第33話 スレギナの町2
翌日早朝
食堂に行くと、ダンジョンに行く人なのか混んでいて満員だ。少し待って席が空いたので、座るとすぐにビクテマさんが忙しそうに料理を運んできた。昨晩に出て来た同じ形のパンを横から切って有り、薄く切った肉と野菜がタレで炒めて中に入れてある。食べるとパンの中のアツアツな肉が野菜と絡まって何ともいい味を出しているね。ハフハフモグモグ、と美味しくいただきました。
部屋に戻りファイガ達とギルドに向かう。ファイガ達は、ギルドの入口から少し離れたところで待ってもらったよ。でないとまたいろいろと面倒な事がありそうだからね。ギルドの中に入ると混んでいるが、順番を待って受付のテスタさんに証明書を見せ、
「おはようございます、テスタさん、ダンジョンの登録をお願いします」
「おはようございます、ミツヒさん、登録ですね。はい、出来ました。お気をつけて」
ギルドを出てファイガ達を呼び、ダンジョンに行くと此処でも順番待ちだ。後ろに並んで待つこと少々、順番が来てダンジョンに入り進んで行く。
徐々に他の冒険者と離れて行くと俺はマジックバッグから魔剣ギーマサンカとスロウソード、ガントレットを取り出して装備し、周囲感知で気配が無くなったところでファイガ達が従来の大きさになって進んだ。
1階層
体長1m程の銀色のメタルスライムが現れた。メタルスライムは、ファイガ達を見ても逃げない所を見るとかなり強いのかな。さっそく魔剣ギーマサンカでメタルスライムを、サクッ、と切って倒すと魔石が出て拾う。なんだか攻撃も無いまま倒したがいいのかな。
少し進んだら体長2m程の黒いオーガキングが盾と剣を持って現れた。俺はスロウソードをオーガキングに向かって、フンッ、と投げると、スカッ、と刺さり手元に戻ってくる。オーガキングが石になって消えると魔石が出たので拾う。
2階層
体長2m程のリザードマンジェネラルが現れた。俺たちに攻撃を仕掛けようとしたがファイガのファイヤランスでズドドッ! と刺さり灰になり魔石が出て拾うとハネカが、
【今回は魔石を拾って行くのですか、ミツヒ様】
(ああ、単体の魔石なら拾うのもすぐだし、残すとまた面倒になるからね)
3階層
体長1m程の体が硬そうなロックビートルが3体で飛んで来たが、ユキナのアイスランスブリザードが、ゴゥー! とロックビートルを包むと簡単に、ブスブス、と刺さり、消えて魔石が落ちて拾う。
4階層
体長2m程の銀色のメタルスパイダが現れて、いきなり酸を吐いてきたが避けて、ハッ! と切ったら簡単に、サクッ、と切断し消えて魔石が出て拾う。魔剣の刃を見ながら、
(この魔剣ギーマサンカって凄い能力だな、サクサク切れるよ)
【ミツヒ様の強さがあってこそ魔剣の真価が発揮できるのです】
5階層
体長4m程の銀色のミスリルリザードが現れた。ファイガに爪攻撃で襲ってきたが、逆に爪斬で、ザシュッ! と倒し魔石を拾う。凄いな、ファイガの爪斬ってミスリルも切れるんだね。
進むと横穴にセーフエリアがあり、そっと覗くと何組かのパーティが寝ていたので通り過ぎよう。
6階層
体長4m程のメタルドックが現れ、ユキナに牙攻撃をしてきたがユキナも爪斬で、ザシュッ! と簡単に切断し倒して魔石を拾う。やっぱりユキナも同じ強さの爪斬だね。
7階層
体長2m程のスケルトンジェネラルが現れた。剣で攻撃をしてきたので俺は魔剣ギーマサンカでその剣も一緒に、スパッ! と切断し倒して魔石を拾いながら、ふと思った俺は、
(ハネカ、おかしくないか? いくらなんでも魔物が弱すぎじゃないか? ギルドでは強い魔物って言っていたよな)
【他のダンジョンに比べたら強い魔物ですが、ミツヒ様がさらに強くなっているのです。その証拠にこのダンジョンの魔物はファイガ達を見ても襲ってきます】
(確かにそうだけど、でもこんなにアッサリ倒せていいのか?)
【いいのです、ミツヒ様ですから】
8階層
体長3m程の黒いキングミノタウロスが剣と盾を持って現れ攻撃してきた。俺はガントレットで、ガイン! と受けて見たら、俺には反動は無くミノタウロスが後ろにひっくり返った。すかさずスロウソードをキングミノタウロスに、フンッ! と投げるとサクッ! と刺さり石になって消え魔石を拾う。
少し進んだら、丁度その奥で他の8人のパーティがキングミノタウロクと戦っていたので、俺たちは気配遮断で近くの岩陰に隠れてそっと観戦することにした。
攻防は一進一退で、前衛の4人が攻撃して、中衛の2人が魔法攻撃し、後衛の2人が回復魔法をかけている。キングミノタウロスも攻撃を盾で受け、剣で薙ぎ払い、動作も素早く、1人の前衛の剣士を切ったが致命傷ではない。すかさず隣の剣士が割り込み、傷を負った仲間を助け、中衛の魔法攻撃でけん制して回復魔法をかける。しかし、1人が欠けたことで均衡が崩れ始める。転じてキングミノタウロスの反撃が始まりジリ貧でパーティが押され始めると、もう一人が盾で弾き飛ばされ岩壁に激突して動かなくなった。するとハネカが、
【ミツヒ様、あの冒険者は魔物に勝てません】
(ああ、キングミノタウロスが強いのは十分わかったよ。ハネカ、あのパーティが逆転できる一発だけ助けてやってほしい。そしてすぐにここを離れるよ)
【畏まりました、ミツヒ様。ライトニング!】
ハネカの攻撃が、キングミノタウロスの右足に、バリバリッ! と突き刺さり右足が吹き飛んで転がる。それを見届け走り去る俺達。
(あのパーティの攻撃は遅く感じたよ、もう2テンポ速く攻撃できれば勝てるのに)
【そう見えるのは、ミツヒ様だけです】
(いい配置のパーティだったけど、前衛のスピードが遅いな、ミノタウロスの攻撃に目が追いついていないよ。他の人も一点歩遅れるっていうか)
【それが普通です、ミツヒ様】
(そうかな、ま、他は他だから俺は鍛錬に集中しよう)
9階層
体長3m程の青黒いギガンテスが盾と棍棒を持って現れた。ファイガがギガンテスの攻撃を、無駄の無い動きで避けながら爪風で、ヒュンヒュンッ! と切り刻んで倒し魔石を拾う。
(やっぱり、あっさりと倒せるね、強いんだな、ファイガ)
(ありがとうございます、主様。ですが我の力はまだまだです)
でもドヤ顔のファイガ。それを見ているユキナは気に食わない顔をして、チッ、とか言っているし。
10階層
体長6m程の茶色いグリフォンが現れた。すかさずユキナが、
(あの、ミツヒ様、私にやらせてはもらえませんか?)
(え? ユキナが? あ、うん、いいよ)
(ありがとうございます、ミツヒ様)
ユキナが軽やかに嬉しそうにグリフォンに突進しグリフォンの爪攻撃や魔法攻撃を、ヒラリヒラリ、と優雅に避けて爪斬で、ザシュザシュザシュッ! と6mもあるグリフォンを切り刻んで倒し魔石を拾う。…………なんだか八つ当たりにも見えるが。
(ユキナさんも強いよ、うん、本当に強い)
(ありがとうございます、ミツヒ様。ウフフ)
喜んで顔をスリスリしてくるユキナ。
11階層
体長3m程のゴーレムのようなロックベアーキングが現れ、俺に攻撃してきたがガントレットで、ガインッ! と受けたら俺には反動は無く、ロックベアーキングが後方に吹き飛んだ。
(お、調子いいよこのガントレット、これなら反撃のタイミングが楽になるよ。さすがだね、ガンドさん)
俺はロックベアーキングに踏み込み、攻撃を避けて魔剣ギーマサンカで、セッ! と切って倒し、魔石を拾う。
12階層
体長4m程で銀色のメタルサイクロプスが現れた。
【ミツヒ様この一つ目は雷が聞きません】
(へぇ、どうなるの? ハネカ、1発撃ってみてよ)
【畏まりました、ミツヒ様。ライトニング!】
バリバリッ! チュイン。と弾かれる。
(なるほどね、って俺達は簡単に見てるけど。ハネカ、他の冒険者は勝てるのかな)
【先ほどの8階層の者であれば、30人ほどいれば何とかなるかもしれません】
(さ、30人ですか、そうですか……気にするのはよそう)
(主様、我が行って宜しいですか?)
(ああ、どうぞ、ファイガ。でも雷攻撃がだめだってさ。あ、行っちゃった)
ファイガがメタルサイクロプスの攻撃を、ヒラリ、と避けて爪斬で左腕を切断し、右腕を牙攻撃で切断し、メタルサイクロプスの口にファイヤランスを、ドガンッ! と放ち頭が吹き飛んで倒して魔石を拾う。 硬い爪と牙だね、何でも切れそうだよ、凄いねとファイガに言おうとしたが、負けず嫌いなのか、ユキナが、ジーッ、と見ているのでやめておこう。
13階層
奥の方で、ブブブブブブブブブ、と鳴っている。ん? あれ? 嫌な音? スレギナのダンジョンにも居るの?
すると、体長60センチ程の赤い色をしたポイズンキラービーが奥から群れで飛んで来た。
(うわ、でかっ! これは、ハネカさんお願いします)
【畏まりました、ミツヒ様、フルフレイム! ミニマム!】
ゴゥーッ! と炎の塊がポイズンキラービーを包み込み焼却して倒し、魔石を数個拾う。
(ギルドじゃ、数は出ないって言ってたのに違うね)
【ミツヒ様、他の者はこの階層まで来ていないのですから知らないのでは】
(そうだね、俺にはハネカやユキナ達がいるから安心して進めるよ)
14階層
奥から体長10m程の紫色に光るスライムスネークが現れた。
【あの蛇は毒と麻痺があり、切っても再生ではなく元に戻ります】
俺は魔剣からオリハルコンの剣に替えてスライムスネークに進むと毒を吐き出したが避けて、サクサクッ! と切断したが逆回しの様に元に戻る。切った感触はあまりないが、久しぶりにしばらく鍛錬して楽しんだあと、
(ハァハァ、もういいや、後はファイガ、頼んだよ)
(畏まりました、ミツヒ様。我も少々遊ばせていただきます)
ファイガも俺の鍛錬を見て、すぐに倒さず爪斬や爪風で遊んでからフルフレイムで焼却して魔石を拾う。スライムスネークも強い魔物なのに……なんだかなあ。
15階層
入ってすぐに横穴があり入るとセーフエリアになっている。中は広く隅には転移の魔方陣があって、
(今日はここで泊まるとするか、ハネカ、どうだ?)
【いい時間です、ミツヒ様。外は夕方を少し回ったところです】
(よし、ハネカ、まずはこのエリアにクリーンだ)
【畏まりました、ミツヒ様。クリーン!】
それから俺とユキナ、ファイガにもクリーン掛けてもらいスッキリする。マジックバッグから皿を出すと、すかさず皿の前で座ってじっと待つファイガとユキナ。はいはい待っててね。とブラックグリズリーの塩コショウステーキを20枚ずつ盛るとバクバク食べ始める。次はレッドボアのタレ焼肉をドンと盛り、尻尾を、ブンブンと、ブンブンと、振りながらガツガツ食べる。埃が立ちそうだったけど、うん、やはりエリアにクリーンを掛けてもらって正解だったね。食べている間にロックバードの串焼きを20本ずつ串を抜き盛って終了。ハグハグ食べて満足したようだよ。俺もロックバードの串焼き2本をモグモグと美味しく食べました。
次はマジックバッグから布団を出す。ユキナ用とファイガ用、そして俺の敷き布団を広げるとさっそく自分の敷き布団に寝転がり、ベッドと違って、フカフカ、と楽しそうだ。俺も横になると、ファイガとユキナの久しぶりのフルボディアタックならぬ、デカい体を摺り寄せてくる。フッサフサで気持ちいいんだが。この後は…………やっぱり舐めてくる。ペロンペロンと舐めてくる。まあいいや、とされるがままになっていると。途中からユキナが舐めるのをやめて俺の口ばかり、チュッチュ、しているから、
(ねえユキナ、何しているんだい?)
(え? キスです、チュ、ミツヒ様、キス、ウフフ、チュ、楽しいです、ミツヒ様、チュ、ウフフ)
すると、ハネカのどすの利いた念話で、
【ユーキーナーッ! 今すぐに叩き潰しますからミツヒ様から離れなさい!】
それを聞いたユキナが、ボフンッ、と小さくなってファイガと反対の俺の横で小さくなり抱きついて、
(みつひさまー、はねかさまがー、いじめますー)
【だから! それは卑怯ですよ、卑怯! ユキナ!】
(まあ、いいじゃないか、ハネカ。スキンシップだからさ)
俺の見えない位置でユキナが、ウフフ、と笑っている。ハネカが、グヌヌ、と言っているようで仲がいいな。ファイガも、またか、何やってんだか。と無視して俺に擦り寄っている。
その夜は仲良くじゃれ合って、俺もいつの間にか寝てしまった。
【シクシク、ミツヒ様、私は実体になりたいです。シクシク、好きです……ミツヒ様】
翌日早朝




