第6話 スマルクの町3 「鍛錬と仕事」
よろしくお願いします。
1年後 16歳 身長は155センチ 伸びない。深刻に悩んでいる。
早朝、空が紫色から青色になり始めた頃。太陽が顔を出し始めた草原で、袋を担ぎ、薬草を探し回っているミツヒ。
ある時期、この辺に生息している上位薬草が、ほとんど無くなっていた。つまり、獲りつくしていた。聞いたところ、薬草は1ヶ月で成長する。ということで、それ以来、薬草採取は1ヶ月に一度になっていた。
昼に差し掛かる頃、フゥ、と立ち上がり、伸びをして腰をトントンと叩く。
(久しぶりだから結構あったな、よし、終わり)
(お疲れ様です)
(ん、ありがとう)
( )
さて、入るか、と森に向かって歩いて行く。
最近、また頭の中で、ピーン、と鳴ってから、力がまた少し進化した。それは、声の娘が返事をくれるようになった事。毎回ではないが、返事をくれると、それはうれしくなる。さらに、魔物の攻撃がくる前に、その攻撃の軌道の軌跡や方向が見えるようになった。
森に入ってしばらく歩く。
(強めの魔物は?)
(レッドキャタピラー2体です)
(火を噴く魔物ね。あ、いたいた。まだ見えないけど点滅している)
(気づいたな、あ、火が来る。)
火を噴くレッドキャタピラー。炎を避けて前に出る。牙の攻撃を剣で、ガキッ、と受けて踏み込こんで、ハッ、と切断。もう1体の攻撃が来るが軌跡を見て避ける。炎が来る前にその範囲を避けながら踏み込んで、セイッ、と切断すると魔石が出た。さらに進むと、
(リザードマンナイト3体です)
(お、風魔法使う魔物か。うん見えた、3つ点滅している)
リザードマンナイトが俺に気づいて攻撃してくる。ウインドカッター3連がシュンッシュンッシュンッと飛んで来るが、ヒョイヒョイッ、と避け、踏み込んで近づく。今度は剣で3連攻撃してくるが軌跡を見て避ける。剣で、キンッ、と受け、今度は剣で、ギリッ、と受け流して1体の首を、フッ、と切断。ウインドカッターが来るが避けて踏み込み1体を、ハッ、と切断。最後は剣を受けてから胴を、セイッ、と切断して倒したら魔石が出たので拾った。
こうして順調に魔物を退治していく。
(ここでの鍛錬もそろそろ終わりかな、どこかのダンジョンに入るか。早急ではないから計画を練るかな)
と、考えていたら。
(いいですね、行きましょう)
(どこのダンジョンに行こうか)
(東のダンジョンが最適です)
(エントアの町かあ。急いでないけどそうするよ)
(最適です)
(何でエントアの町がいいの?)
( )
(あ、終わった)
( )
( 声 )との会話もこんな感じになっている。
夕方前に町に戻って、ギルドに入るといつもの様に少し混んでいるが、依然とはちょっと違う。ギルドに入ると、チラチラ、とあちこちから俺を見てる。原因は薬草らしい。買取りは隣の部屋なので周囲には見られないが、買取りのテーブルが他に数か所あるので、その時に何人かが、その現場を見ていて噂になっていた。
(やっぱり薬草採取は終わりかな)
奥のカウンターに向かった、ミレアさんのいるカウンターへ。別に変な意味ではなく、やっぱり慣れている人がいいからね。
「こんにちは、ミツヒさん、薬草ですね。隣の部屋へどうぞ」
「はい、お願いします」
隣の部屋に入りテーブルに薬草を出す。
紫色草18株 緑色草16株 銀貨68枚
毒消草20株 銀貨80枚 合計148枚
スタスタ、と奥に入るミレアさん、すぐに、スタスタ、と戻ってくるミレアさん。
こちらになります。と金貨14枚と銀貨8枚を受け取り袋に入れる。そのとき、ミレアさんに、ガシッ、と腕を掴まれた。そして、ぐいっ、と引っ張られる。もう少しで鼻と鼻が付きそうなくらい近い。ミレアさんの真剣な目が怖い。すると、
「私と結婚してください、ミツヒさん。いえ、結婚しましょう、ミツヒさん。じゃなく、結婚するんです、ミツヒさん!」
「え? ちょ、ど、どうしたんですか、ミ、ミレアさん?」
「それはそうでしょう、ミツヒさん。これだけ買取りして、いつも高額で買取りして、それもこの1年間変わらずに安定して、いつも礼儀正しいし、私のタイプだし、私より年下だけど全然タイプだし、野蛮じゃないし、ミツヒさんと結婚したら、優しくしてくれるでしょうし、こんな好条件、今後、絶対、2回死んでもありません! だから、ミツヒさん」
鼻息が、フーフー、と、荒くなっているミレアさん。
「い、いや、冷静になってくださいミレアさん。そんな急に言われても。って、無理です」
「私は大丈夫です。いつでもいいです、今晩でもいいです」
「だから、ミレアさん、冷静になってください、冷静に。深呼吸してください、深呼吸」
「はい。すぅーー、はぁーー、すぅーー、はぁーー。……あ……あ、何でしょう。私としたことが。なんだかとても感情が高ぶっていました。すみません、ミツヒさん」
「大丈夫です、落ち着いてくださいね、ミレアさん。失礼します」
スタスタ、と部屋を出て行くときに後ろで、「やっぱり結婚」と聞こえたようだが扉を閉めギルドを出た。
(まいったな)
(滅ぼしましょう)
(いやいや、だめだって)
(滅ぼします、叩き潰しましょう)
(ちょっと興奮していただけだよ、確かに資金は大分貯まったから余裕はあるけど)
( )
(今後の計画もしないと)
( )
マイウ亭に着き、裏で素振りして鍛錬し、一通りこなして、お店に出る。
そしてその夜も、いつものように注文を受ける
「ミツヒー、麦酒4個おねがーい」
「ミツヒー、こっちは果実酒5個ねー」
「今度デートしようよー、ミツヒー」
慣れてきた事もあり、最近は女性のパーティから名指しで注文が入る。その代り、リリは男性のパーティから引っ張りだこで注文を聞いている。ただ、リリの場合は、酔っ払いに絡まれそうになると、ゴルドアさんが睨んでくるから問題にならない。
俺にもたまに「手を出すなよ」って言ってくる。そのたびに
「もちろんですよ、ゴルドアさん」
と言い返すと、何故か向こうでリリが、顔を赤くしてほっぺを膨らませている。エフィルさんも「あらあら、ウフフ」とコロコロ笑っているが、気にしないでおこう。
そんな時、初めて見るお客さんが入って来た。騎士風の2人の女性。リリは知っているようで、ニコニコしている。2人は俺を横目で見ながら奥のカウンターまで来た。
「親父さん、姐さん、久しぶりです。帰ってきました」
「あら、カルティにティファ、久しぶりね」
「おー、帰ったか、元気にしてたか」
「「 はい、元気です 」」
「宿は空いてますか?」
「いつもの部屋ね、空いてるわよ」
「「 またしばらく滞在します、よろしくお願いします 」」
あの2人は騎士の様だが冒険者ですよ。と、ちょっと濁った口調でエフィルさんが教えてくれた。パーティ名・白い風・ホワイトウインドと言う名で行動している、今回依頼を受けて遠征して帰って来たとのこと。
「で、姐さん、この子は?」
「今、店を手伝ってもらっているのよ」
「ミツヒです、よろしくお願いします」
「カルティだ、よろしく」「ティファです、よろしく」
カルティさんは、身長は170センチ。腰まである、シルクのようなプラチナブロンド、で深い緑色の瞳を持ち、見事なプロポーションを誇っている。特に、二つの破壊的なものが弾けんばかりに主張している。
ティファさんも、身長170センチ。セミロングの透き通るような銀髪で綺麗な碧眼だ。やはりプロポーションも負けず劣らず素晴らしい。ただ、カルティさんの破壊的な双丘に、ちょっと負けている。
(あれ、ティファさんが俺を睨んでるぞ?)
2人とも俺より2歳年上のお姉さんだった。
また、2人とも綺麗で光沢のあるロングソードを装備している。高そうだな、何で出来ているんだろう。
さっそくテーブル席に座って葡萄酒を飲んでいる2人を見ていると他から注文が入って、
「ミツヒー、麦酒4個おかわりー」
「リリちゃん、麦酒2個―」
「ミツヒー、果実酒5個ちょうだーい、あと、おつまみー」
「リリちゃーん、 」
と、またお店が忙しくなっていく夜になり、更けていく。
翌日早朝
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