入学編<初日 ‐ 登校 ‐>
桜と桃香が何やら昨晩のドラマの話について話している。
ドラマなど観ない俺は全くついていけず後ろを1人で歩いている。
しかし、こんな風に3人で一緒に登校するのも久しぶりなもんだ。
制服を着ていることすら不思議に思う。
閑静な住宅街を抜け、駅に近づいてきた。
サラリーマンに混じって、ちらほら学生の姿が目に入る。
改札を入り、プラットホームに到着。
8時の電車まで5分ほど余裕があった。
「準一、あんた高校こそは真面目に通いなさいよ」
「分かってる。選ばれたからには各方面のご期待に応えてみせるさ」
「なーに言ってんだか。桜もようやく落ち着けるわね」
「私はお兄ちゃんが元気だったらそれでいいの!」
「はいはい、ほんとあんたたち仲良い双子よね」
そんなこんなで駄弁っているうちに電車が来た。
座れはしないものの比較的空いている方だろう。
電車で揺られながらおよそ20分。
そろそろ駅に着くころだ。
周りを見渡してみると同じ制服に身を包んだ学生が結構いる。
あの親御さんかなり気合が入っているな。
――――
まもなく、有栖川駅に到着します。お手回り品お忘れの無いようご注意下さい、まもなく有栖川駅です。
――――
電車が到着して、降りる。
なかなかの人混みだ。
二人から目を離さないように後ろに付いて歩く。
ここ、有栖川駅は数年前に大幅リニューアルされた次世代の駅である。
特筆すべきは「人」がいない、ことだろうか。
田舎でよくある無人駅のことではなく、「AI」が「人」に置き換わっているのである。
例えば、改札の両端に設置されたディスプレイ上では、AI駅員という名のアバターが
質問対応しているし、コンビニ等のテナントは、最新テクノロジーを駆使した
画像認識、センサ認識による無人営業を行っている。
当初は試験店舗として導入されていたものの、今となっては他の駅にも徐々に普及している
ようである。
俺たちが通うことになる高校は、改札を出て5分ほど歩いたところにある。
5分と言っても改札を出たときから目の前に聳え立っているのだが…。
「いつ見ても壮観よね、この通りもおしゃれだし」
「あ、桃香ちゃん、あそこあそこ! あれ有名なケーキ屋さんだよね!」
「あら、ほんとだわ。これは行くしかないわね…」
「最近ダイエットしてたんじゃないのか?」
「ケーキのカロリー分以上の運動をすればいいだけよ」
「世のダイエッターがブチ切れるぞ…」
「それを言ったら桜なんて太らない体質なんだから女性の天敵よ」
「私は桃香ちゃんみたいにスタイルよくないもん…」
「桜、お前はもっと自分に自信を持ったほっ…」
ドンッ
誰かが俺の肩にぶつかった。
「あ、君ごめんね! あとでジュースか何か奢るから~」
もう遥か彼方である。
何だったのだろう、かなり急いでいたようだが。
ちらっと見えたエンブレムの色からすると3年生だろうか。
何事もなかったかのように再び歩き始める俺たち。
校門まで残り半分ほどまで来たところで、さすがにスルーできなくなった。
なんだこの取材陣の数は…。
あちらこちらでレポーターが歩いている学生に声を掛けては取材している。恥ずかしがって下を向いている生徒もいれば、声高々に何かを宣言している生徒もいる。
ちょうど朝の情報番組の時間帯か。
海外メディアもちらほら見られるな。
全世界から大注目ってやつだ。




