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悪役令嬢をもう一度  作者: 流らいき
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005.令嬢、課題を整理する

 いつの頃からか、私の中には別の私が存在すると気がついていた。

 年の割に大人びていて聡明と言われるのも、この別の私のおかげ。

 15歳のヴィヴィアンと、26歳の真希。それから私、5歳のヴィヴィアン。

 15歳のヴィヴィアンは、私と同じ人生を歩んでいる。15歳のヴィヴィアンが経験した事を5歳の私が辿っていっている。と言う方が正確かもしれない。

 でも、15歳のヴィヴィアンの記憶と、真希の記憶があるおかげで、全く同じようにはなっていない。

 私たちは、15歳のヴィヴィアン――私たちは便宜上「ヴィー」と呼んでいる――の望み通り、この人生を勝ち組にしたいと思っている。

 もちろん私も大賛成。だって、ヴィーの記憶の通りに行くと、15歳で処刑されてしまうのですもの。絶対そんな将来は回避したい。

 真希の言うところの「勝ち組」になるべく、私たちは一致団結して未来を変えることにした。


 差し当たって課題は、3つ。


 まずは何と言っても、私自身の処刑の回避。最重要課題。

 処刑の罪名は、機密情報漏洩による売国行為。

 もちろんそんな事実はなかった。

 何より重要なのは、告発した者たちは(ヴィー)が罪人ではないことを承知していたことだ。それ故の取引だ。

 (ヴィー)が罪を被って死ぬことで、家族を告発しないこと。

 それが取引内容だった。

 ハーグリーブス侯爵家当主には黒い噂があったのだ。

 告発した者たちがどこまで証拠を揃えていたのかはわからない。

 お父様が実際に罪を犯していたのかもわからない。

 貴族にとって、当主が告発されお家取り潰しになるのが一番最悪なケースだ。仮に無実が証明されても一度告発された事実は、ずっと付きまとうものだ。

 一族の者が告発された場合でも社会的影響は大きいけれど、当主ほどではない。

 (ヴィー)は、第2王子の婚約者だ。王族と縁を持つことで、ハーグリーブス侯爵家の発言力は更に強まる。

 だからこそ取引が成立したのだ。

 その証拠に真希が得たマスター・マーリンの話では、結果的にハーグリーブス侯爵家は大きなダメージもなく存続していたと思われるので、死に損ではなかったのかもしれない。

 でもでもでも!

 今回は回避ったら回避。絶対回避!

 なので、ハーグリーブス侯爵家を陥れたい誰かを見つけることが重要なのだ。

 そして、できればお父様の黒い噂の真相を知り、握りつぶしたい。

 ・・・でも今は方法がないので、すっごく気になるけれど、保留。


 2つ目は、呪いのこと。

 真希にかかっていたという呪い。それが今どうなっているのか私たちには知る術がなかった。

 コミナミは真希に「今に影響するものではない」と言っていたが、それが今も有効かはわからない。

 ヴィーの記憶にも、禁呪の知識はなく、そもそも呪いがどういったものなのか分かりかねる状態ではどうすることもできない。

 それに、私の周りには驚くほど魔法を使える人がいないのだ。

 魔法を使えるのは貴族か一部の騎士階級くらいで、あとは極稀に庶民から生まれる程度と、そもそも絶対数が少ない。

 もちろん両親は使えるのだけれど、年に1、2回程度しか会わない人たちで、こちらから訪ねることも難しい。一度、執事に王都へ両親に会いに行きたいと言ったが、やんわりと断られた。ヴィーすら自分から訪ねたことはない。

 最も確実なのは、マスター・マーリンに聞くことだと思うのだけれど、彼に会う伝手が今はない。何も行動しなかった場合でも、王立学校へ入学すれば会うことができる。しかしそれも入学する12歳までに呪いの影響が出なければ、というリスクが残る。

 今のところ、健康に問題は出ていないし、体に変な痣ができていたりすることもない。

 楽観的かもしれないけれど、すぐにどうこうなるものでもないのではないかと思っている。

 当面は、禁呪が何か調べることと、マスター・マーリンへの伝手を探すことにした。


 3つ目は、リスティスのこと。

 私の異母弟で同じ年なのだけれど、まだ存在も耳にしていない。ヴィーの記憶でも8歳になるまでその存在を知らなかった。

 そのリスティスは、真希の得た情報ではヴィーの王立学校入学前に亡くなるらしいのだけれど、ヴィーの記憶では、少なくとも処刑される15歳までは生きていた。

 この矛盾は気になるけれど、そもそもリスティスは虚弱で、王立学校にも入学できなかったほどだ。

 亡くなっていたとして、その原因と思われる虚弱体質を改善することで死亡を回避できるのではないかと、真希は言った。

 そうではなくともリスティスには健康になってもらいたい。

 そんなわけで、リスティスの虚弱体質改善プログラムを組むことにした。

 これはリスティスと出会う8歳までに組み立てればいいので、若干の余裕がある。


 他にも気になることはたくさんある。

 今はまだ婚約していない第2王子のことや、今はまだ出会ってもいない友人関係にあった隣国の王子のことや、これまたまだ会ったことがない従兄弟のこととか。

 真希の記憶にある乙女ゲームのこととか、内政チートだとか、転生ものだとかいろいろあるのだけれど。

 まだ出会っていない人たちのことを今からあれこれ心配しても仕方がない。

 と自分に言い聞かす。

 あ、でも1つだけ。

 ヴィーは第2王子ことクローディン王子に夢中だったけど、私はそうでもない。ううん。はっきり言うと嫌い。

 だって、ヴィーは婚約者だったのに王子に優しくされたことが一度もないし、告発者の中心人物だったのだ。

 真希の乙女ゲームでの王子は、ヒロインに優しい言葉の数々をかけ、ピンチを救うヒーロー。とても同一人物とは思えない。

 いや、ゲーム上でも告発するのは王子で同じなんだけれど。

 真希はゲームのヒーロー補正もあると思うけど、なんて言うけれど、私と同じ気持みたい。

 ヴィーもヴィーで今は王子なんてどうでもいいっていう。告発されたからじゃなくて、やっぱりゲームを見たからみたい。

 そんな優しさ持ち合わせていらしたの? って。

 千年の恋も冷めるっていうやつだよ。と真希が言っていた。

 今回では、王子との婚約も阻止できないかな。と強く願った。


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