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第15話 エントアの町5  「エルフ」

よろしくお願いします。

翌日早朝


 食堂に行くとカウンターにシチューは無かったが、から揚げとパンで美味しく食べて、そのままミネストの宿からギルドに向う。

 ギルドは混んでいたが順番を待ち、受付のリーザさんに証明書を見せて登録する。ダンジョンも順番ではあったが入れ、人の気配が無くなったところで走り出す。ハネカの協力もあり、避けられる魔物は全て避け、邪魔なときは、サクサク、と倒し、10階層の長、ギガンテスは少し鍛錬し倒したが何も出なかった。一度倒すと出ないのかもしれない。

 そしてまた、最深部に向かって走り出して19階層に到着。


(よし順調に着いた。さっそく鍛錬開始だな)


 さっそくロックゴーレムとミスリルゴーレムが現れた。俺は2体の間に入って両方の攻撃を受けて避けてと繰り返す。受け流し方を変えて攻撃して、ゴーレムの腕や足を剣で砕いたり、避ける方向から反撃する方法などを鍛錬した。最後は2体の足を砕き、再生している間に20階層に入る。


20階層

 オルトロスの攻撃を、受け流す鍛錬から始まり、隙があればオルトロスに攻撃したが倒すことはしなかった。

 頃合いを量り、オルトロスの隙を見て避け奥に行く。

 ケルベロスはまだ俺だけでは倒せないが、鍛錬には持って来いで、全力でかかっても倒せないから丁度良かった。そして頃合いを見てゴーレムまで戻り同じ鍛錬を繰り返す。

 食事や休憩は20階層のセーフエリアに入り、マジックバッグから食べ物や飲み物を出して食べ1日を過ごした。夜もセーフエリアで、ハネカにクリーンを掛けてもらい、布団を敷いて快適に寝る。それを3日間行うと走って戻る、その繰り返し。


   ◇


そして数か月後

 ミネストの宿の夕食時。テーブルで食事をしていると、周囲から冒険者達の話し声が耳に入ってきた。


「最近ダンジョンで魔石が拾えるって噂知ってるか?」

「ああ、知ってるさ、それは最近じゃなく2ヶ月以上前から拾えたらしい。拾った連中が噂にすると、大勢が拾いに来て自分の取り分が無くなるから、知っているパーティは秘密にしてたんだってよ」

「結構いい魔石も拾えるんだってな」

「そうそう、実は俺も先日レアの魔石を2個拾ったよ、だから今は懐が温かいぜ」

「よし、俺たちも明日から拾いに行くぞ」



 …………俺は聞いていない振りをする。

 そして、ダンジョンの最深部では異変が起こり始めていた。それは多分、俺にだけ。

 19階層に着きゴーレムを探すが、いない。良く見ると岩陰に隠れるように俺を見ない。でも近づけば襲ってくるので鍛錬は出来る。

 20階層のオルトロスは鍛錬できるが明らかに嫌がっている。ただ、まだケルベロスはいい感じで鍛錬が出来るから良しとしておこう。


 ある日のギルドで

 受付の隣の部屋で魔石の買取りをお願いして魔石を10個ほど出した。ただ、深い階層の魔物の魔石は出さい。それでもリーザさんは、


「これを買取りでお願いします」

「こ、これってレアな魔石ばかりじゃないですか、ミツヒさん、何階層まで行ったのですか?」

「いえ、拾ったんですよ、全部」

「これ全部ですか、最近拾い集めているパーティも多いと聞きますが、そうですか、これ全部。わかりました、ミツヒさん少しお待ちください」

「おまたせしました、この魔石20個で金貨375枚になります、よろしいですか」

「はい、お願いします」と全部金貨で貰う。あとでマジックバッグに入れ替えるので背負い袋に入れる。

「ミツヒさん、これだけのレアな魔石を拾うには、どうすればいいのですか?」

「それを教えたら俺が拾えなくなりますよ、リーザさん」

「……それもそうですね、失礼しました」




そしてさらに数か月が過ぎ

 ミツヒ17歳 引き締まった筋肉。身長175センチ。伸びた。やっとまともになった気分だ。嬉しい。


ダンジョン19階層

 俺が入って行くとゴーレムは岩陰にサッと隠れた。近づいて剣でチョンと触ると、ビクッ、とするが、動いたと思ったら、ドスドス、と反対方向に逃げている。もう、ゴーレムは俺に戦意が無くなっていた。


20階層

 オルトロスがいて、俺に気づいた。近づくと尻尾をブンブン振って双頭の顔を俺に摺り寄せてくる。  オルトロスは俺に懐いていた。

 まだ、ケルベロスは嫌がり始めているがまだ鍛錬できる。だが、このまま行くとケルベロスも懐くのだろうか。それと最近は、鍛錬の成果が出たのか一人で余裕で倒せるぐらいになっていた。


【捻り倒せば宜しいのではないでしょうか、ミツヒ様】

(なんだか鍛錬に付き合ってもらううちに可愛くなっちゃってさ、完全に倒すのも可愛そうで)

【この魔物もミツヒ様だけの反応ですから、他の者が来れば以前のような凶暴さが出ると思われます】

(ならこのままにしようか。このダンジョンも終わりだな)

【ミツヒ様は、このダンジョンでは身になる事はもうございません】

(そうだな、ハネカ、良い鍛錬になった。よし帰るか)


 いつものように、スイスイ、と順調に走って行く。が、9階層に入ったところでハネカに止められた。


【ミツヒ様、先の岩陰にエルフが居ます】

(こんなところにエルフ? 一人で?)

【はい、単体で隠れるように小さくなっています】


 俺は、エルフをイメージして先を見ると緑の点滅があり、近づいたらエルフが岩の陰で岩壁に向いて小さくうずくまっている。布の服を着ている緑色の髪をしたエルフの女の子に声を掛けると、


「ねえ、君は一人で何しているのかな、こんな所で」

「すみません、魔物に……襲われまして……」

「俺は今帰る途中だから、良かったら一緒に帰る?」

「ありがとうございます、でもあなた様にご迷惑かけますから構わず行ってください」


 俺がいるあたりに振り向いて来たその子を見て、「 え? 」と目を疑った。

 そこには頭から両頬、そして鼻先まで爪か何かで切裂かれたのか、傷が深く両目が潰れていた。右耳もなく、咄嗟に手で避けようとしたのか右手首から先も欠損している。着ている服も血だらけで魔物に襲われた傷が痛々しい。


「大変じゃないか、その傷。他のパーティは?」

「私は荷物運びの奴隷です。戦闘中に1体の魔物が突然襲ってきてこうなってしまいました。咄嗟に誰かにポーションを振りかけていただけたので、止血と傷は完全ではありませんが塞がっているようです」

【ミツヒ様、この階層は他の者では魔物も強く、このまま連れて行くと足手まといになるので、このエルフを放棄したものと思われます】

(それは酷いな、この傷は治せるか? ハネカ)

【全く問題ありません。元通りに完治できます、ミツヒ様】

(完治できるのか凄いな。でもちょっと待て……うーん。よし、痛みが取れるだけの回復魔法を頼む)

【畏まりました、ミツヒ様。ライトヒール!】


 エルフが淡い光に包まれた。


「あ、あ、痛みが取れて行く。あ、あなた様が魔法を? あ、ありがとうございます」

「立てるか? 俺はミツヒ。君は?」

「痛みを取っていただいてありがとうございます。私の名は、エリセです。エルフです」

「んじゃよろしく、エリセ」


 マジックバッグから毛布を出して、エリセに頭からフードの様に被せると。エリセの左手を握って俺の後ろに回す。


「俺の背中に乗って、エリセ」

「そんな、それでは足手まといになるし、邪魔になるしミツヒ様に」

「いいから早くしろ! エリセ!」

「え? あ、はい失礼します」

「腕を俺の首にしっかり回して掴まれ」

「は、はい、すみません、ミツヒ様」

「様はいらない、しっかり摑まったね、良し行くよ」


 エリセの両腿を両脇でしっかり持って走り出す。何も持っていないように、スイスイ、と走っていると、


「凄いです、風に乗っているようです、ミツヒ様は凄いお方なのですね」

「エリセ、舌を噛むかもしれないから黙っているように」


 後ろで、コクッ、と頷くエリセ。疾風のように走り抜け、1階層まで着いてエリセを背負ったまま歩き出す。


「これからギルドに行くけど何も話はしないようにね。大丈夫、エリセの悪くなるような事はしないから」

「はい、すみません、よろしくお願いします」


 ダンジョンの入口では、仲間の負傷かと思われ何も言われずに通る。ギルドに入ってリーザさんを見つけて受付に行き、証明書を見せ、


「いらっしゃいませ、ミツヒさん。お帰りの登録ですね」

「はい、お願いします。それと少しお話があるのですが」


 チラッと俺の後ろを見てリーザさんは、


「そうですか、では奥の部屋にお入りください」


 奥にある部屋に通された。入ると6人掛けのテーブルが一つあり、エリセをそっとおろして椅子に座らせ、その横に俺が座る。


「お話を伺います、ミツヒさん」

「この女の子がダンジョンに置き去りにされていたのですが、連れて帰りました」

「わかりました、そのフードを取ってください」


 俺がエリセに掛けてある布をそっと取ると、血だらけで、傷が痛々しい無残な姿を現したエルフがいた。


「え、そん、ひ、酷い」


 両手を口に当て声にならないリーザさん。


「この子の処遇はどうなるのでしょうか」と俺。


 気を取り直し、冷静になるリーザさんは、


「失礼しました。彼女は奴隷ですね、首輪があります。所有者がいれば返さなくてはいけませんが、その状態だと奴隷放棄をしたと思われます。少しお待ちください、失礼します」


 部屋を出て行き、何か魔石のようなものを持ってきたリーザさん。と一緒に1人の女性が入って来た。腰まである青髪を三つ編みにしている青目、浅黒い肌、チェーンアーマーを装備している身長160センチ程のマッスルだが顔立ちの整った綺麗な人だ。


「この方はギルドマスターのドミニクさんです、エルフのステータスを確認するので立ち会ってもらいました」

「ミツヒです、よろしくお願いします、ドミニクさん」

「ドミニクだ、よろしくミツヒ」

「ではエルフの掌をこの水晶に触れてください」


 俺がエリセの左手を添えて水晶に触らせるとリーザさんとドミニクさんが覗き込んだ。


「やはり。彼女は奴隷でしたが放棄の手続きがしてあります。怪我が酷くて足手まといになる彼女を置いて来たのでしょう。それに、つれて帰って来ても、その傷を治すのに大変な金額がかかりますから新しい奴隷を買った方が安いのでしょう」


 とリーザさん。すると、ドミニクさんが、


「で、この子の今後はどうする? 奴隷放棄を確認しているからミツヒの所有物に変更も出来るし、奴隷市場に売ることも出来る。ただ、その傷では何とも言えないが」

「ドミニクさん、この奴隷の首輪は外せないのでしょうか」と俺。

「外せるには外せるが、一度ミツヒの奴隷にして、それからミツヒが奴隷解放を申請すればいい。ただし購入とは違うので奴隷所有権取得で金貨5枚、奴隷放棄ではなく、奴隷解放で首輪を外すのに金貨20枚必要になる。もちろん証明書付だ」

「払います、ドミニクさん」と、俺は即答した。

「そうか、わかった。リーザ、あれを」


 リーザさんが部屋を出て行き、さっきとは違う水晶を持って来て、俺は金貨25枚を支払う。


「奴隷の購入は出来ませんが、所有者の変更などはこの水晶を使用してギルドで出来ます。では、ミツヒさんとエルフの掌をこの水晶に触れてください」


 俺とエリセの掌を水晶に触れる。リーザさんが水晶の上で何かを書いているように見える。


「はい、これでミツヒさんがこのエルフの所有者になりました。ミツヒさんのステータスウインドウで確認して下さい」


 自分のステータスウインドウを見ると、《エリセの所有者》になっていた。


「はい、所有者になっています」

「はい、では続けます」


 またリーザさんが水晶の上で何かを書いているように見える。そして書き終えたのか、その水晶をエリセの首輪に近づけると、パキッ、と首輪が外れる。俺はステータスウインドウを見て《エリセの所有者》が消えているのを確認すると、リーザさんが、


「これでそのエルフは自由になりました、あとで証明書を発行します」

「今後はどうするんだ、ミツヒ」

「このエルフを故郷に帰すため連れて行こうと思っています」

「ミツヒがそうしたいならすればいい。しかしエルフの里に行くのは大変だぞ」

「何とかしてみますよ、ドミニクさん」

「この町の南西に2日ほど行くとニド村がある。ニド村から西に行くとノエルの森がある。その奥地の何処かにエルフの里の入口があるらしいが、人が来るのを嫌うので見つける事は無理に近い。それでも行くのか」

「ノエルの森ですか。はい、行ってみます」

「そうか、私はもう何も言わないが気を付けてな」


 続けてリーザさんも、


「ノエルの森は、迷いの森、とも言いまして、奥地に行ってしまうと帰り道も迷うので、年に十数人もの不明者が出る森です。森に入る場合は10人程のパーティで入るような森ですから、1人で入るのはお勧めしません。金額はかかりますがギルドに依頼して人を募集し、人が集まってからにしたほうが良いかと思います」

「わかりました、リーザさん。検討します。一つ聞いていいですか? 迷いの森なのに人が入って行くのは何故ですか」


 するとドミニクさんが申し訳なさそうに、


「それは言いづらいが、このエルフが答えだよ、ミツヒ。エルフの奴隷狩りだ。その為に奥地に入って森にいるエルフをさらってくるのだろう。リスクは高いがいい金になるらしい、下衆どものやることだ。需要があるので見て見ぬふりをしているのが現状だよ。可愛そうだがな」

「そうですか、わかりました。ありがとうございました」


 エリセの証明書を受け取り、ギルドを出る。


ありがとうございました。


次回も、よろしくお願いします。

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