チート皇子、契約を結ぶ
ルートが確定した。目指せ、皇帝ルート!
連続2回ジークフリード回です
前回概要:吸血姫ですから血を吸わないと生きていけません。なんかエロ回になってしまったんだが(え?エロいの?マジ?)
粗方城塞周辺の掃除を終わらせ、俺は討伐隊を率いて城内に凱旋した。
街の人々は騒ぎを聞いて、俺だとわかった途端お祭り騒ぎだ。
たかが王国のチンピラ如き、俺の部隊にかかれば子供同然なもの。
基本がレベル70アップで、俺を含め数人の精鋭はレベルこそベテランに届かぬものの、ステータスはむしろ超えている。
例のシルフィの奴隷になる男はレベルが57とかなりの傑物だが、他の連中は殆ど戦闘力五の雑魚だ。
戦闘力以外に頭も弱けりゃもう救えないな。あんな分かりやすい隠し家に住んでて本当に隠れる気あるのかって聞きたい。
「流石ジークフリード殿下!」
「きゃー~素敵~~」
「フランディ帝国万歳!!!」
捕獲した奴隷も二桁に届いた。俺は奴隷嫌いだし、敵を殺さないと経験値入らないので、大体は敵をその場で殺すが、部下に強制していない。
捕まえた奴の罪を考慮して、犯罪奴隷として鉱山行きが落とし所だろう。死亡率が高いので、今更だが冥福を祈っておこう
「お帰りなさいませ、ジークフリード殿下」
「ああ。シルフィはどうしている。」
「例のお嬢様でしたら、体を清めた後、睡眠を取っておられます。」
「わかった。他に異常はないんだな?」
「御意にございます。お望みでしたら観察報告を提出致しますが、如何でしょうか」
「出せ。案内してくれ、気になる」
「御意」
我が奴隷メイド、メイは有能だ。
戦闘能力こそ俺の直属には及ばないが、事務処理において俺の部下の中では一番上手だ。
数年前、奴が溜まった用途不明なノートが気になって、命令して見せてもらったら、中には俺の観察日記で埋まっていた。
小はずかしいと思ったが、読んでいるとその観察記録が条理的で分かりやすく、重要なポイント全て抑えている。
思惑通り、あれからメイに事務処理の仕事を教えたら、かなり楽になった。
「どれどれ……」
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シルフィ・ペンドラゴン観察日記
バリンがジークフリード殿下のご命令で、対象シルフィ・ペンドラゴンを連れ戻しました。
殿下のお部屋で降ろし、私に体の清浄を頼んできました。
されど、バリン以外の男性が対象シルフィに近づく場合、必ず彼女の従魔の妖狐が尻尾をピーンと立って威嚇してきます。
そして、傭兵メーリー以外、全ての人間がシルフィに接触しようとする場合、またしも妖狐が威嚇してきます。
よって血まみれな洋服の着替えも、体を拭くのも全てメーリーに依頼いたしました。
お茶を用意し、机に置いたら、妖狐が非常に警戒した様子で匂いをかきます。紅茶を一口舐めてみて、ぺっぺと吐き出す様子をみて面白かったです。
恐らく毒見のつもりではないかと推測致します。今度は毒見されても大丈夫なように、ミルクを進呈しようと思います。
左腕が重傷とお聞きいたしましたが、メーリーが処理し始めた時、既に傷の痕跡が残っておりません。
殿下が光魔法をお使いにならないと記憶しておりますので、恐らく殿下のおっしゃった自然回復力のおかげであると愚考いたします。
午後5時頃、シルフィお嬢様がお目覚めになり、事情を聞いた後に湯浴みに参られました。
空腹感を感じるとおっしゃったため、少々お菓子を与えましたが、満腹にならなかったご様子。
その後シルフィお嬢様は再びお眠りになられました。妖狐が私にすこし心を許した様子で、暫くモフモフしてあげました。至福でした。
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「なぁ」
「なんでございましょう」
「半分が妖狐の観察日記になっているんだが……」
「つまりジークフリード殿下もその妖狐が気になるということですね」
「違ぇ!!真面目にやれ!」
「いつでも大真面目でございますが」
「あ、そ」
まさかそいつの悪い癖がこんな所で出て来るとは……
くだらねぇことでお喋りしながら、俺の部屋の前に着く。
部屋にノックして入ると、メーリーとバリンだけが控えている。
「妖狐ちゃんもシルフィお嬢様のお傍に控えております」
「もう妖狐のことほっとこうぜ?」
犬と猫まではいいと思うが、こいつは毛皮さえあればなんでもモフろうとする。
この前魔獣のクマの死体をニコニコしながらモフってみんなに引かれてたのを忘れたのか?
「問題ないな?バリン」
「御意にございます。それと、ジーク様がお求めになると思われる本を探して参りました。ご確認を」
バリンが一礼して、亜空間から数冊の古い本を持ち出し、俺に渡す。
全て吸血鬼の生態が書かれた本だ。
「ありがとう。助かる。気がきくな」
「勿体無きおことばにございます」
速読してからシルフィを起こそうと思って、ベッドの傍に座ったら、微かに動く気配に目をやる
「ふにゃ……」と可愛らしく言って、純銀の少女は真紅の瞳を開く。
少女は俺の顔を見て、寝ぼけてたのか、嬉しそうに笑って、「よかった」とだけ呟いてまた瞼を閉じた。
起きないのかいと心の中にツッコミをいれて、もう一度本を読もうとする俺だが
急に首周りに冷たい感触を感じた。
「淑女の部屋に侵入し、寝顔を眺めただけでは飽き足らず、ベッドに座るとは何事ですか」
どうやらキチンと起きて、俺に気づいて拗ねていらっしゃるようだ。
薄いパジャマを越して、細い両腕が俺の首を極めて、少しでも力を入れれば俺は死ぬだろうが
もう一度いう、薄いパジャマです。背中から感じる感触が素晴らしいです。あ、鎧を脱いでおいてよかった!
「そうですか、死にたいのですね、分かりました。逝け」
「タンマ!タンマ!落ち着いて!お前が気を失ったからここに置いただろうが!」
「そう言えばそうでしたね。忘れました、ごめんなさい。」
ふわりと至福な感触が消えて、少し落胆した
「何故か殺意が湧いてきました。」
「そ、そうですか……」
女は敏感だな……怖ぇぇ……
立ち上がり、シルフィの方向に向いたら、彼女は正座している。
そして両手を前に置き、大きく頭を下げた
「本日お助け頂き、ありがとうございます。この御恩は一生忘れません。」
「あ、ああ。いいんだ。俺がやりたくてやったことだから。」
「宜しいのですか?今の私なら、純潔以外何を求められても捧げられますよ」
「純潔はダメなんだ……」
「欲しいのですか?」
ちょっぴり、赤い殺気があふれて、後ろにいるメーリーが小さな悲鳴を上げて座り込んだ
「いいえ、すみません、別にそういう意味では」
「欲しくないのですね……」
「どうすればよかったんだ?俺」
「冗談です。ですが、一応報酬を考えておいて下さい。私ができることならば叶えましょう」
正に渡りに船な提案に、俺はすぐに乗った。
「丁度いい、俺からいい案があるんだが、聞いてみるか?」
「お聞きしましょう」
「シルフィ・ペンドラゴン嬢、俺に雇われてもらいたい。」
「雇われ?」
頷き、俺はベッドに座って話し続ける。
「お前は吸血鬼で、毎日血を摂取しなければならない。だが、それは即ち毎日お前は人間を襲わなければならない。
空腹なるスキルによって、お前の血への需要は普通の吸血鬼より多い。犯罪を考えなければ、お前には信用しうるパートナーがいなければならない」
「そのパートナーを、貴方が務めると」
「そうだ。お前が欲しい時、俺がお前に腹いっぱい吸わせてやろう。その代わり、俺が困った時、お前に助けを求めるが、
まぁ、できれば協力してほしい。」
「話しになりません。私に強制力がありません。不平等条約です。」
「別にお前に害があるわけじゃないだろう」
「ダメです。貴方がこうするメリットを説明してください。でなければ私が貴方への報酬になりません」
やはり、義理深い奴だな。
でも、シルフィは未だに自分の特性を理解していない
「いいだろう。メリットはある。まず、その契約を結べば、お前は俺から離れることはない。つまり、お前が何をしてても俺の目に届く範囲にいるという事になる。
プライバシーも考慮してやるつもりだが、少なくとも長時間離れることはないし、離れても同じ街にいるだろう」
「私という危険な存在を監視する体制というわけですね」
「そう理解してくれても構わない。そして、お前は既に古龍レベルのステータスを所持している、お前に暴れられれば、文字通り国が滅ぶ。
だから、敵にならないだけでも結構大きいが、あわよくば協力まで得られるかもしれないんだから、メリットが大きいぞ。」
「そういうことでしたか。確かに、私が帝国に敵対する気はないと言っても、お偉方達は納得しませんね。ならばいっそ、中立ではなく、仲間にしてしまおうと」
シルフィの情報は皇帝にしか伝えていない。
だがシルフィほどのステータスがあれば、父上が警戒するのは必定だ。
例えシルフィ自身に敵意がなくても、誰かに刺激されれば、牙を剥きかねないのだから。(とある奴隷商人のように)
空腹と吸血衝動のデメリットパッシブスキルによって、シルフィの精神状態は不安定になる。
だから、中立ではだめなのだ。味方、しかも喧嘩を売られることのないように、後ろ盾が必要だ。
つまり、契約相手は俺が一番適しているのだ。
そのことに気づいて、シルフィは瞼を閉じて思考する。すぐにまた目を開いて、躊躇いながら聞いてきた
「いい、契約だと思います。しかし」
「しかし?」
「私、良く食みます。今でも凄く空腹です。貴方が耐えられない可能性があります」
「それは別に問題じゃねぇ。俺はお前ほど馬鹿げたステータスはしてないが、人間の中では体力も回復力も高い方だ。一日何回血を吸われたくらいでバテないさ」
「でも」
「発言よろしいでしょうか。」
「バリン?いいぞ、言ってみろ」
「恐れながら、血を差し出すのは必ずしもジーク様でなくてもいいのです。私や、メイ。もしくはその場にいるメーリー様でも、お食事をご提供できます」
まぁ、その点は俺も気づいていたけどさ
シルフィは慌てて、顔を真っ赤になって答える
「そ、そうですね!確かにジークフリードさんでなければならない理由はありません。ごめんなさい、気づかなくて……」
「いいんだよ。元より俺とお前の契約だ。お前が望む限り、俺が血を提供する。でも、お前が他の奴がいいなら、俺も止める権力がない」
「「殿下!」」
「いい、俺が決めたことだ。そんで?乗るか、乗らないのか」
シルフィが俺の目をまっすぐ見つめて、少し微笑む。
奴隷講義の時の冷たい雰囲気と冷酷さが消えて、可愛らしい少女の笑みに思わず見とれてしまう。
「分かりました。そういうことでしたら是非契約させてください。貴方が私を裏切らない限り、私は貴方の味方です。」
「おう、お前が俺を裏切らない限り。俺はお前の弁当箱で、後見人だ。お前に俺如きの助けが必要とは思えないが、必要とあらばいつでも手を貸そう」
「ふふ、弁当箱ですか。分かりました。不束者ですが、これからもよろしくお願いします。」
「ああ、よろしく頼む。」
互いに深く一礼して、握手を交わす。
互いの支えになることを誓い、大人のウインウインの契約が成立する。
通り魔の時も、デブリンの時も、会見の時も。ずっと氷の仮面を被ったシルフィの防壁が溶けた。
俺は遂に気づいた。
通り魔の時、俺は既にこの一人だけで、悪に成りきり、悪と戦ってきた少女を愛してしまった。
だから、あの時と同じ、今世でも、俺は全身全霊を持って君を支えよう。
今度こそ、この小さな背中を守りきれずに逃してしまわないように。
「では、ジークさん」
「あ?」
「お腹すきました。首を洗って出してください。」
「アレ?なんか物騒な言い回しを……」
「ごめんなさい、我慢できません。いただきます」
「ちょっま!、っ!!!!」
真正面からシルフィが抱きついてきて、躊躇うことなく俺の首筋にプチと噛み付いた。
シルフィの香り、小柄の体に合わないボリューム満点の脂肪の塊、細く白磁のような肌、首筋を舐めまわす舌。
全て全てが愛おしく、理性を蝕む。
少しだけ、後悔してしまった。
俺は本当に、こいつの攻めに耐え切れるだろうか。
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昔に一人美しい皇城の侍女がいたが、とある皇子に見初められ、子供を身籠る。
でも、皇子の婚約者にそのことがバレて、皇子の知らぬ間に強引に奴隷堕ちされた。
皇子が気づいた時には既に帝都外に売られ、その時皇子のお怒りは皇帝でも鎮められなかったと聞く。
探し続けて、遂に再会したときには、美しき侍女は既に永遠の眠りに落ちていた。
その皇子の御子も、母親と一緒に死んだと思われ、皇子は涙し、愛する侍女を丁重に葬った。
話は変わるが、ジークフリード・K・フランディ皇子が10歳、法王国に出張する時、一人の奴隷少女が主人の代わりに靴を売っているのを見た。
習慣で鑑定して、驚いたことに、彼女のスキル欄に覇王の資質lv1があった。
彼女を高額で買い取り、帝都に戻った。誰の御子なのかまでは確認できなかったが、覇王の資質があるだけで帝国の皇族であること間違いなしだ。
とある皇子様から何度も養子に受け取ると打診されたが、彼女は頑なに二十歳まで奴隷の首輪を解除しないという。
名無しの奴隷は主のジークフリードに名前を強請ったが、残念ながらジークフリードにネームセンス皆無だった。
メイドにするから、メイっていいんじゃね?と考えた彼から与えられた名前を、メイドは一生大切に使ったという。
メイ妃殿下が二十歳になり、約束通り奴隷嫌いの皇帝の正妃によって奴隷の首輪に掛かった呪いを解除され、奴隷身分から開放された。
その後、当時第一皇子である皇太子の養女になり、生涯皇帝付きの女騎士として尽くすと誓った。
心思う人と一年後に婚姻を結ぶことが許され、騎士から解任され、長男と長女を産み落とした。その長男が、正妃殿下の御子であるフランディ帝国33代目皇帝が姿を消した後に、フランディ帝国34代目皇帝に即位された
正妃殿下とは犬猿の仲と有名であるが、正妃殿下が皇帝への感情に戸惑う時、背中を押したのもメイ妃殿下であったことから、互いを認め合ったことがわかる。
因みに正妃殿下のペットにご執心であり、二方の喧嘩はほぼそのペットに纏る話という噂があるが、詳しい事情は文献にも殆ど残らず、確証されていない。
因みに吸血鬼の習性は今度ちゃんと説明があります