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第14話 エントアの町4 

よろしくお願いします。

翌日早朝


【おはようございます、ミツヒ様。起床されるお時間です】

(うーん、ハネカ、おはよう。あー気持ちよく寝たよ)


 いそいそと朝食の用意をして、干し肉の入った鍋に熱いお湯を入れてもらう。


(この塩加減が丁度いいね。本当にこれは美味いな、癖になりそうだよ)


 ハフハフ、と美味しく食べた。

 荷物を片付けて背負い袋を背負ったら、20階層のセーフエリアを出る。少し進んで奥を見ると、二つの点滅があった。


【ミツヒ様、奥に2体の犬がいます】

(今、俺も確認できたよ、ハネカ。手前に1体、奥に1体いるな。奥が長で手前が守護者ってとこか)


 近づいて確認すると、体長3m程の、黒い毛並みに白い毛が斑に生えている双頭の犬がいた。

 オルトロスだ。すると、ハネカが、


【あの犬は、1つの頭だけ倒してもすぐに再生します。胴体も同じく再生します。二つの頭を同時に叩かなければ倒せません。また、風魔法を使ってきます】

(あの二つの頭を同時にか。了解、ハネカ、やってみるよ)


 近づくと、ウインドカッターを放ってきたが、軌跡を見て避けた。すぐさま二つの口から牙攻撃が来て、ガィンガィン、と剣で受け流し、頭を一つ切断した。オルトロスは一度後ろへ跳躍すると、切断した頭がみるみる再生する。再生が終わった途端。オルトロスの爪攻撃が来たが避けて回り込み、踏み込んで上段から胴体を、セイッ、と切断したが、深く切れただけで、これもすぐに再生する。瞬時に牙攻撃が来たので後ろへ飛ぶと、


【ミツヒ様、伏せてください!】とハネカ。すぐに伏せると、

【シールド!犬の範囲魔法が来ます】


 と同時に、オルトロスのトルネードが、シールド越しに俺の上を,ゴォゥー!と渦巻く。


(あのオルトロス、すばやい攻撃と攻撃魔法を上手く使うな。なるほど、いい鍛錬になるよ)


 トルネードが過ぎた後立ち上がると、オルトロスは俺を倒したと思っていたのか、俺を見て後退し様子を見ている。そこへ素早く近寄り、剣で正面から攻撃すると牙で、ガィン、と受けられ、すぐさま爪攻撃が来たので剣で、ギン!と受け流し、低い姿勢で剣を薙ぎ払うように、オルトロスの前の両足を切断した。

 再生はするが、少しの時間差があるので、オルトロスの体がストンと落ちて来たところへ、セイッ、と力を入れた水平切りで双頭を切断し倒した。黒紫の斑模様の魔石が出たので拾った。


(ハァハァ、強かったな、オルトロス。もっと鍛錬したいな、ハァハァ、また復活するのかな?)

【はい、ミツヒ様。数日で復活するでしょう】

(フゥ、それは良かった、また来たら鍛錬に付き合ってもらおう)


 歩いてさらに奥にいる魔物の長へ向かい近づく。

 体長はオルトロスと同じ3m程。違いは漆黒の毛並みをしている3つの頭を持つ犬。

 ケルベロスがいた。


【あの犬も、1つの頭だけ倒してもすぐに再生します。胴体も同じく再生します。三つの頭を同時に叩かなければなりません、あの犬は雷魔法を使います】

(今度はあの三つの頭を同時にか、了解、今の俺にはしんどいけど、やってみるよ)


 ケルベロスに向かうと、ライトニングで攻撃して来たが軌跡を見て避けると、今度は範囲魔法のサンダーボルトが来るが、赤く範囲が出ていたのでその外に回避すると、バリバリバリッと数本の雷が落ちた。近づいて行くと、またライトニングが来たが避けて踏み込み、2頭の牙攻撃を剣で、ガンッギンッ、と受け流して首を水平切りに、ハアッ!と切断したが、頭が一つ残って直後に爪攻撃とが来たので、避けながら一度後ろへ飛び、様子を見る。


(へぇ、もう再生したよ、ケルベロス。でも三つの頭は厄介だな、俺の剣でも振り切れるのは二つの頭までだ)

【お手伝いいたしますか? ミツヒ様】

(そうだな、ハネカは左の頭をお願いできるかな)

【畏まりました。ミツヒ様が二つの頭を叩くと同時に合わせます】

(了解、よろしく頼むよ、よし、やるか)


 ケルベロスに向かうと、さっそくライトニングが来る。避けながら素早く近づくと、3つの牙が波状攻撃してきて、ギンギンガンッ、ギンッガンッ、と剣で受け続け、一瞬の隙をついてオルトロスの時と同じように前足を、セイッ、と振り切り両断。ストンと胴体が落ちてきたところを、ハアッ!と薙ぎ払い2つの頭を切断。と同時に左の頭をハネカがファイアランスを、ズドドッ!と2連で打ち込み、ケルベロスの頭が吹き飛んで倒し、赤黒の斑模様の魔石が出たので拾う。

 もう一つ何かが落ちていたので拾って見ると、黒っぽい銀色の腕輪の様で、小さい宝石のような色とりどりの魔石が埋め込まれていた。


(何だろうこれ、腕輪かな?)

【それは収納の腕輪です、ミツヒ様】

(これって、マジックアイテムの中の一つ、マジックバッグだ。やったよハネカ! 欲しかったんだよ、これ。嬉しいな!)


 さっそく左手首にはめてみると、大き目だった黒銀の腕輪が、スーッ、と縮んで俺の左手首にフィットした。左腕を振り回してみると、


(うん、重さも着けていないように感じないし、これなら邪魔にならないよ)

【腕輪の上に収納を意識して手を差し出してください】


 右手を腕輪のすぐ上に手を差し出すと、収納空間が現れた。中は広いようで、さっそく背負い袋を収納に入れると、スウッ、と入った。一度収納を閉じて、また開くとそこには何も無いが、背負い袋を意識して空間に手を入れると、背負い袋が出てきた。


(なるほど、入れてあるもので意識したものが取り出せるのか)

【収納の腕輪の収納空間は、時間が止まっていて、上下は常に安定していますので器に入れた水も中ではこぼれません。ただし、生命のあるものは入りません。また腕輪についている強い魔石の魔力により、自身の魔力も使いません】

(そうか、なるほどね、ありがとう、ハネカ。でもこれって知っている人が見たらマジックバッグってバレるんじゃないかな)

【ご心配いりません、ミツヒ様。腕輪を装備した時点で他の者には見えなくなります。ただ、腕輪を見せたい場合は、見せる、と意識しながら腕輪の下の魔石を右手で触ると、触っている間だけ現実に現れます】

(へぇ、誰が作ったか知らないけど便利だな、大事に使おう)


 再度収納を確認した後、ケルベロスがいたところを見ると、魔方陣が薄明るく光っていた。ケルベロスを倒し、踏破した時にだけ現れる魔方陣だ。


(終わったな……ありがとう、ハネカ。ハネカのお陰で順調に進んだし助けられた。恩に着るよ、ハネカ)

【滅相もございません、ミツヒ様。勿体ないお言葉です】

(でも事実は事実だ、ありがとう。しかし3日でダンジョン踏破って早過ぎのような気がするが、気にしないでおこう)

【踏破おめでとうございます。お帰りになりますか、ミツヒ様】

(うん、帰ろう。でも転移では帰らないよ、ダンジョンを走って戻る)


 ダンジョン踏破は秘密にすることにした。絶対に大騒ぎになる事になるし、ギルドに連行されるだろうし、村人なのに変だと目をつけられるだろうし、いいことが無いからね。

 そして、走って戻って行く途中で、オルトロスとゴーレムのエリアを見たが、まだ復活していなかった。健脚と豪脚で走ったが、このダンジョン鍛錬で強くなったのか速度が増したようで、ビュンビュンと進む。避けられる魔物は全て避けて回避し、邪魔で無理なときは倒しながら戻った。

 10階層のギガンテスは、まさか後ろから俺が来るとは思ってなく、普通にすり抜けた。9階層から他のパーティを見かけ始めたが気づかれないように走り抜けて戻った。

 ダンジョンの入口に着いてから、俺は歩いてギルドに向かう。

 ギルドに入ると、もう夕方になっていることもあり混んでいた。受付の順番も混んでいたので最後尾に並ぶ。順番を待っていると、後ろから男の人に声を掛けられた。その人は初日のダンジョンに入る時、声を掛けてきた3人組のパーティだ。


「お、いつかの1人の兄ちゃんか、生きて帰って来たな」

【また何を馬鹿げたことを言っているのでしょうか、このゲスどもは】

「はい、おかげさまで生きて帰りました」

「何階層まで行ったんだ? 魔石は出たか?」

【また何を土地狂ったことを言っているのでしょうか、この羽虫どもは】

「さ、3階層で戻ってきました。ま、魔石はありせん」

「そうか、残念だったな、ま、焦らずに頑張れよ」

「はい、そうします」

【踏み潰しますか? ミツヒ様、今すぐ踏み潰しますか?】

(やめような、ハネカ。気にしてくれたんだよ)

【畏まりました。ミツヒ様がそう仰るのであれば】

(俺、思うんだけど、ハネカって、たまに変なとき……ない?)

【……それはミツヒ様の思い過ごしです】

(そうか、ならいいんだけど)


 そうこうしているうちに順番が来て、リーザさんに証明書を見せる。


「いらっしゃいませ、ダンジョンからお帰りの登録ですね。ミツヒさんは。えーっと、あ、3日前の登録でしたね、はい完了しました。魔石やアイテムの買取りがありましたら、隣の部屋のカウンターへお願いします。お疲れ様でした」


 ギルドを出てミネストの宿に向かい、宿が見えてきたら、ニシッタさんが宿の前で呼び込みをしている。俺と目が合うと、ニッコニコの笑顔で俺に手をブンブン振っていると、


「ミツヒさーーーん! ダンジョン帰りですかーー! 今日もうちに泊まってよーーー! お願いしまーーーす!」

「ニシッタさん、恥ずかしいですから、そんな大声出さないで下さい」

「エヘヘ、だってミツヒさんが他の宿に行ったら悲しいじゃないですか」

「大丈夫ですよ、ミネストの宿に泊まりに来ました、2泊食事付でお願いします」

「はーい、ありがとうございます、ミツヒさん。奥に入ってください」


 奥のカウンターで金貨2枚を払い、先日に泊まった同じ部屋にしてもらった。さっそく風呂に行って体を洗い、湯につかると、


(ふぅー、気持ちいいな、風呂はやっぱり最高だな)

【ミツヒ様、クリーンとも違いはあるのでしょうか】

(確かにクリーンも綺麗になって気持ちはいいが、お湯に浸かって体を癒すことも大切だと思っている。これは俺の住んでいるタモンの村にもあったからね)

【そうですか、畏まりました、ミツヒ様】


 十分に癒されて風呂から上がり、食堂に行ってテーブル席に座る。今日のおすすめを頼んで少々待つと、ブラックボアのステーキが出てくる。肉の下には玉ねぎのスライス炒め、肉の上には大根おろしに薄茶色いソースが掛かっている。横には塩茹での人参とジャガイモがゴロゴロと並んでいる。

 美味そうだ、一口食べてみると、やはり美味かった。肉と旨味のある塩の効いたソースが、乗っている大根おろしと絶妙に合って肉を引き立たせている。もう一口肉の上に大根おろしを乗せて食べると、ステーキの肉汁もジューシーで肉も柔らかい。玉ねぎと肉を絡めても美味しく、人参、ジャガイモも美味しく食べた。

 食べ終えて部屋に戻りベッドに座る。


(ハネカ、明日はまたダンジョンに入る準備で1日町に出るよ)

【踏破されたのに再び入られるのですか、ミツヒ様】

(うん、ゴーレムより下の魔物は再生するから、俺の鍛錬になると思うんだ。良い攻防が出来るし、万が一、があってもハネカがいるからね)

【鍛錬ですか、畏まりました、ミツヒ様】


 そして就寝。



翌日早朝

 目が覚めたがまだ出かけるには早く、朝風呂に入った。風呂を出て食堂に行くとニシッタさんがいて、


「おはようございます、ニシッタさん」

「おはようございます、ミツヒさん。朝食はまた好きなものを選んでくださいね」


 と厨房に入って行った。

 カウンターの食材を眺めるとそこには、ボアのシチューがあった。

 俺は、さっそくゆで卵2個とボアのシチューとパンを選ぶ。やはりゆで卵はシチューに沈ませておく、パンはシチューにつけて食べた。味がパンに染み込み、クニュックニュッとして美味い。沈ませて味の染み込ませているゆで卵は最後に食べる。ホクホクして、うん、正解だ。美味しく食べてなんだか得した気分だ。

 食後部屋に戻り、町の店が開店する頃にミネストの宿を出る。まず露店のホワイトラビットの串焼きを買った。次の店では、ロックバードの肉と野菜をバーベキューソースで掛けてパンに挟んだ料理も買った。それらを、人のいない路地裏でマジックバッグに入れて次の店に行く。次に買ったのは果汁の入った瓶を20本とミルクの入った瓶を20本、干し肉を多めに。それもマジックバッグに入れ、最後にコップや毛布、敷き布団など数点購入してこれで準備完了。マジックバッグのお陰でとても快適になるだろう。

 その後も町中をウロウロ歩いていたので、夕暮れになっている。俺はミネストの宿に帰り、風呂に入って夕食を食べた。それは懐かしいレッドボアのステーキだった。いい塩コショウの加減で、タモンの村を思い出しながら美味しく食べ、夜は早めに就寝。


 翌日からゴレーレムやオルトロスの復活を待って、数日を町で過ごす。


翌日早朝


ありがとうございました。

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