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第27話 フェリナスの森  「ダークエルフ」 

翌日早朝

 食堂に行きケフィルさんに挨拶してカウンターを見ると、ボアの焼肉のタレ炒めがあったのでケフィルさんに生卵を2個貰ってテーブル席に座る。そして厨房カウンターと逆向きに座る俺。

 生卵を割って皿に入れかき混ぜる。タレ炒めを皿の生卵にたっぷりつけて食べる。美味い!濃い甘辛で炒めてあるタレ味の肉に生卵の新鮮な味が絡まって、それはもう卵にチャプ、モグモグ、卵にチャプ、モグモグ至福の時だ。すると、ガタン、と椅子が倒れる音が横からして、その方向を見るとケフィルさんが食い入るように狸耳をピコピコさせ、尻尾も大きく膨らまして覗き込んでいた。俺の食べ方が気になり、納得したのか頷きながら厨房に入って行く。今夜はこの食べ方で行くのかな。

 部屋に戻り出発の準備をし、ガイルの宿を出てガンドの店に行くと早朝だが開いていた。ファイガ達は入口の外で座っている。店の中に入るとガンドさんが、


「鞘は出来上っているよ、ミツヒ」


 スロウソード用の鞘は腰から腿に掛けて納まるようになって上下で止める仕様になっている。

 魔剣ギーマサンカは背中で斜めに背負うように出来上がっている。眺めているとガンドさんが、


「まず、両方の鞘の魔石に指を触れて見な、これは一種の契約だよ。これはミツヒだけが脱着しやすいように作ってある」


 スロウソード用の魔石に触れてから鞘を装着し剣を鞘に納めるとパチンと納まる。俺が剣を握るとスッと剣が外れる。

 魔剣ギーマサンカ用の魔石にも触れて剣を装着してから背負い、握り手に手を触れるとスッと外れ、背中に戻すとパチンと納まる。


「これは使いやすいですね、ありがとうございます、ガンドさん」

「いいさ、報酬は貰っているからな。それとミツヒ、その魔剣の事を調べさせてもらったが、何処とは言わないが、ダンジョンで相当強い魔物を倒した時に得た物だろう」

「詳しくはお答えできませんが、そうです」

「それは聞かないさ、俺が言いたいのは、ミツヒがその魔物を倒したって事は、他にも強い魔石を持っていないか聞きたかったんだ。それとも、もう売ってしまったか?」

「どうしてですか? ガンドさん」

「売られてしまったらまず俺たちのようなドワーフには強い魔石は回ってこない。貴重なものだからな、でも強い魔石なら強い武器が出来るんだ、そして作ってみたいんだよ。ギルドに頼んでもありふれた魔石しか出回ら無いからな。もしも、まだあるなら少しずつ支払ってでも買いたい。誰にも言わない、ドワーフの約束だ。頼む、あるなら売ってくれ、ミツヒ」


 頭を下げるガンドさん。


(どうするか、大丈夫かな、ハネカ)

【大丈夫でしょう、ミツヒ様。真実で話をしています】


 一寸待っててください、と一度店を出てマジックバッグから魔石を袋に入れ替えて店に戻る。


「いいですよ、ガンドさん、魔石です。本当に魔物の名前の詮索は無しですよ」


 深層部の魔物の魔石を袋から6つ取り出してガンドさんに見せると、狂気の喜びをした目で魔石を見つめ触っていると、


「凄い凄いぞ、どれも貴重な魔石だ。俺には今、一つしか買えないが、少しずつ支払うから2つ売ってくれ、ミツヒ」

「いえ、いいですよ差し上げます、ガンドさん。口止め料ってことで」

「それはだめだ、出来ない。この中で一番安い魔石一つで、安く見ても金貨1000枚以上にはなる代物だぞ」

「それは凄いですね、でもいいですよ、差し上げます。大事になるのは嫌なので何処にも売る気はありませんから」


 それを聞いて考え込んでいたガンドさんだったが、何やら閃いたのか俺を見ると、


「よし、この中の安い魔石2個を貰おう。その代り残りの4個でミツヒに合う俺の最高の武器を作る約束をする」

「ええ、構いません、それでお願いします」

「ミツヒの武器を先に作るから、出来上がりは3日後だ」

「はい、よろしくお願いします、ガンドさん」


 ガンドの店を出て、魔剣の装備はマジックバッグに入れて、自分の剣の装備に戻す。俺はターナの町の門に向かい、門番に証明書を見せ町の外に出る。しばらく東に向かってユキナ達と歩いていたが影に入れて走り出す。青い空に白い雲がふわふわと浮かぶいい天気の中、軽快に爽快に気分よく走り、昼過ぎには フェリナスの森の入口付近に到着する。

 ファイガとユキナを影から出して辺りを見回し、


(道はここで行き止まりだな、ハネカ)

【これから先がフェリナスの森です、ミツヒ様】


 ファイガ達は従来の大きさになってから、鬱蒼と茂る密林の中に入り、周囲感知しながらハネカの方向指示で進んで行く。徐々に霧が出始め、濃さが深くなって周囲が何も見えなくなる。さらに奥に行くとすぐ後ろにを歩いているファイガ達も見えなくなりそうだ。


(これは確かに感覚がマヒするよ、何処をどう歩いているのかまったくわからないな)

【問題ありません、まだしばらく先ですが順調に進んでいます】

(よろしく、ハネカに任せていれば安心だよ)

【畏まりました、そこを右へ曲がってそのまま直進です】


 しばらくハネカの指示で進むと、


【この先に宿があります、ミツヒ様】

(この霧で何も見えない場所に宿があるのか)

【はい、ミツヒ様。そのまま進んで行くと小道に出ます、その道なりに行けばあります】


 進んで行くと小道があり、言われた通り進んだら霧の中から丸太で出来た宿が現れた。中に入ると1人のエルフ? が入って来る俺を知っていたように立っている。身長170センチ程で浅黒い肌、紫の目、緑のストレートな髪が腰まであり、とても美しく、綺麗な緑色のワンピースを着ている。スタイルも素晴らしく、特に。その…………爆乳だった。


【やはり……ミツヒ様は。滅ぼしましょう、今すぐにでも】

(やめなさい、だからちょっと見ただけでしょ、違うから)


「いらっしゃいませ、森の宿へようこそ。私は女将のエレミーヌと申します」

「あ、俺はミツヒです」

「今日は是非この宿にお泊り下さい、ミツヒさん」


【泊まったほうが宜しいかと、ミツヒ様。それとダークエルフの里について聞かないようにお願いします】


「はい、では1泊お願いします、エレミーヌさん。それと後ろの従魔もいいですか?」

「ありがとうございます、結構ですよ。同じ部屋にどうぞ、1泊金貨23枚になりますが」

「はい、お願いします、エレミーヌさん」


 値段も気にせずに即答して金貨23枚を支払い1階の部屋に案内される。中に入ると部屋は広くユキナ達が入っても十分で、ベッドも大きくファイガ達もそのまま寝られそうだ。さらに部屋から外に出ると霧の中に露店風呂があった。


「このお風呂は従魔も入れますから、良かったらどうぞお入りください、ミツヒさん」

「ありがとうございます、エレミーヌさん」

「それではごゆっくり、ミツヒさん」


 エレミーヌさんが部屋を出て行く。するとハネカが、


【この宿はダークエルフの里に入る準備段階です、ミツヒ様】

(何をすればいいんだ? ハネカ)

【それは分かりかねますが、今は夕方も過ぎていますのでゆっくりしてはどうでしょうか】

(もう夕方か、霧が濃くても辺りは暗くは無いが)

【これも魔法の一種でしょう、ミツヒ様】

(ま、そうだな、急がなくてもいいか。せっかくの霧の中の宿だからゆっくりとしよう)

【はい、それが得策かと思います】

(よし、それじゃ、風呂に入ろう。ユキナ、ファイガ行くよ)

((  畏まりました  ))


 風呂に行き、体を流し、風呂に入ると、


(ふぅー、いい湯だ、霧の中ってのも気持ちいいな)

(あったかいですね、ミツヒ様、私、初めてです)

(ふむ、暖かいですね、主様、我も初です)

(そうか、それは良かった。ゆっくり温まればいいさ)


 少しすると、ユキナとファイガが、


(すみません、ミツヒ様。私はお風呂はダメみたいです。フラフラするので出ます)

(我も無理みたいです、申し訳ありません、ミツヒ様。外でお待ちします)


 ハネカにクリーンを掛けてもらい、部屋のベッドで横になるユキナ達。


(魔獣はお湯に入るのが苦手なのかな? ハネカ)

【多分、体温調節が面倒なのでしょう、魔力を使って入っても疲れるだけなので】

(悪いことをしたな、こういう機会が中々ないけど、残念だが仕方がないな)


 霧で何も見えない空を眺め、ゆっくり温まって部屋に戻ると、ユキナ達がベッドを降り座って待っている。はいはい、夕飯ね、わかってますよ。とマジックバッグから皿を出し、焼肉塩焼きバージョンをドンと山盛ると、やはりうれしそうに食べる。静かに食べるようになってから、やっぱり嬉しい表現をしたいのか、ファイガのフサフサの尾がブンブン振られ、ユキナの綺麗な尾もブンブン振って食べている。埃が舞わなければいいけどね。その間に串焼きね、レッドオークの串焼きの串外しをしてお代わりを20本ずつ盛ると、バクバク食べている。最後はステーキのタレバージョンを20枚ずつ盛って終了。ガツガツ食べてご満悦の様子だ。俺もその間にステーキを食べた、モグモグとパクパクとね。

 落ち着いたらベッドに横になる。久しぶりの大きいファイガとユキナも俺を挿んでベッドに横になっている。従来の大きさがとても嬉しいのか、顔を俺の顔に摺り寄せてくる、摺り寄せてくる、俺の顔を舐める、舐めまわす。わかった、わかったからもういいから。でもそれも楽しそうだったのであまり止められず好きにさせていたら、知らず知らずに寝ていた。


 その夜


(……どうですか、長。宿を探し当てた、この者と従魔は)

(……大丈夫だろう、精霊にも愛されている様だしな)


翌朝


【おはようございます、ミツヒ様】

(おはよう、ハネカ。ぐっすりと寝たよ)


 朝食代わりに果実を食べて終了。肉を見せると食べたがるからね、ファイガ達が。

 部屋を出て宿の入口に向かって行くと、エレミーヌさんが立っていた。


「おはようございます、ミツヒさん。良く寝られましたか?」

「はい、とてもいい宿でした、エレミーヌさん。部屋もお風呂も良くてぐっすりと寝ました」

「それは良かったです、もうお出かけですか?」

「そうですね、行くところがあるので出かけます、ありがとうございました、エレミーヌさん」

「では、こちらへどうぞ、ミツヒさん」


 入口と反対側にある部屋に入る扉を開くと、長い廊下が続いている。その廊下をエレミーヌさんと進んで行く。その長い廊下の先が明るくなってくる。そして廊下を出ると丘の上に出た。

 そこは霧も無い、晴れ渡った青空があり、太陽がまぶしい。見渡すと草木が生え、色とりどりの花が咲いている。小川のせせらぎが心地よく小鳥も鳴いている。大きい集落の様だが、エルフの里と同じようにその集落の奥には大きな樹が空に向かって立っている。俺達はダークエルフの里に入れたようだ。


「綺麗なところですね、エレミーヌさん」


 俺が振り返ったらエレミーヌさんはいなかった。そして出てきた廊下もなく、そこには丸太で組んだ門が立っていた。


【動かずに、しばらくここで待ちましょう、ミツヒ様】

(そうだね、勝手に動いたりするより相手の出方を待とう)


 ファイガ、俺、ユキナの順で横並びに座って待つことしばし。集落から数人のダークエルフが歩いてくる。近くなって良く見ると、剣を持ち皮の鎧を装備する男の戦士風のダークエルフを従えて、杖を持った女性のダークエルフが来る。身長160センチ程で容姿はエレミーヌさんと同じでスタイルも良く緑色のローブを着ている。その女性が、


「私はこの里の長、ヤオデ。ミツヒと言ったか、伝説級の魔獣を従えて、お前はこの里に何をしに来た」

「はじめまして、ヤオデさん、俺はミツヒ。このダークエルフの里に用があって来ました」

「その前に一つミツヒに聞こう。お前はあの宿が見えていたのか?」

「いえ、見えませんが感じました」

「感じる。か。この里に入るにはあの宿を探して泊まらないと決してその先には行けない。見つからないようにしてあるが、外から来たものはそこに泊まり、宿のトレントに危険かどうか判断される。あの宿はこの里に入れてもいいか決める、トレントの加護を持つ見極めの宿だからな。ここの里に入れた者にとっては良い宿になるが、危険と判断されればそのまま行方不明になり2度と帰れない」

「とても快適でいい宿でした、エレミーヌさんも親切でしたし」

「なるほどな、それでミツヒ。ダークエルフの里に来た理由は何だ?」

「実は、闇の精霊の加護を授かりたいと思ってきました」


 ざわつくダークエルフの戦士達。異論反論のようだ。


「静かにしろ。確かに外から来た者に加護は授けたくはないが、宿のトレントはそれを知ってもこの里に入れたのは事実だ。ミツヒは他の精霊の加護も授かっている様だからな」

「はい、エルフの里で授かりました、ヤオデさん」

「ほほう、エルフの里にも入れたか、なるほどな。よし、ミツヒの力を見せてもらおう。ついてきなさい」


 ヤオデさんの後ろに俺その後ろにファイガ達その後ろに戦士たちが歩き連れて行かれたところは、闘技場だった。


(あ、試合だ、また試合だ、どうするか、ハネカ)

【思う存分に力を発揮する方がいいでしょう】

(加減なしで? いいのか?ハネカ)

【中途半端は逆に反感を買われます】

(了解、初めから全開で行くか)


 俺は闘技場の中に通され、ファイガ達は闘技場の隅で横になって伏せている。観客席にはダークエルフの戦士のほか10数人が見ている。


「ではミツヒ、力を見せてもらおう」


 反対の入口から出てきたのはダークエルフの戦士。ではなく、エレミーヌさんだった。

 着ているワンピースを脱ぐと、チェーンアーマーを装着し剣を装備した姿になった。


「ミツヒ、エレミーヌはこの里の戦士の中で一番強い戦士長だ。手加減したら死ぬよ」


 木剣ではなく真剣の試合だった。エレミーヌさんも剣を抜いて構える。


【ミツヒ様、あのダークエルフは風と幻影の魔法を使います】

(真剣勝負だとはな、何とかやってみるよ)


 不敵な笑みで構えるエレミーヌさんが、


「行きますよ、ミツヒさん。死んでください」

「死にたくはないですが、お願いします、エレミーヌさん」


 エレミーヌさんが踏み込みながら、ウインドカッターを放ち搖動を誘う。しかし、それを真っ向から断ち切りエレミーヌさんの剣を弾き飛ばす。何が起こったかわからないエレミーヌさんが、


「違う! 今のは違います! 間違いです」

「どうぞ、剣を拾ってください、エレミーヌさん」


 剣を拾い、間を開けて構える。そして、エレミーヌさんがサンダーストームを放ち俺は雷の嵐の中に。

 手ごたえを感じたエレミーヌさんだったがその嵐の中から腰を低くして素早く近づきエレミーヌさんの剣を弾き飛ばす。そして俺は、


「どうぞ、剣を拾ってください、気の済むまでどうぞ」

「ぐ、ぐ、そんな馬鹿な」


 剣を拾い構えると幻影で2人になるが本体は見えるので幻影は気にしない。そして撃ちこんでくるエレミーヌさん。


「カンカンカンカンカンカンカンカンカン」剣で受ける俺。


 一瞬の隙をついて下から剣をかち上げエレミーヌさんの剣を弾き飛ばすと、幻影は消え、ヘタッと座り込むエレミーヌさん。するとヤオデさんが、


「勝負はついたな、完全にミツヒの勝ちだ、他にミツヒと戦いたいものはいるか?」


 この試合を見て次に戦おうとする戦士は誰もいなかった。

 俺は、エレミーヌさんに手を差し出して引き上げる。


「すみません、エレミーヌさん。全力で戦ってしまって」

「いいんです、まだまだ力不足を感じました。殺されても文句は言えない試合なのに助けていただいて、ありがとうございます」

「いいんですよ、気にしないでください」


 ヤオデさんが近寄り、


「ここまで力の差があるとは。強いな、ミツヒ。強い加護も授かっているか。では、ついてきなさい」


 ついて行く俺。


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