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第19話 スマルクの町   「報告」

よろしくお願いします。

 ミネストの宿には寄らずにエントアの門に向かう。

 順番を待ち門番に証明書を見せて外へ出る。しばらく王都エヴァンに向かっている道を、周囲の人と同じ速度で歩き、少ししたら右にそれる小道が見えてきた。スマルクの町に続いている森の道だ。その小道に曲がるのは俺一人だけなので、さっそく走り出す。森の中を、風を切るように周りに何も無いように、正面に見える点滅、に向かって走っている。途中、ホワイトラビットの串焼きを、マジックバッグから出して速度を少し落として食べながら走ったが、差ほど問題なく走れた。そして夕方前にはスマルクの町が見えて来たので歩き出して、


(久しぶりに帰って来たな、何も変わりは無さそうで、懐かしいな)

【ミツヒ様は、お変わりになられましたよ、特に身長が。素敵です、ミツヒ様】

(ありがとう、ハネカ。悩みだった身長も伸びたし、これで気にすることなく鍛錬に集中しよう)


 少しして、俺は歩きながらある疑問をハネカに聞いてみると、


(そういえば、ハネカ。聞いていいかな)

【改まって何でしょうか、ミツヒ様】

(ハネカは心眼だよね、俺には昔、人の喜怒哀楽っていうか何となく見えたけど、今は見えないんだ。ハネカは見えるのかな?)

【う、嫌なご質問ですね、ミツヒ様。私はミツヒ様の心眼ですので、喜怒哀楽も勿論見えます】

(やっぱり見えるのか、でも、ハネカは邪悪とか怒り以外は、あまり俺に教えてくれないよね)

【え、う、うう、申し訳ございません、ミツヒ様。私も一応…………女です。ので、ミツヒ様に差し障りなければ自ら教えたくない事もあります。でも、聞いていただければ、勿論答えましたよ、ミツヒ様】

(あ、聞かなかった俺が悪いんだよ、気にしないでくれ、ハネカ)

【うう、うぅ、仕方がありませんが教えましょう。多少はミツヒ様もお分かりかと思いますが、エントアの町では、ギルドの受付がミツヒ様を大変気に入っています。宿屋の女将は、ミツヒ様の恋人になりたいと思っています。エルフの女は、ミツヒ様は一生ご主人様の上、自分の好みの男性であり大変惚れていて、嫁ぎたいと思っています。以後、お気を付けくださいませ】

(あー、やっぱり、でもなんで俺なんか)

【強くて優しいミツヒ様のような男性に惹かれてしまうのは、致し方が無い事です】

(でも、まだまだ強くなりたいよ、協力してくれよな、ハネカ)

【ウフフ、私はミツヒ様の心眼です、いつでもどうぞ】


 という間に門に着き順番を待ち、俺の番が来て証明書を見せてスマルクの町に入ると、久しぶりに見る街並みを眺めながら歩いてマイウ亭に向かった。マイウ亭が見えて中の様子を確認すると酒場の始める準備をしている3人の姿があった。入口に入り、


「ただいま帰りました、ゴルドアさん、エフィルさん、リリ」

「お、おー。ミツヒか。おかえり、どうだった、ん? デカくなったな、お前」

「おかえりなさい、ミツヒ。また立派になって」

「お、おかえりー、ミツヒー」ポソッと「か、かっこいい」と言っていたような

「おかげさまで、いろいろな鍛錬ができました」

「おう、疲れたろ、話はあとだ、部屋で休んでいろ」

「ありがとうございます、ゴルドアさん、あとで手伝います」


 部屋に入ると、以前と何も変わらない出かける前のままの部屋だった。俺のいない間は誰も入らなかったようだね。部屋の隅には魔石が入った袋がまだあったので、マジックバッグに入れ、それと棚の中の金貨も全部マジックワレットに入れる。魔石は明日にでも王都エヴァンに行って買取りしてもらおう。

 久しぶりに裏でシャワーを浴びて、一息入れたあとで、酒場に手伝いに行く。もうちらほらと店に入って来るお客のパーティ。看板娘のリリは、相変わらず男性パーティからの人気が高かったな。俺も、以前のように黄色いエプロンをして注文を聞き始めると、女性パーティから、


「あ、新しい人? へぇー、カッコいいね」

「いいわあ、私のタイプ」

「あ、あれ? ミツヒ? ミツヒなの? 随分とカッコよくなったわね、ステキー」


 なかなか注文が取れなかったが、やっと注文を受けて運ぶ。リリの方も順調に注文を取っている、さすがだな。次第に満席になるマイウ亭。


「リリちゃーん、麦酒4個頂戴」

「ミツヒー、葡萄酒2個とミツヒ」

「リリちゃーん、おつまみ追加して」

「ミツヒー、果実酒4個とミツヒちょうだい」

「私はミツヒだけー」「私も~」


 女性パーティがいつもより酔っぱらっているらしく、変になっている。そこへエフィルさんが笑顔でやってきた。とても綺麗な笑顔だが目は怒っている、目が般若のように怖い。エフィルさんが女性パーティたちに向かって、


「女性はもっとお淑やかに、楽しくしなさいね。し・な・さ・い・ね!」


 ヴアァーッ!! と冷気が走ると、一瞬でガクブルして大人しくなる女性パーティ。静かになった女性のパーティにもう一度ニッコリと微笑んで厨房の中に戻って行くエフィルさん。それを見ていた男性パーティも静かになって飲んでいるよ。あの冷気は本物で、エフィルさんが立っていた足元を見ると凍っているし。まあ、ゴルドアさんも怖がるくらいだから仕方がないかな。

 最後の客も帰り、閉店作業をして終了し、一息ついた後テーブルに座る俺。向かいには、ゴルドアさん、エフィルさん、リリが座っている。

 俺は、経緯をエントアのダンジョンに向かってから、ダンジョンを踏破、魔石、ダンジョン内で鍛錬、ダンジョン内でエルフを助け、エルフの里に行き装備、精霊、ギルドでギルドマスターと試合をしたことを、簡潔にまとめて全て話をした。


「これが今回行った、エントアの町での話です、大事になると思い誰にも言っていません、ギルドにもです」

「ふぅ、凄いな、ミツヒ。1年もたたずにエントアのダンジョン踏破か、知られたらミツヒの事が、一気に世の中に知れ渡るぞ」とゴルドアさん

「強くなって帰って来たのね、エルフの里に入った人は数人しかいないのに、凄いわね、ミツヒ」とエフィルさん。

「ゴルドアさん達にはお見せします。ケルベロスを倒した後に出てきたアイテムです」


 左手首の下を右手で触り、見せてもいい、と念じると、腕輪が現れ、確認してもらって手を離し消えて、


「マジックバッグです、それと一緒に出てきた魔石がこれです、それとこれ」


 と言って、マジックバッグからケルベロスの魔石とマジックワレットを取り出す。


「凄いな、魔法収納か、財布の魔法収納も、それにこの魔石を売りに出したら、ケルベロスの魔石だとすぐにばれるぞ、気をつけろミツヒ」

「はい、人前では見せません、勿論魔石も出しません」

「踏破は本当のようだな。まいったなこれは、あのダンジョンを単独でか、本当に強くなったものだな」

「まだまだですよ、ゴルドアさん、それと俺は2日ほどしたら、また鍛錬に出る予定です」

「そうか好きにするがいいさ、今日はゆっくり休むといい」


 エフィルさんが、チラチラ、とリリに目をやっていたが、リリは終始聞いているだけで、俺と直接話をしなかった。


その夜

 ベッドに横になる俺は、


【宜しいでしょうか、ミツヒ様、私からは一度だけです】

(どうしたのかな、ハネカ、一度だけって)

【この店の娘はミツヒ様に恋をしています。それと母親もそれを承諾しています。以後お気を付けください】

(えー? そうなの? エフィルさんの態度がちょっと変だと思ったら、何でまたリリが)

【母娘が団結しています。が、一人娘なので父親は反対しています。それは良いことです】

(そうだよな、ゴルドアさんは、手を出すなよ、って言っているくらいだから、大丈夫だろう。考えたらきりがないからもう寝よう。おやすみ、ハネカ)

【ごゆっくりお休みください、ミツヒ様】


翌日早朝

 朝の鍛錬はしないで食堂でパンを食べて、スマルクの町のギルドに向かった。冒険者ではないので依頼は受けられないが、魔物の情報があるので掲示板を見に行く為だ。ギルドに入ると混んではいたが掲示板の前は空いていた。久しぶりに受付にいるミレアさんを見たがバタバタと忙しそうだね。俺は掲示板を一通り見て行くと、


非依頼  ベルタル山に居着いたワイバーンの情報求


(お、ベルタル山ってこの町の東に行った山だ。ワイバーンか、こいつはいいかも)

【ミツヒ様、その南には30階層のダンジョンがあります、ついでに踏破してみてはいかがでしょうか】

(テスタロの町か、どっちが先か決められないけど行ってみるか)

【はい、それが宜しいかと思われます】


 ギルドを出るときに、一度振り向き奥を見たら丁度ミレアさんと目が合った。ヤベッと思ったが背の高くなった俺が分からなかったようで、一瞬目を離したすきに逃げる様に出入り口を出る。

 そそくさとマイウ亭に帰ったら、変わらず綺麗な二人の姿が目に入った。


「久しぶりですね、カルティさん、ティファさん」

「久しぶりだな、ミツヒ、元気そうで何よりだ、さらに男前になって、私の婿に相応しいよ」

とカルティさん。

「お久しぶりですね、ミツヒ。私のタイプそのものになりましたね、式の準備の話をしましょう」とティファさん。


 2人が歩み寄ってきて俺を抱きしめようとしたのが分かるので躱す、避ける、避ける、躱す。


「「 なぜ逃げる! ミツヒ! 」」

「だって、2人共抱きしめてキスしようとしているのが、バレバレ、です」


 すると、顔を赤くしたカルティさんは、


「いいじゃないか、互いにファーストキスをした間柄じゃないか」


 負けじと、ティファさんも、


「いいではないですか、私のファーストキスを貰っていただいたのですから」

「だめです、お二人とはしません」

「他の奴とはするのか?」と、カルティさん。

「私以外とはするのですか?」と、ティファさん。


 俺は溜息を吐きながら、


「はぁぁ、本当の事を言います。本当に偶然でしょうけど、実は以前ギルドでお二人のステータスを見せてもらった時に隠しているであろう部分が見えていました。王女カルティさん、側近ティファさん、黙っていてすみません。でも大丈夫です、誰にも言わないし言ってません」


 すると驚いた表情のカルティさんは、


「な、見えていたのか、ミツヒ。仕方がない、それでもいいじゃないか、気にしないぞ私は」


 同じくティファさんも、


「み、見えていても大丈夫ですよ、ミツヒなら。私も気にしませんから」

「ダメです、気にするのは俺ですよ。お二人は王家の人です。俺は村人で農民です。もしお付き合いすることになったら、お二人が良くても俺は周囲の人に目をつけられて酷ければ暗殺されてしまいますよ、そのようなことは御免です。カルティさんもティファさんも、スタイルも良くお綺麗なんだから、俺みたいな村人はやめて、他の人を探してください。ただ、冒険者でのお二人とは仲良くしたいと思っています」

「なら、私は王家を出る」「私も即位を捨てます」

「ダメです。絶対にダメです。そんなことをしたら俺は今後お二人とお別れします」

「「  そんなー  」」


 後ろに後ずさりする涙目の2人。そして、


「「う、うぅ、うえーん、うわぁーーん、うっうっ、うえーーん、うえっ、うえっ」」


 2人共大粒の涙を流して大泣き、マジ泣きしている。

 でも冷たいようだがここで甘やかさないでいる俺。その一部始終を見ていたゴルドアさんとエフィルさんが出てきて、


「あーあ、ミツヒにバレているんじゃ、あきらめな。って言っても無理か」

「恋敵が居なくなれば楽になるけど可愛そうね。教えてあげるわ2人共、そのままの爵位で恋人になっても大丈夫なのよ。近い将来だけどね」

「それはどうしてですか?エフィルさん」と俺。

「ウフフ、それはミツヒが今回強くなって帰ってきて、これからさらに強くなるから。今のミツヒでも私達より強いわ」

「それじゃ、意味が良くわかりません」

「じゃ、ちょっとこっちに来て、ミツヒ、動かないでね」


 言われた通り俺がエフィルさんに近寄ると、エフィルさんがそっと俺を抱きしめてきた、それも頬と頬がくっ付いている、いや、くっ付けている。その上、たわわな双丘が俺にグニッと。しかし動くなと言われているしゴルドアさん達も知っているようで何も言わない。ほどなく離れるとエフィルさんが、


「はぁ、父さん、ミツヒは凄いわ。本当に凄いわ。こんなに精霊に愛されている人、初めて感じたわ」

「そんなにか、褒めないお前が言うんじゃ相当だな、それじゃ見てみるか、母さん」

「そうね、見てもらった方が一番いいわね、ミツヒ裏庭に出て頂戴」


 皆で裏庭に行くと、エフィルさんが何もない離れた所で立つように指示され立つと正面にエフィルさんが俺に向かって立っている。


【ミツヒ様、これから攻撃魔法が来ますが確認しようとしているだけなので、私は何もしません】

(え? 攻撃魔法? 大丈夫か? ハネカ。シールドは?)

【大丈夫です、ミツヒ様。だから加護は凄いのです】


 と言っているうちにエフィルさんから攻撃魔法が来る。獄炎のデストロイと言われたエフィルさんから、


「ファイヤボール!」 ドカン!      俺を避けて爆発する

「ファイヤストーム!」ゴウッー!     火柱に包まれるが俺の回りは火が無い

「サンダーボム!」  バリバリドカーン! 俺の回りだけに雷が落ちる

「サンダーランス!」 ヒュドン!     俺を避けて空で爆発する


 周囲は爆風、熱風、砂埃で凄かったようだが、熱さも感じないそよ風を受けているくらいの俺。


「ね、強いでしょ、ミツヒ。今のは全力の攻撃よ、他の攻撃魔法もあるけど同じね。私では勝てないわ、ウフフ」


 俺も棒立ちのまま驚いていた。


【これが精霊の加護です、ミツヒ様。それも最強の加護なのです】

(良くわかったよ、ハネカ。魔法が俺を避けるなんて)

【それも全ての精霊にですから、ミツヒ様】


 俺の強さを見てカルティさんとティファさんが何かを察知したようで、パァッ、と明るい笑顔になってお互いに手を握り合っている。

 でも、2人は俺には教えてくれなかった。勿論エフィルさんも。するとゴルドアさんは、


「おいおい、参ったな。剣技が強くなった上に、魔法も耐性か。エフィルの魔法で全く通じないんじゃ、他の属性も耐性ありそうだな、無敵なわけだ」

「そうね、幾つかの精霊の加護を授かったんじゃないのかしら」

「これでまだ強くなりたいんだからどうしようもねえな、これからどうするんだミツヒ」

「はい、テスタロの町のダンジョンかベルタル山に行こうと思います」

「そうだな、そこならまた強くなりそうだな」


 そんな話をしているうちに周囲に人が集まって来た。エフィルさんの魔法が大きすぎた為だ。エフィルさんはテヘペロしながら宿の中に逃げて行く。カルティさんとティファさんは如何にも一緒に集まって来たように野次馬に徹している。ゴルドアさんは手で汗を拭きつつ魔法の練習だと言い訳をしているよ。ゴルドアさんはいつも大変だな。

 その後、カルティさん達は冒険者の依頼で出かけて行った。

 まだ、昼前なので俺は王都エヴァンにひとっ走り行って、魔石を一袋だけ買取りでお願いしに行く。受付のリースさんとニッサさんは休みだったので、ナディさんという茶色の髪で茶色の目をした170センチほどのスレンダーな顔立ちの整った女性だ。沢山の魔石で驚いていたが慣れているのか淡々と作業をこなし、魔石を分けて説明してもらったが、分からないし面倒なので聞き流して金貨827枚を受け取り、そのままスマルクの町まで走ってマイウ亭に帰って来た。資金は余裕あるが、これでさらに安心して旅が出来るね。


 夜の酒場は手伝わなくていい、とゴルドアさんに言われ、お言葉に甘えて、明日からの準備の為、外の町に出て露店に串焼きを買いに行ったり、商店に布や毛布や布団を買いに行ったり、魔石などが小分けできるように大小の布袋を買い込んだ。


その夜


(明日は王都エヴァンからテスタロの町に行こうと思っている、直接ベルタル山にも行けるけど先に宿を探してからの方が楽だからね)

【畏まりました、ミツヒ様。そこを拠点にしてダンジョンか山に行くのですね】

(そうだ、行ってみないと状況が分からないからね、よし、寝よう、おやすみ、ハネカ)

【ごゆっくりお休みください、ミツヒ様】


翌日早朝


ありがとうございました。


次回も、よろしくおねがいします。

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