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ヤクザ吸血姫、異世界に転移される

なぜか、そういう話書きたくなっちゃった

ははは、反省しませんけど

2080年


地球は統一されなかった。当然である。


でも、地球はこれから百年長く続く、仮りそめの平和を享受することになる。


理由は諸説ある。


世界を裏から操る巨大の組織があったとか


宇宙人の侵攻が近いから団結せざるを得なかったとか


神様のお導きであるとか


どれも微妙に説得力あるが、それは彼女にとってどうでもいいことである。


雷光市。今や日本最大の港町となっている所である。


町を起こしたのは40年前と、市としての年齢は幼い。


でも、自分の地理をうまく活かして、自国より他国の人間が賑わい、メキメキと力を付けていく。


アジアの人間が集う、アジア都市。


その勢いは、首都をも凌ぐと言われている。


当然、光あれば、影もあり。


普通の港町は地理環境の影響で、密入国と密輸に事を欠かない。


本来ならば、雷光市も同じなはずで、今にも、ヤバイ取引をされようとしている。


「確認しろ、20キロだ。」


「ペロ、む、ちょっと質低いんじゃねぇか?」


「それは勘弁してくれ。ここはどんな所か、理解しているだろう?」


「まぁ、あるだけマシってことか。」


両方ともヤクザみたいな外見をしている。現場から見て、恐らくは麻薬の交易だろう。


無論、麻薬は今でも違法である。それにこの雷光市は特にそういうのに厳しい。


だから、二人は目を付けられないように、最小限のボディガードしか連れてこない。


アレらにバレたら、文字通り人生は壊滅する。


「こっちも確認しといてくれ。さっさとずらかりてぇ」


「ああ」


「……ん?」


麻薬の買い手、インテリヤクザ風貌の男は急に不穏な空気を察知して、周りを警戒し始めた。


もう片方の大男は、逆に落ち着いていて、箱の中のキャッシュを確認している。


「おい、お前……」


買い手の男が売り手の大男に声かけようとして、気づいた。


大男はニヤリと、口元があがっていることに。


「っく、ずらかるぞ!」


嵌められた。そう理解するに一秒も掛からなかった。


無論、麻薬に構っている場合はない。命が一番大切だからだ。


後ろに控えているボディガード達も一瞬で状況を理解し、インテリを庇う形で走っていく。


「あ~あ、これももう使い物にならんかもな。焼却処分しておくか」


大男はそのまま硬い地面に座って、タバコを取り出しては火をつける。


「逃げろ逃げろ。お嬢から逃げられたら飴ちゃんをやろう」


無理だろうがな、と呟いて、大男は煙を吹く。


大男のボディガード達も、構いなしにキャッシュと麻薬を回収していく。


「若頭、お先に戻りやす」


「おう。ブツは一先ず置いておいてくれや。多分焼却処分だろうが、お嬢の命令なしにやったら殺される。」


「わかってっすよ。おつかれやした」


「ああ。俺はここでお嬢を待ってるわ。」


会話を交わしていたら、月明かりを浴びて、一人の少女が歩いてきた。


漆黒のロングストレートに、血のように鮮やかな唇。


冷酷かつ知性を宿る真っ赤な瞳が、僅かに動いて、大男を捕捉した。


小柄の体が返り血に染まって、まるで吸血鬼のような王者の風格を窺える。


「終わりやしたかい?お嬢、お疲れ様です」


「はい。光線銃を所持していましたね。若林、貴方もご苦労様です。後始末は任せます。」


「ブツは焼却でよろしいので?」


「構いません。連中のお仲間もそれなりに品質の高いものを所持していました。今度の餌はそれに致します。」


「へい。おい、廉治、車出せ。」


「は!お嬢様、こちらへ」


廉治と呼ばれる男がタオルを出し、少女をエスコートして行った。


その少女こそ、この町に巣食う最強の極道、染岡組のお嬢様。


警視庁は表の正義の味方と言うのなら、染岡組は裏の警察である。


警視庁じゃ手に負えない、法では裁けない凶悪犯罪者は、基本は染岡組の人間か、染岡組に制裁された。


無論極道は犯罪者。しかも人を殺すことに特化している人間が多くいる。


でも、その圧倒的な暴力は、逆に抑止力になって、この雷光市を守っている。


凶悪犯罪率は日本一番低く、その半分は染岡組が他の凶悪犯罪者をシメているものだから、その町の平和は言うまでもない。


そして、今この染岡組を率いているのは、組長ではなく、正にその一人娘のお嬢様である。


頭脳のできは言うまでもなく、武に置いては若頭の若林と護衛の廉治をも上にいく、神に愛されし子。


本来組織の二番手でもある若林でも、オヤジのその娘のお嬢だけに頭が上がらない。


組長の右手たる若林にとって、お嬢は娘のようなものだが、成長が激しく、自分が置いていかれないようにするだけで精一杯である。


(まぁ、親はいずれ子に越されるん運命なんだがよ)


小さく笑って、若林は立ち上がり、その後を追った。





その時だった。


「ん?」


「お嬢様!」


少女の足元に大きな紋様が浮かび、まるで魔法陣のように光り始めた。


「お嬢様!」


廉治は主を守らんと、少女を突き飛ばそうとした。


でも、間に合わなかった。魔法は既に発動している。


少女と廉治が地面を転がり、十メートル外に飛んでも、魔法陣は依然として少女の下に付いている。


僅かに眉が動いたと思ったら、少女と廉治は消えてしまった。


「……なんでやねん?」


残ったのは、現実について行けない若林だけだった。






-----------------------------------------------------



目が覚めた時。私は草むらの上に眠っていた。


日光が辛い。元々あんまり直射日光が好きではありません。苦手です。


さっきまで“夜の港”にいたはずが。いつの間に朝になって、草原に横たわっていた。


ふむ。この事象、考えられる因子はやはり


「あの奇妙な紋様ですね」


さっきから感じる酔いのようなものは、所謂空間酔いというもの。


現代には既に空間を跳躍させる技術を開発されている。


人体を跳躍させるにはまだ至らないが、光りを跳躍させることに成功した。


それによる空間跳躍望遠鏡を覗いた時、ぼほ全員は酔いに近い感覚を感じる。


意識失って運ばれた可能性は否定しきれませんが、空間跳躍をされたと見てまず間違いないでしょう。


「望遠鏡の時より酔いが軽いですね。……ん?」


廉治、いませんね。


私にしがみついてたから、てっきり一緒に跳躍されたと思いましたが。


体を起こし、座って考えていたら、とてとてと、小走りで何かが走って来ます。


「あら?」


なんでしょうか。


狐……いいえ、わんちゃんでしょうか?


白い、耳の大きい狐(暫定)は背中いっぱい果物を刺して、走って来ます。


ハリネズミにしては顔と色が、そもそも尻尾が三つありますね。


こっちが見ているのを見て、狐(?)がびっくりして、固まった。


あら、脅かしてしまったかしら。


「近う寄りなさい。怖くありませんよ」


微笑んで手招きしたら、狐(?)が観念したような表情で、まだとてとてと可愛らしい音で走ってきます。


種類は知りませんが、うちにペットとして飼いたいですね。家の戻れるかどうかは未だ疑問ですが。


「おじょうしゃま、おめざめになられましたか」


「あら?」


この子、喋った?さっきの空間跳躍といい、この子といい、結構ファンタジーですね。


いいえ、


狐(?)が隣に来て、ぺたんと、座って尻尾を振りだした。


やはりワンちゃん、って違う。


その所作、まるで


「廉治ですか?」


つぶやき、彼?の顔を覗き込んだ。


一瞬ビクっとしたが、すぐに小さく頭を垂れて、尻尾を置いた。


「はい。」


「状況が理解できません。説明をお願いします。」


「わたしでもいまだに。おきていたらそのすがたですし、おじょうさまも、すがた、かわられました」


舌足らずに一生懸命に喋る狐、もしくは廉治が可愛らしく、抱きしめてしまいたいのだけれど、自重する。


廉治は、私も姿が変わられましたと言った。


今まで気にしなかったが、両手を出し、眺めてみる。


前も割と白い手が、一点の曇りのない純白になった。少し、爪が長いですね。


耳の隣から垂直に下げていた髪を手に取って、覗いてみる。


黒曜石の自慢の長髪は肌と同じに、白、もしくは銀色に変わった。


体をチェック。ボロい、純白の布がワンピースのように身を纏っているが、下着はない。


連中の返り血もなければ、愛用の漆黒のゴスロリもない。


前はBカップでしたが、今の肩からずしりと、大きな球体が二つぶら下がっております。G程度では済まなそうです。


前に不満はありませんでしたが、こういうのも女性なら一度体験してみたいものですね。重くて肩が凝りそうですが。


「身長はどうでしたか?」


「わたしもちいちゃくなったので、よくわかりません」


ちいちゃくって……元は190センチのヤクザが言う言葉?ちょっとウケました。


しかし、困りました。


状況がまったく理解できません。誘拐では、体の激変に説明がつきません。


廉治と名乗る、恐らく本物のその子も、どう考えても地球の生物ではない。


エイリアンかしら?


「仕方ありません。周りを探ってみましょう。いつまでも座っていても状況は好転しません」


「は、はい!おじょうさま、くだものとってまいりました。おたべになりますか?」


「あら、見たことのない果物ですね……」


「だいじょうぶです!さっきあじ、どくみしておきました!おいひいです!」


味見って言いかけましたね。


可愛いから、いいです。


「食べながら歩きましょう。歩けますか?」


「だいじょうぶです!」


そう言って、廉治は背中に刺さっている果物を振り落とす。


さっきまで果物に刺さってた針のような白い毛が、一瞬でくにゃっと柔らかくなりました。


「その毛、便利ですね。」


「はい、なぜかできるってわかってて、ジブンの身体特徴をカツヨウしています!」


「本能で理解できてたかしらね」


「はい!」


歩幅は前よりすこし大きくなった気がします。147センチでしたから、今は150でしょうか、160のようなおっきい方は憧れです。


どの道今では測れないので、後のお楽しみといたしましょう。


走るほど急いでいないので、廉治も私の歩幅に合わせて小走りしてきます。


一時間ほど歩いてきたら、前方数百メートルに荷馬車が止まっているのを見かけた。


あら?私ってそんなに遠く見渡せましたっけ。


荷馬車、今のご時世では使われませんね。ネタで使うお金持ちの道楽はいくらでもいそうですが。


「ちょっと走りますよ。人の痕跡です」


「え、はい!」


全速とまでいかず、ちょっと体勢を低くして、地面を蹴った。


すると、人間の限界では到底ありえないようなスピードが出て、私は慣れないスピードに戸惑っている数秒で、荷馬車を越えてしまった。


目的地まで300メートルとして、人間の身体能力では、早くても40秒くらいはほしい。それをただの数秒で呆気なく越えた。


「あ?」


「こんにちわ。」


「あ、ああ……こんにちわ?」


背後にいきなりのことで怯えている小汚い男達に声を掛けてみる。


どうやら、お取り込み中みたいです。


大凡10人の汚い男達が、3人が守る荷馬車を囲っています。


その守る方ですが、既に一人が屍になっていました。


「もしや強盗ですか?」


「あ、いや、山賊なんだが……」


「おい、バカ!余所見してんな、そのメスガキも一緒に攫え!」


「落ち着いて見てみれば、超極上じゃねぇか、売っ払う前に味見できんかな…」


「ダメだ。胸くらい揉ませてやるから、てめぇら馬車の護衛をさっさと片付けろ。」


「「「ういーっす」」」


山賊。荷馬車。段々事態が明晰になってきました。


思い出しましたね。小説ではそういうのテンプレと呼ぶのですね。


「大人しくしてろよ、そうすりゃ痛くはしねぇからよ~」


「う、君!ぼうっとしてないでさっさと逃げないか!」


山賊と護衛?達は何か喚いているが、気にならない。


大した情報足りえないことに耳を向ける意味はありません。


体を、心を落ち着かせる。


「質問、貴方達は、敵ですか?」


「あ?」


「私に、害を成すものかと、聞いているのです」


「そりゃ、山賊さまだし?まぁ、悪いようにはしねぇよ、てめぇならイイ貴族に飼われそうだし、寧ろ味方じゃね?」


「わかりました。」


事象を正しく認識できました。


敵、見知らぬ護衛、そして私と、恐らく私を追って来た廉治。


廉治は何処かに隠れているはず。彼の足なら既にここまで到着して然るべきです。


ひいふうみい、この程度の数、前の私でも簡単に片付けられますね。


愛刀を持っていないのは不服ですが、仕方ありません。


「よく言われますが、私はヤクザらしくないみたいです」


下卑な笑顔で寄ってくる男がキョトンとした顔になって、私の言葉を咀嚼する


「でも、それは正しくありません。」


小さく足に力をいれて、空を舞う。


さっきの走りで、力の制御はうまくいってないことが分かりましたが、やはり難しいです。


「あ」


次の瞬間、私は既にかの山賊の後ろに立った。


「汚れますね。仕方ないことですが」


右手を覗いてみれば、そこは既に血まみれになっていて、肉片がいくつか残っていた。


張り手で意識を奪うつもりが、あんまり力を入れすぎて、顔の一部をそのまま持っていってしまったみたいです。


山賊はちょっと揺れて、地面に倒れた。


「私ほど、バイオレンスな女性は、そうそうおりませんよ?」


軽く手を振って肉片を飛ばしながら、微笑む。


情報収集、頑張りましょうか



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