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第41話 ルシファンの町  「襲来」

4日後


 ルシファンの町は騒々しくなっている。魔物の襲来が来ると聞いて町を出て行く者、家の戸締りの補強をする者、他者多様。そしてギルドには10組ほどの冒険者や王国の騎士が30人程集まっている。王国まで馬車で3日はかかるので、丁度王国へ帰還する為にこの町に滞在していた騎士達だ、運がいいんだか悪いんだか、いい迷惑だろうね。冒険者も自信のあるパーティだけが残り他の冒険者は他の町へ逃げて行ったよ。

 俺はユキナ達と魚を食べながら町で時間をつぶして過ごしている。こんな日に露店や商店は空いていないのでマジックバッグから出した魚料理だ。ドレンガさんに、参加しては、と声を掛けられたが、冒険者ではないので遠慮した。


 その夜、赤い満月が昇った。いつもより二回りほど大きく赤い月。

 町の東側、塀より500m程離れた所には、ドレンガさんを筆頭に騎士と冒険者が陣取って、襲ってくる魔物の群れを待ち構えている。

 俺は気配遮断をしてユキナ達と討伐のお手並み拝見だ。

 そして数刻、地鳴りのような音が聞こえてくると俺は、


(ハネカ、どのくらいの群れかな)

【はい、ミツヒ様。魔物の数、約1200近いかと】

(うわ、結構いるね。あの人達は大丈夫かな)

【ダメでしょう。10分も持ちません】

(ま、頑張ってもらおう、どんな戦いをするんだろうな)


 魔物の群れ、というより大群が攻めてくるのを赤く大きい満月の月明かりが照らす。徐々に土煙が広がって行き、地鳴りも大きくなっていくと、その規模の大きさに圧倒され、一歩二歩と後ずさる騎士と冒険者。

 俺の夜目で魔物の姿が見えてくる、ゴブリンやオークが主体だが、スケルトンナイト、オーガ、リザードマン、ゴブリンキング、オークキングも結構いるのが分かる。サイクロプスも背が高いので点在している。上空はブラッドバットやモンスターバードが数十体飛んで来る。あと確認できるのはハウンドドッグとキングウルフくらいだな。

 ドレンガさんが長い詠唱を終えたのか攻撃魔法を撃ち放った。30m範囲で火柱がゴゥッ! と上がるとその中にいた魔物は焼却されたが、いいとこ100体か。すぐに次の詠唱に入るドレンガさん。他の冒険者の攻撃魔法も出ているがファイヤーボールも単発だし、範囲魔法も規模が小さく良くての3体くらい倒すのが精一杯だ。それを見て無駄だと判断した騎士と冒険者が1人、また1人と逃げ出し、それにつられて魔法使いもそれに合わせて逃げ出したよ。逃げたら町も無事じゃすまないだろうにな。

ドレンガさんはギルドマスターらしく残って詠唱を続け、もう一度攻撃魔法を放ち、30m範囲で火柱がゴゥッ! と上がり100体ほどの魔物を倒した。200体以上倒したドレンガさんはゴスロリに似合わず、他に比べれば桁違いに凄い魔法使いだと感心するよ。

 しかし魔物の勢いは止まらない。ドレンガさんも詠唱が間に合わないと悟ったのか、諦めたように棒立ちで魔物を見ている。ギルドマスターだけあって、頑張ったドレンガさんに対して、魔法使いはまだしも騎士や冒険者の逃走は期待外れだった。


(ドレンガさんもここまでだな。ファイガ、ユキナ、ハネカ、そろそろ行こうか)

((( 畏まりました )))


 俺は気配遮断を解き、魔物に向かって行く。ドレンガさんの横を通り過ぎ、魔物に向かって魔剣ギーマサンカに力を溜め、その間に、


(ヘルフレイム! マックス!)とハネカ

(サンダーストーム!)とファイガ

(エクスプロージョン!)とユキナ


ドゴーーーーーーーーーーンッ! バリバリバリーーーーッ! ズッガーーーーーン!


 あっという間に半分の魔物を焼却した。飛んでいる魔物はハネカのライトニングの連射で、


バリバリバリバリバリバリーーーーッ! ズドドドドドドドドーーーーッ!


 打ち抜いて黒こげになって倒す。


 そして俺は魔剣ギーマサンカを居合抜きの水平切りで、ズァーッ! とファイアカッターを放つと、


ズババババババババーーーーッ!


 魔物を焼却して倒した。残りはあと50体程で半分は逃げようとしているが、ユキナとファイガに追いかけられて、爪斬でザシュッザシュッと1体1体を楽しそうに切り飛ばされていく。いや、ほんとに楽しいんだろうね、まったく。

 それを棒立ちで見ているドレンガさんは、


「な、何という強さだわね、ミツヒと従魔。討伐と言うより蹂躙でしょう? 凄い……この強さなら国も落とせるのだわね」


 残りの魔物の討伐はファイガ達に任せ、


(ハネカ、魔族はどこだ?)

【はい、ミツヒ様。左手前方の岩の上です】

(ん、あ、見えた、あそこか)


 そこには、信じられないという顔をしているアークデーモンが岩の上に立っている。俺は魔族に逃げられないように、身体加速で素早く近寄り、魔族の攻撃が来る前に、普通の剣で右の羽と腕を切り飛ばし、逃亡出来ないようにすると魔族は、


「グギャーッ! な、貴様か、魔物を、た、倒したのは」

「うるさいよ、聞きたいことがある」

「く、殺せ。私は何も知らない」

「そうか、なら、これから苦痛をやるよ」


 ガントレットで右足首に正拳を入れて、ズドンッ! と吹き飛ばす。


「ギャーッ!」

「他の3人の魔族は何処にいる?」


 今度は左足首をガントレットで、ズドンッ! と吹き飛ばす。


「ギュエーッ!し、知らない」


 今度は右腿をガントレットで、ズドンッ!と吹き飛ばし、血しぶきが舞い、魔族が、


「ギャッ!」カクッ、と白目をむいて気絶すると。


(コイツの傷を治してくれ、ハネカ)

(畏まりました、ミツヒ様。ヒール!)


 魔族の傷が治って行き、すると魔族が目を覚ます。と同時に、俺は魔族の左膝をガントレットの正拳で、ズドンッ!と吹き飛ばすと血しぶきが舞う。


「ギャーッ、止めて、助けて、グウーッ」

「他の3人の事を話せば楽にしてやるよ」

「は、はい、1人は南のギルア山、もう一人は西のベルタル山を住処にしています。もう1人は何処にいるか知りませんがどこかの樹海だと思います」


(どうだ、ハネカ。本当の事か?)

【はい、ミツヒ様、その魔族は嘘は言っていません】


「魔族、お前の名は?」

「カ、カバスです」

「だれの指示でこの町を襲う計画を立てた」

「自分で計画しました。他の3人も各自で何かを計画しています」

「他の魔族の計画の実行も赤い日なのか」

「は、はい、・・・そうです」

「タモンの村を襲ったのは誰だ」

「し、知りません」


 魔族の右足の腿をガントレットの正拳で、ズドンッ! と吹き飛ばし、さらに血しぶきが舞うと、ブルブルと震えだしながら、


「ギャーッ!シバンです、シバンです。ハァハァ」

「やはりアイツか、シバン。他に知っていることを話せ」

「ハァハァ、シバンは村を2つ襲ったと言っていました。ハァハァ、私たちの中では1番強い男です」

「もう一つ?どこの村だ」

「ハァハァ、東の果てにある村だと聞きました。ハァハァ、他は知りません」


(どうだ、ハネカ)

【はい、ミツヒ様。そのようです】


 俺は瀕死のカバスを見ながら、


「そうか、良かったな。これで、楽にしてやる」


 と言って魔剣ギーマサンカを魔族の胸に突き刺すと、灰になって行く。丁度ファイガとユキナも魔物を片付けて帰って来たよ。楽しんだユキナ達は、


(ミツヒ様、魔物狩り、終わりました)

(主笹、我も片付けました)

(ああ、ご苦労様、よくやったね)


 するとハネカが、


【ミツヒ様、お体が返り血で汚れています。クリーン!】


 魔族の足を吹き飛ばした時の返り血で、体中血濡れになっていたが全く気にしていなかったな。ようやく気が付いた俺は、


(ふう、さっぱりした。ありがとう、ハネカ)


 俺は、呆然と立ち尽くしているドレンガさんのところに行って、普通に挨拶するように、


「こんばんは、ドレンガさん。これはあなたが討伐したと言う事でお願いします」

「な、何を言っているのだわね。それはダメでしょう?」

「俺は大事になるのが嫌なんです、情報をドレンガさんに教えたのは俺ですよ、もし俺の事を喋ったら許しません。あの魔族の最後を見ていたのならお分かりですね、後はよろしくお願いします」

「ちょ、ちょっと待ちなさいだわね、ミツヒ!」


 魔物がいなくなり静かになったことで、町から騎士や冒険者が出てきてこっちに向かって来るのが見え、俺は気配遮断を掛けてドレンガさんから離れて行く。そして、ドレンガさんは回りに集まった騎士や冒険者に「英雄だ」とか「ドレンガさん万歳!」とか喝采を浴びている。その集まっている中に、ただ一人だけ俺を見ている魔法使いがいるのに気付いたハネカは、


【ミツヒ様、あの者はこちらが見えるようです】

(なに? 気配遮断しているのに見えるとはね)


 俺は魔法使いを見ると目が合う。そして、その魔法使いは、何も無かったように俺から目を離しドレンガさんに顔を向ける。


【どうしますか? ミツヒ様。殺しましょうか】

(今のところ何もする気は無いようだから。気にすることは無いよ、行こうか)

【はい、畏まりました、ミツヒ様】


 俺はキボウ亭に戻ってユキナ達と就寝。


翌日朝


 俺は今、ファイガ達とギルドにいる。早朝、キボウ亭にドレンガさんが来て連れてこられた。無視して逃げても良かったのだけど、半泣きのドレンガさんがゴスロリの服で土下座までして、来てくれと言うもんだから、周囲の目もあり言う事を聞いてギルドにいる。

 ドレンガさんの部屋で、


「ミツヒ、お願いだから事実を公表させてほしいのでしょう? 嘘は嫌いなのだわね」

「ダメですよ、今回の魔物の討伐はドレンガさん1人で行ったことです。他の騎士や冒険者もそれを見て確信しているじゃないですか?」

「町の中から見ていれば、そう見えたのでしょう? でも私は呆然とミツヒと従魔の戦いを見ていただけだわね」

「それでいいじゃないですか、別に問題は無いのでは?」

「大ありなのでしょう? これだけの事を1人で出来る訳ないだわね。私には無理なのでしょう? 今後、もし同じ規模の討伐があったら私が呼ばれて即座に死んでしまうのだわね。それは嫌でしょう?」


 大粒の涙をポロポロ流しながらお願いしてくるドレンガさん。俺は、ハァ、と仕方なしに、


「わかりました。ドレンガさんの好きにしてください。忠告しておきます。ただし、今後、王国や騎士団などに呼ばれても行きません。ドレンガさんが阻止してください。それが条件です」

「ミツヒ、それは無理なのでしょう?」

「じゃ、この話は無かったことに。では失礼」

「ま、待ってだわね、ミツヒの名前は出さないと約束するでしょう?私以外の誰かと言う事にするだわね」

「ドレンガさん次第ですよ、失礼します」


ドレンガさんの部屋を出て、受付のシシーリさんに、


「俺はタモンの村の出身だけど、東の方にあるもう一つの村って知っている?」

「村ですか…………あ、あります。南のアルディラ王国から東にずっと行った所にシュナの村があります。詳しい話は王国のギルドで聞けば教えてくれると思いますよ」

「シュナの村か、ありがとう、シシーリさん」


 俺はルシファンの町を出て、ファイガに乗って飛ばし、昼にはアルディラ王国に着いた。

 アルディラ王国は中央に王国の城があり、放射状に街並みが広がる城塞都市の様で、50万人ほどが住んでいる。他にも王国の貴族や関係者も1000人程いる。街並みは王国らしくレンガで敷き詰められた街道が豪華さを出し、馬車の往来も町より別格に多い。


 王国に入る順番を待っているが、門番も厳しく調べている。俺の順番が来て門番に証明書をみせ、


「ミツヒ。か、初めてだな、後ろの従魔の使役はしっかりとするように、他に危害を加えた場合は厳罰になるぞ」

「はい、わかりました。それとギルドは何処にありますか?」

「ギルドなら入れば正面に見えるよ」


 王国に入ると正面にギルドが見えた。さすが王国にあるギルドだけあって造りも大きい。

 ユキナ達とギルドに入ると中には疎らに人がいたが気にせず入るとチラッと俺を見る何人かの男がいるがそれだけだった。俺は受付に行って、


「いらっしゃいませ、ご用件はなんでしょう」


 黒いメイド服に身長150センチ程で赤い髪が腰まであり、赤い目の色白な美人が2人。そう、双子だ。瓜二つだ。マーラさんとマーレさんと名札に書いてあった。


「あの、シュナの村について聞きたいんだけど」

「はい、シュナ村ですね。ではそちらの掲示板をご覧ください」


 掲示板に行ってシュナ村の事を探すとすぐに見つけた。

 シュナ村は、アルディラ王国から馬車で10日は掛かり、東の辺境にある村で100人ほどが住んでいる。昔魔物に襲われたときに偶然、冒険者、獄炎のパーティがいて、魔物から村を救ったという記事だった。


 記事を見てからギルドを後にして、露店や商店で肉料理や魚料理を買って門に行くとユキナが、


(みつひさまー、ここにはとまらないのですかー?)

(ああ、ユキナ。別に泊まろうと思えばいいんだけど、王国は好きじゃないからね。シュナ村に向かうよ)

(わかりましたー、みつひさまー)


 門を出て東に進み、ファイガに乗ってシュナ村まで走る。途中森で野宿をして朝に出発、シュナ村が見える頃には昼になっている。岩にシュナ村と書かれているのを見つけ……。


シュナ村に着いたが、村は無かった。


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