ヤクザ吸血姫、キレる
前回概要:転移されました。恐らく異世界でしょうが、本当に山賊いるんですね
「は?」
滑るように足を動かし、もう一人の山賊の前に移動する。
さっきのと同じ、私より少々高い程度。でも、弱い。
匂いで何となく弱いだろうなとわかったけれど、いざ手を出してみたら想像以上の脆弱さに驚きです。
張り手じゃ死んじゃうってわかった今、二度と同じ間違いを犯しません。
「ぐげぇ」
腰に刀の横薙ぎのようなイメージで踵を叩き込む、非常に柔らかいお肉に接触した感触と共に、その山賊は足という名の刀に両断させられました。
も、脆いですね。この世界の人間はみんな豆腐で作られたのですか?
地面に広がる血液から甘美な香りが漂ってくるが、我慢です。ご褒美とご馳走は仕事が終わった後です。
……あれ?ご馳走?
「死ね!!アマぁぁぁ!」
正気に戻ったらしい他の山賊は武器を持って私に斬りかかって来た。
ボロボロの剣と大斧、バランス悪い二刀流ですね。バカでしょうか。
まだ自分の戦闘力を測りきれてないので、段々ギアを上げていく。
急に変化した視界、勢いと直感に任せて繰り出されたキックは、文字通り二刀流の山賊の頭を爆ぜた。
「まだまだ上がありそうですね。」
段々自分の体を試すのが楽しくなって、私は山賊を生かせるのを諦めた。
今後全力を出す機会もあるでしょう。その時制御しきれないようでは話になりません。
丁度いいカカシがいますので、実験に付き合って頂きましょう
「ぎゃあー!!!」
「ば、化物!!」
あんまりスピードあげては、私も自分がどこにいるかはわからなくなり、
力に至っては、鎧ごと山賊を一蹴りで両断させてもお釣りが出てきます。
数人に付き合って頂いて、この方達ではサンドバックレベルの役にも立たないことに気づきました。
テストもままならないですね。
感傷に浸っていると、山賊の頭?みたいなリーダー的なあの人が武器を捨てて、土下座してきました。
「すまねぇ、この通りだ、許してくれ。」
「へぇ~」
誇りの欠片も持たぬ、山賊。
私との実力差も測れぬようなめでたいお頭を持っていますが、流石に今の状況を理解できましたか。
「私とて戦意を失せた相手をなぶる趣味もありません。降伏してくれるのならば受けましょう。」
「そ、そうか。じゃぁ俺達は……」
「貴方達」
「え、お、おう!お、俺か?!」
「縛っておいてください。山賊さん達、縄は持っていますよね?」
「あ、も、もちろんあるが……」
「出して?✩」
「はい……」
残りの三人の山賊は、残りの二人の護衛にぐるぐると縛られました。
その光景を見て、荷馬車の中に隠れていただろう男が頭を出して護衛に伺う。
「ぞ、賊は追い払ったか?」
「は、はい。この通り、縛っておきました。彼女のおかげですが」
「お、おう!よくやった!報酬を弾もう、この山賊共を荷馬車に積んでくれ」
「いいえ?これはこのお嬢様の戦利品ですし、勝手には」
「構いません。それらは別にほしくもありません。欲しければ持っていけばいいでしょう。」
「う、うむ!君にもそれなりの報酬を約束しよう、どうかな、私が町までの護衛をやってくれるか?」
小太りの商人に誘われ、ちょっと考える。
荷馬車なら、大した速度は出さないだろう。歩いて行っても問題はない。
どの道、人間と接触する必要があった。渡りに船のように感じるが。
敢えて乗ってみましょう。
「いいでしょう。廉治!いるでしょう。こっちに来なさい。」
「はい!」
「な!こいつは!」
大きく鳴いて、廉治は尻尾を振りながら、荷馬車の下から這い出した。
私はそのまましゃがんで、廉治を抱きあげる。
「あ、おじょうさま?」
「抱っこして町に行きます。反論は許しません。」
「は、で、でもわたしはオトコです」
「返事を」
「は、はい!」
廉治を胸に抱きながら、商人に微笑んで語りかける
「では行きましょう。道中、他の護衛達とお話してもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ。無論だ。警戒は怠らないようにしてくれれば……」
「護衛さん、発進してください。」
「え?お、おう!」
護衛さん一号(仮)は慌てて荷馬車に乗り、馬を動かした。
鞭を入れると、馬はほぇぇぇぇぇぇといった叫び声を出して、馬車を引き始めた。
もう片方の護衛は女性で、馬車に乗らずに、私と一緒に歩いている。
「貴女……一体何者?」
「さぁ、なんでしょうね。私もよくわかりません。」
「わからないって……」
「起きたらその平原にいました。本来いる場所とあんまりにも変わっていて、困惑しております。」
「そ、そう……」
「宜しければ色々とお聞かせ願いませんか?」
「あ、うん。いいわよ。なんでも聞いて」
実は、山賊共を皆殺しにしようとしたのも、彼女達がいるからである。
どう考えてもその二人の中の商人は、暫く私に敵対行動を取ることはない。
ならば、恩を売って、山賊よりも、一般人から情報を収集したほうがいいと思ったのです。
「なるほど。やはり私のいた国ではありませんね。フランディ帝国はどういう所ですか?」
「知らないの?この大陸一番大きい帝国なんだけど。」
「分かりません。教えてください。そして貴方達の目的地のマーリン城も。」
「わかったわ。」
どうやら、その商人はフランディ帝国という、大陸最大の帝国の商人で、
その二人はマーリン城という、帝国所属の城所属の傭兵みたいです。
商人デブ丸さん(仮)は、奴隷商人で、多くの奴隷を連れて、遠い街のオークションに行ったらしいです。
商品が全部売り切れて、上機嫌で帰ろうとしてたら、山賊に襲われてしまった。
「まったく、ケチなやつだよ。あたし達が急いでマーリン城に戻ろうとしてたから、護衛依頼受けたけど、こいつ、ケチって有名でね。他の奴らは受けたがらないんだよ。」
「そのせいで山賊に?」
「もう一人は端金で雇った最底辺傭兵だよ。最初に山賊の投げ矢に殺されてしまったさ。本当についていない。」
「しかし、奴隷商人ですか。」
「そうよ。言っておくけど、あの山賊達もこれからは奴隷落ちでしょうよ。犯罪者は打ち首以外じゃ、ほどんど奴隷だね。だからちょっとまとまった金が手に入るのよ。」
なるほど。あの商人が犯罪奴隷を荷馬車に積みたいというのはそういう意味だったか。
それは“この奴隷候補達は私のもの”という欲望と宣言でしたね。
「では、本来ならあの三人は私の奴隷に?」
「いや、あたし達も言い出せばおこぼれもらえるかもしれないけど。まぁ、あたしとジョーはそこまで厚顔無恥じゃないから、全部貴女のものになるでしょうね」
「街についたら、渡してくれるでしょうか」
「多分無理。無理やり自分のものと主張するでしょ。あたしたちが証明してあげてもいいけど。貴女じゃねぇ……」
「私が何か?」
「どの種かはわかんないけど、亜人でしょ?尖った耳に、人間離れした服装や身体能力。帝国は王国よりマシだけど、それでも亜人の発言権は小さいのよ。」
亜人、ああ、人間以外の“人間的外見を持つ生物”のことですね
肩に乗っている廉治が「あじんなんか、おじょうさまにしつれいです」と喚いているけど、まぁ、種族の名前くらい気にならない。
しかし、亜人、生粋な人間ではないのか。
「私はどの種類の亜人でしょうか?」
「それもわかんないの?そうだな、耳尖っているとしたら、魔人とエルフと吸血鬼くらいだけど。吸血鬼と魔人は夜行性だから、エルフである可能性が高いわね」
エルフ。確かにオークという魔物の好物と記憶しております。
悪くありませんが、食べられるのはごめんです。オークなる怪物を見つけたら、敵とみなして叩きましょう。
「わかんないようなら、マーリン城にある魔道具屋で使い捨ての鑑定紙を買えば?自分のステータスほぼ全部わかるわよ」
「そういうものがあるのですか。分かりました。大変勉強になりました。」
「いいわよ。あのままだったら、例え追い払ったとしても、あたし達無事では済まなかっただろうしね。命の恩人とまで言わないけど、恩義のある人にそれくらい」
「そうでした。山賊さんたち、体が異様に柔らかくて、豆腐みたいですけれど、それが普通でしょうか?」
「……そりゃあんたが強すぎるからだろう。」
山賊さんたちの豆腐体質を聞いてみたら、馬車に乗っている男の傭兵が不機嫌そうにツッコミを入れました。
「そうですか?」
「まぁ、ジョーの言う通りだと思うわよ。貴女の筋力ステータスがムダに高いから、人間の体が豆腐に思えたじゃないかしら。」
「筋力?」
「知らねぇなら鑑定紙で測ってもらえ。」
「そうですね。お金もってませんが」
「着いたらデブに貰ってこい。いくらデブでも、命を救ってもらって報酬出さないことはないだろう。」
「分かりました。そうします。」
「ジョー……」
「メーリーは案内でもしてやれ。俺は速攻で帰るが。」
「わかったわよ……」
なんか微妙な表情で髪を整っているメーリーさんと不機嫌そうなジョーさん。
何か、隠していますね。
それを聞き出すのは、今では得策ではありません。
今はまだ私に被害がないから、強引に聞き出すことはできない。
もう少し様子見でしょうか
「おじょうさま」
「わかっています。」
廉治も湿った鼻を私の首筋にあたって、心配そうに呟く。
可愛いです。癒されますね。
「え、えーと」
無言で廉治の首周りを撫でてモフモフする。
その至福な感触を楽しみながら、遂に私たちは黄昏る前に城壁までたどりついた。
「マーリン城よ。王都に次ぐ大きな街なの。ちょっと外回りだから、戦える城でもあるのよ」
「へぇ……」
確かに、中世の城のような風貌で、頑丈そうなイメージがあります。
使われるのは、普通の石ですね。この時代、まだコンクリートはありませんか。
にしても、意外に綺麗な作りです。中世だから、もっと粗い作り方すると思いましたが。
「止まれ。身分証明を」
「はい、これを」
デブさん(仮)は帽子から何かを取り出すと、門衛に渡す。
門衛は受け取って、頷きながら、私たちを一瞥する。
「こやつらは」
「このお二人は私の護衛です。もうひとりは平原で拾った野生の亜人ですよ」
野生って
「三人共、身分証明を出せ。」
「ああ」
「……はい」
二人は大人しく一枚のカードを差し出し、門衛に見せる。
「身分証明はなんでしょう。持っていませんね」
「身分証明が無ければ街には入れんな。10銀貨を預けてくれれば、作ってやることもできるが」
「その必要もありません。貴女、これを付けてみなさい。そうすれば無料で街に入れますよ」
「あ、ちょっ!」
デブさん(仮)は私に黒い首輪を差し出してくる。
その目は酷く濁っていて、欲望、嘲笑い、差別が隠れて見える。
罠ですね。
「ダメよ、それをつけては、それは!」
「おだまりなさい。貴女とは関係ないでしょう」
「いいえ、あの子はあたしたちの命を救ったの、関係あるわ。いい?貴女、それは隷属の首輪、付けたが最後、貴女は彼に逆らえなくなるわ。逆らおうとすれば激痛が走り、厳しい場合は死に至る。だから絶対に付けてはだめ!いいわね!」
「っち、余計なことを……」
「隷属、ねぇ……」
私は首輪を手に取って眺めてて、門衛に問う
「商人殿のその所業は犯罪に当たらないのですか?」
「ああ、強引にはめようとしていないからな。奴隷になれば確かに無料で街に入れる。」
「どうせ君はお金もっていないのです。亜人如きに拒否権はありませんよ!」
「護衛として報酬をくれるのでは?」
「言ってましたか?誰が言ったと証明できますか?その女はムダです。どう見ても君の味方ですから信憑性がありません」
「荷馬車に三人の山賊を捉えてあります。あれは倒した私の所有物ですね、金になりませんか?」
「私こそが奴隷商人、何故君は私の奴隷を自分のものと言えるのです?狂言ですよ、ひっ捉えてあげましょうか?」
話にならない。
誰ですか、テンプレで荷馬車を助けては初期資金をくれて、便利させてくれるって言ったのは!
まぁ、いいです。
これで、敵は決まった。
「分かりました。」
目を閉じ。静かに問う
「貴方は、私の敵になりました。貴方達は、私の敵でしょうか?」
「ち、違うわ。あたしは味方よ!」
「俺は何も知らない。」
「おい、気持ちはわからんでもないが、おま」
「敵ですね?」
「い、いいえ。中立です」
ならば仕事は簡単です。
真紅の両目でデブさん(仮)を捕捉する。
今更気づいたかのように、彼は慄く。本当に今更です。被捕食者が捕食者気取りして
「ま、待て。今ら、君の肩に乗っている妖狐を三人の奴隷に交換してやろう。これでお金が」
瞬間、私は彼の目の前に移動した。彼は私の戦闘を見ていない、だから予想外のスピードでビクっとして地面に座り込んだ
「いや、いや待ってください。私に手を出せば君も犯罪奴隷ですよ、わかっていますか?!今ならその無礼を」
手を差し出す。山賊は豆腐のようでしたから、このデブさんは水でしょうか。
「ま、まって!待ってください!私が悪かった、こ、ころさないで!!」
そのまま太い首に伸ばそうと
「はい、そこまでだ。お嬢さん。」
手首がいつの間にか、ゴツイ手に握られていた。
後ろを覗けば、門衛が走って来たかのように、息が上がっていて
一人、大きい青年が私の手を握って笑っている。
「お話は、中でな?」
「あ、あたしが証言します!あいつが」
「お前も一緒に入れ。おい、デブリン殿、立てるかよ」
「あ、わわわわ、ここいつは!私を殺そうと!」
「へいへい、バリン、デブリン殿の荷馬車にいる山賊を引き取ってくれ。お嬢さん達はこっち」
「無粋な方」
「あ、なんか言ったか?」
実は、デブさん(てき)を消滅させようとした時、門衛さんは既に離れていた。
手を伸ばしている頃に、非常に高いスピードで、その大柄の青年と思わせる気配が急接近。
実力は山賊所か、その傭兵二人かかりしてても、恐らく遠く及ばないほどのものと感じた。
負けるとは思わなかった。だが、彼から敵意を感じられず困惑していて、ついデブさんを見逃してしまいました。
「おめぇも災難だったな。あのデブリン、陰湿で有名な奴隷商人だ。その癖規模が大きい上に、資金もあるから、天狗になってただろうさ。」
「無粋ですね。」
「奴に無粋も何もねぇよ。おい、メーリー、状況説明しろ。」
「あ、はい!それが……」
「ああ、なるほど。お嬢さんは身分証明の持ってない亜人ってわけだ。そりゃカモられるわな。」
青年がケラケラ笑って、隣の引き出しから書類を取り出し、ささと何かを書いて後ろの兵士に渡した。
「無粋は貴方です。何故止めたのですか。」
「あ?そっち?そりゃ、流石にあいつが悪くても、殺されちゃお前の擁護もできんよ。気持ちはわからんでもないが、抑えろ抑えろ、可愛い顔が台無しだぜ」
「あの、将軍。この子は……」
「わかっている。お前、名前はなんだ?」
「私、名前……」
昔の名前を思い出すが、今ここで東洋の名前を出すのは不合理です。
今までの人間の名前は全部欧州の名前でしたからね。
そうですね、エルフ、エルフ……
「シルフィ・ペンドラゴンです」
シルフィは、風の精霊シルフから取ったもので
ペンドラゴンは、私の元の名前、竜胆の竜から取った苗字です。
「おじょうさま?」
廉治が頭をあげて私の顔を覗き込むが、すぐに理由を察知しておとなしくなった。
「シルフィか、家名があるのは、貴族か?」
「分かりません。起きた頃には平原にいました。その前のことはまったく」
「ほ、本当です。この子は恐らくなんでも覚えてないです……」
「なるほど。記憶障害か。厄介だが、まぁいいさ。シルフィ、これを受け取れ」
「?金貨ですか。」
「そうだ。それで今日はどっか宿を探して一泊してこい。他に買いたいものがあればも一緒に買っておけ。」
「何故貴方が私に?」
「安心しろ、やるんじゃねぇ。貸してやるんだ。明日正午あたりまたここに来い。山賊退治の報奨金とその三人の犯罪奴隷の処分もある。そして、デブリンからの迷惑料とかな」
「なるほど。理解しました。しかし、私はこの街のことよくわかりません。」
「そこは、ほら、メーリーになんとかしてもらえ。」
「う、うん!シルフィさん、あたしが案内してあげるよ!」
穴がない。本心かな
まぁ、そのままいっても問題なさそうですね。
「分かりました。よろしくお願いします。メーリー」
「うん、よろしく、シルフィさん……」
「ほい、シルフィ、お前の仮の身分証明。正式のは10銀貨掛かるが、これが無料サービスだ。10日ほど、滞在しても問題はない。これ以上滞在を続けるんなら、正式手続きしておくんだ」
「なら、今でもしたほうがよいのでは?」
「いや、お前ならどっかのギルドに入るかもしれんだろ。傭兵ギルドでも冒険者ギルドでも、兵士になってくれてもいい。その場合は安くなるからよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「いいってことよ。もう行け、俺は忙しいんだ」
「分かりました、失礼します」
「失礼します!」
私につれて、廉治もペコリと頭を下げて挨拶した。
可愛いです。廉治なのに、なんて可愛いのでしょう。
これから抱き枕にして眠りましょう。
肩がびくりと動いた気がしましたが、気のせいでしょう。
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「ジーク様、よろしかったでしょうか」
「何がだ?」
「彼女は、エルフなんか生易しいものではありませんよ」
バリン、俺に長年仕えて来た幼馴染兼執事が忠告してくる。
まぁ、それくらい俺でもわかることだ。
「そうだな。知っている。」
「申し訳ございません、出過ぎたことを」
「いい。今後も俺の行動に疑問を抱いたら即刻教えろ。」
「かしこまりました」
そもそも、俺はエクストラ級のスキル鑑定を持っている。俺の目を欺くことはできない。
だから、最初から、シルフィという少女はエルフではないとわかっていた。
吸血鬼、しかも真祖の姫君と来た。
名前はないらしい。シルフィはその場で付けた名前だろう。付けた瞬間、名前の欄はシルフィ・ペンドラゴンに変えた。
記憶喪失という異常状態はないが、俺を知らない所からも、態度からも本当に“わからない”ように映った。
何よりも驚いたのは、その圧倒的なまでのステータス。
この帝国でも上位にある俺でも霞ほど、豊富したスキル群。
例え俺でも、一瞬で殺されかねない。それだけ、ステータスの差が開いている。
しかも魔法全種類完備で、日光完全耐性と光属性半減を持つ。吸血鬼は光属性以外に弱点がなく、異常状態が効かないのに。その唯一の光属性でも半減されたとなればもう無理ゲーだ。
シルフィの体から魔力の流動が見当たらないのは幸運だ。彼女は魔力を認識すらしていない証拠だから。
ただ、あのステータスから見て、彼女が膨大な魔力を持つのは確実だ。
いきなりデブリンを殺そうとしたから、気性が荒いようにも捉えられるが、
ステータス的に俺を無視して殺せたはずなのに、しなかったのは、対話可能ということだろう。
実際喋ってみたら、やたら丁寧な口調で、姫君と言われて納得するような美しい少女だった。
「こいつは、俺がうまく処理しないと、マジで国が滅ぶな……」
「何か?」
「まぁ、聞いてくれ、バリン。俺が鑑定により覗いた情報だが」
あの仏頂面のバリンが阿呆みたいに口をあんぐり開けて、暫く使い物にならなかったが、無理もないと思った。
だから言ったのです。チートオブチートって