第37話 スマルクの町
よし、見に行ってみようか。
ファイガ達を連れて、村の東に道もない草木の中を走るとすぐに深い木々に覆われた樹海があった。ハネカが、
【ミツヒ様、魔物の国はこの樹海を越えた遠い先にあります】
俺はファイガに乗って樹海の中を何も無いようにものすごい速さで走り抜けていく。途中で出てきた、と言うより運悪く出くわした魔物は、ハネカの攻撃魔法で、ズドドドッ! バリバリバリッ! と蹴散らして行く。樹海を抜けて少し行くと広大な谷が広がっていて谷底が見えない。魔族の国の城壁がその深い谷の先にとても小さく、米粒ほどの大きさで見えた。
(あれが魔族の国か、これじゃ行けないな。他から行くしかないから、帰ろう)
ファイガに乗ってタモンの村に戻った。そして村を片付け掃除して、ハネカに土魔法で整備してもらってからファイガに乗ってスマルクの町に戻る。
マイウ亭に行くと、ゴルドアさんだけで、
「行ってきました、ゴルドアさん」
「ミツヒか、え? もう行って来たのか? 早すぎだろ、って、 お、おいどうしたその髪の毛。え? 瞳が赤いぞ?」
「あ、ええ色が変わっちゃいました、ははは」
「髪の色が変わるって、一体何があったんだ、ミツヒ」
「実は……」
ファイガに乗って行った事や、タモン村の全滅と、サイルト父さんとティマル母さんも殺された事を報告すると。悔しそうな顔をしながらゴルドアさんが、
「サイルト達がやられるとは……クソッ、クソッ……一番悪い事態になっていたか」
「もう大丈夫ですよ、起こった事は仕方がないですゴルドアさん。それと、魔族の国に行く方法教えてほしいのですが」
「魔族って。行く気じゃないだろうな、ミツヒ」
「モチロン行きますよ、魔族を滅ぼしに行ってきます」
「それは無理だ。ミツヒ、魔族の国には魔王がいる。とてつもなく強いぞ、死ぬ気か?」
「大丈夫です、俺には従魔もいるし、叩き潰してきますよ」
「わかった、引き止めん。ただ、そこまでして行きたいなら条件付きで教えてやる」
「いいですよ、ゴルドアさん」
「スマルクの町のギルドマスターと試合をしてミツヒが勝ったら教えよう」
「はい、じゃあギルドに行きましょうか」
小さくなったファイガ達を連れてギルドに行くと、受付にミレアさんがいた。俺に気が付いたが毛色と眼の色が変わっているから分からないようだ。また、ゴルドアさんも一緒なので普通に受付をしている。
「ミレア、クランを呼んで来てくれ」
「ギルドマスターですか? は、はい」
ミレアさんが奥の部屋に行ってすぐに戻ってくると部屋に通された。中に入ると、身長180センチ程で金髪、細身だがしっかりした体格、騎士風の男の人がいる。そのギルドマスターらしい人が、
「どうした、ゴルドア、久しぶりだな」
「ああ、さっそくだがクラン、このミツヒと手加減抜きの試合をしてくれ」
「突然何を言ってるんだ、ゴルドア。俺は昨年の武道大会の優勝者だぞ、本気になる訳無いだろう」
「俺はいいですよ、クランさん、やりましょう。俺が勝ちますから」
呆れたように、ゴルドアさんが、
「魔族の国に単身で乗り込むと言うから、わからせてやってくれ。クランに勝ったら教えてやると言ったもんでな」
それを聞いたクランさんは、
「はぁ? なるほど、いいでしょう。ミツヒと言ったな、そこまで言ったら手加減無しだぞ」
「ええ、問題ありません、クランさん」
そして地下の試合場に行って試合を始める。治癒魔法士らしき人も呼ばれているので真剣勝負だった。ゴルドアさんが念を押すように、
「ミツヒ、やめるなら今が最後だぞ」
「やめませんよ、ゴルドアさん。チャッチャとやりましょう」
「不幸な事が起こってしまったが、性格まで変わってしまったな、ミツヒ」
「変わってませんよ、ゴルドアさん、ははは。さ、やりましょうか」
ゴルドアさんは、俺には加護があって魔法が聞かないことを教えてから、クランさんと俺は中央に行き普通の剣を構える。
キインッ! とクランさんが打ってくるが、俺が剣で受けるとクランさんの怒涛の攻撃が来る。
「キキキキキキキキキッ! カカカカカカカッ! ギンギンギンギギギギンギンギン!」
俺はクランさんの攻撃を、いとも簡単に片手剣で全て受け止める。隙が出来たので、クランさんの剣に力強く剣を撃つと、体ごと剣で受け止めたクランさんは壁に吹き飛び、壁を突き破って気絶した。慌てた回復魔法士がヒールを掛けて起き上がると、
「ハアハア、ゴルドア、ミツヒは強いよ、ハアハア、俺じゃ話にならない」
見ていたゴルドアさんは驚いて、
「そこまで強くなっていたのか。はぁ、まいったな、約束だからな、仕方がない」
約束はゴルドアさんの代わりにクランさんが教えてくれると言うので、クランさんの部屋で話を聞くと、
「魔族の国のある場所は、古文書に記されていてわかるが、行き方が不明なんだ。行き方は3通りあって本当に行けるルートは一つだけらしい。一つはタモンの村から東へ行くとイシエアの樹海があって歩いて行くしかないが樹海を抜けるのに1か月かかりその向こうにあると言われている。もう一つはこれも1か月かかるがルータの町から北東に行くとギルア山があり山頂を越えて行くと向こう側にあると言われている。三つ目はギルア山の南側の麓にあるレイリムの樹海を越えて行くとあるらしいがこれも歩いて1ヶ月はかかる。この3通りの行く手には強い魔物が多く出るから厄介だよ」
「クランさん、そのイシエアの樹海からは行けませんよ、魔族の国は見えましたけど」
「な、何? イシエアの樹海を抜けたのか、ミツヒ」
「ええ、次はギルア山に行きます、では」
「ちょっとまて、ミツヒ、おい、ちょ、あー行ってしまったよ。ゴルドア」
「まいったな、これからどうするか」
俺は聞く耳を持たずに部屋を出て、ミレアさんは俺を、チラッ、と見て目を下に逸らした。多分容姿の変わった俺が怖いのだろうね。部屋に残ったゴルドアさんは、タモンの村に起こったことをクランさんに説明してマイウ亭に戻ったらしい。
俺はスマルクの町を出てファイガに乗ってギルア山に向かって行くと途中でワイバーン、ゴーレムと遭遇したがユキナとハネカの攻撃で蹴散らして進んで山頂に着いた。
ギルア山の山頂からも魔族の国が見えたが、ここも麓の先は深い谷があり無理だった。
(ここもダメだね、残るはレイリムの樹海か)
【どういたしますか、ミツヒ様】
(このまま行ってみようか)
ルータの町には戻らずにギルア山を何も無いように駆け下りるファイガと追走するユキナ。駆け下りる速度がとても速いので、あっ、という間にレイリムの樹海の前に着いた。すると、ユキナとファイガが、
(ミツヒ様、ここは私がやりたいです)
(主様、我も働きたいです)
(ああいいよ、存分にやってくれ。後ろからついて行くから)
ユキナとファイガは魔法を放ちながら樹海を進む。
ズドンッ! ズバババババババッ! ゴフゥー! バリバリバリッ! ドッカーーーーンッ!
(( ウッフフフフ、アッハハハハハ ))
と笑いながら魔物も樹海もろとも吹き飛ばしながら楽しそうに走り回って進んで行くファイガとユキナ。進みやすくなった樹海を、俺は目についた魔石を拾いながら後を進む。
ユキナ達のペースも早く、1日で樹海を通り抜けた。抜けたらそこには道があり、ハネカ曰く、魔族の国に続いているようだと言う。
途中の岩陰でご褒美にと、周囲をハネカにクリーンを掛けてもらって皿を出し、ステーキを盛ると嬉しそうにガツガツと食べだす。次にオークのタレ串焼きの串を抜いて20本ずつ盛ると尾をブンブンさせて食べる。最後はロックバードの塩から揚げを盛って終了。バクバク食べて満足したようだ。俺もから揚げをアツアツハフハフして美味しく食べた。
一息入れた所で俺たちは進んで行く。
樹海を越えた後の道中は魔物も出ずに魔族の国の城門の前まで順調に来た。
俺はハネカに、
(ハネカ、城門を通れるようにしてくれ)
【畏まりました、エクスプロージョン!】
ズッガァァァーンッ!
魔族の国の城門は粉々に吹き飛んだ。そして魔族の国の城門を通ってゆっくりと中に入る。
見てろよ魔族、蹂躙の開始だ。




