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第32話 スレギナの町1  「ダンジョン」

スレギナの町へ

 今、ターナの町を出発してスレギナの町に向かって走っている。途中、トプの沼で妖精のエレンさんとエリーナさんに挨拶して通り過ぎてきた。森を抜けてしばらく走るとスレギナの町の塀が見えてくる。ユキナ達を影から出して門に近づくとスレギナの町に入る人が並んでいるので俺も順番を待つ。そして俺の番が来て証明書を見せると門番が、チラッ、とユキナとファイガを見て、


「冒険者でもないのに従魔か、それも単身で。ダンジョン攻略だろうが、がんばりなよ」

「はい、ありがとうございます。それで、ギルドは何処にありますか?」

「この門を過ぎたらそのまま直進して行けばダンジョンの手前にあるよ、よし通れ」


ダンジョンの町スレギナ

 岩と木で出来た塀が町を取り囲み、約4000人が住んでいる町。この町の西側にダンジョンがあり、その手前にギルドがある。この町はダンジョン攻略の冒険者なども300人ほどが宿に泊まっているので宿も豊富だ。また、商店や露店も多数あって活気に満ちている町。


 町中を歩いていると、他の町であまり見なかった従魔を連れている冒険者がいることに気が付いた俺は、


(この町は俺達と同じで従魔がいるね、ユキナやファイガと仲良くなれる魔獣がいるかな)


 トテトテッ、と歩きながら周囲を見回すファイガとユキナだが、


(みつひさまー、いないですー。よわすぎー)

(あるじさま、あんなよわいのは、われがいやです)

(え? 弱いんだ、弱いのは嫌なんだ…………失礼しました)

【ミツヒ様、対等なのはフェンリルくらいです、ウフフ】

(へぇー、フェンリル。知らないけどそれも伝説級って魔物なのか。あ、本当だ、従魔から道を開けて行くよ。っていうより逃げている?)


 俺たちはギルドに向かって歩いているが、その先にいる何体かの従魔が主人の冒険者を無視して端に逃げている。ああそうだ、テスタロの町のギルドで飼っているサーベルタイガーを思い出したよ。

 そうこうして歩いてギルドに着いた。ギルドの中は従魔も入っているが、ファイガ達は入口の外に待たせておいたよ、騒ぎになるのも嫌だからね。まだ日は高いが冒険者の出入りは多く、受付も並んでいるので俺も最後尾で順番を待つと、ハネカが、


【ミツヒ様、あの3人の馬鹿どもはいません。ご安心ください】

(あの3人? ああ、以前のダンジョンの町で声を掛けてくれた人ね。ははは、了解)


 順番が来て受付の人に証明書を見せる。受付のプレートにはテスタさんと書かれている女性だ。座っているが身長170センチ程の茶髪を肩まで届く程度に伸ばし、切れ長の茶目。スタイルも良い美女だ。いつも見てしまうところは……普通です、ごく普通。

 気づいたハネカが、


【ミツヒ様、どこを見ているのでしょうか? ミツヒ様?】

(ど、どこも見ていないよ、ハネカ)


「はい、ミツヒさんですね。では奥の部屋にどうぞ」

「え? 奥の部屋? 何故ですか?」

「ええ、ミツヒさんがギルドに来たら部屋に通せとギルドマスターに言われているので」

(はぁー、なんだかな……ギルド繋がりか?)


 部屋に通されると奥の机に座っている人が俺を見て、


「やあ、初めましてミツヒ。私はギルドマスターのウラカ。よろしく」

「ミツヒです、初めまして、ウラカさん」


 赤いドレスを着た、身長140センチ程の銀色の艶やかな髪を腰まで伸ばしている赤目のスレンダーな幼い顔の美少女……美少女?


「ミツヒ、今、私をチビだと思ったな? 思ったな? これでも大人だぞ。大人だぞ!」

「いえ、全く思っていませんよ。とても可愛い人だな。とは思いましたけど」

「え? そ、そうか、それならいいが。うんうん」

「で、俺がここに呼ばれる理由は何でしょう、ウラカさん」

「まあ、座って話そう、ミツヒ」


 ソファに座るとウラカさんが、


「テスタロのシオンから、ミツヒという者が来たら一度会っておけ。という通達が来たんだ」

(シオンさんか、やっぱりそうか)

「それで俺に何か」

「いや、それだけだよ、伝説級の従魔を従える者がどういう奴か見たかっただけだ。そして、ミツヒがこのスレギナのダンジョンで何階層まで行けるか楽しみにしているよ」

「頑張ります、ウラカさん。一つ聞きたいのですが、フェンリルってご存知ですか?」

「フェンリル? ああ、それも伝説級の魔獣だよ、この世界に1体しかいないらしいが、その1体で国を滅ぼしたとも言われている」

「フェンリルってそんなに凄いんですか、へえー」

「私も見たことは無いけどね。それと、ダンジョンの詳しい話はテスタに聞いてみなさい」


 部屋を出て、テスタさんに、


「テスタさん、ダンジョンの事を聞きたいのですが」

「はい、ではお教えします。登録等に関しては他の町のダンジョンと同じです。スレギナのダンジョンは30階層からなっています。このダンジョンの特徴は他の町のダンジョンと違い、各階の魔物は少ないか単体です。その代り低層階から強い魔物が多いです。5階層にはセーフエリアがあって転移でダンジョンの入口横の穴に戻れます。今現在の到達している階層は8人パーティで9階層までです。ミツヒさんは冒険者ではありませんので、魔石やドロップ品はギルドで買い取ります。以上ですが何かご質問はありますか?」

「30階層なのにセーフエリアが5階層だけですか」

「いいえ、詳しくは9階層より先に行った冒険者がいません」

「ではどうして最深部は30階層と?」

「この町の教会にあった古文書に書かれていました。それを書いた者も知る人はいません」

「他の町のダンジョンと比較すると10階層にもセーフエリアがありそうですね」

「それはわかりません。10階層にいる魔物がグリフォンと判明はしているのですが、5階層からさらに4階層も行くと体力の疲労と魔力の枯渇が心配になり、グリフォンを倒しても、もしセーフエリアが無ければ全滅の可能性があるので、今現在誰も行けません。従魔を従えた強いパーティでも9階層まで行って5階層まで戻り、転移で帰ってくるパターンが多いです。このダンジョンは低階層でも魔物が強いので他の町のダンジョンより比較的いい魔石が獲れるため多くの冒険者が来ています」

「なるほど、そういう事ですか、ありがとうございました。それと此処の魔石ではないですが買取りをお願いできますか?」

「はい、では隣の部屋にどうぞ」


 隣の部屋でテーブルに魔石の入った袋を置くと、中を見て驚くテスタさん。しかしすぐに冷静になり奥に持っていき戻ってくると、魔石の種類と数を教えてくれるが、俺は聞いている振りだけで、


「以上で金貨542枚になりますが」

「はい、お願いします、テスタさん」


 金貨542枚を袋に入れて部屋を出る。これでスマルクの町の鍛錬で獲った魔石の処分は終わったよ、何となく嬉しいな。ギルドを出ようとファイガのところに行くとちょっとした騒ぎが起こっている。入口の両脇にファイガとユキナが伏せているだけなのだが、従魔を連れた冒険者が入れなくて困っている。いや、冒険者ではなく従魔が入口を通ろうとしない。むしろ入口に近づかないので冒険者たちが首をひねって悩んでいる。すると俺に気が付いたユキナ達が、


(みつひさまー、わたし、なにもしてませーん)

(われも、ねてるだけです、あるじさま)

(そうだね、行こうか、ファイガ、ユキナ)


 俺達が出て行ったその後、ギルドは平常に戻った。

 そして買い出しに商店や露店で肉料理を買い込み、夕方も過ぎているので、宿屋街で宿泊先を探しに歩いていると、


【ミツヒ様、あちらのドランの宿がよろしいのでは】

(ドランの宿か、あ、あった。ここか)


 中に入ると、身長170センチ程の銀髪で紳士風の男の人がエプロンをして出て来た。


「いらっしゃい、泊まりか? 食事か?」

「宿泊をお願いします。従魔も一緒ですがいいですか」

「ああ、構わないよ。1泊食事付で金貨1枚だ。俺はビクテマ、よろしくな」

「俺はミツヒです。1泊お願いします」


 金貨1枚を支払い部屋に案内される。部屋で大きくなったファイガとユキナを、クリーン、で綺麗にして皿を出す。まずは焼肉タレ焼きを盛ると、待ってましたとばかりに食べ始める。次はドードー鳥の姿焼きを盛ると新しい料理なので、うみゃいうみゃい、と喜んで食べる。最後にブラックボアのステーキを20枚ずつ盛って終了。小さくなってすぐにベッドで横になるユキナとファイガを見て…………牛になるよ君達。と思ったら、思いに気づいたのか俺から目を逸らしたよ。

 そして俺は風呂へ行く。

 ドランの宿の風呂の回りは木の塀で囲ってあり広い、風呂も大きく木で出来ている。さらに深さが30センチ程で浅い造りになっていてヘリが丸くしてあり、寝ながら浸かると丸いヘリに頭が乗り、


(フゥ、これは気持ちが良いな、いい湯だし、このまま寝てしまいそうだ、さすがハネカ)

【ウフフ、ありがとうございます、ミツヒ様】


 俺は、大の字になって、ぷかぷかと気持ち良く浸かっていると他の人も入って来るが、一緒に従魔も入ってきて風呂に浸かる。


(へぇ、ユキナ達とは違って風呂が好きな魔獣もいるんだね、気持ちよさそうに浸かっているよ)

(あれはハウンドドッグです、ミツヒ様。犬は風呂が好きなのでしょう)

(ふーん、そうか、このドランの宿は、従魔も風呂に入れるように浅く造っているんだな)


 風呂で癒され楽しんだ後に食堂に行きテーブル席に座ると、少ししてビクテマさんが料理を運んでくる。出て来た料理は一口サイズに切った肉と人参、ジャガイモをピリッと辛い黄色い香辛料で煮込んであるドロッとしたシチュー風だ。横のパンも厚さ2センチ程で平べったく焼いてあり外はパリパリ中はモチモチしている。パンを千切って黄色いシチューにつけて食べると、香辛料が効いた強いピリ辛だが、味がしっかりついていて美味い。パンとの相性も良く旨味も十分出ている。うん、美味い、フーフーハグハグ、と汗ばみながら美味しく食べて満足した。

 部屋に戻りいつもの様にじゃれ合って就寝。瞬殺で寝るユキナ達。


(おやすみ、ハネカ、ありがとう)

(何よりです、ごゆっくりお休みください、ミツヒ様)


翌日早朝


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