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第7話  スマルクの町4

よろしくお願いします。

翌日早朝


「フッフッ、ハッハッ、フッフッ、ハッハッ」


 裏庭で素振りをする。

 最近の素振り用の剣は、タモンの村で鍛錬用に使っていた剣と同じように重くしている。しかも、さらに重くしてあるので、手に豆が出来るしキツイ。でもいい鍛錬になる。

 そこへカルティさんが、おでこに手を当てながら通りかかり、声を掛ける。


「おはようございます、カルティさん。昨日は沢山飲んでましたね」

「やあ、おはようミツヒ。エフィル姐さん達と会うのは久しぶりだったからね、楽しかったよ。うーん二日酔いかな、まだ体がだるい。ん? ミツヒは何しているんだ、素振りか?」

「ええ、まあ日課なので」

「へぇー、ミツヒも剣士を目指すのか?」

「いえ、そういう訳ではありません、鍛錬です。冒険者にも登録してませんから」

(夢があるって言って、聞かれるのも嫌だし……黙っていよう)

「そうか、もったいないな。ん? ちょっとその素振している剣を見せてくれないか」


 どうぞ。と握り手の方をカルティさんに向けて渡すと、


「うわっ、お、重い。これを振っているのか、ミツヒ」


 腕がプルプルしているが、振り上げられない。


「はい、毎朝夕に」

「腕力はあるのだな、確かにミツヒは筋肉質に見えるが、だがそんな力があるように見えない。んー、よし、私が相手をしてあげよう」

「いえ、やめておきましょう。試合用の剣もありませんから。それにまだ体調が良くないでしょう」

「なんだ、逃げるのか、女相手に逃げるのか。練習用の刃引きの剣なら納屋にある、私達が昔使わせてもらった剣がある」

「そうですか。わかりました、では相手をしてください。でも今日の夕方にしましょう。カルティさんが体調を整えてからのほうがいいでしょうから」

「よし、わかった、ミツヒ、夕方にここだな。了解した、では」


 カルティさんが、スタスタ、と歩いて行った。

 俺も素振りを終わらせ部屋に戻る。部屋に入り棚を開き、薬草採取で集めた資金を見ると、金貨1040枚、銀貨264枚貯まっている。

 そして、他の棚の中にある魔石を見ると、数百個がゴロゴロと入れてある、売らずにおいた魔石。しかし、入るところが無くなってきたぞ。


(この魔石を一度に売ったら大騒ぎになるのかな。さて、どうするか)

(大きい町で売るのが最適です)

(大きい町? あー、南にある王都エヴァンか。あそこならたくさんの冒険者が買取りしているから、これくらい大丈夫か。寄るのはギルドだけだから、走って行けば夕方までに帰ってこられるな)

(問題ありません)

(よし、行くか)


 下に降りて朝食を食べる。果実で作ったジャムを挟んだパンとミルク。フカフカしたパンに甘酸っぱいジャムが美味しい。食べ終えて一度部屋に戻り、魔石を背負い袋に入れる。入れられるところに、ギュウギュウ、と入れると袋が、パツンパツン、になる。ちょっと重いが大丈夫だな。一通り装備をして背負い袋を背負って店を出て南の門に走って向かうと、門では出て行く人が並んでいる。順番を待って俺の番が来て証明書を見せ、王都エヴァンに向かうことを門番に告げて通過する。

 町の外に出て、そして走り出す。

 王都までは、歩いて2日、馬車なら半日ちょっとの距離。

 疾風のごとく、人や馬車を避けながら走るミツヒ。さらに早くなっている。周囲の人も、注意して見ていないと気が付かない程になっている。


(俺って、何かおかしいのかな)

(正常です)

(でも、こんなに速いよ。全力だけど速すぎないかこれ)

(正常です)

(わかった。休憩無しで行こう)

( )


 結局休憩無しが良かったのか、昼前より早くに王都エヴァンに着いた。中途半端な時間なのか、門の入口には、順番を待つ人が誰もいないので門番に証明書を見せて中に入る。ギルドの場所を聞き、しばらくまっすぐに行けば、右側に看板が出ているとの事。今回の目的はギルドだけなので、周囲の街並みはほとんど見ないで、小走りにギルドに向かうと看板があった。スマルクよりかなり大きい黒っぽい建物で威圧感たっぷりだ。

 ソロソロ、と中に入るとやはり広い。普通に50人くらい入れそうだが、昼前なので誰もいない。奥のカウンターには受付嬢が2人いた。受付は5か所あったので、忙しい夕方は5人いるのだろう。さっそくカウンターに向かうと、


「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか」

「魔石を買取りでお願いします。証明書だけで大丈夫でしょうか」

「はい、ミツヒさんですね、ギルド内であれば買取りします。ではこちらにお出しください」

「あ、あの、沢山あるのですが大丈夫でしょうか」

「今は誰もいませんから、ここで大丈夫です。多ければ2人で見ますから」

「あ、はい。では出します」


 背負い袋から魔石を出す、魔石を出す、魔石を出す、少し毀れる、拾う、魔石を出す。

 受付嬢が固まっている。隣の受付嬢も固まっているので、


「以上です。」

「…………」

「すみません、以上です」

「ハッ、ちょ、ちょっと、ニッサ、ニーッサ! あなたも数えるのを手伝って。ほら、早く」

「あ、は、はい。ちょっと待って、リース」

「しばらくおまちください」


 色分けして数を顔得ている。汗が出て来たのか額が光っている。

 受付嬢の服は白いメイド服だ。首には青いスカーフ。

 ニッサさんは、身長150センチくらい、茶髪茶眼のツインテール、元気ハツラツの、かわいいスレンダー。

 リースさんは、身長160センチくらい、赤髪茶眼の肩まで届く艶やかな髪、整って顔立ちで10人いれば10人が綺麗と言うだろう。スタイルも良く胸もそれなりにある。


(滅びなさい)

(だめだって。何かの対抗意識か?)

( )


 そうこうしているうちに、リースさんが数え終わった。2人とも凄い汗だ。ニッサさんは何かをやり遂げたように笑みを浮かべ、どこか遠くを見ている。


「お待たせしました、こちらになります。

青い魔石 246個  紫の魔石247個  赤い魔石 221個 白い魔石 86個

銀色の魔石 140…………個 これが銀貨…枚 銀……」


 何だかよくわからないから聞き流した。

 結局魔石は 計1273個 金貨884枚になった。

 了承して 白金貨8枚と金貨84枚を袋に入れ、帰ろうとしたら。


「あの、すみせん、私はリースと言います。ミツヒさん。もうすぐお昼なので、ご一緒に、是非ご一緒に食事でもいかかですか?」

「え、あ、ありがたいのですが、急いで帰りますので失礼します」


 と、スタスタ、とギルドを出た。すると後ろから「ちょっとまていっ! 逃がすものか」とパタパタ走ってくる音が聞こえたので、聞こえない振りをして、一目散に今朝入って来た門に向かった。ギルドが見えなくなった頃、途中の露店で、ロックラビットの串焼きを買って食べながら歩き、香ばしくて柔らかく美味しい肉を堪能した。

 門番に証明書を見せて門を出る。間もなく昼になるが、また走ってスマルクの町に帰る。

来た時と同じように疾風のごとく走る。そして夕方より早く到着。ただ、スマルクの門番に止められた。


「お前は朝、王都エヴァンに行く、と言って出て行ったが、行かなかったのか?」

(本当のことを言っても無理かな)

「はい、途中まで行きましたが、忘れ物も何個かありまして、今回はやめて戻ってきました」

「そうか、なら通ってよし。今後は気を付けた方がいいぞ」

「はい、注意します」

(よく覚えているな、さすが門番になるだけある)


 町に入ってマイウ亭に帰り、シャワーを浴びて部屋に入る。金貨を棚に入れてベッドに座って天井を見ながら、


(このあと、カルティさんと試合をするけど、村を出てから初めてだな。そういえば父さん以外の人とやった事ないな。強いのかな、カルティさん)

(楽勝です)

(やってみないとわからないよ)

(楽勝です)

(わかった、やってみるよ、ありがとう)

( )


 そして下へ降り、裏庭へ行く。


読んでいただいてありがとうございます。

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