ヤクザ吸血姫、旅の準備をする
ダラダラベタ甘な展開は続きましたが、そろそろシリアスのバトル部分にいきます。
前回概要:吸血姫さん、友達を見つける
なんやかんやって、彼女はヤクザの姫さんですので、友達いませんでした(お察しください)
「シルフィ。いるな」
読書している私の部屋に、ジークさんはノックもせずすいすい入って来ます。
「マナーがなっていません。やり直しを要求します」
「あ、おう、すまん。」
そう言って律儀にドアの外に出て、もう一回ノックしてくれるジークさんも中々弄り甲斐がありますね
紳士の願いを無下にするのは淑女の沽券に関わりますので、意地悪せずどうぞと向かい入れる。
「何が用ですか?私はまたお腹がそんなに空いていませんが」
「あ、そうなのか。いつもペコペコなのにな」
「噛んで欲しいのですか?マゾですね」
「って、違え!明日の予定を伝えに、っておい!」
ちょっと可愛くて、つい虐めたくなってしまい、そのままジークさんに抱きついて首筋にカブっと
ああ、落ち着きのない、濃厚な味です。私個人として、淡泊な味が好みなのですが、こういうのも中々悪くありません。
いろんな味を楽しむのが美食家とはいえ、他人を襲って血を吸うのは何故か躊躇われます。
「はあ、はぁ、はぁ、ハァ…」
「んっ……や……あぁん……」
「ふぅ、ぐぅ……」
腰の手を回して、ジークは徐々にその手を下に移動する。
この前はお尻でしたが、最近は太ももがジークのマイブームらしく、吸血が長引くほど手付きが乱暴になってきます
まぁ、直に大変な箇所を触られるのは兎も角、それくらいの乱暴さはむしろ心地いいので、逆に私も首筋への攻めを強めます。
傍からみれば情事にも見えなくありませんが、吸血とはそういうものなのです。
「ふぅ~ん…」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
一先ず満足したので、犬歯を抜き、一息を付く。
ジークさんはいつも通り、酷く消耗してしまっています。そんなに吸った訳でもありませんのに
ペロペロと首筋に付いたいくつかの傷跡を唾液で直し、彼に問いかける
「レロ……ん、そんなに辛いのですか?ジークさん」
「ぐぅ!い、いや!別にそういうわけじゃないんだが……」
「ちゅっ、はい、それで終わりました。お疲れ様です、ジークさん」
「お、おう……」
終了宣言して、ぐたりとベッドの上に倒れるジークさん。やはり疲れていますね。
契約とはいえ、ジークさんは言わば私の保護者みたいの立場、
私も結構ジークさんが好きなので、無理をさせたくありません。
「やはり、他の方と交代したら如何?毎回ともぶっ倒れるくらいに消耗して、召使い達を心配させてしまいますよ?」
「あ?ま、それはそうかもしれんがな……」
ジークさんは珍しく口篭る
別に契約といっても、破ったらなんらかのペナルティがあるわけでもないし
そもそも、両方の同意の上なら裏切りとは言わないですから
「まぁ、確かにお前の言うことも良くわかるがな……」
ジークさんが暫く考え込んだ後、少し考えさせてくれと伝えて部屋から出て行った。
真面目ですね。嫌いではありませんが
あれ?そう言えば、ジークさんって、わざわざ私に吸われに来たのかしら?
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ジークフリードがシルフィの部屋から出た後も、シルフィのお弁当係のことについて思考を巡らせている。
一人で考えてても行き詰まるだけと学習しているので、まずは外で待っているバリンに声を掛けた
「なんでしょう、ジーク様」
バリンはジークの幼馴染で、5歳の時すでにジーク専属の執事として働いている。
そのため、ジークの愛称であるジークと呼んでいるし、ジークは彼のことを気兼ねなく話せる親友として重宝している
「いや、シルフィのお弁当係について悩んでだな……」
「そうですか。まぁ、厳しいでしょうね、抑えるのを」
ジークのこと何でも知っていると公言しているバリンのことであり、ジークの抱えている悩みについても想像は付いている。
血を吸われた感触こそ実感していないから分からないが、事が終わった後ジークの形状をみればジークの悩みなど一目瞭然だからだ。
バリンは未だ女性と付き合ったことも無ければ、将来結婚できるとも思っていない。
主であり、親友であるジークフリードの事一筋で、それで精一杯だからだ。
でも、バリンはやはり男で、少なからず女性への趣味はあり、そのため主の心境も理解はできる。
要するに、ジークフリードは、いつも発情しきっているのに、手を出せない生殺しな状態がつらいってことだ。対象は自分が惚れた相手なら尚更である
「いっその事、襲いかかったら如何でしょう。抵抗はしてこないのでしょう?」
「んなことできるか!付き合ってもいないのにそんなことしたら嫌われんだろうが!」
もはや付き合っているよりも距離感がないのではと、ツッコミを入れたいバリンであったが、寸前で自分を止めた。
実際、シルフィはクールで無表情であるが、その同時に一つの事には長く集中できない弱点もある。
瞬間集中力は高く、1時間で普通の人間の4時間の効果を出せるチートぶりも、ちゃんと弱点があるのだ。
その事も理解している彼女は、集中が時間切れしまった後、ふわふわとジークの職務室に来ることも多い。
たまにはメイドのメイの所に行って邪魔をしたりもするが、三回に一回はジークの邪魔をする。
邪魔と言っても、メイと同じ言葉で怒らせニヤニヤと眺めるのではなく、
ジークの場合は、シルフィが単純に職務しているジークの背中にくっついて寝るだけ。
色々と至福な感触を楽しみながらなので、職務のスピードはどうしても落ちるが、主が嬉しそうなのでバリンも止めはしない。
「浮遊魔法を維持させ、首からぶら下げながら寝れるシルフィ様の器用さに感服するばかりです」
「基本的に俺よりも遥かにチートだからな……」
この世界では英語はあんまり使われない。カタカナ的な言葉はほぼ全てが異世界から来た人間が広げたものである
魔物、ステータスなどの固有名詞はともかく、未だ日常に使うカタコトが普及されていない。
でも、チートという言葉だけは、多くの転移者もしくは転生者に使われたので、既に“ずるい”よりも“バカみたいに強い”という意味で定着している。
「ってんなこたぁいいだよ。係のことだ」
「はい。でも、ジーク様は別に他の男を遣わせるおつもりもないのでしょう。議論するだけ時間の無駄であると存じますが」
「そりゃあな、でも、俺は思っただ。男じゃだめなら、女の血を吸わせりゃいいってな」
ただ単純な嫉妬ではなく、他の男の血を吸わせるのは却下である。
自分の思い人が他の男の膝の上で乱れるのが辛いのは確かにあるが、自分とてもう童貞ではないので、キスや本番に行かなかったらそれでも黙認できることも万が一の可能性でも無しにあらずとくらいに嫉妬している
でも、それはあくまで可能性であり、そもそも対象の男が理性を失いシルフィに襲いかからないとは限らない
ジークほどのチートキャラでもチャームには耐えられない(そもそも耐えようと思ってないことに気づいてないが)のに、他の男だと確実に落とされる。
吸血鬼が吸血の時行為にまで行くパターンは確かにあるし、むしろ確率は高い。
シルフィが他の(本当はジークを含めて)男を受け入れるとは思えない。お姫さまらしく育てられた彼女は貞操観念がそれなりに強い。
その上、シルフィはヤクザ出身なので、解決方法は大きく分けて二つしかない。
威圧を掛けて従属させるか、暴力を持って壊せるかどっちかだ。
もし男が吸血の途中シルフィに襲いかかったら、簡単に二番目の方法によって処理される未来がはっきりと見える。
バリンなら信用できるが、チャームされた状態だとなんとも言えない。よって男はダメだ。
「女性とすれば、メイか、メーリー殿くらいでしょうか」
女性に絞っていても、誰でもいいわけではない。
そもそもシルフィが吸血姫の真祖であることは秘密だ。国家機密だ。
なし崩しにジークとシルフィに巻き込まれたメーリー以外に、信用できない他人を巻き込むことはできない。
だから人選はすぐに二人に絞られた。が
「メイにはそれ以上負担をかける訳にはいかん。選ぶとしたらメーリー一択だな」
メイには日常的に迷惑をかけている。
今はジークフリードの奴隷だし、メイドだから、別に罪悪感があるわけでもないが。
書類仕事という本来メイドがやらない事を任せて、その上ジークの世話という専属メイドの仕事もある。
世話とはなんだと?察してやれ。吸血の後、その行き場のない欲望は一人で寂しく解き放つのは皇子としてありえないことだ。
別にジークは鈍感系主人公というわけでもないので、メイが自分に恋慕の感情を抱いているのを知っている。
だからって答えてやれるわけでもないが、その感情少しでも答えてやれるのは悪いことではない。卑怯であることは承知の上だ
メーリーなら別に問題はないだろう、女性だし、今のところは怪しい行動も見られない。むしろシルフィを恐れていながら、好意を抱いている節がある
「正直、気が進まないが」
「独占欲は醜いのですよ。ジーク様」
そう。ジークとしては、血を吸われるのは自分だけでいいという独占欲がある。
その独占欲に支配され、ジークは今まで我慢してきた。でもシルフィの吸血は強烈であり、彼女への恋慕もあり、どうしても我慢できそうにない
嬉しいことに尻と太ももを撫でるのを許容してくれているが、段々エスカレートしていきそうな自分をいつまで抑えられるか不安だった
嫌われるのは無論のこと、今や彼女との関係に亀裂が走ったら、帝国に危険を及ぼす可能性もある
シルフィが凶暴な吸血姫ではないことくらい理解していても、危険性の高さも十分すぎるくらい理解できている。
「そうだな。まぁ、メーリーに話を持ち掛けてみろ。一度くらい試させてから考えよう。」
元より選択肢があってないようなものだから、シークが躊躇いつつも決断を下す。
その時、目の前から一人マントを着けている男性が歩いて来た。
精悍な顔と狡猾な雰囲気を醸しだす男の首筋に、奴隷の証である首輪が付いている。
彼こそが、今のシルフィの下についた元野盗の長、ギルムである。
「うす、旦那、バリンさん。」
「ああ、なんだその本の山は。」
「そりゃ、お姫さまのお荷物っすよ。帝都に行くんすよな、前を持ってお姫さまの欲しい本を聞いてきたから、帝都に持ってこうってだけっす」
「そうか。」
ずるが付くが、非常に賢い彼はシルフィのことを姫と呼び、ジークのことを旦那と呼んでいる。
最初の頃こそバリンと特にメイから口の利き方を散々言われたが、奴隷かつ元野盗なのでジークはそれほど気にしていない。
ましてやシルフィという抑止力があるお陰で、ギルムの才能は遺憾無く発揮されており、最近はメイすら口調以外の所に口を出す所がなくなった。
犯罪さえしなければ、ギルムというのは実に心強い男である。
「そんじゃ、俺はお姫さまのお荷物を整理する仕事がありますんで」
「うん?ちょっと待て。」
「なんすか?」
「さっきどこへ行くって言った?」
「お姫さま……」
「そうじゃない、俺達はどこへ行くって言った?」
「帝都じゃないっすか?ついさっき帝都からの伝令が来たのを見たし、バリンさんとメイちゃんは荷物を整理してんじゃないっすか」
別にギルムに伝えたわけでもない。それなのに些細なことで先を読む奴にジークは驚く
本来なら、シルフィの後にギルムとメーリーにも伝える手はずになっているが
「しまった!シルフィに流されて、帝都へ行くことを伝えるのを忘れた!」
ジークは遂にシルフィの部屋に行った本当の理由を思い出し、慌てて来た道を折り返したのであった
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「なるほど。帝都ですか。遂にジークさんは帝都に戻るのですね」
「……ああ」
ちょっと気まずそうに顔をそっぽに向けながら、ジークさんは今後の予定を伝える
明後日には出発するので、用意をしてて欲しいとのことだ。
道理でさっき何か言いたそうでした。私に襲われて言いそびれたのですね
後悔も反省もしませんが、今度はもう少し待ってあげようと思った私
「それと、さっきの話なのだが」
「はい?」
「確かに、少し俺一人だけでは負担も大きいようだ。一回だけでいいから、メーリーの血を吸ってみないか?」
ああ、私の血袋係ですね。
やはりジークさんには負担を掛けてしまったようです。
吸血はそれほど人間に負担を掛けるものとは思ってもいませんでした、ジークさんほどのチート野郎でも無理とは、いよいよ吸血鬼にとって人間は使い捨てのエサとしか思えませんね。
ジークさんの鑑定は実に強力なスキルで、廉治とバリン、メイと護衛の騎士団副団長などのステータスを見せていただきました。
その中、ジークさんのステータスが群を抜いて高く、廉治は抵抗力、魔力と精神力が高い魔法系の魔獣と判明。
そのジークさんでも耐えられないと、他の方で勤まるのかって、心配してしまう。
「まぁ、取り敢えず一回だけでもメーリーの血を吸ってみろ。メーリーがダメそうなら止めてやればいい」
「そうですね。あんまり考え込んでも生産性がありません。まず試してみます」
あの濃厚烏骨鶏のスープのような、強烈で暴力的な風味を持つ血を頂けないのは少々残念ですが
ジークさんがあれだけ辛いのに、無理させることはできません。
……少し、少しだけ、ツマミ喰いしてても、怒られませんよね?
「ん?どうした」
ジークさんは、お優しいので、契約のこともあって、少しだけなら
きっと、怒らないですよね
「顔が赤いぞ。まさか吸血姫の真祖でも風邪は引くのか?」
ちゃらけてジークさんは笑う。
その笑顔が眩しくて、遂に我慢しきれず抱きついて首筋に頭を埋め込んでしまう。
少しだけびっくりしたジークさんも、抵抗せずに背中をさすってくれる
「はぁ、はぁ、……」
いつもジークさんが吐いている吐息のように、私が声を荒げる
犬歯を突き立てば、美味しいご馳走が頂ける
でも、
「はむっ」
どうしても噛む気にはなれず、誤魔化すように小さく甘噛みする
「?シルフィ?」
「すみません。頭が、うまく働きませんので、暫くそのままで居させてください」
優しく背中をさする大きな手を感じながら、ふっと思う
私って、いつもジークさんに迷惑ばかり掛ける
戦闘と軍略しか才能のない私
敵を壊滅させることができても、好き、愛している相手を喜ばすことができない。
お父様も、お母様も、弟も
二人目のお父様と慕っている若林も、兄のように甘やかしてくれる廉治も
家族として愛した彼らも、今好きになったメイとメーリーさんにも
その二人以上に大好きな優しいジークさんにも
私は何もお返しできてない。
迷惑掛けてばかりで、暇だからって仕事の邪魔も沢山した
「ぐすっ……」
「……」
廉治は小動物になって不便でしょうし、お父様を始め、若林達とももしくは二度と会えないのかもしれない。
メーリーさんは私に巻き込まれて、メイはいつも迷惑そうに私の相手してくれている
ジークさんに拾われて、ようやく真っ当な生活ができて舞い上がっていた。
いっぱい我儘いって、
いっぱい困らせて、
もし、捨てられたら
私は、まだあの時のように、血まみれの修羅に戻るしかなくなる
そう思うと、ポロポロと涙が流れ、声ならない声を出す
それでも、ジークさんは大丈夫と呟いて、私を宥めてくれる
「離れ、ません……」
「そういう契約だ、離れなくていい。メーリーが嫌なら、俺を使っていいから」
「ぐす……」
前の世界も、今も
お父様達とジークさんより遥かに強かった私
お父様達やジークさんより、遥かに弱い私
あの人達に依存してしまったことに気づいた私が、疲れて意識を失うまで泣いていたのであった
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お嬢様が急にジークフリードくんに抱きついて、何故か泣いてしまった。
いや、何故かはおおよそ想像できている。
「さみしかった、のですね……」
昔お嬢様を庇って亡くなった友人を思い出す。
彼が命を奪た人間を一目みたい為に、私が染岡組に入ったのだが、仇を討つ気が全く起きなかった
お嬢様はお強い。喧嘩や殺し合い、もしくは合戦と囲碁、それらの分野ならほぼ無敵だ
でもお嬢様はどんなに強くても、また一人の16に届いたばかりのか弱き少女でしかない。
組長様達から愛情ではなく、期待しか向けられたことのなく
同年代の子供達からは、恐怖の軽蔑の眼差ししか知らなかった。
当然である、雷光市の若き女帝。多くの悪質な暴力団と裏組織を潰してきた軍神の化身。
そして、雷光市の牛耳る、悪の中の悪。絶対悪染岡組を16という年齢で掌握してしまう天才犯罪者。
普通の人間は知らない。自分は善の化身と思われる警察だけではなく、絶対悪である染岡組のお世話になっていることが
彼らは知ろうともしない。誰もかも悪とは関わりたくないのだ。
強すぎた故の孤独。
理解されないための絶望。
それでもハッピーエンドの為に、進んで悪に染まる正義
無邪気で悪戯好きだったお嬢さまは、今や氷の仮面に包まれてしまった。
笑うことなく、泣くこともなく
ただひたすら壊して、吸収する。自分以外の悪を、自分が管理するために
異世界に来て、お嬢様は親しかった人間から離れたことの反動で、私に依存してしまった
寂しかったのだ。お嬢様は常にお一人だから。
吸血衝動などという訳わからないパッシブスキルに翻弄されて、お嬢様は暴力に逃げようとする
でも、あやつが出てきた。
金色の髪と空のような青い眼を持つ青年。
その青年は、我が死した親友と同じ、正義感溢れて強い眼をしている。
でも、平凡に絶望しきった彼と違って、明らかに希望満ちた目だった。
流石に本人ではないと思った私だが、彼は貧血で暴走しそうなお嬢様を助けた
その後ろ姿を見て、昔お嬢様をお助けする時、立ち往生した彼の後ろ姿に重なった。
(そうか、君だったのか)
その夜、お嬢様が就寝なされたあと、私はこっそり部屋から抜け出した。
ジークフリードの職務室に入り込み、案の定、彼はまた職務中のようだ。
「ん?お前は、あいつの従魔か」
「ひさしぶりだね。虎太郎。」
「!お前……俺の名を……」
私の言葉を理解できるかどうかは、賭けに近かったが、どうやら賭けには勝ったようだ。
「レンジって言えば、わかるかい?」
「……そうか、お前か」
ジークフリードは懐かしそうに目を細めて、私をテーブルの上に招いた。
「悪かった、咄嗟のことだったんでな」
「しっている。」
「何故お前はあいつ、シルフィの従魔になったんだ?」
「きみがしんで、わたしはちょっと、ナットクできなくてね。そめおかくみにはいって、おじょうさまにつえたんだ」
そして知らずにお嬢様に引かれて、お付の使用人になった
何度かお嬢様の盾になろうとしたし、あの時お嬢様を異常から守ろうとしたため、今もお嬢様のお側にいられる。
「そうか。俺の代わりに、あいつを守ってきたんだな。ありがとう」
「いいんだ。わたしは、わたしのために、おじょうさまを、まもっているんだから」
舌足らずでも、頑張って自分の思いを古い友人にぶつける
そして夜遅くまで語っていた。
私は確信した。
お嬢様を助けられるのは、虎太郎、ジークフリードだけだと。
幸いか、ジークフリードはお嬢様が好きだ。聞く話ではいつも悶々としてて困っているらしい
お嬢様が泣き終わり、静かに眠りに落ちた。
ジークフリードはお嬢様をベッドに寝かせ、愛おしげにお嬢様の白銀の御髪を撫でる
淋しがり屋のお嬢様が、誰かを依存しなければ生きていけない。
前までは、兄代わりの私だった。でも、今はジークフリードに会って、すぐに彼に変わってしまった。
それでよかった。それだけ、お嬢様にとって彼は私より好きだって証明だから。
私にとって、お嬢様は主であり、妹でしかなりえない。
ジークフリードは違う。お嬢様の甘えっぷりは私の時より何段もエスカレートしていた
他の連中なら我が妹は渡さんと、威嚇してやろうとするが、虎太郎なら安心できる。
愛してしまった男と、妹として愛している彼女。その二人が幸福になるのなら、私は喜んで脇役になろう
さて、虎太郎は鈍くはないが、私ほどお嬢様を熟知していない。
二人の将来のため、少々レクチャーしてあげよう
「こたろう」
「ん?なんだ、レンジ」
「ちょっとおはなし」
頼むぞ、親友よ
廉治の設定は、同性の親友を愛していたホモの方だ。中性的ではあるが、女性であると自覚していないため、多分TSさせたら苦労するでしょう。今のところはする気ありませんが