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リサ、魔王と戦い、暗殺も受ける。

 リサの右手にベルゼブブの赤く長い舌が絡みつく。リサの青い瞳はそれを睨むだけで、赤く長い舌を燃え上がらせる。ベルゼブブの右手の黒い髑髏どくろの杖が赤く光る。

リサを炎が包む。リサは炎を纏いながら、左コブシでベルゼブブの蠅の目を殴った。もちろん、身体能力を魔力で付与して、かつ、赤い糸の塊を上乗せして。

ベルゼブブが、リサから見て右側へ吹っ飛ぶ。炎はリサの衣服も茶色の髪の毛も焼く事無く、消えて行く。

「何だ?貴様は何だ?」と、ベルゼブブは左手の赤黒い渦をリサの顔に向かって伸ばす。

リサが吸い寄せられる。ベルゼブブの左手は周囲の空気、魔素を吸収している。

「白き光よ」と、リサはつぶやく。ベルゼブブの左手の吸収が止まる。

「バカな・・・貴様はわれよりも上位だと言うのか」と、ベルゼブブは後ろへ下がる。

後退する。

「だから言ったでしょ。戦えばわかるって」と、リサは白き光でベルゼブブの動きを封じる。

白き光が、1本のロープのようになってベルゼブブを縛り上げる。

リサは自分の右手を飛ばす。右腕の肘から先を左手の手刀しゅとうで切り離して、飛ばす。

右手は白く輝いている。右手は迷う事無く、ベルゼブブの心臓を取り出す。

直径1.2イリ(60センチ)はある心臓を白い光で防壁を作って囲む。

「さあ、わたしに従いなさい」と、リサは宣言する。

「ありえん。われの心臓を封じるなど・・・ありえん」

「従え」と、リサは言う。

「あらためて名を伺おう。支配者クエストマスターよ」

「わたしはリサ・ヴァリュー。リサでいいわ」と、リサは言う。

「リサ様、よろしくお願いします」と、ベルゼブブは消えた。赤い霧となりて、リサの銀のイブニングドレスを黒く染めた。

「ふぅー少し眠るわ」と、リサは目をつぶる。


この瞬間を狙っている者がいた。弓で狙いを定め、矢は放たれた。


「リサ様」と、イブがリサを右横から押し倒す。イブもまた同じ瞬間を見逃さなかった。

イブの右肩に血しぶきが上がる。

リサは眠りについた。「シャーレさん、夜叉姫様、桜王様、紅露様、お守りください」と、イブは叫ぶ。

リサを囲むように4人が壁となる。


弓使い、アドレーは額に巻いた青いバンダナを触る。儀式のようなモノだろう。菊の間の天井より少し下に浮遊している。先ほどいた場所からは斜め左だ。こっちへ移動した事はまだ気づかれていない。

3本の矢を同時に打ち放した。そのままでは自分の居場所を知らせるだけだ。

4人の中のいちばん弱そうな三角帽子を被った女性の前へ魔力付与によって誘導する。

三角帽子を被った女性、シャーレは結界を作動させて3本の矢を防いだ。

物理結界?よりによって魔導兵士か。アドレーは気にせず、第2の矢を放つ。また3本の矢だ。

今度は4人が守っていない真上へ誘導した。夜叉姫の両腕は蜘蛛となって探索している。誰かを。

「うん?蜘蛛?」と、アドレーはつぶやく。

『見つけた』

「な・・・」アドレーは寒気を感じて浮遊状態から飛翔状態へ移る。

気づかれた?誰に?蜘蛛だろ

そうアドレーは自分に言い聞かせて、右コブシに魔力を集中する。天井を壊して脱出。

蜘蛛はすでにアドレーの首筋から入り、心臓へ到達していた。

『魔力解放』他者の魔力と自身の魔力による魔力災害を体内で引き起こす。

それも心臓の中で。

アドレーの心臓は破裂した。

アドレーの誘導した3本の矢はシャーレの”リサを中心に張られた”物理結界魔法陣で防がれた。


夜叉姫は両腕の無い状態で3人の前に現れる。

「暗殺者は倒したわよ。それと腰を抜かしている王らしき男と護衛を見つけたけどどうする」

「リサ様と同じ宿へ運びましょう」と、イブは言う。

イブは背中にリサをおぶった。「右肩は大丈夫?」と、シャーレは聞く。

「ええ、大丈夫ですわ」と、イブは笑って答える。

イブたちはリサと王、シュリと近衛兵1人を連れて宿へ戻った。


国王シュリは起きた。旅亭花神りょていかしんの2階だ。何度か利用した事があるから分かる。

相変わらずいい竹の匂いがする。そして所々に紫色の花が花瓶に生けてある。

「シュリ様起きられましたか。どうやら我々は捕らえられたようです。」と、近衛兵は言う。

「何を言う。いつもの旅亭花神であろう。」

「それがこの部屋から1歩も外へ出られません」

「・・・」

突然、扉が開いた。

茶髪を三つ編みにしていて、1部が黒く染められた銀のイブニングドレスを着ている女の子と金髪で弓を持つ少女が入って来た。

「な、」と、シュリは2人を交互に見る。

青い瞳の6歳ぐらいの女の子と14、5の赤く光る目をした少女が目の前にいる。

赤く光る目、魔導兵士・・・。

「わたしはリサ。要件を言うわ。10ハイゼンベルク(10年)後のセラ・スペイドの32日にペンタゴラールに兵を出して欲しい。いや、出すだけでいい。もしも出さないのならベルゼブブにこの国を終わらせるわ」と、茶髪で三つ編みにしている、リサは言う。

「・・・わかった。兵を出そうとは言えんな」と、倭の国の国王シュリは答える。

「奴隷たちは魔導兵士にしてあげたわ。あなたを暗殺してもいいのよ」と、リサは言う。

「脅しで兵を動かす気にはなれん」と、シュリは断る。

「夜叉姫」と、リサはつぶやく。

「うん?夜叉姫を知っているのか・・・あやつがわしに頼むなら軍を動かそう」

蜘蛛がシュリの周囲を囲む。右手が無く、左手でシュリの顎を上げる。

「へえ・・・私が頼むなら?」と、夜叉姫は聞く。

「うっ。お前は覚えていないだろうが・・・わしはあの村の・・・廃墟となった村の生き残りであり、子孫なのだ」と、シュリは言う。

「だったら今、殺して・・・おかしいな。昔のように殺意が湧かない」と、夜叉姫、死姫は戸惑う。

「ぎょ、ぎょ」と、左目から黒い蛇も出てくる。

「憎きかたきのはずなのに」と、夜叉姫、死姫はつぶやく。

「夜叉姫、死姫殿・・・村が滅んだ夜、そなたは村の者全員を殺したわけでは無かった。「殺してください」と、お願いしてきたわしの先祖を殺さず、見逃した。どうかあなたの口から聞きたい。今、目の前にいるリサなる者は信用たる者なのか」と、シュリは言う。

「ふん・・・最初からそれを言いな。道理で殺意が湧かないわけだよ・・・。リサ様は私のあるじ様だ。信用できる主様だよ。それでいいかい」と、夜叉姫、死姫は言った。

「わかりました・・・夜叉姫、死姫殿の顔を立て、10年後セラ・スペイドの32日に兵を出しましょう。あなたが用意した魔導兵士たちも含めて」と、シュリはリサを見て言った。

「わかったわ・・・夜叉姫、下がって」と、リサは言う。

目をつぶると(アイリスです。リサ様、ペンタゴラールに暗殺者が集まっています。何か計画も立てているようです。どうされますか?)(罠にハマって全滅させる事はできるかしら)(我々もお手伝いしましょうか)(いいわ、アイリス。手札は揃っているの。ところで相手に禁術を使用できる暗殺者はいるの?)

(暗殺者の情報は何も分かっていませんが、戦場で戦ってきた我々の情報を整理するならそんな人間は暗殺者にはならないかと)(よく分かったわ、アイリス。ありがと)

リサは目を開けた。

「イブ、帰る準備をしなさい」と、イブに命じる。

「はい、リサ様」と、イブも部屋を出て行った。

「国王シュリ、近衛兵ご苦労であった」と、リサも背を見せて部屋を出た。


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