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第46話 ターナの町 アルディラ王国

数日後、早朝


 漁業の町、オーシヤは早朝から魚が水揚げされるので賑やかだ。魚三昧の毎日を過ごした俺達は、商店で魚料理を買い込んでオーシヤの町を出る。

 ターナの町に向かう予定で、ファイガに乗ってラグナ山を越えて行くと、反対の麓から軍隊がこっちに向かって進んできているぞ。立ち止まってファイガから降りて軍隊を眺めて、


(ハネカ、何してんだ、あれ)

【ミツヒ様、あの愚かどもは竜の討伐をしに来たのでは】

(ふーん、何人ぐらいの規模かな)

【はい、ざっと1万程です、ミツヒ様。あれでは1体の竜にさえ太刀打ちできません、10分で全滅ですね】

(ハネカさん、さらりと凄い事言ってるね。ま、俺には関係ないけどさ)


 すると近づいて来る軍隊の馬に乗っている先頭が俺に気づき、向かってきて馬の上から見下ろすように、


「貴様はミツヒだな! ここで何をしている!」

「何もしてないよ、オーシヤの町で魚食べて帰るところだ」

「そうか、この辺でドラゴンを見なかったか?」

「知らん、見てない」


 すると、軍隊も追いついてきて先頭の騎士達が口々に、


「こいつがミツヒか、なんだ小僧じゃねえか!」

「その伝説の従魔とやらは本物か?」

「はぁ? こいつらが本当に魔物の討伐をしたのか?」


 とか、俺達を見下すように、好き勝手に言いたい事を言い出すとハネカが、


【このバカども、捻り潰しますか、ミツヒ様】

(うん、そうだね、でも、やめておこう。その代り、ファイガ、ユキナ、軽く威圧してあげなよ)

(( 畏まりました ))


 足元から、バキバキ、と地面を凍らせながら牙をむいてゆっくり軍隊に近づくユキナ。

 体の回りに、ビシビシ、と稲妻を放電させて地面の岩を割りながら、ゆっくり軍隊に近づくファイガ。

 すると軍隊が後ずさりしながら左右に割れて行く。


 止めに俺は、魔剣ギーマサンカで麓の森に向けて居合抜きの姿勢になり、軽く水平に薙ぎ払うと、


ズッドォォォンッ! バリバリバリーッ!


 森を跡形も無く一掃して見せる。それを見ていた軍隊の騎士たちは口をあけて、ポカン、としているが、今度は、その軍隊がいる方を向いて同じ居合抜きの姿勢を取ると、逃げ惑う騎士、土下座をして謝る騎士、天に祈りをする騎士、と大騒ぎになる。すると、先頭の騎士が馬を下りて頭を下げ、


「わ、わかった、わかった、すまん、ミツヒ。強さは十分わかった、だから、そのくらいで勘弁してくれ」

「そう、んじゃ」


 魔剣ギーマサンカを背中の鞘に仕舞って、左右に割れた軍隊の真ん中をファイガに乗って悠々と進んで行く。そして、軍隊が切れたあたりで、スピードを上げて、ターナの町に向かう。青い空に白い雲が浮かぶいい天気の中、軽快に爽快に、ビュンビュン、と走るファイガと追走するユキナ。アルディラ王国とルシファンの町を通り過ぎ、ターナの町に着いてガンドさんの店に行く。

 ガンドさんの店に着くといつもと雰囲気が違って騒がしい。ユキナ達は入口で待たせて中に入ると、ガンドさんの他に数人のドワーフがいて、


「ガンドさん、帰りました」


 と、声を掛けたら俺に気づいて振り向いてきて、


「おお、おかえり、ミツヒ。丁度良かった、紹介するよ、こいつらは俺の弟子と仲間の鍛冶師だ」

「そうなんですか、それで何をしているんですか?」

「それがな、俺が魔石で武器を作っている噂が身内でバレて、そんな事は滅多に出来ないから、手伝わせろ、と押しかけて来たんだ。俺も忙しかったから手伝わせているんだが、ダメか?」

「ガンドさんの信用ある方なら別にいいですよ」

「悪いな、ミツヒ。それとスロウソードが一本出来上がっているよ」


 スロウソードを手渡され、マジックバッグに入れると、他のドワーフが「おお収納だ」とか「空間の」とか「アイテム」とか言っていたが、ガンドさんにきつく口止めされていたよ。ついでにマジックバッグからアースドラゴンの鱗を数枚出して、


「ガンドさん、あとこれで何か作れますか?」


 見るや否や、全員が目を見開いて鱗に見入っているが、ハッ、と我に返ったガンドさんが、


「ミ、ミツヒ、ど、どうしたんだこれは」

「アースドラゴンにもらったんですよ、いい物が作れるっていうから」

「いい物? この鱗はそんな生易しい物じゃないよ、ミツヒ。これで武器や防具を作ったら国宝以上になるよ。ドラゴンの鱗なんぞ、ここ数百年手に入っていないんだ」

「そうなんですか、俺は気にしませんけど、出来ますか?」

「いいのか? 俺が作っていいのか?ミツヒ」

「どうぞ作ってください、また余ったら残りは差し上げますよ」


 と、言うと、他のドワーフ達も、これも手伝いたい、と願い出て来たので、どうぞ、というと歓喜の声が上がって、「何を作る」とか「これはだな」とか、ワイワイ、言い合いながら鱗を奥の工房に持って行った。急に賑やかになったな。

 その後俺はギルドに行ってカルバンさんに会い、アースドラゴンの事は安全だと、掻い摘んで話した。


「そうだったのか、しかし、ミツヒは凄いな、ドラゴンと話をするとは」


 俺は気にする事無く、


「そうそう、思い出しましたけど、今度の魔族の襲撃は、王国と王都と言ってましたよ」

「何? 思い出した。って、簡単に言うけど一大事じゃないか。で、それはいつだ?」


 立ち上がって机に向かい伝令だか、何か用意をしている。


「知りません、日にちは聞けませんでした。でも、いつかの赤い満月の日は確かでしょうけど」

「わからないのか、でも、それだけでもありがたいよ、伝令を出しておける」

「カルバンさん、王国には俺が行ってみますよ」


 ギルドを出て、ファイガに乗り、アルディラ王国に向かう。王国の門に着いて入ろうとしたら、一度門番に止められたが、俺の顔を見てすんなり通してくれた。

 その足でファイガ達と王城の入口まで行き、城の番人に、


「王様いるかな、会いたいんだけど」

「何を無礼な事を…………あ、ミツヒか。しかし、急では無理だな、一応聞いてみるが」


 と、言って城の中に入って行く。しかし俺は、城に向かって大声で、


「王様いるかー! 会いたいんだけどー! 王様―!」


 と、叫んだら、周囲の町の人が驚愕の顔をして俺を見ている。そして、巻き込まれないようにと俺と周囲の人の距離が出来る。「捕まる」とか「殺される」とか「無謀だ」とか聞こえたが気にしない。すると、慌てて城の番人が走って戻ってくると、


「ミツヒ、お会いになるそうだ、このまま奥に入って行くように」


 通されたら、後ろから「凄い」とか「なんという」とか「あ、英雄だ」とか歓声が上がっていた。

城の中に進み、大広間に通されたら、あの偉い人が高価な椅子に座っていて、さっそく興奮しながら、


「貴様は、自分を何様だと思っている!」

「なんだよ、村人だよ」

「たかが一度、討伐に上手くいったからと有頂天になっているのだろう!」

「うるさいよ、偉い人、あんまりうるさいと、クイッ、と捻っちゃうよ?」

「な、なんだと! 貴様―!」


 ユキナ達は、我関せず、と伏せて欠伸をしている。そこへ、奥からサーレイン国王が出て来て椅子に座り、


「久しいな、ミツヒ。ここまで来るとは何があった」

「ああ、一度ドレンガさんを助けて貰った恩がありますからね。一応伝えに来ましたよ」

「で、直接私に話とはなんだ、ミツヒ」

「次に魔族の襲ってくるのは、王国と王都ですよ、王様。日時はわからないが、赤い満月の夜ですね」

「それは本当か? ミツヒよ」

「わざわざ嘘をつきに王国まで来ませんよ」


 そこに、割り込むように偉い人が、また興奮して、


「貴様ーっ、何処に証拠がある! 出して見せよ!」

「うざいよ、おまえ」

「何をー! 捕まえて牢に入れてやる!」


 そこに、サーレイン国王が、


「まあ、まて、ミツヒは嘘は言わんだろう。それで、ミツヒは王国を助けてはくれるのか?」

「ああ、魔族がいますからね」


 と、言ったら、さらに興奮した偉い人が、


「貴様なんぞ、いらんわ! 我が王国の軍隊があれば魔物なんぞ一捻りにしてくれるわ!」


 と、言って来たのでサーレイン国王に向かって、


「と言う事だそうです、王様。そこの偉い人に頑張ってもらってください。んじゃ」


 俺達は帰ろうとしたら王様が、


「まあ、待て、ミツヒ」


 と言って来たので、一度だけ王様に振り向いて、


「二言は無いよ、王様」


 来た道を戻り、王城を出ると、夕方になっていたが、王国を後にしてターナの町まで戻って、ガイルの宿に向かった。

 ガイルの宿ではケフィルさんが忙しそうにしていたが、挨拶をしたらすぐに来て、


「いらっしゃい、ミツヒさん。いつもの部屋にどうぞ」


 と、ケフィルさん。宿代はいらないと言っていたが、金貨1枚を支払い、オーシヤの町のお土産に、ケッホの開きをあげたら、大喜びで狸耳を、ピコピコ、させて厨房に持って行った。ケッホに興奮したのかケフィルさんの尻尾が大きく膨れているのを見て…………あ、モフモフしたい。

 部屋に行って、すぐに大きくなるユキナ達に、クリーンを掛けて皿を出すと座って待つファイガ達。オーシヤの町で魚三昧だったから、ブラックボアのタレ焼肉を盛ると、ガツガツ、と食べ始める。次は、ホワイトラビットの串焼きの串を抜いて、20本づつ盛ると、アグアグ、食べる。最後は、ドードー鳥の姿焼きをドンと盛って終了。ガッツリ食べて満足したようだね。

 俺は風呂に行って癒される。風呂で、チャプチャプ、と温まりながら、


(フゥー、いい湯だ。やっぱり最高だね)

【ミツヒ様、王国に来る魔族はどうするのですか?】

(もちろん、殺すよ。その前に色々と聞くけどさ)

【では、王国と一緒に討伐するのですか?】

(いや、手伝わないし助けない。あれだけ言われて、行ったりしたらまた何か言われるだろうし、魔物の討伐は王国の勝手にやればいいさ。俺が叩き潰したいのは魔族だけだからね。でも、国民だけは助けるよ)

【畏まりました、ミツヒ様】


 風呂で癒された後は、食堂に行く。が、やはり満員だ。でもしっかりと、予約席のテーブルがある。うん、やめておこう。と、部屋に戻って、ホワイトラビットの串焼きを食べた。

 そして就寝。瞬寝のファイガ達。


(なあ、ハネカ)

【はい、なんでしょうか、ミツヒ様】

(愛しているよ、ハネカ)

【ハェ? ミ、ミツヒ様。い、今、な、なんと、申されましたか?】

(だから、愛しているよ、ハネカ)

【わ、わた、わちしも、私も、あ、あ、あ、あいし、あー、恥ずかしいです、私もです。う、嬉しいです、ミツヒ様、お慕いしています】


 見えないけど、様子を見るように俺は、


(で? ハネカ、何か変わった?)

【……え?……何がでしょうか、ミツヒ様。何も……変わりませんが】

(ダメかー。以前にハネカの事を好きだよ、って言ったら進化したよね。だから、愛しているよ、って言ったら、また進化してハネカが実体化でもするんじゃないかな。って思ったんだ、それだけ)

【え? えぇぇぇ? それだけ? それだけですか? ミツヒ様。それでは先ほど言っていた事は…………グス、シクシク】

(あ、いや、嘘はいっていないよ、愛している、ハネカ。本当の気持ちだよ。でも、ダメだったか)

【あ、はい、ダメのようです。申し訳ありません。シクシク】

(いや、いいんだ、ごめんな。おやすみ、ハネカ)

【グス、ごゆっくりお休みください、ミツヒ様。グス】


そしてまた数日が経った。


数日後

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