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第45話 ラグナ山     「ドラゴン」

翌日早朝

 ガイルの宿を出て門に行くと門番が俺とファイガ達を見るなり、どうぞ、と言われ順番を待たずに素通りして、ターナの町を出る。さっそくファイガに乗って、ルシファンの町を通り過ぎ、アルディラ王国を横目に通り過ぎ、ラグナ山に向かう。ビュンビュン、と飛ぶように走るファイガと追走するユキナ。最近はこの速さに慣れて来たけどいいのかな。と思っていると、察したハネカが、


【全く問題ありません、ミツヒ様。至って普通です】

(ハハハ、普通ね、わかったよ、もう気にしないよ)

【ミツヒ様、ラグナ山にいる竜ですが、氷竜のフロストドラゴンがいればあとは雷竜のサンダードラゴンと地竜のアースドラゴンだと思われます】

(ハネカは知っているの?)

【はい、その3体が竜の頂点を支配しています。そして、対抗する魔獣が、ユキナとファイガです】

(へ? 何? 対抗って、ユキナ達はそんなに強いんだ)


 すると走りながらファイガが、


(ミツヒ様、我は昔から雷竜と会うたびに叩き潰そうとしましたが、勝敗がついていません)


 追走するユキナも、後ろから、


(私も氷竜とは、以前から捻り潰そうとしていますが、いまだに勝敗が決まりません)

(そうかー、でもファイガ達はその2体のドラゴンと戦っているのは分かったけど、アースドラゴンの相手はいるのかな)

(( フェンリルです ))

(あ、フェンリルですか、なるほどね、勝敗が付かない程互角ってのも凄いね)

【ミツヒ様、その3体の竜どもは特に魔物の類ではありません。ユキナやファイガと同じ魔獣の類で、知識もあり話も出来ます】

(へぇ、そのドラゴンは話が出来るのか。よし、行ってから考えよう)


 そうこうしているうちにラグナ山に着くと、ハネカの周囲感知で、山頂の火口に3体を見つけたので、そこに向かった。山を駆け上り山頂から火口が見える場所まで行くと、火口の中央にいるドラゴンを確認した。その姿は一目で普通のドラゴンとは別格だった。3体とも体長8m程だが、銀色の鱗を持ったフロストドラゴンと金色の鱗を持ったサンダードラゴン、そして、漆黒の鱗を持ったアースドラゴンが顔を合わせて何やら話をしているようだね。

 俺達が近寄って行くと気配で気づいて、フロストドラゴンが俺達に向くと、女性の声で


「ん? 虎か、久しぶりだな、一勝負するか?」


 サンダードラゴンもそれに応じて振り向き女性の声で、


「おお、狼、久しいな、一戦交えるとするか」


 と、言ってきてユキナとファイガが、


(ミツヒ様、しばし行ってきます)

(主様、交えて来ます)


 フロストドラゴンとユキナ、サンダードラゴンとファイガが、左右に別れて離れて行った。すると、左右から


ドガンッ! バリバリバリーッ! ズゴーッ! ドヒューッ! ズッガァァァン!

ズドドドドドドーッ! ヒュドンッ! ザシュッ! ズバァァァァッ! バキバキバキバキッ!


 と、方や氷やブリザードで真っ白になりながらの爆裂魔法、方や雷や炎の嵐や爆裂魔法のオンパレードで、こうやって客観的に観戦すると、1対1なのに戦争のようだね。

 で、俺はアースドラゴンと隣り合って観戦していると、アースドラゴンがおもむろに、やっぱり女性の声で、


「お前はあの虎と狼を従えているのかの?」

「ああ、従魔になってくれているよ。俺はミツヒ」


 ファイガの戦いを観戦しながら、


「ほほう、ミツヒ。かの。我を見て何とも思わないのかの?」

「ああ、それと、ドラゴンはみんな女なのか?」

「わからんが我らはメスだがの、何か問題あるのかの」

「いや、特に無いよ、話が出来ると聞いてたからな。でも、闘いを望むならそれも構わない」


 ユキナの攻防を観戦しながら、


「なるほどの、ミツヒの力で我が倒せるのかの、死んでも知らんぞ」

「いいよ、んじゃ、やろうか」


 俺は、魔剣ギーマサンカをマジックバッグに入れ、オリハルコンの剣を出して構えると、


「何故魔剣で戦わぬ、勝機が薄いのにさらにミツヒの勝ちは無くなるがの」

「経緯を聞いているからな、悪い魔獣じゃなさそうだし。殺したくはないからな」

「殺す? 我を? アッーハッハッハッ、面白いことを言うの、では参ろうかの」


 ブアッ、と羽の付いた手を広げて構えるアースドラゴン。するともの凄い威圧が、ビリビリ、と伝わってきて、ハネカが、


【高熱のブレスが来ます】

(知っている、見えているよ、ハネカ。ダンジョンにいたドラゴンとは桁違いに広範囲だな)


 アースドラゴンのブレスが、ズゴーーーーーーーーーッ! と吐き出されるが、避けるとそのままブレスが追ってくる。ブレスの範囲を見て回り込み、アースドラゴンに近づくと尻尾がビュンと攻撃して来たが剣で受け流し、そこへガントレットの正拳を叩き込むと、ズドンッ!と放ったが鱗が焦げただけだった。一度離れて、嬉しくなった俺は、


「フゥ、いやー、硬いね硬すぎだよ、傷もつかないのか。でも面白いな」

「なかなかやるようだの、ならこれはどうかの」


 アースドラゴンがブレスを吐き出し、範囲を見て避けると翼からウインドカッターが3連撃って来た。それも軌跡で避け、踏み込み、爪攻撃を剣で受け流し右足を水平に、セイッ! と切ったが、ギィンッ! とかすかな傷がついただけだった。そこに尻尾の鋭い攻撃が来たが、ガントレットの甲で受け、その反動でアースドラゴンは後方にひっくり返った。俺はすかさず近寄って回り込み、尻尾を上段から渾身の力を入れて、ドリャッ! と振り下ろしたら半分切れたが、同時にオリハルコンの剣が、バキッ、と音を立てて折れてしまったよ。しかし、それよりもアースドラゴンが、


「ギャャャャーッ! 尻尾がー、イダイ! イダイ! 尻尾がーっ、イダダダー」


 半分切れた尻尾から流血しながら転げまわっている。それを見て俺が、


(なんだあれ、ハネカ。あれが頂点に君臨する魔獣か?)

【はい、そのようです、ミツヒ様。あの地竜は今まで傷を負ったことが無いのでしょう。だから痛みに弱いのでは】

(なんだかなぁ、見てて哀れだな…………ハネカ、治してやってよ)

【畏まりました、ミツヒ様。ヒール!】


 アースドラゴンの尻尾が治って行くと、痛みが無くなったのに気が付いて、転げまわっていたが、ハッ、として何事も無かったように、ムクッ、と起き上がり俺に向かって、


「ミツヒは中々やるようだの、よし、引き分けにしてやろうかの」

「なら、もう一回やろうよ、楽しいし」

「あ、いや、今回はやめておこうかの、他の奴らも終わったようだしの」


 アースドラゴンがファイガ達の方向を振り向く。俺もその方向を見ると、全員全く怪我も無く歩いて帰って来て、ユキナが、


(ミツヒ様、また決まりませんでした)


 ファイガも、


(ミツヒ様、我も勝敗が……)


 あー、わかったよ。君達とドラゴンはどんなに攻撃しあっても怪我も無く戦うから勝敗が決まらないんだ。つまり、飽きるまで戦いを楽しんで終わりってやつね。

 フロストドラゴンとサンダードラゴンも、あー楽しんだ、みたいな事言ってるしさ。

 なんだ…………仲良しなんじゃん。俺はアースドラゴンに、


「んじゃ、いいよ、俺達も引き分けね」

「あ、ああ、それで構わんがの。それにしてもミツヒは強いの。我に傷を負わせたのはミツヒが初めてだの」

「いいよ、そんなことより、俺の剣だよ。折れちゃったよ」


 パキンと折れた剣を両手で持って見ているとアースドラゴンが、


「それはオリハルコンの剣のようだの。我の鱗はオリハルコンより強いからの。無理して切ろうとしたから、剣が耐えきれなかったんだろうの。しかし、オリハルコンを折る力とは、ミツヒは本当に人かの?」

「そうだよ、村人だ。でも、この剣はサイルト父さんの形見の剣なのに。どうしよう」

「どれ、ミツヒ、そこに剣を折れた所と並べて置くが良い。我が鍛えてやろうかの」


 折れた剣をくっ付けて地面に置くと、アースドラゴンが高熱のブレスを細く鋭く吐き出して剣に当てる。その横でサンダードラゴンも細い炎を吐き出して剣に当てている。その作業を見て俺は、


(ハネカ、あれって、剣が解けちゃうんじゃないか?)

【大丈夫です、ミツヒ様。あの竜は錬成が出来るようです。さらに普通の錬成とは違い神界の領域に達している錬成です。ご安心ください】

(神、神界ですか…………あー、もう何も気にしませんよ)


 暫く錬成を見ながら待っていると、熱で真っ赤になった剣に、フロストドラゴンが軽く息吹を拭いて冷やし、出来上がったのかアースドラゴンが、


「これでどうかの、硬さも切れ味も以前より良くしたつもりだがの」


 俺は剣を取って、ブンブン、と数回振ってみると、まったく違和感のない折れる前の剣に戻っていた。


「いいね、直ったよ、悪いな」

「折れた部分の強度を上げるのにアダマンタイトを練りこんだが良かったかの」

「は? アダマンタイト? そんなの持っているんだ。いや、いいよ大丈夫、っていうより、強くしてもらって悪いね」


 その後は、やはり悪いドラゴンではなく、ファイガ達も叩き潰すと言いながら、唯一本気で戦える相手なので勝敗が決まらないらしい。また普段は各地の奥地で静かに暮らし、時折、上空高くから地上を見回して、数年に一度はユキナ達と戦いに来たり、十数年に一度集まって世界の状況を話し合っているだけとの事。そう言ったちょっとした雑談後にアースドラゴンは、


「では、ミツヒ。初めて知り合った村人だからの、これを送ろうかの」


 アースドラゴンが自分の体を、パンパンッ、と叩くと、鱗が十数枚落ちて来た。非常にいい武器が出来るとの事でありがたくいただいてマジックバッグに入れた。そして、他に何かあるかと聞いて来たので、3体のドラゴンに少し話をして、


「なるほどの、了解した。その時はまた会いに行こうかの」

「ああ、んじゃ」

「「「 では、さらば 」」」


 バッサバッサ、と塵尻に飛んで行った。事が終わってみるとなんだか、いい奴らだったな。と、アースドラゴンの飛んでいった方向を見ながら、


(そういえば、ハネカ。ドラゴンの事を知っているってことは、ハネカは何歳なの?)

【ミ、ミツヒ様、女性にそれを聞くのですか? どうしても、と言われればお答えしますが……わ、私は】

(あ、いや、いいよ、聞かない。なんだか……ゴメン)

【い、いいえ……ミツヒ様、それで、この後はどうしますか?】

(そうだね、ここまで来たから、魚を食べに行こうか)


 と、言ったらすかさずユキナが、俺の顔にスリスリしながら、


(行きましょう、行きましょう、ミツヒ様。新鮮な魚の料理が食べたいです)

(主様、我も新鮮な魚が食べたいです)


 俺はファイガに乗って、一路オーシヤの町へ向かった。火口から山頂、麓まで駆け下り、初めてユキナが先頭になって軽快に走って行く。本当に魚が食べたいのだろうね。

 そして夕方、オーシヤの町について門に着くと、やはり門番に、お通り下さい、と素通りだった。念のためにユキナ達は直前で小さくなってもらっている。町中は以前より活気に満ちているようで、露店では新鮮な魚が並んでいた。以前の露店のおじさんに、


「こんにちは、おじさん。調子はどう?」

「いらっしゃい、ん? あ、ミツヒさん。お陰様であの後、すぐに漁が出来るようになって、御覧の通り、さっそくいい魚も入って来てるよ、ありがとうな」


 新鮮な魚もたくさん並べてあった。俺は町の商店で調理をしている魚を買い込んで、サンセットの宿に向かった。

 部屋に入るなり、従来の大きさになって座って俺を見ているユキナ達。はいはい、と、皿を出して、さっき購入した魚を出す。まずは、グロマーの刺身だ。赤身で脂が乗っていて、油醤というタレをちょっとつけて皿に盛ると、バクバク食べ始めるファイガ達。次はフラットフィッシュのメヒラの刺身だ。俺も一口たべたが、白身で淡白だが歯ごたえもあり美味い。それを皿に盛ると、オイヒイ、オイヒイ、と、ハグハグ、食べるユキナ。最後は、焼いてあるケッホの開きだ。40センチ程の白身の魚で塩味だが、さらに油醤というタレを掛けると、ケッホの旨味が増して美味い。それを皿に盛ると、ガツガツ、食べる。ファイガの尻尾も、ブンブン、と振って満足そうだ。

 俺は風呂に行って、海を眺めながら風呂に入り、癒されてから食堂に行く。出て来た料理は、やはり魚料理で、まずはパチカンとリーブーの刺身だ。やはり油醤に付けて食べると、どちらも脂が乗って美味い。次はリーブーの照り焼きだ。刺身とは違い、甘辛く味付けされてこれも新鮮で美味い。モグモグと美味しく堪能しました。


 部屋に戻って、今後の事を考えながら小さいファイガ達と戯れていると、


(みつひさまー、おさかながおいしいですねー、このまち、すきですー)

(あるじさま、われも、しんせんなさかなのりょうりはすきです)

(そうか、んじゃしばらくオーシヤの町にいようか)


 と決まって就寝。


(おやすみ、ハネカ)

【ごゆっくりお休みください、ミツヒ様】


 そして、魚料理三昧を堪能する毎日が続いた。


数日後

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