リサ、進軍する
王の寝室に近衛兵バルコーが扉を開けて入って来る。
「来たか、バルコー」と、国王バルザーはパジャマ姿のまま言う。
「はい。リサは今、倭の国へ行っているようです」
「それは分かっておる。水晶を見ておるからな」
「暗殺者はガストールを含めて4人集まりました。あとは時間と場所です」
「ふむ。奴らが遠征から帰って来たところがよいのではないかのぉ。バルコー・・・近衛兵としてその辺はどう思う?」と、国王バルザーはバルコーを見る。
「はっ。私としても大事の後は一息入れたいものです。そこを狙われると痛いでしょうな」
「ふむ・・・家を襲撃するのか・・・それとも?」
「ボディーガードとなる鬼は水晶を見る限り、3人はいるようです。リサの過去の水晶を見ていると、リサには鬼と2人だけで森へ散歩する癖があります。散歩して開けた場所で昼寝をしている・・・そこを襲えばよいかと。あと1人の弓使いを倭の国へ送りました。」と、バルコーは報告した。
「ふむ。良い案じゃ。弓使いが暗殺に成功したなら1億ジュールを渡すとよい。」と、国王バルザーは命じた。
「はっ。それでは失礼します」と、近衛兵バルコーは王の寝室を後にした。
倭の国の王城、1階にある菊の間(縦60イリ(30m)横600イリ(300m)高さ4イリ(2m))の部屋に奴隷たち1000人が集められていた。赤い甲冑を着た兵士たちが、四方から槍を持って号令を待っている。
「始めよ!」と、北側にいた隊長らしき男兵士の声で一斉に襲いかかる。
槍は目には見えない壁に当たってはじかれた。体当たりした者は身体ごとはじかれる。
「何だ?」そう兵士の誰かがつぶやいた。
目には見えない魔力障壁。頭に角が2本ある鬼、桜王が創り出したモノだ。
南を守っていた赤い甲冑を着た兵士たちが倒れる。
「みんな、逃げるだ」と、大楯を持ったドラが叫び、誘導する。
奴隷たちが逃げる中、逆方向にゆっくりと歩いて前進する人影がある。
茶髪で三つ編みにしている6歳ぐらいの女の子が見えてくる。
銀色のイブニングドレスを着ている。瞳は青かと思いきや、影に隠れた一瞬、赤く光る。
リサ、ヴァリューだ。その後ろに白髪で額から金色の角を生やした夜叉姫、死姫と、金髪で赤い瞳をしたイブ・トルンがいる。黒髪で赤く光る目をしたコルシカは少し離れて歩いている。三角帽子を被ったシャーレはコルシカにくっつくように歩いている。
アザラン、カルンはドラと一緒に奴隷たちを誘導している。
赤い甲冑を着た兵士たちがリサに向かって・・・まだ動いていなかった。
1度ぶつかった魔力障壁、突如現れて、南の仲間たちの倒れる様を目撃してしまい、彼らは混乱している。
抵抗しない奴隷たちを狩るだけの簡単なお仕事では無かったのか。
そう、兵士の誰かはつぶやく。
ガラスの割れるような音。【魔力障壁が目に見えて】壊れて行く。
「これはチャンスだ。全軍、突撃せよ」と、指揮官らしき男が言う。
イブは弓を構え、すでに弓矢を引いた。
同時に3つの矢が放たれる。スピードは無いが、魔力による誘導によって、目から脳を突き破る。
3人を倒す。
夜叉姫、死姫は「オオグモ様」と、つぶやいて、両腕の細胞の1つひとつを変化させて、大量の蜘蛛となりて赤い甲冑を着た兵士たちの心臓を破裂させていく。
「ひぃいい、蜘蛛に気を、ぐわぁ」と、また1人死んで行く。
リサに槍が届く者は、赤き光によって絶命する。
リサはただ歩くだけでいい。
「殲滅」と、リサはつぶやく。赤き光は意志を持って、赤い甲冑を着た兵士たちの脳と心臓を貫いた。
「回復、小石」と、リサはつぶやく。
殺したばかりの兵士たちを小石の魂を与える事で順々なゾンビとして復活させる。
リサは魔王の書を開いて、確認する。
<強制召喚の生贄は確保できた。さあ、召喚するわよ>
倭の国の王、シュリの元に「敵兵が乗り込んで来ました」と、報告がある。
「!敵兵だと?バカな・・・どこの兵だと言うのだ」と、黒い髪を後ろでくくった王、シュリは答える。
「それが・・・わずか5人の魔導兵士らしき人物たちにいいようにやられています」
「くっ。とにかく菊の間へ急ぐぞ。ついてまいれ」と、王、シュリは走り出した。
菊の間の中央に、赤いローブを着た者が浮遊している。
赤いガラス細工で作られた蠅の目、灰色の皮膚、赤く長い舌。
赤い4枚のガラス細工の翼。
右手には黒い髑髏の杖。左手は赤黒い渦が渦巻いている。
ベルゼブブだ。
暴食、大食のベルゼブブ。
「ひぃ、ひぃいいい」と、王、シュリは腰を抜かしてしまう。ついてきた近衛兵も腰を抜かして茫然としている。
「役者はそろったわ・・・じゃあ、戦いましょ。ベルゼブブ」と、リサは歩いて近づく。
「貴様は何だ?傲岸不遜?それともわれを知らない?」と、ベルゼブブは首をかしげる。
「戦えばわかるわ」と、リサは地面を蹴った。




