさせたのか。それとも聖女様の役に立ちたいという気持ちがそうさせたのか。わしにもわからん」
「国王様、両方でしょう。このバルコーもそうでありますゆえ」
世界崩壊の意思は消えていった。
レーベは5つの紋章を体に宿し、異界に破壊神とゲームをするために旅立って行った。
カルン、アザラン、シャーレの3人はギルドへ戻っていく。
コルシカはアイリスと一緒に魔導兵士として活躍している。
桜王、紅露、イブはリサの家でリサのために動いてくれている。
崖の上、「リサやん、あそこに小さな村が見えるだよ」と、ドラは言う。
「そうね」
「リサ様、今日はあの村で宿を取りましょう」と、夜叉姫は笑う。
「ええ、任せるわ」と、リサは崖を飛び降りた。
急降下するわけでは無く、ふわふわとゆっくりと落ちていく。ドラと夜叉姫も飛び降りて、ゆっくりと落ちて行く。
リサの旅はまだ続いているようだ。
完
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