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第49話 王都エヴァン   「襲来再び」

その夜


 椅子に座りながら、伏せて欠伸をしているユキナ達を眺めていると、フワフワ、とハネカが現れ、笑顔で後ろから俺の首に両手を回してきて、


【どういたしますか? ミツヒ様】

(どうするって、どうするかな。成り行き任せだよ)

【魔物は殲滅せずに、魔族だけを狙うのも手かと】

(そうだな、それが一番簡単で楽かな)

【畏まりました、ミツヒ様】

(でも、王都の人は助けたいな。うーん、どうしたもんだか)


 すると、その念話を聞いていたファイガとユキナが俺に、


(あるじさま、われはうんどうがしたいです)

(みつひさまー、わたしもまものとたわむれたいですー)

(へ? 運動? 戯れる? そうか、最近はダンジョンも行かないし、運動不足なんだね。んじゃ、ユキナとファイガの運動がてら、やろうか)

(( はーい ))


 急遽、王都の為では無く、ユキナとファイガの運動不足を解消する為に、魔物の討伐が決定した。嬉しそうなファイガ達を見ていると、今度は上目づかいにチラチラ俺を見てくるユキナ達。俺はマジックバッグから皿を出し、ギルドの中だけど従来の大きさに戻って座って待つファイガ達。それを見ていた周囲の冒険者は腰を抜かしたり、受付のリースさんが固まっていたが気にしない。

 始めに、ドードー鳥の姿焼きを盛ると、バクバク、食べ始める。次にパチカンの刺身を盛って油醤をタラリと垂らすと、ハグハグ、と尻尾を、ブンブン、振りながら食べている。あ、クリーンを掛けていないから埃が、ま、しかたがない。最後にシルバーフィッシュの素揚げを盛って終了。サックサク、と食べて満足したようだね。俺も、ホワイトラビットの串焼きを美味しく食べた。その後は、俺の座っている椅子の両横で、従来の大きさのままギルドの床に伏せて寝て待つファイガ達。


 俺は両脇にいるユキナとファイガを撫でながら待ち、そして夜が深くなって赤い満月が真上に昇ってきた頃、ハネカが東の上空を眺めるように、


【ミツヒ様、東の空に魔石の魔力が上がっています】

(来たな、んじゃ、行こうか)

((( 畏まりました )))


 俺はギルドを出て東の空を見ると、光が上がって行き閃光と共に破裂した。その直後、


カンカンカンカンカン…………


 王都の東側で鐘が鳴った。多分、感知魔石の光で魔物の群れが照らされたのだろう。それに合わせて、衛兵らしい騎士達が東に向かって行くのを見て、東にも門があるのだろう。俺達も騎士の後を追うように王都の東へ歩いて行く。徐々に王都の町中がざわめきが大きくなり、何事かと外に出てくる人も出始める。東の門に近づいたが、騎士がゾロゾロと走って出てるところなので居なくなるまでゆっくりと待つ。しばらく待っていたら出て行く騎士が途切れたのを確認して外に出て、先を見ると土煙が上がっていた。

ハネカ曰く、200人程の騎士が魔物に向かって行った。魔物の数は約2000体。10分程で全滅するだろう。

 王都の塀から500m程先で戦闘が始まったようで、魔物を見てみると、先頭にはスケルトンジェネラル、ミノタウロスが多くいて、次に、サイクロプス、リザードマンナイト、ダークグリズリーが多くいた。その隙間を埋めるようにキングウルフやファイヤドックも見えた。空にはグレーバタフライやモンスターバード、ブラッドバットが飛んできている。


(これから行っても、魔法も撃てないし騎士の邪魔になるからね、怒られるといやだからこの辺から準備しておこうかな)


 左にユキナ、俺、右にファイガでゆっくりと進んで行く。そして300m程進んだところで、魔剣ギーマサンカを居合抜きの姿勢で力を溜めて待つ。ハネカには魔法攻撃もしてもらうが、他に、魔族のいる場所を周囲感知で探してもらっている。待つ事数分、200人の騎士が全滅して、魔物の群れが怒涛のごとく王都に向かって来た。まず俺が先頭一番に魔物に向かって水平切りを、ズリャーッ、と薙ぎ払うと、サンダーカッターが放たれ、


ゴヒューーーーーッ! ズバババババババババババーーーッ!


 胴体から上が真っ二つになって倒れて行く魔物の群れ、約400体。それを見てから、ユキナとファイガも参戦して軽やかなステップで楽しむように魔物の群れの中に入って、


ズドンッ! バキバキバキバキーッ! ゴォゥゥーーッ! ザババババババーーッ!

ズッガァァァーーン! ズドドドドドドドーーッ! ビュオォォーーッ!


 俺の進む左側は、氷と爆裂の世界が広がっていて、右側は、炎と雷の嵐の世界が広がっている。俺は、幻想的だなと思いながら、ユキナとファイガを見ると、その中で魔物を蹴散らし、フフフフ、ハハハハ、と走り回りながら楽しそうに蹂躙している。ああ、これが本来の伝説と言われる、フロストタイガーとフレイムウルフなんだろうね。いやいや凄いよ、さすがあのドラゴンと肩を並べるだけあるよ君達は。ハネカに聞くと、現在倒した魔物は半分を越えた所だと言う。


 そしてハネカも、飛んでいる魔物を、


ズドンッ! ズドンッ! バリバリバリーーッ! ゴァァァーーッ!


 打ちまくっている。


 後半戦も、右側で、ウッフフフフ、と、これっぽっちも魔物の攻撃を受けずに、走り回りながら、ザッシュザッシュ、と切り倒していくユキナ。

 左側では、アッーハハハハ、と、やっぱり魔物の攻撃をヒョイヒョイと避けながら、バッキバッキ、と魔物を倒していくファイガ。

 俺も、魔剣ギーマサンカで、サクサク、と切り払って進んで行く。でも、なんだか俺って一番地味じゃないか、いらなくない? と思っていると、ハネカが魔族を発見したのか前方を見ながら、


【ミツヒ様、前方500m先の岩陰に魔族がいます】

(よし、気づかれないように近寄って行くぞ。ファイガ、ユキナ、残党の殲滅は任せた)

(畏まりました、ミツヒ様。全て叩き潰してやりましょう)

(畏まりました、主様。一匹残らず捻り潰してやります)


 残り約300体の魔物は任せて、気配遮断して魔族に近寄って行き、


(ハネカ、攻撃が打てるところになったら、いつでもいいぞ)

【畏まりました、ミツヒ様】

(多分、シールドで弾いて来るけど、俺がシールドを壊すから、すぐにもう一回攻撃してくれよ)

【はい、2回連続で行きます、ミツヒ様】


 俺は、魔物の群れから抜け出ると、ハネカが、ライトニングを連射する、


バリバリバリバリバリーー! チュチュチュチュィィィーーン!


 やはり、魔族はシールドを展開していたが、すかさず俺が、ガンドさんに作ってもらったシールド破壊のスロウソードを、フンッ! と思い切り投げるとそれに合わせてハネカが、


(アイスランス連射!)


 スロウソードが魔族のシールドに突き刺さり、パリンッ! と粉々になった瞬間に、


ズドドドドドドーーッ!


 魔族の羽を中心にアイスランスが当たり、両腕と羽が粉々になって、何が起こったか分からないでいる魔族に近寄って行くと、魔族が、


(ダークランス! ダークストーム!)


ズドドドー! ゴォーー!


 闇魔法で攻撃して来たが、正面から踏み込んで行くが、魔族の魔法攻撃が俺を避けて行く。そこで身体加速で近づき、魔族の両足を薙ぎ払い動けなくして、ハネカにヒールを掛けさせて完了だ。

 一度振り返り、ファイガ達を見たら、爪斬だけの攻撃で、逃げる魔物から、ザッシュザッシュ、と血の海の中で楽しそうに蹂躙している…………なんか怖いな。

 そして俺は魔族を見ると、黒い戦闘服を着ているが、リガエンに似ているスタイルだった。


「なんだお前、女か」

「くっ、殺せ!貴様なんかに!」

「またか、うざいな、お前」


 ガントレットで、魔族の女の右腿を、ズドンッ! と打ち抜くと、


「ギャー!イダイーッ!」

「名前は?」


 もう一度ガントレットで、左腿をズドンッ! と打ち抜き、辺りは血まみれで俺も返り血で血濡れになっている。女魔族は痛みでのた打ち回りながら、


「ビャーッ! レ、レムローサ!私の名は、レ、レムローサ!」

「今度の襲撃はいつだ」

「ハァハァ、し、知らない、ハァハァ・・・」


 ガクッ、と気絶する女魔族。そこでハネカに、


(ハネカ、こいつを完治してくれ)

(畏まりました、ミツヒ様。エクストラリカバー!)


 逆再生のように手足が生え完治させてから、逃げられないように、普通の剣に取り替えて両腕両羽を切り落とすと、痛みで気が付いたレムローサは、


「ビャーッ! 腕が! 腕がーっ!」


 血を吹き出しながらのた打ち回るので、レムローサの腹を足で、ガンッ、と押さえて動きを封じ、


「五月蠅いよ、お前。さて、時間はあるんだ、もう一度ゆっくりやるか」


 右足に剣を突き刺して、


「で、話す気になったか? 知ってるぞ、あとはギュンターとシバンがいるんだろ。白状しろよ」


 左の腿に剣を突き刺す。


「ギャーッ! 話す、話します。ハァハァ、だから、もうやめて、ハァハァ」

「初めから素直になればいいんだよ」


 レムローサの顔面を蹴り上げると、鼻が折れたのか、大量の鼻血を、ドクドク、出しながら怯えた口調で、


「グエッ!もうやめて……ください。話しますから、ハァハァ、酷い事……しないで」

「酷い? 何が酷いだ。お前今、魔物を従えて何をしようとしていたんだよ! それに俺の村も!」


 ビクッ、となって、ガタガタ、と震えだし怯えるレムローサ。


「まあ、いい。で、知っていることを全部話せ」


 レムローサ曰く、シバンは、より強い魔物を従えるのに時間がかかっている。狙いは王国と王都の占領。プライドが高いので予告してくる。魔物を従えると、その魔物の群れは何処かの樹海奥深くで、時が来るのを待って潜んでいる。シバンは何処にいるか分からないが、ギュンターは西の何処かの樹海に隠れている。


「なるほどな、で、やっぱり襲撃は、赤い日か?」

「ハァハァ、そうです。魔物の魔力が高くなるので。ハァハァ」

「カンバルの他に従者はいるのか?」

「い、いません」

「そうか、楽にしてやるよ、んじゃな」


 魔剣ギーマサンカでレムローサの首を刎ねて灰にした。そして、血濡れになった俺の体をハネカにクリーンを掛けてもらっていると、ユキナとファイガが軽いステップをするように戻ってきて、


(終わりました、ミツヒ様。楽しかったです。ウフフ)

(殲滅しました、主様。我も楽しみました。アハハ)


 俺の顔に、スリスリしてくるファイガとユキナ。そこに、フワフワ、と、ハネカも負けじと俺の首に両手を回して、


【終わりましたね、ミツヒ様】

(ああ、みんな良くやったね、今夜は終わりだよ、帰ろうか)

((( はい )))


 王都に戻ろうとしたら、門の外には数百人の人が並んで俺達を見ている。嫌な予感がするので、ファイガ達には小さくなってもらい、戻っていくと、それはもう数百人からの感謝の言葉の嵐だった。俺達が討伐している所を終始見ていたらしい。暗くて良く見えなかったが、攻撃魔法の爆発や炎の光で見ていたとの事。ギルドマスターのアルドアさんからも称賛の言葉を貰った後、話があると言われたが、疲れていたので明日にしてもらった。そして、その夜は王都中で大騒ぎになったが、疲れた俺達はギルドの一室を借りて就寝した。


翌日

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