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第11話 エントアの町1  「ダンジョン」

よろしくお願いします。

 延期していたダンジョン行きが決まった。


 行先は、スマルクの町から南東に位置するダンジョンの町、エントア。本来の行き方は、スマルクの町の南の門から出て、王都エヴァンに2日、王都エヴァンから西のエントアの町に2日、計4日で行ける。スマルクの町からも、エントアの町に直接行ける道があるが、深い森の中を通るので、歩いて5日~6日かかる。王都エヴァン経由で行こうとしたら、ハネカに、直接エントアの町に行くことを勧められて決定した。


 昼になり、俺はゴルドアさん達に、ダンジョンで鍛錬する為、仕事の休みをお願いしたらアッサリ快諾してもらった。ゴルドアさんには「部屋はそのままでいいぞ、自分で納得するまで帰って来るな」と言われ、話を聞いたリリはちょっと寂しそうだった。


 カルティさん達にも話をして、


「実は、明日からダンジョンに行く事を決めました」

「それは急だな、ミツヒ。事前に知っていれば一緒に行動することも考えたが、私達にも依頼があるから無理か」

「急なことですみません、カルティさん」

「それじゃ、稽古はしばらくお預けですね。仕方がない、気を付けて行って来てください」

「また帰って来たらお願いします、ティファさん」


 口調はしっかりしている2人だったが、突然の事だったのと、長い期間になると悟っているのか、2人共溢れんばかりの涙目になっていた。


その夜

 支度をしようとした。しかし、


(いざ支度しようとしたけど、用意することが無いな。暇になった)

(そうですね、生活魔法は私が出来ますし、飲み物も必要ありません)

(そうなんだよな、着替えも必要無いしね)


 ハネカの生活魔法、アクアで水を出し、クリーンで体も服も装備も綺麗になる。

 そして、ハネカ曰く、俺の速さで走って行けば、夕方にはエントアの町に着く。という事。


(それじゃ、しばらく帰って来れないかもしれないから、棚を整理するか)


 棚を開けると、魔石が、ゴロゴロ、と出てくる、出てくる、溢れてくる。


(まいったな、魔物退治の魔石がまだ一杯だったんだっけ。これじゃ、収集つかないから袋に入れるか)


 作業を始め、袋が、パツンパツン、になるまで詰め込んだ。魔石を袋に詰め終わると、背負い袋にして3袋になった。これじゃ、棚にも入らないので部屋の端に積み上げて置こう。


(お金も余裕あるし、また換金しに持って行ったら多分、ギルドマスターとか言う人が出てきて大事になりそうだから、このままにしとこうかな)

(拾わなければ良いのですよ、ミツヒ様)

(えー、もったいないよ、ハネカ)

(ダンジョンでも、大量に出たら持ちきれません。希少種の魔石だけでいいのですよ、ミツヒ様)

(そうだよな。収納アイテムとか、マジックバッグとか手に入ればなあ、それこそ超希少か)

(そうですね、ちなみに魔法でも収納は出来ますが、私でも大量の魔力を、ダダ漏れ状態で使い続けますから、いざという時に魔法が使えないと困るのでお勧めしません)

(わかった、そうする事にしよう)


 明日に備えて就寝。


(おやすみ、ハネカ、また明日)

(ごゆっくりおやすみください、ミツヒ様)



翌日早朝

 まだ薄暗い空の中、マイウ亭を出て南の門にいる。もう町を出る人が並んでいるので、俺も後ろに並び順番を待つ。

 俺の番が来て、門番に証明書を見せて外へ出たら、もう空が明るくなり始めてきた。

 俺は他の人達と同じ速度で同じ道を歩いている。その道はスマルクの町から南にまっすぐの道で、王都エヴァンに行く道だ。その道を少し行ったところで左に入る小道があり、エントアの町に直接続いている道。その道に入ったら走る、走る。すぐに森の中に入るが速度は落ちない。木々や枝が茂っているが、何も無いように走る。


(おお、速い速い、青い点滅の示す方向に走ると、木々が全然邪魔にならないよ、ハネカ)

(問題ありません、周囲に魔物がいますが気づいていません。進行方向には見当たりません、そのままお進みください)

(了解、いい感じで進めそうだ)


 順調に走って夕方前には、エントアの町の門が見えた。

 高い塀が町を囲っているダンジョンの町エントア。3000人程が住んでいるが、さらに200人程の冒険者やダンジョン攻略者などが多く滞在している。町の東側にダンジョンがあり、そこから塀で囲まれて街並みが広がっている町。

 門に着いて門番に証明書を見せると、


「問題ないな、入ってよし、おまえもダンジョンか?」

「はい、そうです。ダンジョンに入るには、登録とか必要なことはありますか?」

「ダンジョンの入口の手前にギルドがあるから、そこで入場登録する必要がある。誰が入って誰が出てこないか調べるからな」

「ありがとうございました」


 町に入ると思ったより人通りがある、活気のある町だ。

 宿屋を探そうと思ったけど必要なかった。それは、すぐに10軒ほど並んでいたから。

 ゆっくりと見回して、見比べているがどこも同じようで選べないでいると、店の前で呼び込みに声を掛けられ、


「ねえねえ、お兄さん、宿ならうちにおいでよ、風呂も大きくて評判良いんだよ」


 と、金髪ポニーテイルで茶目、身長160センチ程の元気ハツラツの可愛い娘がエプロン姿で呼び込みをしていて、とても似合っている。


「ここは風呂があるのか。村以来久しぶりだな。じゃ、この宿にするよ、2泊食事付お願いします、俺はミツヒ」

「はーい、ありがとうございます、ミツヒさん。ミネストの宿へようこそ。1名様ご案内です」


 看板には、ミネストの宿、と書かれていた。


「2泊で朝晩の食事が4食で、金貨2枚になります」


 少し高めだが気にしない、支払った。

 中の造りはマイウ亭に似ているが、裏庭に位置するところが風呂になっていた。部屋に案内されると、6畳ほどの部屋にベッドが一つ、可もなく不可もない。さっそく風呂に入りに行くと、数人が入っていたが、村よりも大きくて、20人は入れそうな岩風呂で余裕だ。他に向こう側にも2つ岩風呂があった。仕切りは村と同じで天井は無く空が見える。


(フゥー、久しぶりの風呂は気持ちがいいな疲れが取れるよ)

(回復の効果が出るのでしょうか? ミツヒ様)

(いや、回復とはちょっと違うかな。心身ともに癒されるんだ)

(そうですか、ミツヒ様が癒されるのであれば、それはいい事です)

(あ、ハネカ。明日は、余裕を持ってダンジョンに入りたいから、準備と登録についてギルドに聞きに行くよ。多分1日使う予定だからダンジョンは明後日でいいかな)

(全く問題ありません、畏まりました)


 風呂を出て、食堂に行き、女将に声を掛けてからテーブル席に座る。


「お泊りありがとうございます、ミツヒさん、私は女将のニシッタ。今後ともご贔屓にお願いしますね」

「こちらこそよろしく。お風呂いいですね、ニシッタさん」

「それは良かったです。食事ですが何にしますか?」

「おすすめでお願いします」

「はい、では少しお待ちください」


 ニシッタさんは厨房に入って行き料理を持ってきた。

 すぐに出てきたのは、ブラックボアのシチューのような肉の煮込み料理だ。柔らかそうな肉が一口サイズで結構入っていて、野菜も、ゴロゴロッ、とたっぷり入っている。食べてみると、やはり肉が柔らかく、ホロホロ、と口の中で崩れる。煮込みの加減といいソースの加減といい、絶妙にうまいな、野菜も、ホクホク、しているし。ハグハグ、食べて、満足した。


 夜は走ってきた疲れがあったのか、すぐにベッドで横になり就寝。



翌朝


 食堂に行くと、カウンターに料理が、ズラズラ、と並んでいる。


「おはようございます、ミツヒさん。うちの朝食は好きなものを選んで食べてください」

「おはよう、ニシッタさん。なるほど、選べるんですね」


 この町の宿は、朝早くからダンジョンに入る人が多いので、ミネストの宿ではイチイチ作るのが大変でこうなっているとの事。

 俺は、ゆで卵2個と昨日のボアのシチューとパンを選んだ。ゆで卵はシチューに沈ませておき、パンはシチューにつけて食べた。味がパンに染み込み、クニュックニュッ、として美味い。最後まで沈ませて置いたゆで卵は、やはり美味かった。明日の朝食も、あったらこれで行こう。

 朝食後、宿を出て町中を、ウロウロ、と歩き、見つけた商店で干し肉と小さい鍋を購入した。一度荷物を宿に置きに帰り、そしてギルドに行ってみる事にした。

 門番に言われた通りに街道を歩いて行くと、ダンジョンの入口の横にギルドがあった。ダンジョンの入口には、十数人の人が順番を待っている。

 ギルドに入ると、一段落したのか人は疎らで、受付には2人の女性が座っている。ギルドの受付の服は統一されているのだろうか、やはりここもメイド服のようだ。グレーのメイド服に赤いマフラーを身に着けている。それを見ながらさっそく受付に行く。

 カウンターにあった名札を見ると、リーザさんとパセリーさんと書いてあった。

 リーザさんは銀髪肩までのストレート、クリッ、とした茶目で160センチくらいだろうか、綺麗でスタイルも良い。

 パセリーさんは、銀髪が腰まであり三つ編みにしている、赤目で150センチくらいかな、可愛いが幼児体型でペタンだ。あ、パセリーさんに睨まれた。俺が目を逸らすとリーザさんが、


「いらっしゃいませ、ダンジョン攻略ですか?」

「はい、今日は下見に来ました。明日から入ろうと思っています。このダンジョンについて教えていただけませんか?」

「ここは初めてですね、わかりました。ではご説明いたします。このダンジョンは20階層で出来ています。

各層に魔物がでますが、下に行くほど手ごわくなってきます。手ごわいとは、強いという意味ではありません。それほど強くない魔物でも数で押してきますと、倒す事が大変になります。

魔物を倒すと魔石やアイテムがドロップされますが、毎回、全ての魔物から、ではありませんのでご注意ください。10階層では、通路を守っている魔物の長がいますので倒さないと下に行けません。

20階層の最深部ではこのダンジョンの長がいますので倒せば攻略となります。

ダンジョンから出るには入って来た通路を戻る方法と、他に5階層、10階層、15階層のセーフエリアからの転移で1階層の入口の穴へ、そして最深部の長を倒し攻略できた時の20階層の転移ポイントからダンジョン入口横の穴に転移出来る仕組みになっています。

現在到達している最高階層は8人パーティの15階層までで、ここ10年は攻略されていません。以上です」

「ダンジョンの登録は毎回行うのですか?」

「はいそうです。入る時と出て来た時にお願いします。ちなみに入ってから2か月間出てこない場合は死亡、または全滅扱いになります」

「他のパーティは何日くらいダンジョンに入っているのですか?」

「平均で1週間、長いと1ヶ月くらいですね」

「ありがとうございました」


 ギルドを出てミネストの宿に帰る。その日は、夜になるまで、風呂に入って出て涼んで、また風呂に入って、を繰り返し楽しんだ。


 今夜の食事は、ホワイトバードのから揚げだ。1個がデカい、サクッ、と揚げてあるがデカい。かぶりついても3口にはなる。味は塩味で香ばしく肉の旨味が引き立つ、サクサク感も良く、パクパク、と美味しくいただいた。

 部屋に戻りベッドに座ると、念話で、


(明日からダンジョン入りだけど、大丈夫かな、ハネカ)

(問題ありません、ミツヒ様はお強くなってきています。それに私もお守り致します)

(ありがとう、ハネカ。よろしく頼むよ)

(畏まりました、ダンジョン攻略は順調に進むと思われます)

(そうであればいいな、それじゃ明日、おやすみ、ハネカ)

(ごゆっくりお休みください、ミツヒ様)


翌日早朝


読んでいただきましてありがとうございます。

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