吸血鬼伯爵、闇に堕ちた者
前回概要:まさかのBL展開だった!!!作者も驚きだ!
なんで私まで驚く展開になったんだろ
方術の勇者が拘束の方術を放つ
でも遅い。百年前の人間は総じてステータスが今より少し高いが
それでも伯爵位の吸血鬼相手では無力だった
本来のステータスこそ三人掛かりなら拮抗できそうなものだが
伯爵位吸血鬼、ロウガヤマト、もといリリィは、狂気に侵され、狂化lv10を発動させていた
拘束の方術は簡単に躱され、ロウガの鋭い蹴りが方術の勇者を目掛けて飛び刺さる
兵の勇者は戦闘系の全ての技術を掌握している
盾の勇者ほどではないものの、彼も前衛として非常に強い部類に入る。
兵の勇者が盾の勇者が残した大盾を構え、方術の勇者を庇うように間に入った。
「ダメでしょ?人のもの勝手に使っちゃ……」
「?!」
大盾を構えた途端、ロウガの攻撃は急に勢いが消えた。
隣からみれば、その勇者の大盾を恐れているように見えたかもしれないが
実の所ロウガはただ愛する人の遺物を壊したくなかっただけだった
蹴りが柔らかいタッチとなって、キスの如く大盾に軽く触れた
そして、慈愛な笑顔を浮かべて、女顔の吸血鬼が突然消えてしまう
困惑する兵の勇者が一瞬きした、次の瞬間、背中から鋭い衝撃を感じて飛ばされてしまう
光剣の勇者と方術の勇者が呆然としている間、針のように小さく穴を開けられた兵の勇者の体がはじけ飛ぶ
蠱毒爆発。ロウガという吸血鬼の攻撃を受けただけで、そのダメージは数十倍になって膨張させられる
瞬く間に人間最強の男の一人が物言わぬ骸になった
本来最初のターゲットはなんとなく気に入らなかった女性の勇者にするつもりだったが、
薄汚い人間に、彼のものを触れて欲しくなかった。
(そんなに威力高かったかな)
呑気に考えている間、光剣の勇者が既に光剣をロウガの心臓に目掛けて刺してきた
吸血鬼を殺すには、心臓を狙う他ない。
真祖ともなれば、心臓を破壊してても死なないような怪物になるが、流石の伯爵でもロウガは心臓を光属性に貫かれたら死ぬ
でも、物理攻撃は全て爵位持ちの吸血鬼に悪手だ
薄く笑い、ロウガは全身を霧に霧化した。
ロウガの特性を持つ霧は紫色と非常に毒々しい色になり、方術の勇者はすぐに性質を理解し、毒を中和する光の聖水をばら撒いた
でも、遅かった
既にロウガの体全部が光剣の勇者を包んでおり、いくら中和しようと、伯爵位で毒のスペシャリストのロウガに太刀打ちできるような強者じゃなかった
少々毒の効果が薄くても、毒さえ付ければ、爆ぜる
紫色の液体となって四散した光剣の勇者、霧化を解除し、中性的な細目の小さな吸血鬼が部屋の真ん中に佇む
運悪く勇者だった液体に触れた兵士も、同じく蠱毒爆発のとばっちりに遭って、部屋に残った者は全滅してしまっている
方術の勇者は放心してしまって、自分の体に付いた紫の血にも気づかず、ただただ、目の前の盾の勇者の妻だった少年を見つめている
「あの人はかっこいいから、モテるでしょけど」
暗い眼の中には、憎悪と嫉妬と殺意しか宿っていない
「ダメだよ」
その微笑みも、また方術の勇者を恐れさせる
「オシオキ」
彼女は抵抗しなかった。
一分も経たぬ間、方術の勇者は既に涸れたミイラのように伯爵に吸い尽くされた
戦争期間、常時飢餓を持つロウガ(リリィ)は、夫からの補給がなくて、ずっと魔物と野獣の血で我慢してきた
盾の勇者の死は、同時にロウガの中に存在するリリィという人格を消した
残ったのは、不条理と憤怒、憎悪と悲しみしか知らない、大和狼牙という名の男だけだった
どっちが本物の彼か?
今の彼もわからない。
どうでもよくなったからだ。
暴虐の限りを尽くし、逃げ出した兵士も全員処理した彼は、満面の笑顔で自分一番愛していた男の遺体の傍に戻った
もはや答えを返してくれない骸に、次の日が登るまでいっぱい語りかけていた
棺に入れ、一緒に眠れるように準備した
ロウガの噂を嗅ぎつけたのか、吸血鬼の組織「旅団」が使者を派遣して、ロウガを招いた
もはや他の生物と一緒に生活する気になれないロウガは拒絶したかったが、旅団の知識はロウガにとって渡り船だった
何故吸血鬼が負け、他の爵位高い者が隠れていたのか
吸血鬼達の悲願と、世界の真実はなんだったのか
それを聞いて、ロウガは拒否しきれなかった。
自分と愛する彼は、ただその茶番の犠牲者でしかなかったのだ。
人間を全滅させればその憤怒は収まるのか
きっと、出来はしないだろう。そもそも人間だけを全滅させるだけでは気が済まない
彼と同じ棺に入り、ロウガは深き眠りに落ちた
時々眠りから覚めて、小規模の村を壊滅させては、また飽きたかのように眠りに戻る
いつの間に、彼は骨になったが、ロウガにとって大した問題でもなかった。
精神が完全に壊れた彼には、骨の夫でもかっこよく見えたようだ。
そして、ロウガヤマトは気づく。
数百年が経ち、すでに裏切りの勇者の名すら忘れ去られた時
大きなナニカが生まれた。
何処かに封じられても知らぬ、祖父と同じ匂いのする少女
ロウガは歓喜に震えていた
復讐を果たす時が遂に来たのだと。
旅団の高位の幹部達もすでに察知しているだろうが、関係ない
ロウガは隣の頭蓋骨にキスし、いってきますと言って棺から出た。
復讐の鍵、反撃の旗を掲げるだろう、自分達吸血鬼の姫君に会いに
おお、なぜこうなった!!
なぜ私がBL系の物書いて
更に闇堕ちまで?!
おお、なぜこうなった!私知らぬぞ!