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第40話 魔族の国

翌日早朝


 朝食はレッドサーモンの塩焼きを食べてから、ルシファンの町を出る。そして俺はファイガに乗って魔族の国に向かう。ルシファンの町から魔族の国までは、樹海に走りやすい通り道ができたとはいえ、馬車で行くとすると20日はかかるが、ファイガの速さで行けば夕方には着くだろう。

 ターナの町、王都エヴァン、スマルクの町を瞬く間に通り過ぎ、樹海の跡地を越えて、辺りが暗くなり始める夕方過ぎに魔族の国に着いたよ。壊したことが嘘のように綺麗に直っている城門の前に立ち、


「俺はミツヒだ、魔王に会いに来た」


 すると、城門が空いて1人の魔族が出てくると俺を見て、


「ミツヒか。入れ」


 先日の討伐が嘘のように素直に通されると、魔王のいる玉座まで誰にも会わずにファイガ達と歩いて行く。すると魔王のいる広間の扉の前に立つと勝手に扉が開き中に入る。

 大広間の奥に座っている魔王が先日の事など何も無かったように、そして昔から俺を知っているように、


「おお、ミツヒか、今日は何の用だ」

「聞きたいことがあって来たよ。魔族の言う、赤い日ってなんだ?」

「赤い日か。うむ、それは満月が赤くなる日の夜だ。魔物の力が一時的に強くなる。その満月が一番高い所に昇った時がピークだ」

「なるほどね、赤い満月か。魔王、それはいつだ?」


 手を顎に当てて少し考え込んでいると、思い出したように、


「うむ、一番近い日は5日後だな」

「5日後か、悪かったな、それだけだ」


 それだけ聞けばもう十分と、帰ろうとする俺に魔王が、


「待て、ミツヒ。今日は泊まって行ったらどうだ、せっかく来たんだ、歓迎するよ」

「俺を歓迎? 先日暴れたんだぞ?」

「かまわんよ。疑われたいたのだから仕方がない事だからな。私は個人的にミツヒ。お前を気に入っているからだよ」


 俺は少し考え、


「……風呂はあるのか?」

「風呂? ああ、あるぞ、気に入ると思う」

「じゃあ、泊まるよ、悪いな、魔王」


 風呂、の一言で泊まる事にしたよ。俺達は部屋に案内され、中に入ると、天井も高く広い部屋に通された。中央に置かれたベッドもとても大きいよ、いいね。従来のファイガとユキナが一緒に寝ても余るぐらいの大きさで居心地もいいな。

 その後、食事は大広間で魔王と女王、そして娘のリガエンと食べる。他の魔族は誰もいないが気にしなかった。ファイガ達はその横で肉料理をバクバク食べているのを横目に、


「悪いな、魔王。料理まで出してもらって」

「気にしないでくれ、ミツヒ。それで4人の居場所は分かったのか?」

「今のところ1人かな、赤い日に町を襲うらしいよ」

「迷惑をかけてしまったが、よろしく頼む」

「いいさ、俺の問題でもあるしな」


 しばらく談話をしながら食べていると魔王が、


「ところでミツヒ。リガエンを嫁にもらわないか?」


 俺は飲もうとしたスープを、ブーッ、と拭き出した。


「はい? 何を言っているんだ、魔王」


 口を拭きながら、リガエンを見ると満更でもない様子で、チラチラ、と悩ましい目で俺を見ている。先日、俺と戦ったことは忘れたのか? と思っていると魔王は、


「リガエンは嫌いか? ミツヒ」

「いや、だから、そういう問題じゃなくて。確かにリガエンは美しい女性だとは思うよ」


 先日の戦いとは打って変わって、急にしおらしくなったリガエンは、


「私も強いミツヒがタイプだ。だからミツヒの嫁になりたい」


 そう言ったリガエンは顔を赤くしてモジモジしている。

 これが魔族か? あの、恐ろしいと言われている、本当にあの魔族か?


【ここで潰しときましょう、ミツヒ様。代わりに私が、チョロッ、とヘルフレイムで】

(いや、ダメだよ、ハネカ、やめような)

「ダメだ。俺はまだ嫁はいらない。それに将来は決まった人がいるから無理だよ」


 するとリガエンは当たり前のように、


「やはり、許嫁がいるのか。私はそれでも構わない」


 女王も初めて口を出してきて、


「何人いてもいいのではないですか。それだけ強くていい男だということです。今すぐとは言いません。ゆっくり検討してください」


 話を濁したまま食事も終わり、ファイガ達は部屋へ、俺は風呂に行く。魔王の風呂は豪華だったよ。石張りの壁に囲われ、金色の獅子の口から淡々とお湯が出ていてとても広くいい湯だね。いいな、好きだよこういう風呂。


(凄い風呂だな、それに、いい湯だ。気に入ったよ、たまに来て使わせてもらうかな)

【ミツヒ様、あの魔族の女は潰さなくていいのですか?】

(ハネカ、それはやめておこうよ、せっかく魔族と繋がりが出来たのに)

【そうですか、仕方がないです、ミツヒ様がそう仰るのであれば】


 そこに1人の人影が見え、こっちに歩いてくる。げっ、リガエンだ。それも一糸まとわぬ裸のリガエンだ。うわっ、隠していないから初めて女性の裸をモロに見てしまった……魔族が初めてってのも何だが。すると怒った口調のハネカが、


【だから! だから潰しましょうと言ったのに……ミツヒ様は】

「な、なあ、リガエン、何をしているんだ」


 俺の前で仁王立ちになっているリガエンは、


「ここは私の風呂でもあるし、それにミツヒの背中を流そうかと」

「いや、いいよ大丈夫だから」


 と言いながら広い風呂なのに俺の隣に入って来るし。隣でリガエンが、


「ミツヒは私の事は嫌いか? 私には魅力が無いのか?」

「ここで言う問題じゃないだろう。いや、お前は美しいし魅力的だよ」

「なら私はいつまでも待っている。2番でも3番でもいい」

「女王がゆっくり考えろって言ってたろ。それにリガエンも他に好きな人が出来るかもしれないからさ」

「私はミツヒだけだ。肌を見せたのもミツヒだけだ。だから、もう他にお嫁に行けない」


 お湯に浸かりながらこっちに向くリガエン……ああ、立派な双丘が。


【グヌヌッ、やはりミツヒ様は大きくないとダメなのですね、ダメなのですね】

「リ、リガエン、胸を張って見せなくていいから。それに、もしリガエンが嫁に来たら他の魔族が黙っていないだろう?」

「他の者は私より弱いから興味はない。やはり、ミツヒのように強くていい男が良い」

「と、とりあえず、俺は先に出るから」


 リガエンは話足りないようだが、俺は逃げるように風呂から出て部屋に戻り、一息ついてファイガ達とまったりして就寝。


(おやすみ、ハネカ)

【…………。】

(ハネカ? 大丈夫か?)

【ミツヒ様、ミツヒ様は何人の嫁を貰うのですか?】

(貰わないって。それに決まったわけじゃないだろう)

【ミツヒ様が、うんと言えば全員が嫁になります】

(だから言ってないよ、大丈夫だから。それにカルティさんやティファさんも諦めてくれたじゃないか)

【本当でしょうか…………ごゆっくりお休みください、ミツヒ様】

(あ、ああ、おやすみ、ハネカ)


翌日早朝

 魔王のいる広間で、


「もう行くのか、ミツヒ。リガエンには会って行かないのか?」

「また来るよ、世話になった」


 魔王に別れを告げ、魔族の国を出て一路ルシファンの町に向かう。

 ファイガが、ビュンビュン、と走ってもルシファンの町に着く頃は夕方になっていた。俺はギルドに向かい受付のシシーリさんに、


「ドレンガさんに会いたんだけど」

「ギルドマスターですか。はい、どうぞ奥の部屋へ」

「確認しなくていいのか、シシーリさん」

「はい、ミツヒさんが来たら部屋に通すようにと言われています」


 先日のギルド内の事など何も無かったように話をするシシーリさんに部屋に案内され、俺はユキナ達と部屋に入るとドレンガさんが座っていた。ドレンガさんも先日の事は気にする事も無く、


「やあ、ミツヒ、今日はどうしたのだわね」

「ええ、魔物の襲来する日が分かりました、4日後の赤い満月の夜です」

「え? それは本当なのでしょう? どこで聞いて来たのだわね」

「それは秘密ですよ。出所は言えませんが、ほぼほぼ確実です」

「魔物の数や規模はわからないのでしょう?」

「そこまでは俺にも分かりません、一応報告しておきます。あとはドレンガさんの判断にお任せしますね」

「ミツヒ、ありがとうだわね。それでも助かったでしょう?」

「では失礼します」


 ギルドを出てキボウ亭に行き、


「今晩は、バルベランさん。4泊お願いします」

「ああ、ミツヒ、いらっしゃい」


 金貨4枚を支払い部屋に行く。クリーンの後はフラットフィッシュの素揚げを皿に盛るとサクサク食べ始める。次にレッドフィッシュの塩焼きを盛ると尻尾をブンブン振ってバクバク食べる。最後はホワイトラビットのタレ串焼きを20本ずつ串を抜いて盛るとガツガツ食べて終了。俺は風呂に入って泡で癒され食堂に行く。出て来た料理はシルバーフィッシュのから揚げだ。シルバーフィッシュは体長10センチもない小さい魚で骨も柔らかく食べられる。サクサクした食感で塩味やタレ味があり、一口サイズで美味い。ポイポイと口に運びサクサク食べ、何個でも食べられそうだ。ちょっと食べ過ぎたが美味しくいただいた。


 部屋ではいつもの様にじゃれ合って就寝。


 何事もなくルシファンの町で過ごし、


4日後の赤い日


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