リサ、ゾンビを作る
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辺境の村、パルナーラに生まれたリサ・ヴァリューは16歳の誕生日に殺される事が決まっている。
それも国王がやって来て、軍隊を連れて来て・・・リサは処刑場で磔にされて槍で処刑される。
彼女は何か悪い事をしたわけではない。
そう、法律を犯したわけでもない。
彼女の存在が悪だと・・・国は、国王は言うのだ。
「彼女が生きていては化物が溢れて国は終わりを告げる」
国王は別に占い師の言い分を信じているわけではない。
リサ・ヴァリューが生まれたその日に農家であるヴァリューの家にやって来て、「お前の家の娘は将来、災いを起こす。よって16歳の誕生日に処刑する」と、わざわざやって来たのだ。
だからそれは占い師に言われてきたのではないのか。そう推測したいかもしれない。
リサ・ヴァリューはペンタゴラール国の言い伝えによって処刑される。
言い伝えには
100年に1度だけ開く事の無い遺跡が赤く光る日がある。遺跡は辺境の村、パルナーラにある。その日、辺境の村、パルナーラに生まれた子はどんな理由があっても16歳の誕生日に処刑しなければならない。さもなくば国は滅び、世界も滅びるだろう。
と、締めくくられている。
開く事の無い遺跡。
それは神殿を思わせる場所だった。白い大理石で作られていて、入口には不死鳥の絵が彫刻されている。その石の扉はこれまで1度も開いた事が無い。何よりもおかしいのは、大理石は風化する事も無く、新しい状態でずっと存在している事だ。まるでそこだけ時間が止まってしまったかのように。
不思議な場所として辺境の村、パルナーラでは観光名所にさえなっていた。新婚の家族、恋人たち、旅人たちの畏怖の念を集める不思議な場所として。
だが、パルナーラの遺跡は赤く光ったのだ。赤く光り出した時間はリサ・ヴァリューが産声をあげた時間と重なった。その日、パルナーラの村ではリサ・ヴァリューだけが生まれた。
観光名所だけに多くの人が目撃してしまった。その知らせは国王にも届けられる。国王は代々聞かされてきた謎の伝言がまさか自分の代に起きるとは思っていなかった。それでも国王、バルザーはすっと立ち上がり、近衛兵を2人呼び、「辺境の村、パルナーラに参る」と、短く命令したのだ。
そして子どもの生まれたヴァリュー家に入って、謎の伝言を話した。
16歳で娘を処刑すると聞かされた父親は国王を殴り倒し、近衛兵と戦い死んだ。
母親は子どもを抱えて逃げようとして近衛兵に捕まり、殺された。
国王バルザーは邪な事を思う。16歳まで待たずに今、ここで殺してしまえばよいではないか!
「赤子を殺せ」と、近衛兵に命じる。
「御意」と、近衛兵はバスタードソードで赤子を突き刺した。突き刺さるはずだった。
バスタードソードは砕け散り、近衛兵は泡を吹いて絶命した。
赤い光が少女を守っている。
国王バルザーは伝言には続きがあった事を思いだした。
16歳の誕生日、それがいちばん力の弱まる日である。その日を逃せば永遠に、その機会は失われる。そして開けてはならない扉が開かれる。
「すまぬ・・・ギュール。」と、死んだ近衛兵の目を閉じてから国王バルザーは自身も冥福の祈りを捧げる
「いかがします、国王様」と、もう1人の近衛兵が聞いてくる。
「わしのミスじゃ。伝言には続きがあっての、16歳の誕生日・・・それがいちばん赤子の力が弱まる日なのじゃ・・・ギュールを弔い、帰るぞ、バルコー」と、国王バルザーは言う。
「わかりました。」近衛兵、バルコーはギュールの冥福の祈りを捧げ、自分たちが殺した赤子の父親と母親に対しても冥福を祈った。それからギュールを背負い、家を出た。
国王もまた冥福を祈り、家を出てから、家の外で待っていた村長に伝言を伝えて村を去った。
村長カタルバはヴァリュー家の死体の処理と赤子、リサ・ヴァリューを育てるよう命じられた。
「・・・はい」と、下を向いて何かを我慢しながらカタルバは国王バルザーが自分から遠ざかるのを待った。国王の姿が村の門まで遠ざかったところで、駆け足でヴァリュー家に入った。
「ミシェラ、ミシェラ、ミシェラー」と、リサの母親を揺さぶる。カタルバは泣いている。涙が髭を濡らした。それからゆっくりとミシェラを床に置き直して、
「ロイス、目を開けろ・・・ほら、リサを抱きながら話してくれたじゃないか」と、今度はリサの父親を揺さぶる。返事は帰ってこない。
「お、おおおお。おわぁあああああああああああああ」と、カタルバは喚いた。
村長の名はカタルバ・ヴァリュー。リサのお爺さんだ。
「国王バルザーめ、育ててやるともさ。貴様に命令されずともな。かわいいたった1人の孫なのだ。16歳・・・何とかこの子を守ってはやれないだろうか。何か、何かあるはずだ。言い伝えで殺されてたまるものか。」と、カタルバは母親のそばにいたリサを抱きあげる。すやすやと眠っている、何も知らずに。
「おお、おおお、リサ。お前だけでも生きていてよかった・・・リサ、リサ」と、カタルバは泣きながらリサを抱きしめた。「やー」と、リサが声を出す。
「お、おお。そうだな・・・いつまでも泣いていても始まらん。お前の父さんと母さんを弔ってやらねば・・・」カタルバはリサを抱っこして立ち上がり、玄関を出て南へ進む。帰り道の途中、村人の1人に訳を話してロイスとミシェラの死体を棺屋まで運ぶように指示をした。
家に帰ると「どうしたのじゃ、リサなど連れて。」と、白い頭巾を被った妻、メフェールに問われる。
「ロイスが死んでしまった。ミシェラも」と、カタルバは言う。
「冗談じゃろ?」と、メフェールはカタルバに詰め寄る。
「冗談でこんな事が言えるか」と、カタルバは怒る。
「・・・わたしゃ信じないよ」と、メフェールは崩れ落ちるように座った。
「リサをうちの家で育てる・・・いいな、メフェール」と、カタルバは言う。
「当たり前じゃ!・・・それであの子たちの家はどうする?」
「しばらくは残しておいてくれと頼んでいる。2人の死体は今、村の者たちに運んでもらっている。棺に入れてもらい、土へ埋めてやろう」と、カタルバは言う。
「そうじゃな、そうじゃな」と、メフェールは目を閉じた。口を押さえて泣いている。
「リサ」と、カタルバは自分の腕の中ですやすやと寝ているリサを見つめた。
「あーあー」と、リサは言う。
カタルバは「おぐぅ、うぐぅ」と、嗚咽交じりに泣き出した。
赤い光がリサの指から伸びて行く。その光は父親と母親の元まで伸びて行く。
2人の傷は消えて息を吹き返した。だが、目が虚ろで意志を感じられない。
村人の1人が村長の家へ血相を変えてやって来る。泣き続けている2人の元へ。