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第9話  スマルクの町6  「ステータス」

よろしくお願いします。

翌日早朝

 裏庭で黙々と素振りをしている。


「フッフッフッフッ」

(昨日の2人との試合は勉強になったなぁ、魔物とは全く違う攻撃や防御。カルティさんとティファさんの剣術の違いもあったし、機会があったらまたやりたいな)


 と考えながら鍛錬を終え、シャワーを浴びて部屋に戻り、カルティさん達とギルドに行くので、ベッドに座って待っている。早朝だとギルドは混んでいるので、少し遅れて行こうと昨日、話をして決めていた。

待つことしばらく。ドアをノックする音が聞こえ部屋を出る。


「「 おはよう、ミツヒ 」」


 2人共装備をした格好だ、さすが冒険者。


「おはようございます、カルティさん、ティファさん」

「昨日は、あの、その、いろいろ迷惑かけたな、ミツヒ。その、申し訳ない」

「全く気にしていませんよ、カルティさん。それより今日は、よろしくお願いします」

「ああ、それじゃ行こうか」


 天気も良く穏やかな町中を、道の真ん中を3人で歩いてギルドに向かう。真ん中に俺、両隣にカルティさんとティファさんと並んで歩いていると、なんだか周囲の視線が気になる。俺より身長のある二人に挟まれて歩く。背が小さいので、ちょっとショック。と項垂れるように歩いているので、囚人が護送されているように見えるのだろう。……姿勢良く歩こう。

 ギルドに入ると数人がいるだけで、受付にミレアさんがいた。俺に気づいたミレアさんは、軽い笑みで手を胸辺りでヒラヒラと手を振っている。それに気づいたカルティさん達は一度俺を見て、対抗意識を燃やすような勢いで、ミレアさんに向かって一直線に歩いて行く。


「いらっしゃいませ、カルティさん、ティファさん、それにミツヒさん」


 2人はスマルクの町では有名なので、知っていて当たり前なのだろう。


「おはよう、ミレア。で、ミツヒとはどのような関係だ?」


 カルティさんに質問され、一瞬、え? と思ったミレアさんの表情が、ハッ、と何かを察知したのか、急に対抗意識が満々な表情になり、不敵な笑顔で答える。


「どのような関係と言われても、そんなに深い関係ではないですよ、カルティさん。先日、ミツヒさんと二人で将来について話をしたくらいです、ウフフ」


 ミレアさんが、威風堂々と言っている。

 すると、驚愕の表情で、涙目になってこちらを向くカルティさん。ティファさんも、オタオタ、と動揺していると、カルティさんが、


「そ、そうなのか? ミツヒ」

「違いますよ、先日はたしかにミレアさんと話はしましたが、薬草採取の買取りの流れから、少し話がそれただけです。(ミレアさん興奮していたし)ミレアさんも誤解するように話をしないでください」

「すみません、ミツヒさん」 


 シュン、とするミレアさん。

 それを見て反対に急に明るくなる2人を見て、なんだか、そうそうに疲れが出た。

 ミレアさんに、俺がステータスウインドウを見る事が出来ないので、水晶を使いたいと話をしたら、基本はダメらしい。が、ホワイトウインドがギルドにその依頼を金貨5枚で出し、ギルドその依頼を受けて達成ということで、俺が金貨5枚をギルドに支払い了承を得た。

……水晶を使うのに金払えばいいだけだった。


 奥にある水晶のある部屋に入る。そこは8帖程の広さで、中央にテーブルと囲むようにイスが6脚。そのテーブルの上には青紫色にうっすらと光輝いている20センチ程の水晶が台の上に置いてあった。

 この水晶は本来、囚人や偽装をしている者の、本当のステータスを調べるためにある。この水晶に掌を触れると触れた者の本当のステータスが、本人と周囲の人にも覗く事が出来る。

部屋の入口の扉付近に立っている2人、ミレアさんは外にいる。


「それではミツヒ。あの水晶に手を付けて見て来なさい。私たちは此処で待っているから」

「はい、では見て来ます」


水晶の前の椅子に座り掌を触れる

ウインドウが出る

掌を離す

ウインドウが消える

掌を触れる

ウインドウが出る


(なるほど、なんとなくコツがつかめてきた、これはゴルドアさんの言う通り言い表せられないな)


 さらに数回を繰り返して確認した後、自分のステータスウインドウを覗き込む。


   ステータス

【 名 前 】 ミツヒ

【 年 齢 】 16歳

【 職 業 】 村人 農民

【 種 族 】  人族

【 称 号 】

【 体 力 】 400

【 魔 力 】  20

【 スキル 】 健脚 瞬脚 剛腕

【固有スキル】  ≪ 心眼 ≫

【 加 護 】      


(へぇー、凄いな。こうやってわかるんだ。足が速かったのは健脚か? さらに早く走ることが出来たのは瞬脚のせいかな。魔物をスパッっと切れたのは剛腕か。ん? 心眼? なんだこれ? わからん。それに文字の回りが囲われているのは何故だろう)


 考え込んでいると、ティファさんが、


「どうした、ミツヒ。見る事が出来たか?」

「はい、見る事が出来ました。ただ、これがどのくらいのレベルかわからないので一緒に見てもらえませんか?」

「え? いいのか? あまり人には見せないものだぞ?」

「カルティさんとティファさんなら構いませんよ、どうぞ来て見てください」

「そうか、それなら」


 赤ら顔になって眼が泳いで、オズオズとこっちへ来る2人を見て、?マークの俺。

 水晶まで来て俺の肩に掌を触れる。

 顔の表情が真顔になるカルティさんが、


「なんだと? 体力はランクCクラス? 魔力量が未だに20は魔法が適正無しだ、でも何だったのだ昨日の強さは。むー、スキルの力が強いのかもしれない、これは事実だしな。健脚は速く走ることが出来るスキル、瞬脚は健脚に上乗せしてさらに速く走ることの出来るスキル、剛腕は重さを半分にすることが出来るスキルだ」


(ん? 心眼は?見えないのか? でも、本当の事が見えるんだよなあ、この水晶)


「カルティさん、この固有スキルとはなんですか?」

「ああ、これは加護と同じで、神などのクラスから付与されるものだよ、そうそう滅多に無いよミツヒ」

「そうですか」

(やはり見えていない。逆の隣で見ているティファさんも同じように見えていない。何か特別なものなのかも。これは黙っていた方がいいな)

「わかりました、ありがとうございました」


 水晶から手を離し、さっきのコツを確かめるように、水晶を使わずステータスウインドウを見ると、ウインドウが出た。再度確認したが問題なく出来た。

 まだ水晶の横に座っているカルティさんが


「わ、私の、ス、ステータスを、み、見るか? ミツヒ」

「他の人が見たらダメでしょう、それに俺みたいな村人が女性のステータスなんて」

「私は構わない、ぜ、ぜし見てほしいにょ、の」 


 あ、カルティさん、噛んだ。

 そして掌を水晶に触れる。

「拝見させていただきます」とカルティさんの肩に触れる。ティファさんは、もう知っている様子で触れていない。


 ステータス

【 名 前 】 カルティ アルディラ

【 年 齢 】 18歳

【 職 業 】 冒険者 (王国第3王女)

【 種 族 】 人族

【 称 号 】 剣士 (騎士)

【 体 力 】 600

【 魔 力 】 330

【 魔 法 】 攻撃魔法 ファイアボール

        回復魔法 ヒール

【 スキル 】 健脚 麻痺耐性

【固有スキル】

【 加 護 】 天使の加護


(え? なに? カルティさんは王女? 冒険者で?……隠してたんだ。あー、だから昨日のエフィルさんは教えてもらったとき、濁した口調だったんだ。でもこれも囲われているから秘密なのかな、そうか、王国の秘密は隠せるのか。俺には見えているけど、黙っておこう)

「凄いですね、カルティさん。剣士で魔法も使えるなんて。それに加護もあるじゃないですか」

「ま、まあな。でもミツヒの強さに比べたら大した事ではないさ」

「でも、魔法も使われたら勝てないですよ」

「そうでもないさ、魔法は心の中で詠唱をするから、剣技の時は少し動作が遅れるんだ。広い範囲を使っての試合なら別だけどな」


 水晶から掌を離す。と今度はティファさんが、


「今度は私ですね、では見てください、ミツヒ」


 と、水晶に掌を触れて、早く見ろ、と急かす。

 いいんですか? と言いつつティファさんの肩に触れる。


 ステータス

【 名 前 】 ティファ ベルティエ

【 年 齢 】 18歳

【 職 業 】 冒険者 (王女付き人側近)

【 種 族 】 人族

【 称 号 】 剣士 (騎士)

【 体 力 】 540

【 魔 力 】 270

【 魔 法 】 攻撃魔法 ウインドカッター

        回復魔法 ヒール キュアー

        生活魔法 アクア ブロアー

【 スキル 】 健脚 料理腕

【固有スキル】

【 加 護 】 天使の加護


(あー、やっぱり。王女には側近がいるよな。で親友なんだよな。普通に話をするし対等って感じがするし、これも黙っておこう)

「ティファさんも、カルティさんに負けず劣らず凄いですね、魔法も、え? 生活魔法ですか、さらにスキルの料理腕って、これだけあればいいお嫁さんになれますね」

「い、いつでもいいですよ、ミツヒ。いつ来てもいいですよ。いつでも私は受け入れます」


 真っ赤になりながら堂々と言っている、ティファさん。グヌヌ、と後ろから聞こえるが。


「ま、ま、ゆっくりと考えた方がいいですよ、ティファさんも綺麗なんですから」


 手を離しながらいうと、ティファさんは、片手で頬をさすってさらに赤くなり、湯気が出そうになっている。

 するとカルティさんがブツブツと、「綺麗?」とか「私は言われていない」とか言っていたが聞こえない振りをした。

 そして、部屋を出るときに後から来る2人が、「フフフ」とか「それはないだろう」とか「生活魔法は卑怯」とか「貴様だけ綺麗」とか聞こえたがこれも無視しよう。

 扉を開けて部屋から出ると、外で待っていたミレアさんが、どうでした? と俺に聞いてきたので、普通の村人でしたと笑ったら、絶対にそんなはずはない、という自信を持った顔で「そうですか、わかりました」と素直に戻って行った。


 ギルドを出て、ゴルドアさんに報告するためマイウ亭に帰る。店に入ると厨房にはゴルドアさんとエフィルさんがいた。昼になるので、水晶のお礼に昼食を奢り、エフィルさんに3人分頼んだ。

 テーブル席に座るとすぐに料理が出てきた。レッドラビットの肉と野菜をパンにはさんでソースが掛けてある。それと果汁。さっそく口に入れるとまだ、アツアツ、で、ジューシーな肉を、ホクホク、食べた。合間に飲む酸味の効いた甘酸っぱい果汁がさらに美味しくさせた。俺も2人も空腹だったので無言で、ガッツリ、と食べた。満腹になり、一息ついたころでゴルドアさんが、


「で、どうだった? ミツヒ。見る事が出来たか?」

「はい、出来ました。ありがとうございました」

「で、ステータスはどうなんだ?」

「普通でした。普通の村人でした」

「そんなことはないだろう、昨日の試合でも普通じゃないことはわかっているんだ」


 そこへカルティさんが、


「親父さん、ミツヒの言っていることは本当です、私とティファにも見せてもらいました。ミツヒには了承してもらっているから親父さんには教えますけど、体力は結構ありましだがそれだけです。スキルは、健脚・瞬脚・剛腕だけです。魔力も20しかないので魔法も使えません」


 ゴルドアさんに向かってコクコク頷くティファさん。


「本当か。そう出ているなら疑っても仕方がない。スキルの上乗せとミツヒの鍛錬ってやつか。あー、もう気にするのは止めとく」


 はぁー、とため息をつくゴルドアさん。


「私たちも全くわかりません、あのステータスであんなに強いなんて」


 チラチラ、と顔を赤らめて上目づかいに俺を見るカルティさんとティファさん。それを見て見ぬ振りをしながら、


「俺も初めて見たし、カルティさんとティファさんのステータスと見比べてもよくわかりませんでした」


 普通に話をしたつもりだったが、ゴルドアさんが、ギョッ、となって俺と2人を見回す。

 そして、ハァ、まったく、と言って厨房に入って仕事を始める。

 俺が何をおかしな事をしたのか、全くわからずにいると。


 カウンターの向こうから、カウンターに両肘を立てて組んだ両手に顎を乗せながら聞いていたエフィルさんが、


「ミツヒ、それって王国や王都の教会で行うんだけど、自分のステータスウインドウを自分以外の異性の人に、自分の意志で見せる。という行為は一緒になっても良いと思った人だけよ。そしてその相手にも自分のステータスを見せたら結婚しても良いですよ。って事、どうするの? ミツヒ」


 ティファさんは、テーブルに、のの字を何度も書きながら、上目使いに俺を見ている。

 カルティさんは、両手の人差し指の先どうしをチョンチョンしながら、上目使いに俺を見ている。


「え? ええ? そんなー、知らなかったんですよ、本当です。ごめんなさい、カルティさん、ティファさん。ステータスウインドウの見方を教えてくれると思って見せてしまって。本当にすみません」


 ペコリ、と頭を下げる俺。

 するとカルティさんは、


「大丈夫だ、私は問題ない、間違いは誰にでもある、でも間違いじゃない時もある、いつでもいいぞ、ミツヒ」


 ティファさんは、


「フフフ、ほんと、間違いはよくあります、ほんと、よく。間違えた人の事は忘れて、生活魔法を持った私がいいですよ、ミツヒ。美味しい料理も」

「ひ、卑怯だぞ、ティファ!! それを出すとはずるいぞ。ま、間違いはティファの方だろう!」

「2人とも、何か言動がおかしいですよ、知らなかったんです、そういう大事な事は、俺に教えてくれていたっていいじゃないですか。だから、間違いです、間違い」


「あらあら、まあまあ。どっちでもいいんじゃないの? 間違いでも本当でも。本人の意思で決めればいいんだから、ゆっくり考えなさい、ウフフ。そうそう、あとでリリにも言っておかないと」


パタパタ、と厨房の奥に入って行くエフィルさん。


「って、何でリリにも? って、エフィルさん? エフィルさん?」



その後

 ドッと疲れが出たのか部屋に戻った俺は、ベッドにバタっと横になり寝てしまった。

 しばらくして、起きると外は夕方前になっていたので、1度体を伸ばして鍛錬をしに裏庭に行くが、今回はアイアンソードも持って行く。初めにアイアンソードを戦闘時の様に振ってみると、やはり振りやすい。

 昨日の試合のイメージで振ってみると、これはこれで振りやすい。しばらく振って確認した後に、素振り用の剣に持ち替えて鍛錬を始めようとしたら、ゴルドアさんが出てきた。

俺に気づいたが、気にも留めようともしないで歩いて行き、俺も素振りを始める。戻ってきたゴルドアさんも、気にせずに厨房へ入ろうとした様子だったが、首だけ回し、こちらを見た。見たのは俺のアイアンソード。ツカツカと来て剣の握り手を持ち、品定めをしている。

 俺は素振りを止めて、


「それは、サイルト父さんから貰ったアイアンソードです」


 と言ったが、無言で品定めをしている。時折、ビュンッ、と振るゴルドアさん。

 そして、最後に剣を天に翳す様に見ていて、納得したようで剣を置いた。


「何か変ですか? ゴルドアさん」

「変じゃないさ、あ、いや、変と言えばとても変な剣だ。はははっ」

「何が変ですか?」

「これはな、ミツヒ。アイアンソード? 違うこの剣はアイアンソードなんてものじゃない。見た目はその通りだがこの剣はな、カモフラージュ、偽装してある剣だ。本当の中身はな、ミツヒ。この剣はな、オリハルコンで作ったオリハルコンソードだ」

「オリハルコン? 材質は知らないけど以前武器屋で見たら、もの凄い高額だったような。それってすごい剣ですよね」

「ああ、そうだ、だがこの剣はそこらのオリハルコンソードとは別物だ。錬成に錬成をし、鍛え上げて加工した一品ものだよ。これはなミツヒ、お前の為にサイルトが細工をしたものだ。さらにその細工が劣化しないように、そして見破れないようにティマルが魔法で練りこんで仕上げてあるのさ。あいつ等と一緒にいた俺にだからわかる。この剣を偽装しないで普通に持って歩いていたら、あっ、という間に噂がすぐに広まって、絶えず、どんなことをしても、殺してでも盗みに来るような代物だ、だから秘密にな」

「そうだったんですか、確かに旅に出る前の剣と、旅に出てからの剣の切れ味が、もの凄く良くなりました。旅に出る前に父さんが手入れをしてくれたからと思ってましたけど、その時に父さんがすり替えていたんですね」

「いい剣だ、大事に使えよ、サイルトやティマルにも感謝しとけ」

「はい、もちろん大事に使います」


 改めて剣を繁々と見つめた。ゴルドアさんが厨房に入って行く。

 と同時にカルティさんが来た。


「やっているな、ミツヒ。鍛錬中ですまない、お願いがあるんだが」

「なんでしょう、カルティさん」

「実は。ミツヒの鍛錬の時に、少しの時間でいいんだ、私たちとまた試合をする時間を作ってもらえないか、ミツヒのように上達したいんだ」

「ええ、それなら喜んで。俺も考えていたんですよ」

「おお、そうか。さっそく明日からでいいか?」

「はい、いいですよ、やりましょう」


 毎日からの朝夕の鍛錬に2人の試合が追加された。


読んでいただいてありがとうございます。

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