チート青年、彼女のチートスキル
前回概要:伯爵級吸血鬼見参!ボコボコになりましたけど、持ち前のチートでなんとかしてみたいと思います
彼女を助けるために、ステータスは圧倒的に足りない。
確かに俺も戦闘系のチートスキルはもっているが、数倍もステータスの差の開いた相手に通用するわけもない
試すリスクも大きい。俺にとって、命は伯爵に出会った時点であってないようなものだが
間違いなくシルフィにとって、死人が出るのがクエスト失敗的なアレだ
彼女のために命を捨ててやる気概もないのかって聞かれても、今度俺はシルフィと共に生きたい
命を捨てるのは、一回きりだ
「来たれ!我が忠実なる下僕よ!」
ロウガの呼び声に応え、虚空から数多い蜘蛛が湧いてくる。
ロウガの特性を考えれば、恐らく猛毒を持つが、それらは俺でも対処できるくらいのステータスだ
つまり捨て駒なのだろう。でも、その中には一回りデカイ奴がいる
クイーンオオスズメバチである。
地球のバチのクイーンだと、卵を産むだけのウジみたいのオプションを想像する人間もいるだろう
でもこの世界の魔物はレベルが一定に達すると進化するというシステムなので、最上位進化者のクイーン級は間違いなく卵産みのオプションではない
名前:スーちゃん
種族:クイーンオオスズメバチ
年齢:12歳 性別:♀
レベル:42 状態:隷属
筋力:134 抵抗力:61
速度:165 魔力:2
精神力:0 回復力:32
技巧:0 幸運:98
スキル:産卵、猛毒針lv10、連携、統率、飛針、高速移動
特典スキル:無し
シルフィとロウガのステータスを見れば雑魚もいいところだが、残念ながらそいつは俺でも真正面じゃまず勝てないような鬼ステだ
シルフィ相手だと相性的にもステータス的にも完封できるが、俺達普通の人間だと刺された時点でゲームオーバーあの世行き
その癖攻撃力自体も高く、毒無効などのアクセサリーを持ってしても一撃アウトな相手だ。
オオスズメバチ系の魔物は地球のやつらのイメージと違い、戦いは常に群れて行う。
他の昆虫系魔物と違い、ガチガチの速度筋力特化。そして猛毒持ち
非常にイヤラシイ相手だ。
今回のクイーンは連れのオオスズメバチ系こそいないが、代わりに小さい蜘蛛系を連れている
統率スキルのお陰で連れの小物共もかなりパワーアップしている
シルフィを倒すことは絶対にありえないものの、ロウガが自分を再生するくらいの時間は稼げる。
なんやかんやって、ロウガが伯爵吸血鬼、シルフィに敵わないものの非常に高い回復力をもっている。
「……!!!」
当のシルフィは絶望しきった顔をしている。
ま、まぁ、女の子に昆虫系の大群は厳しいわな?俺でも引くくらいに気持ち悪いしな
ごほん
話を戻すが、伯爵・ロウガヤマトは時間を稼ぎ、自分の怪我が治るのを待つつもりだ
節足動物が苦手なのは予想外だろうが、彼にとってプラスに働いている。
その意味なら、時間稼ぎは成功と言っていいだろう。ロウガの目論見通り、自分の怪我が治るまで、俺達は手を出せない
だが、それは逆に悪手とも言える
「シルフィ!バリン!火だ!火を放て!昆虫系は火が弱点だ!」
「御意!」
「……!!!!」
バリンはひょこっと頭を出し、火の竜を呼び出し、蜘蛛の群れにぶっぱなす
俺と違い、バリンは少々護身術を嗜む程度で、魔法の方が得意だ。アラクニド程度ならバリンでも余裕で倒せる
シルフィは混乱にながらも、目を閉じて火や雷などの火属性魔法を乱発している
クイーンは流石に当たらないが、威力が魔力依存なので、当たるとそのまま燃えるのではなく爆ぜてしまう
そして昆虫達の声で気持ち悪さを想像して、耐えられなくなったのか、顔を赤らめて涙を流しながら闇魔法と風魔法も混ぜてきた
こ、こりゃ本気で混乱してやがるな
流石にシルフィの魔力だと、火でなくてもオーバーキルなので、別に構わないけど、混乱してもらっては困る
急ぎにシルフィを背中から抱きしめてやると、昆虫系のことを頭から吹っ飛んだらしく、
「ななななななななな!!!!」
また別の原因で更にパニックになってしまった
本当にこいつ状態異常無効なのかな、なんか怪しくなってきたぞ
「落ち着け。よく聞いて」
「あああ?はははああい?」
普段飄々として無表情がデフォルトのシルフィが慌てまくっている様子がすこし可愛いと思えたのは秘密だ
「あれは時間稼ぎだ、お前には怪我一つ与えられない」
「……知っています。」
不満げにつぶやきながら、自分の鬱憤を晴らそうとしたのか、激しい竜巻が八方からクイーンを包囲し、逃げ場のなくなったクイーンオオスズメバチをミンチにしてしまうシルフィ
「でも、奴は二つほど、間違いを犯した」
そう、ロウガは万全を期するために時間稼ぎをしただろうが
その時間稼ぎは俺からみれば、愚かとしかいいようのない、悪手の中の悪手だ
まず、俺の(?)シルフィちゃんを見てくれ、こいつをどう思う?
名前:シルフィ・ペンドラゴン
種族:吸血姫・真祖14位
年齢:0歳 性別:♀
レベル:14 状態:飢餓(中)
筋力:511 抵抗力:571
速度:692 魔力:647
精神力:140(-100) 回復力:787
技巧:120 幸運:2
スキル:真祖、吸血衝動、神力、神速、天命、天魔、日光耐性lv9、状態異常無効、鮮血操作lv10、鮮血契約、闘技lv10、刀術lv10
闇魔法lv6、光魔法lv4、火魔法lv5、水魔法lv5、風魔法lv7、土魔法lv5、魔力操作lv6、限界突破lv10、魔法ダメージ半減、
物理ダメージ半減、自動回復lv10
特典スキル:フランディ帝国語、光属性耐性lv5、空腹
そう、敵性生物を倒すたび、シルフィは成長する
真祖14位のシルフィの成長率は人間なぞと比べ物にならない、普通に10を越えてやがる
そんなシルフィに雑魚を与えれば、どうなるのか、というわけだ
今や、シルフィのステータスは速度を除けば、全て伯爵ロウガヤマトを上回った。
因みに精神力は何故かマイナス100になっているが、まぁ、察してやれ
ただ、それだけでは、伯爵位の吸血鬼を凌ぐことができても、倒すことも捕まえることもできない
スピードの差と霧化による不死性がある限り、ロウガに決定的な一撃を与えることは、今のシルフィにはできない
そこは、ロウガの二番目の間違いである
「シルフィ、俺の血を吸え」
「?確かに空腹ではありますが」
戦場で食事は確かにすこし舐めすぎかもしれない
でも、それがシルフィの持つ最大のチートスキルの前提行為だ
無言で抱きしめては、シルフィも観念したように、両手を首に回して首筋にプチっとした
少しシルフィを裏切ったような気分だが、俺は彼女の背中に回している手に魔力を集める
襲いかかる快感を耐え、俺は俺の特典スキルの一つ、幻剣を発動し、シルフィの首に少し傷を付ける
吸血中傷を付けられたのに、シルフィはまったく反応がなく、俺の血を貪る
幻剣は幻の剣という意味で、その真髄は見えない、触れないと感じないにある。
つまり防御不可能で、切られても痛みを感じないチートの剣だ。スピード頼りに交わしきるしかない。
シルフィに殺意も敵意もない俺の小さな攻撃に、視覚を頼らず直感を第一とする彼女が気づくわけもなかった
あんまりぼさっとすると、瞬く間に傷が塞がるので、俺がシルフィのお尻に手を当てて、ちょっと彼女を抱き上げて、首筋に口を当てた
「?!」
最初の抱擁
吸血鬼とそうではない者の神聖なる儀式と言われるが、吸血鬼の血を受け入れたが最後、その者は吸血鬼の下位存在となる
種族を捨てて、主と同じ吸血鬼に成り、それでいって本体の吸血鬼の命令には絶対に逆らえない。
吸血鬼の求愛表現でありながら、絶対に愛情にはならない呪われし儀式
それを、下位存在になる俺によって、強引に行われた。
シルフィは暴れて、離れようとするが、俺が彼女の頭を自分の首に抑えて、儀式を続ける
吸血による快感は吸血鬼自体にも及ぶ。飢餓状態にある彼女が本能に逆らえるわけがなかった
10秒に満たぬ、この場しのぎの吸血行為。
シルフィが俺の首から離れた時、既に白磁の肌がりんごのように赤く染まっていた
涙目にこっちを見上げて睨むシルフィが、前にも三割増して可愛く、もう一度抱きしめてやりたくなる
「なんで、最初の抱擁を……」
「それが、二番目の失策なのさ」
にっこりと笑い、俺とシルフィのステータスをチェックする
名前:ジークフリード・フォン・フランディ
種族:人間族・真祖の眷属
年齢:19歳 性別:♂
レベル:42 状態:健康
筋力:76(+200) 抵抗力:62(+200)
速度:80(+200) 魔力:60(+200)
精神力:110 回復力:24(+200)
技巧:82 幸運:99
スキル:真祖の眷属(new)、毒無効、鮮血操作lv1(new)、鮮血契約(new)、闘技lv4、剣術lv7、闇魔法lv1(new)、光魔法lv6、火魔法lv1、魔力操作lv5、限界突破lv3、自動回復lv1(new)、記憶、統率、覇王の資質lv10、念話lv3
特典スキル:フランディ帝国語、鑑定lv10、幻剣、時間魔法の才能(new)、???、???
名前:シルフィ・ペンドラゴン
種族:吸血姫・真祖14位
年齢:0歳 性別:♀
レベル:14 状態:健康
筋力:511(+76) 抵抗力:571(+62)
速度:692(+80) 魔力:647(+60)
精神力:140 回復力:787(+24)
技巧:120 幸運:2
スキル:真祖、吸血衝動、神力、神速、天命、天魔、日光耐性lv9、状態異常無効、鮮血操作lv10、鮮血契約、闘技lv10、刀術lv10
闇魔法lv6、光魔法lv6(up)、火魔法lv5、水魔法lv5、風魔法lv7、土魔法lv5、魔力操作lv6、限界突破lv10、魔法ダメージ半減、
物理ダメージ半減、自動回復lv10、剣術lv7(new)、記憶(new)、統率(new)、覇王の資質lv10(new)、念話lv3(new)
特典スキル:フランディ帝国語、光属性耐性lv5、空腹、鑑定lv5(new)、幻剣(new)、時間魔法の才能(new)、???(new)、???(new)
鮮血契約。
それこそ真祖の最強のチートスキルの筆頭である
特典スキルではないので、恐らく真祖だけのユニークスキルだろう。
その効果は“最初の抱擁によって眷属化した個体のスキルとステータスの獲得と眷属化した個体の強化”
最初はlv1での獲得と考えていた。それでも十分にチートなのだが、通常スキルはまさかのそのまま持っていくパターン
流石に特典スキルだと丸ごと持っていくわけにはいかなくて、レベル半減でもって行かれた。
残念なことに特典スキルはレベルアップできない。幻剣はレベルがないが、恐らく俺のよりもすこし弱体化していると思われる
それでも阿呆みたいにチートなんだけどな!!!
ちなみに???の特典スキルは気にしないでくれ、俺も何物かはわからん。
「……まさか」
シルフィは自分の体がさっきとまったく違うことに気づき、目を見開いて驚いている
ロウガの二番目の失策は、時間稼ぎは奴だけではない
その時間稼ぎのお陰で、俺達も戦闘中ではできなかった最初の抱擁を決行できたのだ
眷属になったせいで、俺はシルフィに命令に逆らえなくなったわけだが、
元々シルフィが求めるのなら、俺は逆らうつもりはないから大した問題ではない。惚れた弱みというやつだ
シルフィ本人は不満げだが、感情的なところがあっても、結局いつも理性が優先してしまう彼女だから、最終的には納得するだろう
lv5になった鑑定を使い、自分の状態を確認しているらしく。終いに溜息をつく
「分かりました、過ぎたことは今更とやかく言いません。まずは敵を始末してきます」
物騒なことを口走り、シルフィは習慣みたいにすこし浮遊する。
それを意味するのは、シルフィは既に完全に“リラックスしている”ということだ
実際、ここに来て、ロウガは既に前と違って、シルフィの脅威でもなんでもなくなった。
それを的確に認識しているシルフィは、警戒を少し解いたのだ。
「後で、ちゃんと説明して頂きますので」
「ああ、行ってこい。」
俺に背中を向け、シルフィはもう一度大規模の爆風を起こし、バリンが対処していた蜘蛛の残党を一掃する
その様子を見て、ようやく終わったのですかと言いたげにジト目で俺を見たバリンは前と同じく馬車の後ろに隠れておく
シルフィの様子が前と違うのを見て、ロウガは少々驚いたが、すぐに残りの左肩を強引に接続して、迎撃体勢を取る
第二ラウンドだ。
ああああ、ストックなくなった!!儂大ピンチなり!!